卵巣が腫れる原因は?考えられる病気と症状、治療について

卵巣は卵子を作り出す器官であり、女性ホルモンを分泌する場所でもあります。女性の身体にとって極めて重要なこの器官は繊細で、いろいろな原因によって腫れることがあります。その原因や原因から考えられる病気について、ご説明します。

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この記事の監修

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産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 卵巣ってどんな臓器?
  2. 卵巣の腫れにはどんなものがある?
  3. 卵巣が腫れるとどんな症状があらわれる?
  4. 卵巣が腫れたときに受ける診察は?
  5. 卵巣の腫れは治療が必要?
  6. 卵巣が腫れる主な類腫瘍の症状
  7. 腫瘍性の卵巣の腫れは大きく3つ
  8. 身体からのサインに注意して定期的な検診を受けよう
  9. ままのて限定!無料相談でプレゼントがもらえる
  10. あわせて読みたい

卵巣ってどんな臓器?

卵子を作る場所

卵巣は子宮に付属している臓器で、親指ほどの大きさのものが左右にそれぞれひとつずつぶら下がっています。生後すぐの卵巣の中には、卵子のもとになる「原子卵胞」が約200万個存在しており、思春期を迎えるころまでには30~40万個ほどに減少します。

思春期に生殖機能が発達すると、原子卵胞はホルモンの影響を受けて成熟卵胞へと成長を始めます。約28日間の生理周期ごとに、左右どちらかの卵巣で「排卵」が起こるようになるのです。通常、1回の排卵で排出される卵子はひとつ。排卵されなかった卵子は体内に吸収され、成熟卵胞になれなかったものは退行していきます。

こうして原子卵胞は徐々に減り続け、思春期から閉経を迎えるまでに作られる卵子はおよそ400~500個になります。その間に、卵巣はエストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンも分泌し、月経周期や妊娠、身体の代謝といった機能を助けます。卵巣は排卵と女性ホルモンの分泌というふたつの大切なはたらきを担っているのです。

別名は沈黙の臓器

卵巣がある子宮のに奥は、腹腔という空洞が広がっています。卵巣の周りにはスペースがあり、余裕がある状態です。そのため、卵巣や卵管が多少腫れたり肥大化したりしても、周囲の臓器をあまり圧迫することがないのです。

結果的に病気があっても痛みなどが症状としてあらわれにくく、「沈黙の臓器」と呼ばれています。とはいえ、卵巣に見られる病気がないかというとそうではありません。むしろ、臓器の中でもさまざまな疾患があらわれやすい場所です。卵巣は排卵やホルモンの分泌のために働いているので、サインを見逃さないようにしたいですね。

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卵巣の腫れにはどんなものがある?

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月経周期による生理的な腫れ

排卵期になると、3~4cmほどの大きさの卵巣の中で、卵子が入っている卵胞は約2cmのサイズにまで成長しています。やがて排卵日となり、卵子は卵巣の膜を破って外に飛び出します。排卵が起こると不正出血や排卵痛をみとめることがあり、診察で超音波検査を行うと、左右どちらかの卵巣が腫れていることがあるのです。

これは月経周期に伴う生理的な腫れで、ほとんどの場合が時間の経過とともにもとに戻ります。腫瘍や炎症などがあり治療が必要な状態でなければ、そのまま様子を見ることが大半です。

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かたまりができる類腫瘍

卵巣は「腫瘍の巣窟」ともいわれるほど、多種多様な「しこり」ができる臓器です。しこりが原因で卵巣が腫れているケースでは、しこりが何に由来するものなのか鑑別することがとても重要になってきます。

しこりは大きく分けると2つに区別することができます。ひとつは液体などを含んだ「かたまり」ができる「類腫瘍」です。類腫瘍は子宮内膜が増殖し、卵子が成熟するという卵巣機能が働く過程で作られることが多く、月経周期の異常から発見されるケースがあります。ある時期が過ぎれば消失してしまうことが多いのが特徴です。

細胞の異常が起こる腫瘍

類腫瘍と区別されるしこりが「腫瘍」です。腫瘍は細胞が異常に増殖することで作られます。卵巣腫瘍は、腫瘍の内容・状態によって「充実性腫瘍」と「嚢胞性腫瘍(のうほうせいしゅよう)」で分けられます。嚢胞性腫瘍は「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」とも呼ばれ、比較的目にする機会が多い病態です。

卵巣腫瘍のうち、80~90%の高い割合でみられるのが嚢胞性腫瘍、いわゆる卵巣嚢腫です。卵巣嚢腫では、袋状の腫瘍が液体で満たされており、そのうちの90%は良性の腫瘍といわれています。一方で、卵巣腫瘍の残り10~20%は固形成分が含まれる充実性腫瘍の形態をとりますが、こちらはほとんどの場合が悪性で、80%がガンと呼ばれるものとなります。

つまり、卵巣腫瘍には卵巣嚢腫、充実性腫瘍があり、その中で良性と悪性、さらには良性と悪性の中間の性質を持つ境界悪性腫瘍に分類されます。多くは良性の卵巣嚢腫ですが、悪性の充実性腫瘍もまれにみられます。治療を進めていくうえでも、腫瘍がどれにあてはまるのか正確に診断することが非常に重要なのです。

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卵巣が腫れるとどんな症状があらわれる?

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下腹部痛

卵巣は症状があらわれにくい臓器とはいえ、しこりが大きくなったりほかの臓器に影響をおよぼしたりすると痛みが出てきます。たいていの痛みは下腹部にで出ますが、ときとして腰にも痛みを感じます。排便痛や性交痛としてあらわれることもあります。

痛みの程度は人によってさまざまで、多少痛む程度のこともあれば、痛みで寝込んでしまうほどのこともあります。月経期や排卵期に痛みが出るときは、卵巣が腫れている可能性も考えられます。痛みが出たときはすでに症状が進行していることも考えられるので、なるべく早めに医療機関を受診してください。

急激な痛み

卵巣が腫れているという自覚症状がないまま、下腹部に急激な痛みがあらわれるケースでは、子宮とつながっている靭帯がねじれてしまう「卵巣嚢腫茎捻転(らんそうのうしゅけいねんてん)」があります。耐えられないほどの激痛で、ショック症状を起こす人もいます。

一時的にねじれが戻ると痛みは消えてしまいますが、茎捻転は最悪の場合、卵巣が壊死してしまう病気です。油断せずに、医師に相談するようにしましょう。

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不正出血

卵巣にできた腫瘍が原因で、器質的な出血が起こります。しかし、もともと性器からの出血は、生理以外すべて不正出血とみなされるものです。出血だけでは腟からの出血なのか、子宮からの出血なのか判別できません。

ホルモンバランスの影響や排卵期、性交時にも不正出血はみられることから、生理以外の出血があった場合は、医療機関を受診して原因を特定することが大切です。

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腹部の膨満感・しこり

痛みや出血もなく、静かに肥大化した卵巣は5~6cm、ときには10cmもの大きさになっていることがあります。太ったわけではないのに、下腹部がポッコリしていたり、わき腹辺りにしこりがあったりしたら、腫瘍が隠れている可能性があるため注意が必要です。

呼吸困難

卵巣の腫れがあらわれる病気の中には、重症のものになると呼吸困難を引き起こすことがあります。呼吸困難は、腹水から胸水におよんで出てくる症状ですが、このころには大きくなった卵巣が膀胱や腸を圧迫するため、便秘や頻尿に悩まされることも増えてきます。発熱やだるさなど、身体に明らかな不調があらわれることから、一刻も早い受診が求められます。

卵巣が腫れたときに受ける診察は?

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医師による問診

はじめに、いつごろから症状が現れているか、月経周期や初潮の時期、妊娠・出産、流産などの有無、既往症などを聞かれます。家族や親族の病歴が聞かれることもあります。月経周期は過去2,3回分のデータがあると診察の際の大きな目安となるので、カレンダーなどにメモをしておくと良いでしょう。

腟から内部の状態に触れる内診

診察台に乗っての内診も大切なステップです。腟から指を入れ、内と外から押して痛みの具合を見たり、腫瘍の大きさや硬さを確認したりします。

内診はカーテン越しに行うとはいえ、診察台に上ることに抵抗感を示す人も少なくありません。気が重いと感じるときは、パンツスタイルよりもスカートの着用がおすすめです。スカートならば着脱するのは下着だけで済むため、すべてを脱がなくてはいけないパンツよりも気持ちがいくぶん楽に感じるかもしれません。

また、内診では出血することもあります。下着が汚れることを防ぐために、生理用のナプキンを持参すると安心です。

超音波検査

画像による診断は腫瘍の特定に有効です。超音波検査にはお腹の上から調べるものと、腟の中に器具を入れて調べるものがありますが、通常は経腟によって診断が行われます。腫瘍があると認められた場合は、腫瘍マーカーによる検査からMRIやCT、PETによる精密検査へと進みます。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーは腫瘍や非がん細胞から作られる物質で、腫瘍の種類や性質を特定するのに役立ちます。検査では血液を採取し、血液中にあらわれる代表的な成分について調べます。血液検査だけで済むので、ほかの検査と比べて負担が軽いのが特徴です。

一方で、腫瘍があっても陰性となる場合や、悪性腫瘍でなくても反応してしまうケースがあるのも事実です。そのため、腫瘍マーカー検査は指標のひとつとしてそのほかの検査と組み合わせるのが一般的です。

卵巣の腫れは治療が必要?

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腫瘍の種類によって異なる

治療が必要かどうかは、卵巣の腫れが起こっている原因によって異なります。月経周期に伴う生理的な現象であれば、ほとんどの場合は治療を必要としません。類腫瘍では悪性化や感染症、破裂などの可能性を総合的に判断し、薬物療法か手術による治療が行われます。

卵巣腫瘍と診断された場合は、良性でも原則として手術を行うのが一般的です。これは、摘出した腫瘍の組織を検査してみないと腫瘍が良性なのか悪性なのか判定できないからです。しかし、手術中に良性か悪性か判断できるような所見がみられたときは、それに沿った手術に切り替える措置がとられます。

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大きい腫瘍や痛みがあると手術に

悪性腫瘍に対する治療の基本は、手術で腫瘍を除去することです。その後、抗がん剤などによる治療が施されます。また、類腫瘍や良性腫瘍でも治療方針として手術が選択されることがあります。例として、今後悪性化が懸念されるもの、5~7cm以上の大きさがあるもの、茎捻転が起こっているもの、痛みや癒着の症状があらわれていると、手術となることが多くなります。

手術の目的は腫瘍を摘出することです。しかし、腫瘍のみを摘出するのか、卵巣や卵管などの付属器も摘出の対象となるのか、また術式を開腹にするのか、腹腔鏡下で行うのかは状況によって判断します。

若い女性であれば、今後の妊娠の可能性を考慮することも術式を決める材料のひとつとなります。できれば卵巣を残して腫瘍のみの切除としたいところですが、難しい場合は卵巣ごと摘出することも否定できません。しかし、卵巣は左右にひとつずつある臓器のため、どちらかひとつを残すことができれば、卵巣機能の維持は可能です。

病状や身体所見は患者一人ひとりで違うため、手術をするタイミングや摘出箇所、術式については、一様にこれが良いとはいい切れないのが本当のところです。わからないことや不安なことは医師に伝え、しっかりと納得したうえで手術に臨むようにしましょう。

経過観察になることも

卵巣にできた腫瘍は、一定の条件を満たしていると経過観察になることがあります。目安となるのは、自覚している症状や年齢、腫瘍のサイズなどです。経過観察になる基準は明確に定まっているわけではありませんが、一般的に嚢胞性腫瘍では6~8cm、充実性腫瘍では5cmが経過観察か手術をするかを分けるラインとなっています。

経過観察といっても、絶対に手術をしないとはいえません。定期検査で腫瘍が大きくなっていたり悪性化の所見が認められたりすると、手術に踏み切ることがあります。

卵巣が腫れる主な類腫瘍の症状

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卵胞嚢胞

通常の成熟卵胞は、排卵すると黄体化し、排卵しなかった卵胞は退化していくものです。しかし、何らかの原因で卵胞の中に液体がたまると、4~5cmほどの大きさに肥大化することがあります。これを卵胞嚢胞といいます。時間の経過とともに消失するもので、特に治療の必要はありませんが、茎捻転を起こすと手術する場合もあります。

黄体嚢胞

排卵した後の卵胞は黄体となり、女性ホルモンのプロゲステロンを分泌しますが、まれに中に液体がたまって黄体嚢胞を形成します。無症状なうえに妊娠初期にできることが多く、妊婦健診で初めてその存在に気付くケースもあります。安定期に入る16週頃までには消えており、治療の必要はないことがほとんどです。

表層上皮封入嚢胞

卵巣の表面は表層上皮という膜に覆われています。排卵時はこの膜を破って卵子が飛び出します。破れた場所が卵巣の内部に取り込まれ、袋状になったところに液体がたまると嚢胞となります。

嚢胞自体は無症状で問題のないものです。しかし、良性もしくは悪性の良性に変わることもしばしばあるため、定期的に経過を観察する必要があります。

チョコレート嚢胞

チョコレート嚢胞は子宮内膜が卵巣にできてしまった状態で、中身はチョコレートのように茶色くドロッとした古い血液で満たされているため、こうした名前がつけられました。

激しい月経痛や周囲との癒着による不妊症に悩まされるケースがあり、悪性化するおそれもあるため、多くは腹腔鏡手術によって嚢胞を取り除きます。手術をしても再発するリスクがあることから、定期的に医療機関で健診を受けるようにしましょう。

多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣の中に2~9mmの大きさの卵胞が10個以上発生し、卵巣がやや大きくなる病気です。画像診断で多数の卵胞嚢胞があり、排卵障害を認め、血液検査で排卵障害やホルモンの分泌異常が認められると多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。

排卵が起こらないため、希発月経や無排卵月経、無月経の要因となります。不妊症の治療や子宮体がんの予防の観点から、排卵誘発剤やホルモン療法によって定期的に月経を起こす治療が行われます。

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卵巣過剰刺激症候群

卵巣過剰刺激症候群は、排卵誘発剤を使用した際の副作用で発症します。排卵誘発剤で卵胞が過剰に刺激されると、卵巣が腫れて腹水や胸水がたまり、腹部膨満感や嘔吐などの症状となってあらわれるのです。

重症化すると血栓症や肺水腫、腎不全などの重篤な病気を合併する可能性もあります。排卵誘発剤を使うと必ず発症するわけではありませんが、副作用があることを十分に理解し、不調があらわれたら医師に伝えるようにしましょう。

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腫瘍性の卵巣の腫れは大きく3つ

表層上皮性・間質性腫瘍

表層上皮は卵巣の表面を覆っている膜、間質は卵巣内部で表層上皮を支える細胞です。ここにできる腫瘍を表層上皮性・間質性腫瘍といいます。臨床病理学的分類に基づくと、この場所にできる腫瘍が卵巣腫瘍の中でもっとも種類が多く、良性で7種類、境界悪性で7種類、悪性に限っては11種類もの腫瘍があり、発症率全体の50%を占める腫瘍です。

性索間質性腫瘍

性索間質性腫瘍は卵胞を取り巻く顆粒膜細胞と莢膜細胞(きょうまくさいぼう)に発生します。腫瘍の多くは良性で、悪性のものは2種類しかありません。ほかの場所にできる腫瘍と比較しても、発症例は8%と少ないのが特徴です。

胚細胞腫瘍

胚細胞とは卵子のもととなる細胞のことで、卵細胞ともいいます。胚細胞腫瘍には乳児や新生児、小児にもできるタイプの腫瘍もあります。卵細胞腫瘍は良性と境界性腫瘍がそれぞれ3種類、悪性が7種類とそれほど種類が多くありませんが、卵巣腫瘍全体の40%の割合で発症します。

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身体からのサインに注意して定期的な検診を受けよう

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卵巣の腫れは多くの人が経験します。それゆえに、軽い自覚症状があっても見過ごしがちです。しかし、卵巣の悪性腫瘍は女性の病気の中で乳がんに次いで多いものです。まずは定期的に検診を受け、少しでも体に症状を感じたときはすぐに受診して検査を受けましょう。

また、腫瘍や類腫瘍の診断を受け、定期検診が必要と判断された場合は、医師の指示に従って継続した観察を続けるようにしてください。

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