【産婦人科医監修】つわりの薬として吐き気止めは飲める?つわりを抑える・軽減する薬はあるの?

吐き気や嘔吐などのつわり症状を、薬で抑えられたらと願う妊婦さんは多いのではないでしょうか。日本国内では、つわりに適応を持つ薬がいくつかあります。処方される薬の種類や安全性についての気になるポイントや、薬を服用する際の注意点についてみていきましょう。市販されている薬についてもあわせて解説します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. つわりとは?薬で抑えるもの?
  2. つわりを軽減する薬はあるの?
  3. つわりで市販の吐き気止めを飲んでも大丈夫?
  4. つわりで薬まで吐いてしまうときはどうする?
  5. つわりの吐き気止め薬は必ず医師に確認してから
  6. あわせて読みたい

つわりとは?薬で抑えるもの?

つわりとは主に吐き気や嘔吐、食欲不振などの胃腸症状があらわれる妊娠時特有の生理現象ですが、ほかにも頭痛や倦怠感などの不快症状が出ることもあり、生活に困難を生じることがめずらしくありません。多くの妊婦さんがつらい症状に悩みながらも、仕事や家事、子育てでゆっくり休むこともままならず、なんとか日々をやり過ごしているのが実情です。

妊娠していないときであれば、吐き気が続くときは制吐剤、食欲不振には胃腸薬、頭が痛いときは頭痛薬と薬を使用することもできます。しかし、つわりの時期と重なる妊娠初期は、胎児の心臓や脳幹神経など重要な器官が作られる敏感期のため、薬の使用は極力避けるのが通常です。

ただし、妊娠悪阻となり健康状態が著しく低下した場合は、医師の管理のもと、海外における臨床現場で比較的多く使われてきた薬剤が投与されることもあります。つわりがひどく吐き気止めがもらえるか気になるときは、医師に相談をしてみましょう。

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つわりを軽減する薬はあるの?

プリンペランなどの吐き気止め

医師から処方される吐き気止めとして広く使われているのが悪心や嘔吐など消化器機能の異常を治療するための「プリンペラン(メトクロプラミド)」です。薬の形態は細粒や錠剤、シロップ、注射液があり、つわりが重症化した妊娠悪阻では、プリンペランに加えビタミン剤やぶどう糖液を配合した点滴が行われることがあります。

嘔吐が起こる一因として、筋肉を収縮させる神経伝達物質の「アセチルコリン」の分泌が「D2受容体(ドパミン受容体)」によって阻害され、腸管運動の停滞や唾液量の減少、下部食道活約筋力の低下することが考えられます。

プリンペランはD2受容体を阻害する作用を持つため、下部食道活約筋を増強したり、胃腸の消化活動を促進したりする効果が期待されます。嘔吐中枢にもはたらきかけ、嘔吐を引き起こす脳からの伝達をブロックすることがわかっています。

また、妊娠悪阻に適応がある薬剤としては「タチオン錠/タチオン散(グルタチオン製剤)」が処方されることがあります。海外では古くからつわりの治療薬として抗ヒスタミン薬が処方されていますが、日本では処方されません。

制吐作用が期待されるビタミン剤

つわりでの嘔吐が頻回にあると、身体を維持する際に必要な栄養素が不足してしまいます。特に水溶性ビタミンであるビタミンBとビタミンCは、体内に蓄積することができないため、重症つわりでは点滴で補給する方法がとられます。

ビタミンのうち、ビタミンB6は吐き気や嘔吐を和らげるのに有効であるという研究結果が示されているものです。また、ビタミンB1の欠乏は、めまいやふらつき、物忘れといった症状があらわれるウェルニッケ脳症を発症するリスクにつながることがわかっており、発症を抑える対策としてビタミンB1もあわせて投与されます。

また、赤ちゃんの正常な発育を促す栄養素として、厚生労働省が妊娠初期の摂取を推奨しているのがビタミンB群の一種である葉酸(ようさん)です。葉酸はレバーや緑黄色野菜などに多く含まれる成分で、先天性奇形のリスクを抑えるほか、海外ではつわりの症状を軽減するという報告があります。嘔吐が強く食事がとれないときは、保険対象外の葉酸サプリメントをすすめる病院もあるようです。

適した成分を配合した漢方薬

漢方薬は生命エネルギーを指す「気」、主に血流を指す「血」、血液以外のリンパや水分を指す「水」と、体質や体力など身体の強さを示す「証」という4つの観点から、身体の状態を総合的に判断し、適切な薬が処方されます。

副作用が比較的少ないといわれる漢方ですが、身体にあった薬でなければ求める効果が得られないこともあります。また漢方薬の多くは、複数の成分を配合して1つの薬剤として届けられています。必要な成分は人によって異なるので、漢方に精通した専門医の診察を受け、適切な処方を受けるようにしましょう。

つわりに効果があるとして処方されることが多いものとして、小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)や香蘇散(こうそさん)、二陳湯(にちんとう)があげられます。これらの薬に含まれる半夏(はんげ)や生姜(しょうきょう)、茯苓(ぶくりょう)といった成分が、制吐や身体を温める効能を持ち、つわりを和らげるとされています。

胃のむかつきを抑える胃薬

医師によっては胃のむかつきを抑えたり、嘔吐によって荒れてしまった胃の状態を改善させたりするために胃薬を処方することがあります。一般的に処方される胃薬は「セルベックス(テプレノン)」です。このお薬は胃の粘液を増やしたり胃粘膜の血流を良くしたりして、胃の粘膜を保護し修復する効果があります。

胃薬は制吐剤とあわせて処方されることが多い薬剤です。一方で、胃薬を処方しない方針の医師もみられることから、胃の状態がつらいときには改めて相談してみると良いでしょう。

つわりで市販の吐き気止めを飲んでも大丈夫?

病院で処方される薬を含め、市販薬は妊娠中の投与に関する安全性は確立されていません。病院で使われる薬も、薬の副作用やリスクと比較して、薬を投与したほうが有益であると医師が判断したときにはじめて処方されるものです。

漢方薬や胃腸薬は市販薬でも手に入りますが、使用する場合は必ず医師に相談して使うようにしましょう。妊娠前から飲み慣れている薬でも、妊娠によって体質や体調が変化している可能性があります。安易な使用は避け、医師や薬剤師に確認をしてくださいね。

葉酸やマルチビタミンなどのサプリメントの使用にも注意が必要です。ビタミン類は食事で摂取できる栄養素のため、サプリメントを追加すると過剰摂取になってしまうこともあるからです。ビタミン以外の成分が含まれていることもあるため、どのようなサプリメントを使うのが良いか、医師や病院内の管理栄養士に相談すると良いでしょう。

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つわりで薬まで吐いてしまうときはどうする?

薬を服用後に嘔吐してしまった場合は、吐いた量や服用してからの経過時間で対処が変わります。服用後30分以内に嘔吐したときや嘔吐物の中に錠剤が含まれているのが確認できたときは、同じ量の薬を飲みなおすようにしましょう。

嘔吐が少量であったり、服用後30分以上が経過していたりすれば飲みなおす必要はないというのが、薬局で指導される一般的な内容です。ただし、薬の内容や体力によっては指導が異なることもあります。心配な場合は自己判断せず、必ず病院や薬局に問い合わせるようにしてくださいね。

つわりの吐き気止め薬は必ず医師に確認してから

つわりの吐き気や嘔吐が続くと、生活することが苦しく、「つわりの吐き気止めをもらえるならもらいたい」「早くこのつらさから解放されたい」と願うばかりですね。薬を飲んで楽になるものならそうしたいと、多くの妊婦さんが考えることでしょう。

しかし、つわりが起こる妊娠初期は赤ちゃんの脳や心臓、脳幹神経など、身体の根幹となる部分が作られる時期と重なります。母親が摂取する食べ物や薬に対する感受性も高い時期です。薬やサプリメントを使用するときは、必ず医師に確認してから使うようにしてください。

医師が処方する薬は、海外や国内の臨床における使用件数が多く、比較的安全性が高いとされるものです。服用に際し不安があるときは、医師や薬剤師に質問してみると良いでしょう。不安を解消し、前向きな気持ちで治療に取り組めますように。

※この記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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