男性不妊の原因は?男性不妊を引き起こす3つの原因と症状を解説

これまで不妊は女性の問題と考えられることが多かったものですが、不妊症の原因の約半数は男性側にあることがわかっています。ここでは、男性不妊を引きおこす造精機能障害、精路通過障害、性行為障害という3つの原因と症状について解説します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 不妊の原因の半分は男性にある
  2. 精子をつくる機能が低下している(造精機能障害)
  3. 精子の通過が妨げられている(精路通過障害)
  4. うまく性行為できない(性行為障害)
  5. 男性不妊でも妊娠の可能性はある
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不妊の原因の半分は男性にある

日本ではこれまで、不妊の原因は女性にあると考えられることが多く、女性が周囲からのプレッシャーを受けたり苦しい立場に立たされたりすることが珍しくありませんでした。現在も、女性が主体となって不妊治療にのぞんでいる夫婦は少なくないことでしょう。

しかし、世界保健機構(WHO)が1998年に発表した不妊の原因調査によると、不妊の原因が女性のみにある場合は41%で、不妊に悩む夫婦のうち約半数は、男性にも不妊の原因となる異常があるとわかっています。

精子をつくる機能が低下している(造精機能障害)

男性不妊の80~90%が、何らかの理由によって、精子をつくる機能が低下する造精機能障害が原因だといわれています。精子をつくる機能に問題があることで、正常な精子をうまくつくれない状態です。

1回の性行為で女性の腟内に射精される精子の数は、一般的に数億個とされています。しかし、そのうち99%の精子が子宮に入る前に死んでしまい、卵子にたどり着く精子の数は数百以下といわれています。そのため、精子の数が少なかったり、精子の動きが悪かったりすると、卵子に出会える精子が減ってしまい、妊娠の可能性が低くなります。

造精機能障害の主な症状として、下記のものがあります。

・無精子症(むせいししょう)
・乏精子症(ぼうせいししょう)
・精子無力症(せいしむりょくしょう)

精子をつくる機能が低下する原因の半数以上がわかっていません。原因がわかっているものの中では、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)が高頻度で現れます。そのほか、染色体異常や停留精巣(ていりゅうせいそう)によって造成機能障害を引きおこしている場合もあります。

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無精子症(むせいししょう)

精液中に精子が存在しない状態を無精子症と言います。無精子症には、精子の通り道に問題がある「閉塞性(へいそくせい)無精子症」と、精巣の精子を作る機能そのものが低下している「非閉塞性(ひへいそくせい)無精子症」があります。

無精子症の約80~85%が非閉塞性のものだと考えられています。染色体異常が原因になっている場合もありますが、その多くは原因がわかっていません。

無精子症であっても精巣や精巣上体に精子がわずかにでも存在していれば、精子回収法の手術で精子を取り出し、顕微授精で妊娠する可能性があります。

乏精子症(ぼうせいししょう)

精液中の精子の数が少ない状態を乏精子症と言います。自然妊娠するには1mL の精液中に4,000万以上の精子があることが望ましいとされています。1mLの精液中の精子の数が1,500万に満たない場合には、乏精子症と診断されるでしょう。

軽症の場合には、生活習慣の改善やビタミン剤などの服用によって症状の改善を試みつつ、タイミング法などで妊娠を目指します。重症の場合には、人工授精や体外受精・顕微授精などの不妊治療を行うことになるでしょう。

精子無力症(せいしむりょくしょう)

正常に動いている精子が少ない症状を精子無力症と言います。精液中で前進している精子が40%未満の場合に、精子無力症と診断されます。乏精子症と併発していることが多いでしょう。

軽症の場合は、生活習慣を改善したりビタミン剤を服用したりしながら、タイミング法や人工授精を行うことが一般的です。それでも妊娠しなければ、体外受精や顕微授精を検討することになるでしょう。

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)

精索静脈瘤は、精巣のまわりの静脈にこぶ状の腫れができるものです。精索静脈瘤によって精巣の周囲の血流が悪くなったり精巣の温度が上昇したりすることで、精子をつくる機能が低下します。

男性不妊の代表的な原因のひとつで、男性不妊患者の約4割に精索静脈瘤があるといわれています。特に第2子の不妊の原因になりやすいものです。

軽度の場合は漢方薬やビタミン剤の服用によって症状の改善を目指します。人工授精による妊娠を目指すことも多いでしょう。精索静脈を縛る手術を行うことで自然妊娠の可能性もあります。

精子の通過が妨げられている(精路通過障害)

精巣で精子が作られているものの、精子の通り道に問題があり射精しても排出されない状態です。

閉塞性無精子症(へいそくせいむせいししょう)

精子は、男性の股間の陰のうのなかにぶら下がっている精巣(睾丸)で作られます。そして、精巣上体と精管を通り、精嚢(せいのう)と前立腺で作られた精液のもととなる液体と混ざり合って精液となります。

パイプカットをしていたり、クラミジアなどの細菌感染により精巣上体が炎症をおこしてしまったり、生まれつき精管が備わっていなかったりすると、精子が精管を通過できず、精液中に精子がない状態となります。

閉塞性無精子症の場合は、精路をふさいでいる部分を取り除いて精管をつなぎあわせる精路再建手術を行う場合があるでしょう。手術によって精液中に精子が現れれば、自然妊娠できる可能性があります。自然妊娠が難しい場合でも、人工授精などを併用して妊娠できる可能性は高いでしょう。

逆行性射精(ぎゃっこうせいしゃせい)

通常は、射精があると精液は尿道を通じて外に出されます。しかし逆行性射精の場合は、精液が膀胱側に逆流してしまうため、女性の身体の中に精子が届けられず、不妊を引きおこします。

逆行性射精では、膀胱の一部を閉じる作用がある薬を使った治療が行われるほか、膀胱内に射精された精子を回収して人工授精や体外受精を行うことがあるでしょう。

うまく性行為できない(性行為障害)

精子に異常がないものの、性行為そのものができないことで子どもを授かれない場合もあります。精神的な理由によるケースもあれば、性器の形の異常や全身疾患、交通事故の後遺症によって性行為ができないケースもあります。

性行為障害の克服が難しい場合でも、精液中の精子に問題がなければ、人工授精によって妊娠できる可能性は高いと考えられます。

ED(勃起不全・勃起障害)

陰茎(ペニス)が十分に勃起しないことで満足な性行為ができないことをEDと言います。
勃起が長続きせず性行為を最後まで行えない(中折れしてしまう)場合や、陰茎(ペニス)の硬さが足りない場合などもEDに含まれます。

EDは血管や神経の異常や薬の副作用によっておこる場合もありますが、精神的なストレスが原因となりEDになる方の割合が多いといわれています。不妊治療におけるタイミング法がストレスやプレッシャーとなり、EDになることも珍しくありません。

EDにはED治療薬が有効です。ED治療薬によってEDを克服することができれば、自然妊娠できる可能性は高いでしょう。

腟内射精障害

性行為自体はできても、女性の腟内に射精できない状態のことを腟内射精障害と言います。加齢や睡眠不足・飲酒などによって引きおこされることもありますが、精神的な原因でおこることが多いとされます。

刺激の強いマスターベーションを繰り返すことにより、女性との性行為では刺激が足りず射精できなくなっているケースでは、器具を用いてマスターベーションの方法を矯正できるか試みる場合もあるようです。

腟内射精障害の克服が難しい場合は、人工授精が必要になるでしょう。

男性不妊でも妊娠の可能性はある

不妊検査によって男性不妊がわかった場合、精神的なショックを受ける男性も多いようです。しかし、現在の不妊治療は以前に比べてとても発展してきています。以前であれば子どもを持つことを諦めなければならなかった無精子症のような症状でも、妊娠の可能性はあるのです。

男性不妊の夫婦が不妊治療を成功させるためには、不妊の原因を特定し、適切な治療を選ぶことが必要です。夫婦揃って検査と治療を受け、治療方針を医師と相談するようにしてくださいね。

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