妊娠中のタバコの影響は?副流煙のリスクや禁煙方法

妊娠中のタバコが招く弊害を理解し罪悪感がありながらも、なかなかタバコがやめられないという妊婦は少なからずいるようです。タバコの煙にはニコチンによる依存があり、精神的な強さだけでは克服できない場合もあります。妊婦の喫煙による子どもへのリスク、家族の喫煙や職場・飲み会などでの受動喫煙の影響などを解説します。

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この記事の監修

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産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 妊娠中、後悔しつつもタバコがやめられない人はいる
  2. タバコが妊婦の身体に悪影響をもたらす原因は?
  3. 妊娠中のタバコは赤ちゃんにどのような障害をもたらす?
  4. タバコは何本までOK?一口だけ、ふかしでもリスクはある?
  5. 妊婦のタバコはいつからいつまでリスクがある?
  6. 妊娠後にタバコを吸うと吐き気・腹痛が起こる場合がある?
  7. タバコの煙・においに害はある?家族が喫煙者の場合は?
  8. 妊婦の禁煙ではストレス・体重増加に注意が必要?
  9. 妊娠中にタバコをやめる方法はある?
  10. タバコとともに気をつけたい、妊娠中の飲酒
  11. 禁煙・禁酒はかんたんではない
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妊娠中、後悔しつつもタバコがやめられない人はいる

厚生労働省の統計では男性の約5割、女性の1割が喫煙しているというデータがあります。多くの人が「タバコは身体に悪い」という認識はあるものの、どのような影響が出るのかという認識はあまり浸透していないかもしれません。たとえば「肺がん」は、喫煙後すぐに肺がんになることはなく、数十年後に影響が表れることがあるため、喫煙と病気の因果関係を明確にするのは困難でしょう。タバコによる不確実なリスクのイメージは、喫煙者がなかなか禁煙に踏み出せない理由のひとつかもしれません。

タバコの不確実なリスクのイメージやニコチン中毒もあり、妊娠中でもなかなか禁煙できない妊婦がいます。妊婦の喫煙率の調査例では、調査に回答した約1割の妊婦が現在喫煙しているというデータがあるようです。現在タバコを吸っていると答えた妊婦のほぼ全員が妊娠前からの喫煙者でしたが、現在タバコを吸っていないと答えた妊婦の約4分の1も妊娠前には喫煙者だったそうです。妊娠中の喫煙は後悔・罪悪感が伴うケースが多く、喫煙への迷いが断ち切れる人と断ち切れない人がいるのでしょう。

タバコが妊婦の身体に悪影響をもたらす原因は?

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タバコの煙にはニコチン、一酸化炭素をはじめとした数多くの有害物質が含まれています。妊娠中・授乳中のタバコは身体に害をもたらすという認識は広く浸透しているかもしれませんが、具体的にどのような影響が起こるのかは知られていないかもしれません。タバコが妊婦にもたらす影響には大きく分けて、「妊娠中の母体・胎児への影響」と「出生後の赤ちゃんへの影響」の2種類あります。

妊娠中のタバコは赤ちゃんにどのような障害をもたらす?

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妊娠中・授乳中のタバコは母体・胎児へさまざまな影響を与える可能性があります。母体への影響の一例としては、早期破水・前置胎盤・胎盤異常・早産・低出生体重・異所性妊娠(子宮外妊娠)・自然流産・口蓋裂・周産期死亡(妊娠28週以降の死産と、生後1週間以内の早期新生児死亡)などがあります。

無事に出産を終えた後も子どもの発達への影響やSIDS(乳児突然死症候群)などとの因果関係が指摘されていたり、母乳分泌量の低下、乳児の嘔吐・下痢・脈拍の増加・落ち着きがないといった症状が現れたりすることがあります。また肺など呼吸器機能の障害が表れる可能性や先天奇形・アトピーなどが発見されることもあります。

タバコの有害物質による身体への影響は妊娠時の子宮や胎児への影響のみだけではなく、がん・動脈硬化・喘息・脳卒中など深刻なケースを含め、身体のほぼすべての臓器が影響を受けるといわれています。出産をゴールとして考えるのではなく、出産後の子どもとの生活も視野にいれて喫煙のリスクを考える必要があるでしょう。

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タバコは何本までOK?一口だけ、ふかしでもリスクはある?

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喫煙の影響ですぐに病気が起こるとは限らないため、喫煙によるリスクを他人事のように感じたり、がんや脳卒中などの深刻な影響が自分に表れる可能性を低く見積もったりする喫煙者は少なくありません。このため、「タバコを減らす」「1日1箱、1本もしくはたまに吸うだけにする」「タール1mmのタバコにする」「タバコをふかし、肺に入れないようにする」「加熱式の電子タバコにする」といったさまざまな策でもって、禁煙を回避しようとする方もいるでしょう。

注意しなければならないのは「低タール・低ニコチンなどのタバコの明らかな健康メリットは認められていない」という点、そして「禁煙は続けるメリットだけでなく、即効性のメリットもある」という点です。

タバコの本数を減らす・低いタールにする・低ニコチン・にするといった表現は、タバコのリスクが減るような印象も受けますが、リスクが完全になくなるわけではありません。昨今人気の高い電子タバコにもニコチンが含まれているものもあります。また、喫煙のリスクにように禁煙のメリットも長い時間を要するイメージがあるかもしれませんが、禁煙はすぐに病気になる可能性が減り、健康状態が良くなるといわれています。禁煙に挫折し、吸ってしまったとしても再び禁煙にトライすることが大切です。

妊婦のタバコはいつからいつまでリスクがある?

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妊娠を機にタバコをやめたいと考えるとともに、いつからいつまでタバコをやめればいいのかが気になる人もいるかもしれません。タバコに含まれるニコチンへの依存もあり、安定期が近づく妊娠4ヶ月ごろから、安定期に入る妊娠中期から、お腹の赤ちゃんが大きく育ってくる妊娠後期から、出産直前の臨月まで、などさまざまな可能性を考える人もいるでしょう。

タバコは妊娠する能力の低下が指摘されているため、本来であれば妊娠前からタバコをやめることが一番望ましいです。しかしながら着床後に妊娠検査薬が反応するまでにある程度の時間がかかることもあり、そのあいだに妊娠に気がつかずにタバコを吸ってしまったということもあり得るケースでしょう。妊娠の可能性があると感じた時点で、お腹の赤ちゃんへのさまざまなリスクを減らすためにも禁煙を始めることが大切です。出産後も子どもの成長に影響を与える可能性があるため、禁煙を続けるのが良いでしょう。

妊娠後にタバコを吸うと吐き気・腹痛が起こる場合がある?

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妊娠後にタバコを吸ったところ、今まで感じたことのない吐き気を感じたり、タバコのにおいが急に気になったりする場合があります。なかには、つわりが強くなる・出血が起こる・お腹の張りを感じる人もいるようです。

これらの症状は必ずしも喫煙のみが原因であるとは限りませんが、タバコに含まれる有害物質のひとつ「ニコチン」が吐き気・嘔吐・頭痛・めまいといった副作用を引き起こしている可能性はあります。また、タバコに含まれる有害物質のひとつである「一酸化炭素」が原因で体内の酸素が不足し、貧血や低血圧をはじめとしたさまざまな器官への影響も考えられるでしょう。

タバコの煙・においに害はある?家族が喫煙者の場合は?

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妊婦自身がタバコを吸わない・やめた場合でも注意しなければならないのが「受動喫煙」による影響です。飲み会の席やレストラン、職場、車、ホテルなど日常のさまざまな場所でタバコの煙やにおいが気になる妊婦は少なくないでしょう。これはタバコの煙によるリスクへの不安、においによる刺激での不快感といったものが原因かもしれません。昨今は受動喫煙対策により喫煙所・喫煙席などの分煙化が進められていますが、非喫煙者は少しの副流煙でも、喫煙者に比べて敏感に反応してしまうことが多いのではないでしょうか。

妊婦の受動喫煙に関する調査のデータは多くなく、受動喫煙と妊婦の健康被害の因果関係は明確にはなっていません。受動喫煙を調べた平成5年度の調査では妊婦の6割が家庭・職場などでの受動喫煙の可能性があり、該当の妊婦が出産した赤ちゃんは全体的に低体重だったようです。受動喫煙は何本以内であれば安全であるといった基準はなく、分煙・排気・換気で受動喫煙を完全に防ぐことはできません。

同居している妊婦の夫や父親、友達や会社同僚が妊婦の前でタバコを吸うケースもあるようです。「タバコの煙には有害物質が含まれている」こと、「タバコの煙がお腹の赤ちゃんの低体重や早産・発達の遅れや呼吸器に影響をおよぼす場合がある」ことを妊婦の周囲の人間もきちんと理解し、妊婦と同じ空間でタバコを吸わない・妊婦にタバコの煙を吸わせないようにするといったサポートをしていくことが重要でしょう。

妊婦の禁煙ではストレス・体重増加に注意が必要?

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妊婦に限った話ではありませんが、禁煙によるストレスや体重の増加といった影響が気になる人は少なくありません。ただ、ストレスや体重の増加は妊婦によく見られる心と身体の変化でもあるため、禁煙だけが原因ではないかもしれません。妊婦がイライラしたり不安になったりすることがあるのは、妊娠によるホルモンバランスの乱れや妊娠によって環境・社会的役割・人間関係などの変化が起こるからだといわれています。

妊娠中のストレスは周囲への相談や妊娠・出産に向けての本を読む、妊婦にもできる範囲での適度な運動などで解消していきましょう。また、体重増加はお腹の赤ちゃんの成長と血液量の増加が原因でもあるため、妊婦の適正範囲内の体重増加であれば気にすることはないでしょう。喫煙者の方が肥満傾向にあるというデータもあるそうです。

妊娠中にタバコをやめる方法はある?

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タバコには依存性がある「ニコチン」が含まれているため、禁煙によるストレスのように感じている不快感は禁断症状である可能性もあります。ニコチンを摂取することでイライラは治るかもしれませんが、禁断症状であれば血中のニコチン濃度が低くなれば再び不快感に苛まれます。禁煙の最大のハードルはこの禁断症状かもしれません。

健康への影響を知ることや周囲のサポートも大切ですが、禁煙してから約1週間程度はイライラする、不安になる、集中力が低下するといった症状が現れることをあらかじめ覚悟しておきましょう。禁煙すると決めたらタバコを捨て、物理的に自分が喫煙できない環境を作りましょう。周囲の人に禁煙している旨を伝え、自分の近くでの喫煙は控えてもらいましょう。1回ですぐに禁煙できずにまた吸ってしまったとしても、自分がどれくらいの時間タバコを我慢できたのかを記録すると、再チャレンジする際の励みになります。

また、禁煙による効果は即時性があるため、妊婦という特別な状況を考えて、1日でも早く禁煙サポートを受けるのも有効な手段かもしれません。産婦人科の先生に相談する、もしくは専門の禁煙外来を利用するのも良いでしょう。喫煙者にとって禁煙はかんたんなことではありません。専門家を頼る・周囲のサポートを得る・禁煙に成功した人の体験談を聞くなど、どのような方法であれ禁煙にトライし、禁煙を継続することが最も重要です。

タバコとともに気をつけたい、妊娠中の飲酒

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タバコ同様に、アルコールが妊婦やお腹の胎児に良くない影響を与える可能性があることは広く知られているでしょう。妊娠中の飲酒は知能障害・発育障害を伴うアルコール症候群の子どもが生まれる可能性があります。アルコールもタバコ同様に依存性があるため、どうしてもやめられない場合には周囲のサポートを得ると良いでしょう。

禁煙・禁酒はかんたんではない

妊娠中に禁煙・禁酒することは、人によってはかんたんなものではありません。昔タバコを吸っていた人、お酒をよく飲んでいた人にとっては強い意思だけでは乗り越えられない場合もあるでしょう。禁煙・禁酒初期はイライラが募り、夢に見たり、ついタバコやお酒のことを考えてしまったりするかもしれません。そんなときには、禁煙・禁酒に成功した、同じ経験をしてきた人の話を参考にしたり、同様に禁煙・禁酒にチャレンジしている仲間を作ったりするのも良いでしょう。

妊婦自身、そしてお腹の赤ちゃんのためにも、自分に合った方法で禁煙・禁酒を継続することが大切です。周囲の理解とサポートを得ながらチャレンジしてみてくださいね。

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