子どもの夜驚症とは?夜泣きや発達障害との違いは?原因と対処法
夜驚症(やきょうしょう)とは、幼児~小学校くらいの子どもに見られる睡眠障害のひとつです。寝ているときに突然泣き叫んだり暴れたりと、パニックにおちいるような症状がみられます。夜驚症を目の当たりにすると、何か病気ではないかと心配になるでしょう。ここでは、夜驚症と夜泣きとの違いや原因となるメカニズムや対処法を紹介します。
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目次
夜驚症(やきょうしょう)とは?
夜驚症(やきょうしょう)の症状
夜驚症とは、主に学童期に多い睡眠障害のひとつといわれ、厚生労働省が発行する「健康づくりのための睡眠指針 2014 」によると、小児の1~6.5%に現れる症状といわれています。(※1)夜驚症には下記のような症状がみられることが多いでしょう。
・睡眠時に子どもが突然起き上がり、苦しそうに叫ぶ
・睡眠時に悲鳴を上げる
・呼吸や動悸が速くなる
・ひどく汗をかく
・転げまわる
・極度に怖がる
主に、自律神経が過剰に興奮しているときの症状に似ているとされます。数分~数十分で落ち着き、再び眠りに戻ることがほとんどです。一晩に一度だけおこる場合もあれば、複数回おこる場合もあり、症状の度合いには個人差が大きいようです。
一般的に、夜驚症がおこったとしても、子どもが翌朝覚えていることはほとんどないといわれています。子どもによっては、断片的に夜驚体験を覚えていることもあるようですが、親は追及をせず見守ることをすすめられるでしょう。
夜泣きとの違いは?
「夜驚症」と「夜泣き」の症状は似ている点が多いのですが、基本的に違ったものとされています。
夜泣きであれば、保護者が声をかけたり電気を付けたりすることで徐々におさまることがほとんどでしょう。しかし、夜驚症は、子どもが突然泣いて起きた時点で、あやしたり声をかけたりしても周りの声や音が届かないことが多いといわれています。場合によっては、呼吸困難や動悸が早くなるなどの症状がみられ、パニックにおちいったように泣き叫ぶのも特徴です。
子どもの症状を落ち着かせようとしても、手の施しようがない事例が多いとされています。そのため、夜驚症を目の当たりにすると、どこか身体の具合が悪いのではないかと心配になる保護者も少なくありません。
夜驚症の原因は?
夜驚症のメカニズム
夜驚症の原因はいまだ解明されていないことが多く、未知な部分が多いといわれています。しかし、夜驚症の原因のひとつに、発達段階である脳の活動が関係しているという専門家もいます。
通常、大人も子どもも、ひと晩の眠りは数段階にわかれ、それぞれの段階によって脳の活動が異なります。夢を見るのはたいていレム睡眠と呼ばれる、脳の働きが活発な段階がほとんどでしょう。これに対して夜驚症がおこるのは、ノンレム睡眠と呼ばれる深い眠りの段階です。レム睡眠で見るさまざまな夢と違って、夜驚症は正確には夢ではないといわれています。眠りがある段階から次の段階へ移るときにおこる、突発的な反応が原因ともいわれています。
夜驚症の症状が発症しやすいのは、子どもが眠ってから夜間睡眠のあいだの前半1/3(睡眠後1~3時間)といわれています。(※2)これは、ノンレム睡眠の最も深い段階から、少し浅いレム睡眠へ移行されたときに夢を見やすくなるタイミングと同じようです。
「ノンレム睡眠→レム睡眠」の移行がスムーズにいかす、ごくたまに子どもが動揺し、恐怖を感じ、泣き叫んだり呼吸が乱れたりすることがあるそうです。これが、夜驚症のメカニズムのひとつといわれています。
中枢神経系の過度の覚醒
夜驚症は、神経系の中でも多くの神経細胞が集まっている中枢神経系が、睡眠中に過度に覚醒することによりおこるといわれています。中枢神経系は、脳の眠りと覚醒を司る器官とされ、この機能の発達が未熟であるために夜驚症が引きおこされると考える専門家が多いでしょう。
夜驚症は、以下のような条件がそろうと引きおこされると報告があります。
・過度の疲労、体調不良、ストレスがある場合
・新しく薬を飲み始めた場合
・新しい環境や慣れない環境で眠る場合
夜驚症の原因は心身の変化が大きく関わり、怖い夢をみて夜驚症が引きおこされる可能性は低いという専門家が多いようです。夜驚症は4歳~12歳におこりやすいとされていますが、2歳の子どもでもみられた事例があり、個人差が大きいとされています。また、夜驚症は遺伝が関係するという専門家も多いでしょう。
健康上の心配はない
夜驚症は、子どもがひどい悪夢を見たかのようにパニック症状が強く現れ、一瞬にして錯乱状態におちいる場合もあります。親がどのように声をかけてもあやしてもおさまることがないことから、健康をおびやかす病気ではないかと心配するパパやママが多いでしょう。
夜驚症は、健康上の心配はなく、昼間の生活に目立った様子がなければ特別な措置は必要ないとされています。泣き叫んだり呼吸が乱れたりすることから、重大な病気のサインではないかと心配になるママが多いですが、健康上に心配がない場合がほとんどのようです。
もし、小学校を卒業して10代の半ばごろになっても症状が現れるならば、適切な薬を処方してもらう方法もあります。それまでは、心身の健康状態を過度に心配せず、見守るようにしましょう。
刺激が多いとおこりやすい
夜驚症は、日中の刺激や楽しかったことを寝ているあいだに脳が思い出して、興奮状態におちいることが原因という見解もあります。人間は、寝ているあいだに、昼間に感じたことを脳の中で整理しているとされます。夜驚症に悩まされている場合、子どもが下記のような何か言葉に表せない感情や体験を抱えているのかもしれません。
・楽しい体験
・恐怖体験
・ストレス
・極度の緊張
夜驚症はマイナスイメージだけではなく、興奮を覚えるような楽しい体験をしたとしてもおこる場合があるとされています。緊張においては、幼稚園や保育園、学校や習い事の発表会前に夜驚症が現れる子どももいるようです。まずは、子どもがどのような気持ちを抱えているのか、心に耳を傾けてあげましょう。
夜驚症と発達障害やてんかんとの関係は?
夜驚症と発達障害の関係
夜驚症がみられる場合、自閉症などの発達障害が疑われる場合があります。これは、発達障害の症状のひとつに睡眠障害が現れやすいことがあげられるでしょう。発達障害がない子どもに比べて夜寝つきにくかったり、夜に覚醒したりするケースが多いというデータがあります。
主に、夜間の覚醒時間に違いがみられ、自閉症と診断されている子どもは、「いちど夜中に覚醒すると朝まで眠ることができない」「夜中に1~2時間起きている」という例がみられます。(※3)また、発達障害のある子どもは興奮状態におちいりやすい傾向にあるため、発達障害と夜驚症が同時にみられることも多いとされています。
夜驚症とてんかんの関係
てんかんとは、慢性的な脳の病気のひとつで、大脳の神経細胞が著しく興奮することから、けいれん発作が突然おこることを言います。
てんかんと夜驚症における睡眠時の症状はとても似ているとされます。しかし、てんかんは、脳の疾患が関係しているのに対して、夜驚症は生理的な現象が関係していることから、発作がおこる原因に違いがあるとされます。また、てんかんの発作は睡眠直後か起きる直前に発症しやすい一方で、夜驚症の場合は、睡眠時間の前半1/3におこりやすいという特徴があげられるでしょう。
いずれにしても、素人の判断では、症状に見分けが付かないことがほとんどです。夜間に子どもが暴れるなどの症状で悩まされる場合は、専門の医師に相談することから始めてはいかがでしょうか。
夜驚症の対処法は?治療はできる?
自然と症状が治まるのを待つ
夜驚症がみられたとしても、一般的に自然に症状が収まるまで待つようにすすめられます。子どもに夜驚症の激しい症状が出たとき、なかなかなだめることができずに気が動転してしまう保護者も多いでしょう。しかし、危険な行動をとらないか落ち着いて見守っていれば、たいていは数分でおさまることがほとんどのようです。
無理に起こしたり、声を荒げて叱ったりするのは控えましょう。起こそうともがくほど子どもは寝ぼけて混乱し、また寝つくのに時間がかかる可能性があります。激しく動き回ることもあるので、部屋にはできるだけ危険なものを置かないよう、日ごろから安全対策に気をつけましょう。
子どもが感じるストレスを軽減する
夜驚症は、子どものストレスが引き金になる場合があるともいわれています。子どもが思い悩んでいることがないか、心に耳を傾けてあげましょう。子どもは日ごろから、大人に比べたくさんの情報を取り入れているといわれているので、さらに刺激に敏感といえます。
やりたいこととできることに矛盾があったり、友達同士のトラブルあったりと、昼間に受けた刺激が思い出されているのかもしれません。子どもの様子がいつもと違うようならば、まずはたくさんスキンシップを心がけても良いですね。
リラックスできる入眠儀式を作る
夜驚症がみられる場合、子どもが落ち着いて眠れる空間を工夫してはいかがでしょうか。常に同じ状況で眠ることが、子どもの安心にもつながることもあります。
・寝る時間を決める
・寝る前に行うことを決める
・寝る前に今日の出来事をほめてあげる
たとえば、絵本を読み聞かせてからベッドに入る、お気に入りの人形を抱いて眠りにつくなど、幼児が行っているような入眠儀式で落ち着く子どももいます。また、寝る前は、今日頑張っていたことをたくさんほめてあげましょう。科学的根拠はなくとも、これで夜泣きや夜驚症が落ち着いたというママもいます。子どもが安心できるよう、寝る前の工夫をしてみましょう。
子どもに十分な休息を与える
子どもの精神が不安定な場合、疲れや睡眠不足が大きく関わるといいます。そのため、子どもがたくさん遊んだ日は、同等の休息も必要になるでしょう。ママは、子どもの遊びを優先したくなりますが、疲れがたまっていることに気付いてあげることも必要です。
子ども個性にあわせて、週に一度は家でのんびりする日を作ってあげてはいかがでしょうか。たまには、のんびりママと一緒におうち遊びを楽しみましょう。
専門の病院で治療をする
夜驚症の症状が、さまざまなことを試しても改善がみられなかったり、10代半ばを過ぎても治まらなかったりと断続的に見られる場合があります。ママの不安が募るようならば、専門の医療機関にかかって治療してもらう方法があります。
自宅から通える範囲で小児神経科があるようならば、受診を検討しましょう。また、睡眠障害を専門とする医療機関もあります。まずはかかりつけの小児科で相談して、専門の科がある医療機関を紹介してもらっても良いですね。
夜驚症が続く場合は専門家のサポートを
夜驚症は健康的な異常がない場合がほとんどとはいえ、寝ているあいだに突然泣き叫んだり、呼吸が乱れたりすると驚いてしまう保護者は少なくないでしょう。夜驚症では暴れるケースもあるので、段差がある場合はガードをしておくなど、安全対策は気を付けておきましょう。
夜驚症は、無理におさめようとするのではなく、見守ることが大切とされています。しかし、さまざまな工夫をこらしても夜驚症の症状が改善されない場合は、医療機関の受診を検討してはいかがでしょうか。専門家に相談して対処法を聞いたり治療を行ったりすることで、ママと子どもの不安を少しでも解消できると良いですね。