赤ちゃんの原始反射がないのは異常?障害との関係は?赤ちゃんの原始反射一覧【小児科医監修】

赤ちゃんには生まれながらにして、意思とは関係なく外部からの刺激に対して起こる動きがあります。それは原始反射(姿勢反射)と呼ばれ赤ちゃんが生きていくために必要なものです。原始反射がない場合や消えない場合、障害との関係も気になりますね。ここでは、赤ちゃんに備わった原始反射の代表的なものを一覧にし消失時期についても紹介ます。

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この記事の監修

染谷 朋之介
小児科医
染谷 朋之介

目次

  1. 原始反射とは?いつからいつまで
  2. 原始反射がないのは異常?ないとどうなる?
  3. 代表的な原始反射
  4. 気になる場合は専門家の判断を
  5. あわせて読みたい

原始反射とは?いつからいつまで

原始反射とは、主に赤ちゃんが身体を守り発達するために、刺激に対して無意識に起こる反応をいいます。また、運動機能の発達のために存在する反射もあります。これは、赤ちゃんの成長に伴い、大脳が発達して脳幹の働きを統合できるようになるまでに無意識に起こる動きです。

原始反射にはさまざまな種類があり、はやいものは胎児期から見られます。反射の種類によって反応が見られる時期も消失する時期も違いますが、2歳半頃まで続くものもあれば、生涯継続して続く反射もあります。

原始反射がないのは異常?ないとどうなる?

それでは、原始反射が見られないのは異常なのでしょうか。ここでは、3つの場合に分けてご紹介していきます。

起こるべき時期に起きない、または消えるべき時期に消えない場合

原始反射があるべき時期に誘発できないときや、本来であれば消えているはずの時期に残っている場合、脳性まひなどの中枢神経の病気が疑われます。ただし、個人差があるものなので、若干のずれですぐに障がいがあると断定できるものではありません。あくまでも、可能性として知っておきたいですね。

左右差がある場合

原始反射に左右差がある場合、その原因が上記同様に中枢神経にある場合と、抹消神経にある場合があります。

抹消神経障害の代表的なものに「上腕神経叢損傷(じょうわんしんけいそうそんしょう)分娩麻痺」があります。「腕神経叢」とは、神経が叢(くさむら)にたとえられるような状態になっており、複雑に交叉している部分のことです。腕神経叢に分娩時の過大な牽引などの力がかかることによって麻痺を生じ、動かなくなっている場合があります。

また神経以外では、鎖骨骨折がある場合も左右差の原因になります。

発達障害との関係

原始反射とADHDなどの発達障害との関係性はどのようなものなのでしょうか。原始反射は主に脳幹に支配されています。原始反射を確認することは、大脳の発達によって脳幹が統合、コントロールされてきたかを見る、発達のバロメーターになります。

つまり、適切な時期に原始反射が消失しないということは、大脳の発達に何らかの問題があるということを示唆しています。

もちろん、原始反射が長く続いたからといって、すぐに発達障害であるとはいえません。しかし、発達障害の可能性を頭に置き、成長の様子を見守ることが大切といえるでしょう。

代表的な原始反射

ここでは、具体的な原始反射の代表例を紹介します。

モロー反射 Moro reflex

モロー反射は比較的有名な原始反射のひとつで、脳幹レベルの反射です。上を向いて寝かせた子どもの後頭部に手をあて、15cmほど頭を持ち上げた後に頭を落下させると、両方の腕が伸びて外側に開き、腕が内側に縮まるような動きが見られます。

これは、外部からの刺激に対し、しがみつくように危険を知らせ、守ってもらおうという本能的な動きです。胎児期後期から起こり、生後5、6ヶ月までに消失します。

手掌把握反射 palmar grasp reflex, hand grasp reflex

手掌把握反射は、脊髄レベルの原始反射です。まず、新生児を上向きに寝かせ、顔を正面に向けた状態で腕を曲げます。検査する人の指を赤ちゃんの小指側から手の中に入れて掌を圧迫すると、検査する人の指をぎゅっと握り締める反射が見られます。胎児期後期から見られる反応で、3ヶ月頃から弱くなり、4~6ヶ月頃には消失します。

足底把握反射 plantar grasp reflex(足趾把握反射ともいう)

足底把握反射は脊髄レベルの原始反射です。赤ちゃんの足の裏の親指の付け根にあるふくらみを検査する人の親指で圧迫すると、全ての足の指が内側に曲がる原始反射のことをいいます。3ヶ月頃から弱くなり、9ヶ月頃には消失します。消失時期については、12ヶ月という説もあります。

自律歩行 walking automatic reflex(自動歩行,または脚踏み反射ともいう)

自律歩行は脊髄レベルの原始反射です。新生児の脇の下を持って立たせ、足を床につけて前に傾けると、数歩歩行する原始反射のことをいいます。胎児期後期からみられ、生後1、2ヶ月までに消失します。

台乗せ反射 foot placement reflex

台乗せ反射は脊髄レベルの原始反射です。赤ちゃんを抱えて一方の足を支え、もう一方の足の甲を机の端にこすり上げると、刺激した方の足が曲がり、その足を机の上に持ち上げるという原始反射のことをいいます。胎児期後期から見られ、生後5、6ヶ月までに消失します。

非対称性緊張性頚反射 asymmetrical tonic neck reflex(ATNR)

非対称性緊張性頸反射は脳幹レベルの原始反射です。検査する人が仰向けに寝かせた赤ちゃんの顔を一方に回すと、顔が向いている側の腕と足が伸び、頭が向いている側の腕と足が曲がる原始反射のことをいいます。生後から見られ、生後4~6ヶ月までに消失します。

探索(四方)反射 rooting reflex(口唇反射、索餌反射ともいう)

探索反射は脊髄レベルの原始反射ですが、脳幹レベルの反射とされることもあります。赤ちゃんを仰向けに寝かせて検査をする人の指で唇の上下・左右に触れると、触れた方向に口を開き、頭を向ける原始反射のことをいいます。胎児期後期から見られ、生後5~6ヶ月までに消失します。

吸啜(きゅうてつ)反射 sucking reflex

吸啜反射は脊髄レベルの原始反射です。赤ちゃんの口の中に検査をする人の指を入れると、規則的に吸いつく原始反射をいいます。胎児期後期から見られ、生後5~6ヶ月までに消失します。

背反射 Galant response, Galant reflex

ガラント反射は脊髄レベルの原始反射です。背骨の外側に沿って上から下へこすると、こすった側の背中の筋が収縮し、身体が横に曲がる原始反射です。胎児期後期から見られ、生後2ヶ月までに消失します。

引き起こし反射 traction response

引き起こし反応は、いわゆる反射とは違いますが、一緒に解説します。仰向けに寝かせた状態で、赤ちゃんの両手を検査する人の両手で持ち、ゆっくりと座らせるように引き起こします。すると、赤ちゃんの両腕を曲げる力が強くなり、首を曲げて起き上がる反応を示すのです。

引き起こし反射は時期によって変わり、1~2ヶ月のときは頭が背中の方に曲がり、腕が伸びた状態です。3~4ヶ月のときは、頭と頸が身体と平行して動きに遅れないようになり、両腕と両足が曲がります。5~6ヶ月のときは、頸が身体と平行し、ひじが曲がって引き起こしに協力するような動きになります。7~8ヶ月のときは、ひじが曲がって両足が伸び、頸が前に曲がります。

パラシュート(保護伸展反応) parachute reaction

保護伸展反応は中脳レベルの原始反射です。自分の身体を守るために、両手両足を曲げ伸ばして頭を保護したり、支えて姿勢を安定させたりしようと働く原始反射のことをいいます。抱き上げた赤ちゃんの体を支えて下の方向に落下させる、もしくは座った状態で前方・側方・後方に倒すと、両手を伸ばして手を開き、身体を支える動きが見られます。

下方については6ヶ月から、前方については6~7ヶ月から、側方については7~8ヶ月から、後方については9~10ヶ月で見られ、生涯継続するものです。

バビンスキー反射 Babinski reflex

バビンスキー反射は脊髄レベルの原始反射です。足の裏の外側を踵から足のつま先にかけて刺激すると、親指が反り、他の足の指が扇状に開く現象が生じる原始反射をいいます。胎児期後期から見られ、主に生後18ヶ月頃に消失します。消失時期については、12~24ヶ月まで幅があります。

気になる場合は専門家の判断を

原始反射にはさまざまなものがあり、時期についても個人差があります。中枢神経の発達段階を見る大切なバロメーターとなる原始反射は、赤ちゃんの成長にとって大切なものです。

気になる場合は専門家に相談するなど、パパ・ママが不安にならないようにしていきたいですね。

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