【産婦人科医監修】妊婦は蟹や海老を食べられる?刺身や蟹味噌には注意すべき?妊娠中の影響や、食べられる蟹・海老料理について解説
蟹(カニ)や海老(えび)などの甲殻類は、おいしいけれど消化に負担がかかるイメージがある人もいるかもしれません。妊娠中でも蟹や海老を食べてもよいのでしょうか。生の刺身や蟹味噌を食べたときの影響や、蟹や海老を使ったおすすめのレシピについて解説していきます。
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目次
妊婦は蟹や海老を食べられる?どんな栄養が含まれている?
蟹(カニ)
蟹は固い甲羅と一対のはさみ、四対の足が特徴的な甲殻類です。食用として親しまれているものも多く、日本では、たらば蟹、毛蟹、渡り蟹、ずわい蟹などが飲食店でよく目にする種類ではないでしょうか。冬の味覚の代表ともいわれ、蟹を食べることを目的に産地へ旅行する人も少なくありません。
蟹は栄養が豊富であり、アレルギーなどがなければ妊娠中に食べても問題ないといわれています。蟹には、良質なたんぱく質、ヘモグロビン生成を助けるビタミンB12、活性酵素を除去する銅、細胞の生まれ変わりに関わる亜鉛などが多く含まれています。含まれている鉄分は多くはありませんが、鉄分の働きをサポートする栄養素が多いため、貧血予防につながります。そのほかにも、葉酸やビタミンE、カリウムなどがバランス良く含まれます。
カロリーも他の魚介類に比べて高くなく、茹でたずわい蟹であれば100gあたり69kcaLほどです。殻には筋肉疲労を軽減するといわれるアスタキサンチンが含まれており、可能であれば殻ごとみそ汁などに入れて出汁をとると無駄なく栄養を摂ることができます。食中毒を避けるために、しっかり火を通してから食べたほうが安心ですよ。
海老(えび)
海老は大きなものから小さなものまで種類が豊富で、さまざまな場面で使われている食材です。子どもも大人も好きなエビフライ、お寿司では甘えび、桜海老や干し海老なども身近ですよね。海老も栄養的にすぐれた食材であり、しっかり火を通したものを適量食べる分には、妊娠中も問題ないといわれています。
海老には良質なたんぱく質の他に、カルシウム、リン、鉄などが含まれています。抗酸化作用のあるビタミンEや亜鉛も豊富です。また、海老の殻には、動脈硬化を予防するアスタキチンサンや、動物性の食物繊維であるキチン質も含まれています。
海老の尻尾も殻の一部であり、身と一緒に食べればさらに栄養面が良くなりますね。エビフライや天ぷらなど、よく火を通したものであれば、殻や尻尾も食べられますよ。
妊婦が蟹や海老に注意すべき理由は?
蟹(カニ)
妊娠中は、生の蟹には注意が必要です。蟹に限らず、生の魚介類や食肉類には、食中毒の原因となる細菌が付着している可能性があります。妊娠すると免疫力が落ちることもあり、食中毒に感染しやすくなるといわれています。とくに妊娠中に気をつけなくてはいけないのがリステリア菌とトキソプラズマです。
リステリアは河川水や家畜などに存在し、妊婦が感染すると流産や早産など、赤ちゃんに影響をおよぼすことがあります。トキソプラズマも広く自然界に存在し、猫のふんや火が通っていない肉類から検出される寄生虫です。妊婦が初めてトキソプラズマを発症した場合、赤ちゃんにも感染することがあり、水頭症や視力障害、脳内石灰化などのリスクが高まります。水も汚染対象になるため、蟹の生食は避けたほうが良いでしょう。
また水銀も微量ですが報告されています。べにずわい蟹に含まれる水銀の平均は、0.194μg/g程度です。(※1)しかし、厚生労働省は、キンメダイ、メカジキ、クロマグロなど一部の魚介類以外の水銀含有量は低く、妊婦が食べてもほとんど健康に影響をおよぼすレベルではないとしています。
海老
海老も生で食べるとトキソプラズマやリステリア菌のリスクがあります。食べるときは生食は避け、しっかりと火を通してからにしましょう。海老に関しての水銀の含有量はほとんど確認されていません。
また、海老の種類にもよりますが、白身の魚などよりもコレステロールが高いものもあるため、コレステロール値が高めの妊婦さんは注意が必要です。
厚生労働省によると輸入された海老や茹で蟹などから、腸炎ビブリオや残留動物用医薬品などが検出されています。国の輸入品に対する検査や監視体制はしっかりしていますが、気になるようなら国産にこだわってみても良いかもしれません。
妊婦は生の刺身や蟹味噌は食べてはいけない?影響は?
生ものはできるだけ避けよう
妊娠前から魚介が好きな妊婦さんは、「妊婦でもカニを食べたい!」「妊婦はえびを食べて大丈夫?」など、考えることがあるかもしれません。妊娠中に生ものを食べて食中毒になった場合、一部の菌は赤ちゃんにも感染して影響をおよぼすことがあります。妊娠初期は、赤ちゃんのさまざまな器官が形成されるときなので、妊娠に気づいたら刺身などの生ものを食べるのは避けたほうが良いでしょう。
お寿司も火が通っていないネタは避けたほうが安心です。回転寿司では蟹や海老は茹でられたものがほとんどですが、なかには「生」のものもありますから注意しましょう。しっかり火が通った天ぷらのお寿司などは安心ですが、カロリーが高いので食べ過ぎないようにしたいものですね。
蟹味噌は過剰摂取しないように
蟹味噌は蟹の脳みそではなくレバーに当たる部分です。濃厚な味が特徴ですが、プリン体やコレステロールは蟹の身よりも多く含まれています。痛風を避けるためにも、食べ過ぎには注意が必要です。
また、水産庁や厚生労働省の調査によると、蟹や海老などの甲殻類の内臓にはカドミウムが蓄積されやすいことがわかっています。カドミウムは、鉱物中や土の中など、天然に広く存在する重金属です。甲殻類以外に、貝類やお米からもカドミウムが検出されることがあります。
カドミウムを大量に長期的に摂取すると、カドミウム中毒を発症することがあります。急性のカドミウム中毒の場合、悪寒や発熱、腹痛や下痢といった症状が起こります。毎日大量に蟹味噌を食べ続けなければ悪影響をおよぼす可能性は低いですが、過剰摂取は避けたほうが良いですね。
妊娠中は蟹の食べ放題に行ける?1日にどのくらいの量なら食べてもいい?
蟹の食べ放題が目玉のビュッフェや、グルメツアーへの参加を考えている妊婦さんもいるかもしれません。妊娠中は食べ放題に行ってはいけないわけではありませんが、食べ過ぎには注意が必要です。
蟹には痛風の原因のひとつである「プリン体」が含まれています。ずわい蟹に含まれるプリン体は、100gあたり136.4mgです。一日400mg以内の摂取が目安となっているため、蟹であれば300gほど食べられることになりますね。(※2)
小さめのずわい蟹は、一杯350~500g程度なので、一日一杯までにしておいたほうが良いといえるでしょう。また、食べ放題の場合、一番気をつけなくてはいけないのが吐き気や腹痛です。
蟹は消化・吸収に時間がかかるため、食べ過ぎると下痢になることがあります。とくに妊娠中はホルモンの影響で消化器官の動きが鈍くなっている場合もあるので、食べ過ぎで消化不良になるリスクが高まります。適量をよく噛んでゆっくり食べる必要がありますね。妊娠中は身体のことを考えると、頻繁に食べ放題に行くのはおすすめできません。
妊娠中に食べられる蟹料理・海老料理は?
海老アボカドのチョップドサラダ
■材料
・むき海老
・アボカド
・トマト
・きゅうり
・調味料(マヨネーズ、しょうゆ、レモン汁、塩、胡椒)
■作り方
1.むき海老を茹でる
2.アボカド、トマト、きゅうりを1cmくらいの角切りにする
3.調味料を味を見ながら混ぜてドレッシングをつくる
■コツ・ポイント
カラフルな見た目が食欲をそそるチョップドサラダです。アボカドはレモン汁をかけておくと変色を防げます。小さくて食べやすいのでつわりのときにもおすすめです。
まろやか海老チリ
■材料
・大きめの海老
・片栗粉
・合わせ調味料(ケチャップ、ごま油、鶏がらスープの素、醤油)
■作り方
1.海老は洗って背わたを取り、片栗粉をまぶす
2.多めの油をひいて、しっかり海老を炒める
3.合わせ調味料を混ぜ合わせたものを加えてさらに炒める
■コツ・ポイント
海老は塩と片栗粉を少しまぶして洗うと生臭さが減りますよ。妊娠中は刺激物は避けたい、でも海老チリが食べたいという人は、ケチャップを使ったほんのり甘い海老チリはいかがでしょうか。
蟹の天ぷら
■材料
・蟹の剝き身
・小麦粉
・卵黄
・氷を入れた冷水
・油
■作り方
1.小麦粉に卵黄と冷水を入れて、さっくりと混ぜる
2.蟹の剥き身はキッチンペーパーなどで水分をしっかり取る
3.蟹を1にまぶし、180℃の油で揚げる
■コツ・ポイント
海老の天ぷらはよく聞きますが、蟹の天ぷらも旨味がぎゅっと閉じ込められておいしいですよ。丸ごと揚げるのは無理なので、足ごとに衣をつけてカラッと揚げましょう。剥き身をたくさんいただいたときなどに試してみてください。
蟹の炊き込みご飯
■材料
・蟹缶
・お米
・調味料(酒、醤油、かつおだし)
■作り方
1.炊飯器に洗ったお米と蟹缶を汁ごと入れる
2.調味料を入れてから、お米の量に合わせた水を入れる
3.炊いた後しばらく蒸らしてから混ぜ合わせる
■コツ・ポイント
具は蟹だけの贅沢な炊き込みご飯です。蟹缶でも十分おいしい蟹の出汁がでますよ。調味料はお米の量に合わせて加減してください。お米二合なら醤油とかつおだしは大さじ1ぐらいが適当です。
妊娠中の蟹・海老に関する体験談
赤ちゃんが生まれたらゆっくり蟹を食べられないと思い、臨月のときに蟹専門店へ行きました。胃が圧迫されて思うように食べられないかもしれないと懸念していたのですが、一品ずつゆっくり提供されるコース料理にしたおかげで、臨月にもかかわらず蟹を存分に楽しむことができました。家族ともゆったりとした時間を過ごせて良い思い出になりましたよ。
蟹(カニ)や海老(えび)は火を通して適量を食べよう
蟹や海老は栄養が豊富な食材です。殻や尻尾にも栄養が含まれているので、なるべく一緒に食べられるような調理法が良いですね。コレステロールやプリン体も多く含まれるため、過剰に食べ過ぎると健康被害が出る可能性があります。食中毒のリスクを減らすためにも、しっかり火を通してから食べるようにしましょう。蟹や海老は節度を守って、おいしく食べたいものですね。
※この記事は2024年3月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。