子宮内膜増殖症とは?症状や原因、検査、治療・手術について解説
子宮内膜が過剰に増殖する「子宮内膜増殖症」という病気は、がんになるリスクがあることを知っていますか。女性ホルモンによる子宮内膜への作用は妊娠のためには欠かせませんが、ときに病気の原因になることもあるのです。子宮内膜増殖症の症状や原因、検査・治療・手術の方法を知り、兆候を見逃さないように準備しておきましょう。
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子宮内膜増殖症とは?
子宮内膜増殖症は子宮内膜が過剰に増殖する病気で、40代以降の女性に多く発症するといわれています。子宮以外の場所に子宮内膜ができる「子宮内膜症」とはまったく異なる病気です。子宮内膜増殖症は細胞に「異型」があるかどうかによって以下の2種類に分類されます。種類によって治療法やがん化するリスクが異なるため、両方について確認しておきましょう。
異型なしの子宮内膜増殖症
細胞がほぼ均一な大きさできれいに配列している(異型なし)の場合はそのまま「子宮内膜増殖症」と呼ばれます。異型がない場合は異型があるときと比べてがん化のリスクが低く、約80%は自然に病変が小さくなっていくといわれています。そのため異型なしの子宮内膜増殖症が見つかった場合には、しばらくは経過観察をするにとどまります。
異型ありの子宮内膜増殖症
細胞の大きさや形が不均一で配列が乱れているもの(異型あり)の場合は「子宮内膜異型増殖症」と呼ばれます。異型がない場合と比べるとがん化して「子宮体がん」に発展するリスクが高いため、異型があると診断された場合には、がんに進行していないかどうかをまずは検査します。閉経後には特にがん化のリスクが高くなるでしょう。治療は手術を行うのが一般的です。
子宮内膜増殖症の症状は?
子宮内膜増殖症になると、どのような症状があらわれるのでしょうか。兆候に早く気づいて検査を受けにいきたいですね。
不正出血(生理でない性器からの出血)
生理でないのに性器から出血してしまう「不正出血」が起こることがあります。普段から自分の生理周期を把握するように心がけ、異常な出血にすぐに気づけるようにしておきましょう。
月経量の増加(過多月経)
子宮内膜増殖症になると、生理の経血が多くなることが考えられます。女性ホルモンのはたらきで厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちることによって生理が起こるため、子宮内膜が増殖していると剥がれ落ちる子宮内膜の量も多くなる可能性があるのです。月経量が増えすぎると、貧血や動悸があらわれることもあります。
子宮内膜増殖症の原因は?
子宮内膜増殖症の原因は、エストロゲン(卵胞ホルモン)と呼ばれる女性ホルモンが子宮内膜を長期的に刺激し続けることであると考えられています。
エストロゲンは、女性の美容や健康にとって欠かせない女性ホルモンであると同時に、受精卵が着床できるように子宮内膜を厚くする役割を担っています。しかし「プロゲステロン(黄体ホルモン)」と呼ばれる女性ホルモンの分泌量が少ない状態でエストロゲンばかりが分泌され、子宮内膜を刺激し続けると、子宮内膜の過剰な増殖につながってしまうことがあるのです。
エストロゲンの刺激が過剰になってしまう原因としては、以下の例があげられます。
ホルモン治療によるエストロゲンの長期投与
更年期障害の治療などにおいてエストロゲン(卵胞ホルモン)と呼ばれる女性ホルモンを長期的に投与することが子宮内膜増殖症の原因となることがあります。そのためホルモン治療を行うときには、エストロゲンとプロゲステロンのバランスがとれるようにエストロゲンの投与量を加減したりふたつのホルモンを同時に投与したりしながら、調整していく必要があります。
無排卵周期症
排卵されていないのに生理のような出血がある「無排卵周期症」も、子宮内膜増殖症につながることがあります。通常は卵胞が排卵後に変化して「黄体」となり、黄体からプロゲステロンが分泌されますが、排卵が起こらないと黄体ができないため、プロゲステロンも不足することになります。そのためエストロゲンだけが子宮内膜を刺激し続けることになり、子宮内膜が異常に増殖してしまうのです。
黄体機能不全
プロゲステロンを分泌する「黄体」の機能が低下してしまい、生理不順や高温期の短縮といった症状があらわれる「黄体機能不全」も、子宮内膜増殖症の原因となりうる病気です。黄体機能不全の場合においても、プロゲステロンの分泌が不足した状態でエストロゲンが子宮内膜を刺激し続けることで、子宮内膜が増殖してしまう危険性があります。
多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群(PCOS)は卵胞が発育に時間がかかり、排卵しにくくなる病気です。月経が起こらない「無月経」や月経の頻度が少なくなる「稀発月経(きはつげっけい)」、無排卵周期症といった月経異常がみられる点が特徴で、エストロゲンの分泌量に対してプロゲステロンの分泌量が少ないために子宮内膜増殖症につながることがあります。
エストロゲン産生腫瘍
エストロゲンを産生する悪性の腫瘍が原因で、血中のエストロゲンの値が上昇し、子宮内膜が増殖してしまうことがあります。エストロゲンを産生する腫瘍としては卵巣にできる「顆粒(かりゅう)膜細胞腫」があげられます。顆粒膜細胞腫ができるとエストロゲンの分泌量が増えるため、閉経前後の女性では胸や性器が大きくなるといった成熟期のような症状があらわれ、思春期前の女子では月経が早く訪れる、胸や陰毛の発育が早い、といった症状があらわれます。
肥満
肥満や高血圧、糖尿病の人は、子宮内膜増殖症になるリスクが高いと考えられています。こうした体質・病気を持っている人に不正出血がみられる場合には、検査を受けてみることをおすすめします。
ストレスによるホルモンバランスの乱れ
子宮内膜増殖症は、エストロゲンとプロゲステロンというふたつの女性ホルモンのバランスが崩れ、エストロゲンの分泌量に対してプロゲステロンの分泌量が少なくなってしまった場合に発症しやすい病気です。ストレスや不規則な生活、食生活の乱れが原因で脳や神経のはたらきが鈍ってしまい、女性ホルモンが正常に分泌されなくなると、最終的に子宮内膜増殖症につながる場合があるかもしません。
子宮内膜増殖症の検査とは?
不正出血といった子宮内膜増殖症の症状が出た場合、病院ではどのような検査を行うのでしょうか。子宮内膜増殖症の検査では、経腟超音波検査や細胞診、組織診を行って子宮内膜の細胞・組織が増殖しているかどうかを確かめます。それぞれどのような検査なのでしょうか。
経腟超音波検査
子宮内膜の厚さや状態を確認するため、超音波(エコー)が出る棒状の器具を腟から挿入し、子宮の状態をモニターに映す検査を行うことがあります。この検査では痛みを伴うことはめったにありません。子宮内膜増殖症の疑いがあると診断されると、細胞診や組織診に進む場合が多いでしょう。
子宮内膜の細胞診・組織診
経腟超音波検査で異常が疑われる場合は、専用のチューブやブラシで子宮内膜の細胞を採取し、染色液をつけて顕微鏡で観察する「細胞診」や、病変があると考えられる部分の組織を採取して同様に観察する「組織診」を行うことになります。どちらの検査も痛みや出血を伴うことがあるでしょう。
これらの検査によって子宮内膜の増殖が確認されると、診断が確定します。異型の子宮内膜増殖症の疑いがある場合には、子宮内膜全体を削り取って検査を行うこともあります。
子宮内膜増殖症の治療・手術の方法は?
子宮内膜増殖症と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。またどのような手術を行う可能性があるのでしょうか。異型がない場合とある場合それぞれの治療方法について確認しましょう。
異型なしの子宮内膜増殖症の治療法
異型なしの子宮内膜増殖症は、およそ80%は自然に収まっていくため、最初は治療を行わずに経過観察となります。経過観察を行っても病変が消えない場合には、MPA(酢酸メドロキシプロゲステロン)というホルモン剤を使用して治療を行います。
MPAはプロゲステロン(黄体ホルモン)の作用がある製剤で、MPAを投与することによってエストロゲンのはたらきを抑えることができる可能性があります。異型がない場合には成分の配合量が少ない低用量のものから服用する場合が多いでしょう。
ただし副作用として血栓症のリスクがあることが指摘されているため、脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞といった血栓性の病気になったことがある人は使用することができません。また高血圧や糖尿病、高脂血症や肥満の人は、慎重に服用する必要があります。
異型ありの子宮内膜増殖症の治療法
異型ありの「子宮内膜異型増殖症」であると診断された場合には、まずは子宮体がんでないかどうかを確かめる必要があります。そのために麻酔をして子宮内膜全体を削り取る「子宮内膜全面掻爬(そうは)」と呼ばれる処置を行います。ここで子宮体がんが見つかった場合には子宮体がんの治療を行い、子宮体がんでない場合は子宮内膜異型増殖症の治療を進めることになるでしょう。
子宮内膜異型増殖症の治療では、子宮を全摘出する手術を行うのが一般的です。ケースによっては卵巣や卵管を切除することもあるでしょう。ただし妊娠の希望がある場合には、子宮を摘出せずに高用量のMPAを投与したり、検査と治療を兼ねて全面掻爬を定期的に行ったりします。
子宮内膜増殖症は進行する前に病院へ
子宮内膜増殖症は、自然に治る場合もありますが、子宮体がんに進行する場合もあるためあなどれない病気です。不正出血や過多月経といった子宮内膜増殖症の兆候となる症状を放っておかず、できるだけ早く病院で検査を受けましょう。エストロゲンを投与する治療を行っている人や肥満体質の人、無排卵周期症・黄体機能不全をわずらっている人など、子宮内膜増殖症のリスクが高い人は特に注意してくださいね。