【わかりやすく解説】令和5年4月に施行「こども基本法」とは?なにが変わるの?
1989年に国連総会で子どもの権利条約が採択されてから30年以上が経過しています。このたび日本でも、子どもの権利を主体とした法律が2023年に制定されました。こども家庭庁の発足に合わせて施行された「こども基本法」には、どのような内容が盛り込まれているのでしょうか。概要と目的についてわかりやすく解説します。
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目次
「こども基本法」とは?
概要
「こども基本法」は2022年(令和4年)6月の国会で成立し、2023年(令和5年)4月に施行された新しい法律です。すべての子どもが自立した個人として権利を守られ、平等に幸せな生活が送れるようにと考えた「こども施策」を総合的に推し進めるために制定されました。
こども基本法では「こども」の定義を「心と身体の発達の過程にある人」としており、「こども施策」を「こどもに関する施策及びこれと一体的に講ずべき施策」としています。これは、一定の年齢による上限を設けず、子どもの成長や子育て支援はもちろん、教育や雇用、結婚など、若者に関する取り組みを含むことを示したものです。
国や地方公共団体などがこども施策を行う際に従うべき「基本理念」も定めました。こども施策について、国民が関心と理解を深めることを努力義務としていることも注目すべき点といえるでしょう。こどもの意見の反映や、こども大綱の策定、こども政策推進会議の設置についても盛り込まれています。
制定された背景・目的
日本はこども基本法制定以前から児童福祉法や児童虐待防止法、母子保健法、教育基本法など、子どもに関係する法律に基づき各種の施策を行ってきました。しかし、それでも急速な少子化や深刻な児童虐待に歯止めがかからない状態が続いています。
その原因のひとつとして指摘されているのが、第44回国連総会において採択された「子どもの権利条約」を遵守するための基盤となる法律が設けられていないことです。たとえば児童福祉と教育のように省庁をまたいだ課題が先送りされたり、施策の整合性がとれなかったりといった新たな問題が生まれています。
こうした状況を踏まえて制定されたのが、こども基本法です。この法律を各省庁でさまざまに行われてきたこども施策の共通基盤とすることで、子どもの利益を最優先に考えた施策が「もれなく」「強力に」実施されることを目指しています。
こども基本法の6つの基本理念
こども基本法の施行と同時期にこども家庭庁が発足し、こども施策がよりスピーディーに、充実した内容で推進していけると期待されています。
こうしたこども施策の原則として規定しているのが、こども基本法に掲げる6つの基本理念のもとにこども施策を行うことです。これらは日本国憲法や児童の権利に関する条約を踏まえ定められています。
子どもの基本法の6つの基本理念 |
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1.すべてのこどもは大切にされ、基本的な人権が守られ、差別されないこと。 |
2.すべてのこどもは、大事に育てられ生活が守られ、愛され、保護される権利が守られ、平等に教育を受けられること。 |
3.年齢や発達の程度により、自分に直接関係することに意見を言えたり、社会のさまざまな活動に参加できること。 |
4.すべてのこどもは年齢や発達の程度に応じて、意見が尊重され、こどもの今とこれからにとって最もよいことが優先して考えられること。 |
5.子育ては家庭を基本としながら、そのサポートが十分に行われ、家庭で育つことが難しいこどもも、家庭と同様の環境が確保されること。 |
6.家庭や子育てに夢を持ち、喜びを感じられる社会をつくること。 |
こども基本法でなにが変わるの?
「こども家庭庁」の設置
こども基本法は附則において、こども家庭庁設置法を定めています。これにより、内閣府の外局としてこども家庭庁が設置され、子どもが自立した個人としてひとしく健やかに成長できる社会の実現に向け、体制整備や業務の移管・共管が進められています。
また、こども家庭庁は関連省庁や自治体、事業主に対して指揮監督権を持ち、法令違反があった場合や政策が不十分な場合には処分や勧告が行えます。こども家庭庁の強いリーダーシップのもと、こども施策が確実に実行されることを期待したいものです。
「こども大綱(たいこう)」の策定
こども基本法では「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」「子供の貧困対策に関する大綱」を一元化し、そこに必要なこども施策を盛り込んだ「こども大綱」を策定することとしています。
もととなる大綱のうち「少子化社会対策大綱」は「希望出生率1.8」の実現に向け、男女が互いの生き方を尊重しつつ、結婚、妊娠・出産、子育てに希望を見出せる社会をつくることを目標にしたものです。「子供・若者育成支援推進大綱」はすべての子どもと若者が居場所を得て、健やかな成長と活躍する社会の実現を目指して策定されました。
そして「子供の貧困対策に関する大綱」には貧困の連鎖を断ち切り、生まれ育った環境に左右されることなく健やかに育成される環境を整備することが明記されています。これらをひとつにしたこども大綱ができることで、こども施策を幅広く総合的に推進できるようになります。
※大綱(たいこう)…国の基本的な方針や重要なことについてきめたもの。
こども基本法をきっかけに子どもの権利について考えよう
子どもの権利条約では1~40条の中で「差別の禁止」「子どもの最善の利益」「生きる権利・育つ権利」「子どもの意見の尊重」など、さまざまな権利を定めています。日本は1994年に締約国となりましたが、条約に基づいた対応に遅れがあり、2019年に国連から勧告を受けました。
こども基本法の施行によりこうした遅れを払しょくし、こども施策が確実に実行されることに期待が集まります。同時に、子どもや若者が将来にわたってしあわせな生活を送れる社会となるよう、一人ひとりが意識していくことが大切です。
※この記事は2023年4月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。