【産婦人科医監修】妊婦が生ハムを食べるのはNG?妊娠中に注意すべき理由、影響、対処法を解説

妊娠中は、なるべく生ハムを食べることを避けたほうが良いといわれています。厚生労働省の妊婦向けのパンフレットにも、避けたほうが良い食べ物のひとつとして生ハムがあげられています。なぜ妊婦は生ハムを食べないほうが良いのでしょうか。注意すべき理由と胎児への影響、食べてしまったときの対処法などを産婦人科医監修で解説します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 妊婦が生ハムを食べるのはNG?
  2. 妊婦が生ハムを食べてはいけないといわれる理由
  3. 妊娠初期・中期・後期、生ハムにはいつから注意すべき?
  4. 妊婦が生ハムを食べた後の症状・対処法【リステリア菌】
  5. 妊婦が生ハムを食べた後の症状・対処法【トキソプラズマ】
  6. 妊娠中に生ハムを食べたくなったら?
  7. 妊娠中は生ハム以外にサラミにも注意すべき?
  8. 生ハムはなるべく控えて食中毒を避けましょう
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妊婦が生ハムを食べるのはNG?

妊娠中は、食べることを避けたほうが良いとされるものがあります。厚生労働省があげているのは、加熱されていないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、スモークサーモンなどの魚介類加工品、そして生ハムなどの食肉加工品です。

これらは冷蔵庫で長期間保存できるものが多いうえに、本来であれば加熱せずにそのまま食べられる食品です。しかし、食中毒の原因菌が付着している可能性があるため妊婦さんは注意が必要です。どうしても口にしたい場合は加熱してから食べるようにしましょう。

妊婦が生ハムを食べてはいけないといわれる理由

リステリア菌

妊娠中は、免疫機能が低下している状態であり、食中毒の原因菌に感染しやすいといわれています。その中でも、とくに気をつけたいのがリステリア菌です。

リステリア菌は動物の腸の中や河川の水など、あらゆる環境に広く存在しています。食品ではナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、食肉加工品に菌が付着していることが多いようです。菌が付着している食材を食べたことによってリステリア菌に感染し、食中毒となる場合があります。リステリア菌に妊婦が感染すると、発熱や関節痛など、インフルエンザに似たような症状が現れることがあります。

リステリア菌はまれに胎盤を通して胎児に感染し、影響をおよぼすことがあります。胎児が感染すると、流産や早産、死産のリスクが上がったり、生まれた赤ちゃんに髄膜炎や敗血症などの症状が出たりすることがあります。

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トキソプラズマ

トキソプラズマは、多くの哺乳類や鳥類が持っている寄生虫です。トキソプラズマに口や目から感染すると、トキソプラズマ症を発症することがあります。トキソプラズマ症は、健康な大人なら発症しても軽い風邪程度の症状しか現れなかったり、症状がまったく出なかったりしますが、胎盤を通して赤ちゃんに感染した場合、重症化することがあります。

トキソプラズマ症は、生肉や加熱が十分でない肉を食べること、感染した猫のトイレの処理、土いじりなどが感染の原因であるといわれています。妊娠中に初めてトキソプラズマ症に感染した場合、ママに抗体がないため、母子感染となる可能性があります。胎児が先天性トキソプラズマ症になると、水頭症、運動発達や精神発達の遅れ、脳や目の障害などのリスクが高まります。

妊娠初期・中期・後期、生ハムにはいつから注意すべき?

赤ちゃんの身体のさまざまな器官は、妊娠初期から形成されます。そのため、生ハムによる食中毒には妊娠初期から気をつける必要があります。妊娠が判明した後は、生ハムをはじめとした食中毒のリスクがある食べ物は避けたほうが良いでしょう。

臨月になると、赤ちゃんの器官はほとんど完成されていますが、胎盤を通して赤ちゃんが食中毒の原因菌に感染するリスクはゼロではありません。妊娠中期から後期は、つわりが落ち着いて食欲が戻ってくるママも多いですが、油断せずに火を通していない肉類を食べるのは避けましょう。

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妊婦が生ハムを食べた後の症状・対処法【リステリア菌】

症状

リステリア菌の潜伏期間は、平均して3週間といわれています。1日以内に発症したり、一ヶ月以上発症しなかったりと個人差が大きいため、原因の特定が難しいといわれています。

リステリア菌に感染すると、初期に微熱や倦怠感などが見られる場合や、まったく症状が出ないこともあります。感染が進むと38~39℃の発熱や頭痛、嘔吐など、インフルエンザのような症状が現れることがあります。

重症化して敗血症になると、子宮内の胎児に感染する可能性があり、流産や早産のリスクが高まります。ママは発熱や悪寒、背中の痛みなどを感じることが多いようです。一般的な食中毒のように、下痢や腹痛といった症状はほとんど起こらないのが特徴です。

対処法

生ハムを食べた後、一ヶ月以内に悪寒や発熱、関節の痛みを感じたときは、医師に相談してみましょう。腹痛や下痢など、一般的な食中毒の症状がないのがリステリア菌の特徴ですが、お腹に激しい痛みを感じたり、下痢が止まらなかったりするときも医師に診てもらったほうが安心です。

生ハムを食べたからといって必ずしもリステリア菌に感染するわけではありません。日本では、いくつかの加工品からリステリア菌が検出されていますが、妊婦のリステリア菌の食中毒は現状報告されていません。感染率も、一年間で100万人あたり0.1~10人と決して多くはありません。(※1)気になる症状が現れたら、慌てずに担当の医師に症状を診てもらうことが大切です。

妊婦が生ハムを食べた後の症状・対処法【トキソプラズマ】

症状

トキソプラズマに感染した場合、無症状であることが多いといわれています。症状は、感染時期や感染者の状況によって左右されます。人によっては、発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなどが見られることもあります。

また、潜伏感染していたトキソプラズマが再活性化すると、脳炎や肺炎などを引き起こすことがあります。症状だけではトキソプラズマ病と診断することは難しいため、血液検査などで診断します。

対処法

トキソプラズマに感染したかどうか不安なときは、担当の医師に相談してみましょう。感染していない場合でも、血液検査を受けることでトキソプラズマの抗体を持っているかどうかが診断できます。

トキソプラズマは感染してしまってから対処をするのは難しいため、予防が重要です。トキソプラズマの感染を予防するには以下のようなことを守りましょう。

・肉や魚はしっかり加熱してから食べる
・土を触った後は手をしっかり洗う
・野菜や果物はよく洗ってから調理する
・井戸水や川の水は飲まない
・猫のフンの処理は妊婦以外がする
・猫のトイレは毎日変える、トイレ容器は熱湯消毒する
・飼い猫は外に出さない

妊娠中に生ハムを食べたくなったら?

国産の生ハムは、徹底した品質管理と細菌検査が行われていることが多く、リステリア菌やトキソプラズマに汚染されないように対策をとられているようです。国内のメーカーのほとんどが、妊娠中に生ハムを食べることを禁止してはいません。

しかし、どのような食材でも食中毒菌の感染の危険性はあるため、やはり食べる前に加熱をしたほうが安心といえるでしょう。リステリア菌やトキソプラズマは、十分に加熱すれば死滅します。生ハムを加熱すると、独特の食感は失われますが、うまみや塩気をより感じることがあります。加熱した生ハムと野菜を合わせるなど、新しいレシピを開発してみても良いですね。

輸入品の生ハムも、なるべく避けたほうが良いでしょう。妊娠中に海外に行く場合にも注意が必要です。とくにスペインやイタリアは生ハムの本場ですから、どうしても食べたくなるかもしれません。しかし、欧米では食肉加工品による集団食中毒が発生した事例があります。

また、生ハムの塩分量も妊娠中は気になるところです。妊娠中は食べたい気持ちを抑えて、なるべく加熱された食事を楽しみましょう。

妊娠中は生ハム以外にサラミにも注意すべき?

ソーセージを乾燥させたものがサラミソーセージです。豚や牛の肉が使われたものはサラミソーセージ、他の肉が使われたものはドライソーセージと区別されています。日本国内で作られているサラミは、加熱処理をしてあるものが主流のようです。

しかし、海外では生サラミが人気であり、日本にもさまざまな生サラミが輸入されています。そのため、日本に流通しているすべてのサラミが安全だとはいえず、妊婦は、生ハムと同じように注意が必要です。食べたいサラミが加熱処理をされているか不安なときは、製造会社や販売会社に聞いてみても良いでしょう。

生ハムや生サラミの他にも避けたほうが良いとされる食べ物があります。スモークサーモンなどの魚介類加工品、ローストビーフ、レアステーキ、魚や肉のパテ、ナチュラルチーズなどです。

これらの食材は結婚式の披露宴などでもよく見られます。事前に「料理はしっかり火を通して欲しい」と伝えるか、生ハムなどの食材が使用されている料理は食べるのを控えるようにしましょう。サンドイッチにも注意が必要です。

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生ハムはなるべく控えて食中毒を避けましょう

加熱処理が行われていない生ハムは、リステリア菌やトキソプラズマ菌に汚染されている可能性があります。食中毒に感染すると、ママの体調が悪くなるだけではなく、赤ちゃんに影響することもあります。

生ハムを妊娠中にどうしても食べたくなったときは、なるべく火を通してからにしましょう。妊婦は生ハム以外にも、レアステーキやローストビーフ、ナチュラルチーズなども注意が必要です。栄養や食中毒に関する知識をしっかりつけて、妊娠中も安全な食事を楽しめると良いですね。

※この記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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