【産婦人科医監修】妊娠中の飲酒は障害などの影響が出る?少量などケース別の疑問を解説!
妊娠中の飲酒は、ママと赤ちゃんにどのような影響をおよぼすのでしょうか。少量の飲酒であれば妊娠中も問題ないのでしょうか。いつからアルコールの影響が出ることがあるのか、胎児性アルコール症候群による先天異常や発達障害の可能性、料理酒やアルコール入りのお菓子の影響などについて解説します。
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目次
妊娠中の飲酒・喫煙は絶対にだめ?
「妊娠中や授乳中の飲酒は控えましょう」という文言が、お酒のパッケージに書かれているのを見たことがある人は少なくないでしょう。妊娠中の飲酒がお腹の赤ちゃんに影響を与えるという認識は、深く浸透しています。
一方で、妊娠中の飲酒は具体的にどのような影響を与えるのか、少量の飲酒もしくはたまに飲酒する程度であれば問題ないのかといった疑問を抱えている妊婦さんもいるかもしれません。
妊娠前までお酒を楽しんでいた妊婦さんであれば、お酒を飲みたいという気持ちとの葛藤もあるかもしれませんね。飲酒や喫煙は、お腹の赤ちゃんの発育に悪影響をおよぼしたり、流産・早産を引き起こしたりする可能性があります。お酒を飲みたい、タバコを吸いたいというストレスがかかる妊婦さんもいるでしょうが、お腹の赤ちゃんのためにも妊娠中は飲酒を控えましょう。
妊娠中の飲酒は胎児の健康障害を引き起こす?
なぜ妊娠中の飲酒は控えるべきなのでしょうか。妊婦さんが摂取したお酒は、胎盤を通して胎児に届き、さまざまな悪影響を与える可能性があるためです。2021年に厚生労働省がまとめた「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」の解説では、妊娠中の飲酒による胎児への影響を以下のように説明しています。
引用元:www.mhlw.go.jp妊娠中の飲酒は、早産や妊娠高血圧症候群、癒着胎盤などのリスク増加に加え、子の発育
不全や特異顔貌、多動学習障害を含む胎児性アルコール・スペクトラム障害を引き起こす可
能性があります。
妊娠中の飲酒で心配される「胎児性アルコール症候群」
妊娠中の飲酒による胎児への影響で心配されるのが「胎児性アルコール症候群(FAS)」です。胎児性アルコール症候群は、胎児性アルコール・スペクトラム障害の中核となる障害で、1996年に診断基準が示されました。
飲酒によりママの体内に入ったアルコールは、そのまま胎盤を通って赤ちゃんに送られ、知能や発育に影響を与える可能性が指摘されています。胎児性アルコール症候群の子どもは、顔つきに特徴があったり、先天異常がみられたりする場合があるようです。
胎児性アルコール症候群の子どもが生まれる割合は民族や調査方法などでばらつきがありますが、日本では1~2 万人に1人と考えられており(※1)、アメリカでは1,000人に0.2~2人(※2)とみられています。
引用元:www.fsc.go.jp妊娠中にアルコールを摂取した女性から生まれた子供に、
・特徴的な顔貌(小さな目、薄い唇など)
・発育の遅れ
・中枢神経系の障害(学習、記憶、注意力の持続、コミュニケーション、視覚・聴覚 の障害など) などの先天異常が見られる場合があり、これを「胎児性アルコール症候群(FAS) 」と呼びます。
引用元:www.fsc.go.jpまた 胎児性アルコール症候群 FAS の基準のすべてを満たさない場合であっても 、
・ アルコール関連神経発達障害 (Alcohol-related neurodevelopmental disorder:ARND)
→行動や認知の異常
・アルコール関連先天異常(Alcohol-related birth defects:ARBD) →心臓、腎臓、骨、聴覚の障害
といった症状が見られる場合があります。
妊娠中にアルコールの影響が出るのはいつから?
妊娠4週未満
「妊娠超初期」といわれるこの時期には、胎児の器官の形成がまだ始まっていません。しかし胎児の発育過程には不明点が多く、いつからいつまでであれば絶対に赤ちゃんに影響はないとは断言できないでしょう。
妊娠を希望する時点で断酒するのがもっとも安全ですが、妊娠が判明した時点ですぐに飲酒をやめることも重要です。妊娠何ヶ月であっても、飲酒によって胎児に影響が出る可能性は否定できません。
妊娠4~15週
妊娠初期は、赤ちゃんの中枢神経・心臓・手足・目・鼻などの器官形成が行われる大切な時期です。妊娠初期の飲酒は、奇形との関連が指摘されています(※1)。
妊娠中期/後期
妊娠中期・後期の飲酒は、「中枢神経系の機能不全」や「発達遅延」との関連が指摘されています(※1)。
妊娠中の飲酒は少量でも影響する可能性がある
2006年発表の厚生労働省による妊婦さんへの注意喚起では、胎児性アルコール症候群の発症率が高くなる指標を以下のように示しています。
引用元:www.mhlw.go.jp胎児性アルコール症候群は、1 日に純アルコール(エタノール換算)60ml 以上の摂取で高 頻度の発症が認められている 12)。純アルコール 60ml は約 50g に相当し、ビールでは中瓶約 2.5 本 (1250ml)、清酒では約 2 合(400ml)、ウイスキーではダブル約 2.5 杯(150ml)、ワインではグラス 約 4 杯(500ml)に相当する。
ただし、上記は発症率が高くなる可能性を示したものであり、この指標以下のアルコール量であれば胎児に影響が出ない、とは断言できないでしょう。「毎日ではなくたまに飲酒する程度であれば」「一杯だけ、もしくはアルコール度数が低いチューハイを少しだけであれば」と、さまざまな可能性を考える妊婦さんもいるかもしれませんが、妊娠中の飲酒は避けたほうが安全です。
どうしても飲酒がやめられない妊婦さんは、かかりつけの医師や家族に相談することも大切です。妊娠中の飲酒に適量はありません。お酒が飲みたい妊婦さんであればこそ、一口を我慢することを心がけていきましょう。
海外では妊娠中も飲酒できる?
「フランス人は妊娠中もワインを飲んでいる」という話を耳にしたことがある妊婦さんもいるかもしれません。この噂の出どころは不明ですが、もちろん海外でも妊娠中の飲酒に対するリスクは指摘されており、注意喚起が行われています。内閣府の食品安全委員会が公表している情報では、フランスにおける妊娠中の飲酒も少しずつ減少しているようです。
妊娠中の料理酒やアルコール入りお菓子の影響は?
「妊娠中はアルコールを摂取してはいけない」といわれますが、みりんや料理酒といったアルコールを含んだ調味料はどのように使用すればよいのでしょうか。
妊娠中であっても、少量の料理酒などであれば加熱によってアルコールが飛ぶので、過度に気にする必要はありません。お酒を大量に使うワイン煮やアサリの酒蒸しなどは、事前に鍋で煮立ててアルコールを飛ばしましょう。
ただし、アルコール入りのお菓子は、加熱されていないものや加熱後にお酒を注入しているものがあり、注意が必要です。少量であれば問題ありませんが、ウィスキーボンボンのように意外とアルコール度数が高いお菓子もあります。お酒入りのお菓子は、食べすぎに注意が必要ですよ。
妊娠中もノンアルコールビールであれば問題ない?
妊娠前は頻繁にお酒を飲んでいた妊婦さんであれば、ノンアルコール飲料を楽しみたいと考える人もいますよね。ただしノンアルコールビールやノンアルコールカクテルに関しても、商品によっては注意が必要です。
ノンアルコール飲料には、アルコール0のものとアルコール1%未満のものがあります。アルコール0のものは問題ありませんが、1%未満のものは避けるようにしましょう。ストレスがたまらないように、上手にノンアルコール飲料を活用してみてくださいね。
一方で、ノンアルコール飲料に含まれる人工甘味料が気になる妊婦さんもいるかもしれません。一部商品に含まれる人工甘味料「アスパルテーム」は、妊娠中に避けたほうが良いという意見もあるようですが、明確に定義されてはいないようです。(※3)。
妊娠に気づかず飲酒したら違和感があった人も
妊娠が判明する前に飲酒していたら、いつもとは違う感じがしたという妊婦さんもいるようです。少しの飲酒で腹痛や吐き気を感じた人もいれば、一杯だけで酔いが回ったり嘔吐してしまったりする人もいるようです。
一時的な吐き気や腹痛であれば様子を見ても大丈夫かもしれませんが、出血などがあると慌ててしまいますよね。月経(生理)以外の出血は診断が難しいため、ひどい痛みを伴う場合や出血が続く場合には、問題ないことを確かめるために病院に行くようにすると良いかもしれませんね。
妊娠中に飲酒してしまったことで後悔する妊婦さんは多い
妊娠に気づかず飲酒していたという妊婦さんは、少なくないかもしれません。妊娠に気づかなかったとはいえ、お腹の赤ちゃんへの影響を考えると、お酒を飲んでいたことを後悔する妊婦さんもいるでしょう。
結果的に妊娠中の飲酒になってしまったことを後悔するよりも、妊娠がわかった時点で断酒することを優先しましょう。今後起こるかもしれないリスクを避けることのほうが、お腹の赤ちゃんにとっても重要です。
ネット上の体験談などを読むと不安になってしまう人もいるかもしれませんが、過度に悲観することはありません。妊娠中の飲酒に関しては、さまざまな意見があります。不安や疑問があれば、かかりつけの医師や専門の窓口に相談してみるのも良いでしょう。
お酒とともに注意したい妊娠中の喫煙
妊娠中の飲酒とともに注意したいのが、妊娠中の喫煙です。妊婦さんの喫煙は、お酒と同様にお腹の胎児への影響が心配されます。妊娠中のタバコは、流産や早産を引き起こす可能性があります。また出産後も、乳児突然死症候群を引き起こす可能性があるといわれています。
タバコに関しても、妊娠に気づかず喫煙してしまったことを後悔する妊婦さんは多いといわれています。お酒と同じように、お腹の赤ちゃんのためにも、妊娠が確定した時点で禁煙することが大切です。
妊娠中の夫やパートナー、家族の喫煙による影響は?
妊娠中の飲酒に関しては、妊婦さん自身がお酒を飲まなければ特に問題はありませんが、妊娠中の喫煙に関しては少し事情が異なります。妊婦さんが禁煙に成功しても、夫やパートナー、家族が喫煙している場合には、副流煙を心配しなければいけません。
夫やパートナー、家族にも、可能な限り禁煙に協力してもらいましょう。完全に禁煙が難しい場合でも、外出時に妊婦さんに副流煙の心配がない場所でのみ喫煙してもらうなど、いくつかの方法を試してみるのも良いでしょう。産後は、乳幼児にも副流煙によってリスクが生じるかもしれません。妊娠中から、産後の練習として、周囲の人にも禁煙を心がけてもらいましょう。
妊娠中は薬にも注意しよう
妊娠中は、薬の使用にも注意しなければいけません。飲酒や喫煙と同じように、妊娠に気づかずに薬を服用してしまったことを後悔する妊婦さんがいます。薬に関しても飲酒や喫煙と同様に、後悔するよりも今後影響が出る可能性をなくすことを考えていきましょう。
一方で、妊娠中の薬の使用は、飲酒や喫煙とは事情が異なる部分もあります。妊娠中に使用できる薬、使用できない薬、できれば使用を控えたほうが良い薬がある点です。妊娠中だからといって一切の薬を控えて、体調不良を我慢する必要はありません。妊娠中は、医師や薬剤師とよく相談してから薬を安全に使用するようにしましょう。
妊娠中のアルコール摂取の危険性を知ろう
妊娠中の飲酒による胎児性アルコール症候群は、特徴的な顔つきなど身体的な症状だけではありません。昨今では、自閉症やADHDといった発達障害と妊娠中の飲酒の関連性も指摘されています(※4)。
お酒を好んで飲んでいた妊婦さんにとっては、妊娠中の禁酒はつらい部分もあるかもしれません。それでもお腹の赤ちゃんのことを考えれば、妊娠中と授乳中はお酒を控えたほうが良いでしょう。妊婦さんひとりで禁酒するのがつらければ、夫やパートナーにも禁酒に付き合ってもらうと良いでしょう。ノンアルコール飲料の活用など、さまざまな方法を検討してみてくださいね。
※この記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。