授乳期のタバコは赤ちゃんや母乳へ影響するの?喫煙間隔や本数、受動喫煙に注意!
授乳期にはタバコを吸ってはいけないとされていますが、具体的にどのような問題が起きるおそれがあるかご存じでしょうか。授乳期のタバコが赤ちゃんに与える影響についてご紹介します。
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目次
授乳期のタバコが赤ちゃんに与える影響
母乳量の低下
赤ちゃんが乳頭を吸って刺激をすると、「プロラクチン」というホルモンが増加します。プロラクチンが分泌されると、ママの身体は母乳を生成しようとしますが、喫煙するとプロラクチンの分泌速度が遅くなり、量も減少するという研究結果があります。
また、1日に4本以上喫煙をしているママは、喫煙をしていないママに比べて母乳の分泌量が10%から20%低下し、喫煙量が多いほど低下は著しいとも報告されています。授乳期にタバコを吸うと母乳量が減ってしまい、赤ちゃんの栄養が足りなくなってしまうおそれがあるのです。(※1)
発育を阻害
喫煙は、赤ちゃんの身体や脳の発達にも悪影響を与える可能性があります。
母乳中のニコチン濃度は、ママの血液中の2~3倍であることが知られています。1日に20本以上タバコを吸うママの母乳を飲んだ乳児が、嘔吐や下痢といったニコチン中毒を起こしたという事例もあります。(※1)母乳を通じてニコチンを大量に摂取することで、子どもの健全な発育、発達を阻害する場合があるのです。
また、タバコの煙の中で子どもを育てると、子どものIQが低くなるという研究結果も出ています。アメリカで6歳から16歳の子どもの読解力・計算力・積み木ならべ能力と、血中コチニン(ニコチンの代謝物質)濃度を調べたところ、コチニンの濃度が増加するにしたがって、知的能力の低下がみられました。(※2)
つまり、受動喫煙(たばこの先から出る煙や喫煙者が吐き出した煙を吸うこと)の量が多ければ多いほど、子どもの知能が低下する可能性があるということです。
呼吸器疾患
赤ちゃんの生活する範囲で喫煙すると、赤ちゃんはタバコの煙を吸い込んでしまいます。その結果、赤ちゃんに呼吸器系の疾患が生じる可能性があります。喫煙をしていない両親に比べ、両親がタバコを吸っている家庭で子どもが喘息などの呼吸器疾患を発症する頻度は、約1.5~2.5倍ともいわれています。(※3)
では、赤ちゃんが生活する部屋で吸わなければ良いのでしょうか。赤ちゃんへの気づかいから、ベランダや換気扇の下でタバコを吸っているという方もいますが、同室で吸っていなくても赤ちゃんへ与える影響はほとんど変わりません。タバコの煙が衣服につき、赤ちゃんのいる部屋へ持ち込んでしまう上、タバコを吸ったあとの呼気(吐く息)からも、しばらくのあいだはタバコの煙が排出され続けるからです。
中耳炎
受動喫煙が、中耳炎の発症や回復を遅らせることに影響するという研究結果もあります。(※4)タバコの煙の中には、200種類以上の有害物質と約60種類の発がん性物質が含まれているともいわれています。受動喫煙によってこれらの有害物質が子どもの身体にストレスを与え、中耳(鼓室)の綿毛運動障害などが起こり、中耳炎を引き起こしやすくなると考えられているのです。
肥満・糖尿病のリスク
厚生労働省の調査によると、乳児期に受動喫煙があった子どもは、成長後に肥満になる割合が高いことがわかっています。
生後6ヶ月の時点で親が喫煙していた子どもと、親が非喫煙者だった子どもについて、2歳6ヶ月から13歳の間継続的に調査を行ったところ、親が喫煙していた子どもの肥満率が高いことが判明しました。
肥満については食事の栄養バランスに大きく影響されるため、喫煙状況と肥満の因果関係が明確とまではいえないまでも、厚生労働省は「一定の関連がある可能性がある」と結論づけています。(※5)
行動障害を誘発
母乳を通じてニコチンを摂取することで、赤ちゃんの脈拍が増加したり、落ち着きがなくなったり、不眠になってしまったりするなどの症状が生じる場合があります。
また、フランスの国立保健医学研究所は、平均年齢約10歳の小学生について調査を行ったところ、出生前後にタバコの煙にさらされた子どもの18%が行動障害を示したのに対し、タバコを吸わない家庭の子どもが行動障害を示したのは9.7%だったと発表しています。つまり、乳児期の受動喫煙により、子どもの行動障害発症のリスクが高まる可能性があるといえるのです。
やけどや誤飲
母乳によるニコチンの摂取や受動喫煙に加え、さらに危険なのが子どものやけどや誤飲です。
タバコの火の中心部分は700℃から800℃と高温です。育児中にくわえタバコをしたり、灰皿にタバコを置いたりすると、子どもにやけどをさせる可能性が高くなります。また、ライターなどの火をつける道具を子どもが手にするという危険性もあります。
また、タバコの誤飲については、小児の薬物誤飲の中で最も件数が多いといわれています。小児がニコチンを摂取した場合、致死量は10mgから20mgほどで、およそタバコ1本分です。通常は嘔吐によってタバコを吐き出すため、重篤な症状に陥ることは少ないのですが、摂取した量によっては、急性ニコチン中毒を発症して嘔吐や下痢などの症状が現れることがあります。
タバコそのものを誤飲しなくても、吸い殻を液体の入った缶などに入れていたせいで、タバコが浸った液体を誤って飲んでしまうということも起こり得ます。タバコの成分が溶け出した液体を誤飲した場合、タバコそのものを食べたとき以上に急性ニコチン中毒発症の可能性が高くなるため、より注意が必要です。
タバコを吸って何時間後に母乳をあげられる?
母乳中のニコチンの半減期(血中の濃度が半分になるまでの時間)は、60分から90分ほどといわれています。ただし、半減期には個人差があり、ニコチンに対する感受性も子どもによって異なります。
また、ママの身体からコチニン(ニコチンの代謝物質)が完全にぬけるには、48時間から72時間もかかるといわれています。そのため、授乳中にタバコを吸うことは原則としてすすめられませんが、吸ってしまった場合は、最低でも2時間以上の時間をあけて授乳するようにしましょう。
母乳育児中はタバコをやめる?やめられないときは?
母乳育児中はタバコをやめることが原則ですが、どうしてもタバコをやめられない場合は、母乳をやめてミルクに切り替えた方が良いのでしょうか。
アメリカの小児科学会は、「喫煙は子どもの呼吸器アレルギーやSIDS(乳幼児突然死症候群)との関連があるため禁煙がすすめられる」としながらも、免疫強化などの母乳育児の恩恵が大きいため、「喫煙を理由に母乳育児をやめるべきではない」としています。
母乳育児には多くのメリットがあります。どうしてもタバコがやめられないという場合も、できるだけ授乳は継続することをおすすめします。
喫煙間隔や本数を制限しよう
母乳に含まれるニコチンや受動喫煙は、少なからず赤ちゃんに悪影響を与える可能性があります。そのため、完全に禁煙するのは難しくても、できるだけ喫煙の間隔をあけたり、本数を制限したりする努力は必要です。
喫煙は赤ちゃんだけでなく、吸っているママ本人の病気のリスクも高めます。肺がんのリスクは1日の喫煙本数や喫煙期間に比例して上昇するともいわれているので、赤ちゃんと元気に暮らしていくためにも、できるだけ喫煙の回数や本数を減らしていくようにしましょう。
専門家の力も借りて禁煙に努めましょう
ニコチンの依存性は非常に強く、禁煙するのはとても難しいといわれています。意志の力ではどうにもならない場合もあるでしょう。
現在は多くの医療機関で禁煙外来が設けられています。「自力でやめようと思ったけれどやめられない」「赤ちゃんのために良くないとわかっているけれど難しい」という方は、病院のサポートを受けて、禁煙を目指してみるのはいかがでしょうか。
禁煙外来では、医師が禁煙補助薬の処方などを行い、治療の経過を見守ってくれます。禁煙治療にかかる値段は、処方される薬などによって異なりますが、およそ2万円程度とされています。
赤ちゃんのために、そしてママの健康を守るためにも、ぜひ禁煙を心がけてくださいね。