エナメル質形成不全の原因や特徴は?治療はできるの?虫歯との違いは?
歯が生え始めた赤ちゃんや、歯の生え変わり時期の子どもがいると、子どもの歯の変色や虫歯の可能性が気になることでしょう。生え始めの歯やしっかり歯磨きをしている歯が汚れて見える場合は、虫歯ではなくエナメル質形成不全という病気の可能性があります。ここではエナメル質形成不全の特徴や原因、治療法を解説します。
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目次
エナメル質形成不全とは?
健康な歯の表面は、人間の身体の中で一番固いエナメル質でコーティングされています。エナメル質形成不全とは、何らかの原因で歯のエナメル質が正常に形成されない症状のことです。
正常な歯に比べて歯の表面が1枚薄い状態であることから、エナメル質形成不全の歯は虫歯になりやすいといえます。赤ちゃんの前歯が生え始めから欠けている場合や、白濁してまだらになっている(斑状歯)場合には、エナメル質形成不全が疑われます。
エナメル質形成不全の特徴とは?
エナメル質形成不全は、下記のふたつの症状に大別されます。
・エナメル質石灰化不全
歯の白濁・白斑や黄斑、褐色斑など石灰化の異常(歯の質の異常)が見られるもの
・エナメル質減形成
歯のエナメル質の厚さが正常なものに比べて薄かったり、歯が部分的に欠けて見えたりするようなもの
エナメル質形成不全の症状は左右対称に出ることが多く、エナメル質減形成と石灰化不全が混在している場合もあります。一般的に、エナメル質石灰化不全の場合は軽度、エナメル質減形質の症状のある場合は重度のエナメル質形成不全と考えられています。
エナメル質形成不全と虫歯との違い
虫歯と見間違えてしまうものもありますが、エナメル質形成不全の歯は虫歯とは異なるものです。虫歯では、まずエナメル質が溶かされ、さらに悪化するとエナメル質の下の象牙質に進行し、茶色や黒く見えるようになります。
一方で、エナメル質形成不全の歯は、生えて間もないときから表面のコーティングが薄かったり石灰化していたりするので、歯が虫歯の細菌に蝕まれやすい状態です。ただし、エナメル質形成不全の歯はひとたび虫歯にかかると進行が早いため、日ごろから丁寧なケアが必要です。
エナメル質形成不全と診断された場合や、赤ちゃんや子どもの歯に心配がある場合には、こまめに小児歯科に通院すると良いでしょう。虫歯になっていないかチェックをしてもらうとともに、フッ素を塗る処置をしてもらえますよ。
エナメル質形成不全の原因とは?
エナメル質形成不全の原因は、はっきりと判明していないようです。一般的に考えられているエナメル質形成不全の原因は下記の通りです。
乳歯のエナメル質形成不全
一般的に乳歯のころのエナメル質形成不全の原因には、主に下記のようなことがあげられます。
・妊娠時にママが飲んだ薬の影響
・妊娠時のママの栄養状態
赤ちゃんの歯の芽は妊娠の初期に作られるため、乳歯にエナメル質形成不全の状態が見られると、妊娠初期にママが摂取した薬などの影響の可能性があると考えられています。赤ちゃんが早産で生まれた場合やつわりなどによる栄養不足などがある場合にも、エナメル質形成不全が起こりやすいと考えられているようです。
しかし、これが確実な原因と判明しているわけではなく、まれに遺伝という要素も考えられます。乳歯のときのエナメル質形成不全は、保護者がしっかり対応することで、腐蝕や虫歯といった悪化を避けられるケースがあります。
永久歯のエナメル質形成不全
永久歯のエナメル質形成不全の原因としては、下記があげられます。
・乳歯のときの虫歯
・乳歯のときの歯茎や歯の外傷
・高熱や発疹を伴う病気の影響
・遺伝
乳歯のときに虫歯になっても後で永久歯に生え変わるため、歯みがきなどのケアを頑張らなくてもよいと考えている保護者もいるようです。しかし、乳歯が虫歯になり、膿がたまったり神経が腐ったりするなどの症状が現れると、永久歯のエナメル質形成に影響を与えます。乳歯が生えたら、丁寧に歯磨きをするように心がけましょう。
乳歯のときに、歯茎や歯など、口元を強く打つような怪我をすると、永久歯のエナメル質が破壊されてしまうことがあるようです。1歳前後の高熱や発疹なども永久歯のエナメル質形成に影響することがあると考えられています。
乳歯が生えている時期に、こういったことがあった場合は、かかりつけの歯科医に相談できると良いですね。永久歯への生え変わり直後から注意深く診察しておけば、永久歯がエナメル質形成不全であった場合、症状に合わせて処置してくれるでしょう。
エナメル質形成不全が多いのは乳歯?永久歯?
エナメル質形成不全は、乳歯でも永久歯でも起こりうるものです。乳歯をケアすることや、乳歯が生えている時期にバランスの良い食事を心がけることで、永久歯のエナメル質形成不全を予防できるとされています。
永久歯がエナメル質形成不全になるのを防ぐためにも、赤ちゃんに乳歯が生えたら、歯磨きをしたりデンタルフロスを使ったりするなどの口内ケアを徹底しましょう。
エナメル質形成不全の治療法は?赤ちゃんも可能?
フッ素塗布
赤ちゃんや子どもの歯にフッ素を塗布することに対してはさまざまな意見があります。エナメル質形成不全の症状がある場合、フッ素がエナメル質と同等の働きをして虫歯を予防する効果が期待できます。
3ヶ月~半年の間隔で定期的にフッ素塗布を繰り返すことは、歯の表面の再石灰化を促します。自宅でできるフッ素ジェルなどを使ったケアとあわせ、歯科でもフッ素処置を受けましょう。
一般的には、フッ素の塗布は1歳前後から始めると良いとされています。ただし、フッ素塗布の開始年齢に特別な決まりはなく、歯が生えてきたばかりの赤ちゃんにも施すことができます。
赤ちゃんの歯がエナメル質形成不全か気にかかる場合などは、歯が生え揃う前でも小児歯科で判断を仰ぐと良いでしょう。同時に、フッ素を使い始める時期などを相談すると良いですね。
ホワイトニング
特に永久歯の場合、エナメル質の石灰化不全や歯の変色などの理由から、歯のホワイトニングを希望するママもいるでしょう。しかし、子どもの歯にホワイトニングをする影響についてははっきりとした研究結果がないため、15~18歳以上になるまで行わないという歯科医がほとんどのようです。
歯のマニキュアと呼ばれる歯を白く見せるコーティング剤もあり、子どもにはこちらを使うことのほうが多いとされます。ただし、歯のマニキュアは剥がれやすいため、歯の表面を少し溶かした上からマニキュアを塗布するという処置をするのが一般的です。
こうした審美歯科に関わる部分の治療は、医療費助成を受けられる幼児や子どもであっても治療費がかかることがあります。経済的な面も含めて歯科医と相談しながら治療を進めていきましょう。
被せもので歯の保護をする
永久歯に生え変わる6歳前後から、奥歯のさらに奥に臼歯(きゅうし)という歯が生えてきます。ほかの歯は正常な子どもでも、この臼歯の表面に穴が開いていたりでこぼこしていたりと、エナメル質形成不全の症状があることが多いようです。
臼歯がエナメル質形成不全の場合、虫歯になる確率がとても高く、進行も早いでしょう。歯の表面にプラスチック樹脂や金属の被せものをして保護をするような治療をすすめられる場合があります。前歯などに重度のエナメル質形成不全の症状が見られる場合にも、同様の処置をする場合があります。
乳歯をケアして健康な永久歯を
生えたばかりの赤ちゃんの歯に変色や変形といった気になることがあれば、小児歯科を受診しましょう。乳歯がエナメル質形成不全であっても、日ごろの歯のケアと栄養バランスの良い食事を早期から心がけることで、永久歯のエナメル質形成不全を防ぐことができます。小児歯科医からは治療や処置だけではなく、その子どもにあった歯のケアについてアドバイスを受けられるでしょう。