疳の虫・癇が強いという症状と医学的な原因は?虫封じにご利益はない?
赤ちゃんが激しく泣いている様子を見て、年配の人が「疳の虫がいるね」「癇が強い子」などと口にすることがあります。お宮参りの際に、神社で虫封じのお守りを渡されたママもいるのではないでしょうか。ここでは、疳の虫にあてはまる症状と医学的な原因を解説します。虫封じを行っている神社やお寺、民間信仰での虫の出し方も紹介します。
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目次
赤ちゃんの疳の虫とは?
疳の虫(かんのむし)とは、赤ちゃんの夜泣きや癇癪(かんしゃく)などの俗称です。癇が強いという言い方をすることもあります。
大辞泉によると、疳の虫は「小児の疳を起こすと考えられていた虫」とされています。「疳」は「疳の虫によって起こるとされる、小児の神経症。夜泣きやひきつけなどの発作を起こす病気」「癇(ちょっとしたことにも興奮し、いらいらする性質・気持ち)に同じ」と記載されています(※1)。
つまり、大人が理解できない赤ちゃんの不機嫌をまとめて虫のせいにしていたということのようです。日本には昔から、身体の中に虫が住んでおり、いろいろと嫌な気持ちを引き起こすという考え方があります。
「虫の居所が悪い」「虫が好かない」など、虫を使ったことわざは多く耳にしますよね。お腹は空いていない、おむつは濡れていない、機嫌が悪いはずもない赤ちゃんが泣き続けることを疳の虫という虫のせいにしていたとしても、何ら不思議はありません。
疳の虫・癇が強いという症状と医学的にみた原因
夜泣き
人間は寝ているときに、レム睡眠という浅い眠りと、ノンレム睡眠という深い眠りを繰り返します。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんが眠っているときには、レム睡眠という浅い眠りが大半をしめているようです。
レム睡眠のうちはちょっとした刺激で起きてしまうので、眠りをさまたげられた赤ちゃんが泣くことがあるでしょう。夜泣きのメカニズムははっきりとはわかっていませんが、レム睡眠のときに目が覚めた赤ちゃんが、ママに抱っこしてもらえるように要求しているのかもしれません。
生後6ヶ月頃には人を認識する力が高まってくるようになり、ママやパパと少しでも離れると不安になる分離不安が起こるとされています。座れるようになったり、ズリバイをするようになったりと、成長のめざましい赤ちゃんが、昼間の刺激を整理しきれずに泣いてしまうともいわれています。
いずれにせよ、夜泣きは赤ちゃんの成長段階のひとつです。ママパパにとっては大変な時期ではありますが、いずれ終わるものといえます。
乳児疝痛(にゅうじせんつう)
明らかな原因がなく、健康な赤ちゃんが1日に3時間以上激しく泣くことが週に3日以上かつ3週間以上続くことを「乳児疝痛(コリック)」と言います。一般的には、3時間未満であってもほぼ毎日泣いている場合は、乳児疝痛と診断されることが多いようです。
乳児疝痛は生後6週目頃にひどくなり、生後3~4ヶ月頃までに治まるといわれています。日中のほぼ同じ時間に泣くことが多く、夕方によく泣く黄昏泣きと一緒にされることがあります。
乳児疝痛は、いわゆる癇癪持ち、短気といった性格との関連性はありません。乳児疝痛は、病気ではなく一時的な症状です。しかし、体重が増えない、顔色が悪い、嘔吐するという異常がある場合は、医師に相談してくださいね。
小児四肢疼痛発作症(しょうにししとうつうしょう)
「疳」の強い乳幼児に関する研究があります。秋田大学と京都大学の医学部研究科の共同グループが、疳の虫がいるといわれる乳幼児の一部が寒さや悪天候、疲労、体調不良などをきっかけに手足の痛みで泣き出すことを見つけ出し、「小児四肢疼痛発作症」という名前が付けられました(※2)。この痛みは、成長とともになくなるといわれています。
赤ちゃんが癇癪を起すのは普通のこと
ネットで「疳の虫」と調べると、「乳児の異常行動」という怖い言葉が出てきます。赤ちゃんは泣くことでコミュニケーションを取っており、癇癪を起こすように泣くのは、普通のことです。不快や怒りは、人間の情緒のうちでも早い時期に発達してくるといわれており、赤ちゃんが怒ったように泣くのはいわば当然なのです。
赤ちゃんが思う存分泣けることは、それだけ今の環境に安心している証拠かもしれません。ママが抱っこして歩くと赤ちゃんが泣き止むことはよくあり、これは遠い祖先の記憶による反応という説があります。自然界で赤ちゃんが運ばれるのは敵が迫っている緊急時のため、泣かずにママに協力するよう、DNAに刷り込まれているのだそうです(※3)。
虫封じとは?神社やお寺での祈祷お祓い
「疳の虫」は本当にいるわけではないとわかっていても、赤ちゃんの息災を願ってお宮参りをするように「虫封じ」に行くと良いかもしれません。夫婦や家族そろってお参りすることは、ママの心の負担を軽くしてくれるでしょう。虫封じのお守りが置いてある神社もあるようですよ。
虫封じをしてくれる神社やお寺
慶龍寺
住所:茨城県つくば市泉2348
TEL:029-867-0323
子安神社
住所:東京都八王子市明神町4-10-3
TEL:042-642-2551
三宅八幡宮
住所:京都市左京区上高野三宅町
TEL:075-781-5003
安楽寺
住所:和歌山市中之島801
TEL:073-423-4616
金剛寺
住所:愛知県蒲郡市三谷町南山1-9
TEL:0533-69-7379
他にも全国各地のお寺や神社でご祈祷をしてもらえます。地元の氏神様で行われているかどうか問い合わせてみてはいかがでしょうか。
虫封じのやり方は各寺院や神社によって違うので、どんな方法で行われるのかあらかじめ聞いてみましょう。ほとんどは朱印を押してもらったり梵字(ぼんじ)を手のひらに書いてもらったりするなどの穏やかな方法ですが、場所によっては針で指を刺す、子どもを叩いて虫を追い出すという流派もあるようです。
民間信仰での疳の虫の出し方とは?
医師がいなかった時代には、神社やお寺以外でも、地域ごとのやりかたで虫封じ・疳封じが施されていたようです。一般的な虫の出し方は、乳児の手のひらに真言や梵字(ぼんじ)などの呪語を書いてから塩で洗って清めるというものです。しばらくして手が乾くと、赤ちゃんの指先から細い糸状の疳の虫が出てくるとされていました。
しかし、実際は、手を洗う水の中に真綿の繊維を少量混ぜておくことで、乾いた繊維が見えるようになるというトリックだともいわれています。赤ちゃんの手のひらは日ごろから繊維がついているため、仕掛けすら不要でしょう。ネットでは虫の出し方の動画などが紹介されているので、興味があるママは試してみてはいかがでしょうか。
赤ちゃんの指先から疳の虫が出てくるということは科学的ではありませんが、そうした虫封じが信じられていたのは、何かしらご利益が実感できたからでしょう。ちょうど時期が来て夜泣きが治まったり、虫封じをして親の不安が落ち着いたことを赤ちゃんが感じ、泣く回数が減ったりしたのかもしれません。
癇が強い、疳の虫がついていると言われても気にする必要はない
「疳の虫が騒いでいる」、「癇が強い子」と言われると、他の赤ちゃんより神経質で癇癪持ちなのではと心配になることがあるでしょう。しかし、よく泣く時期はどの赤ちゃんにもあります。
泣き声が甲高い赤ちゃんもいますし、成長段階によって激しく泣く赤ちゃんもいます。昔の人は赤ちゃんが激しく様子を見て、赤ちゃんではなく赤ちゃんにとりついた「疳の虫」が一時的に悪さをしていると考えたのかもしれません。
赤ちゃんがあまりに泣くことが続くときは、パパや他の家族に預けて気分転換に出かけてみてはいかがでしょうか。自分の時間を持つことで、ママの気持ちに余裕が生まれるでしょう。ママのスッキリした顔を見て、赤ちゃんが落ち着いてくれると良いですね。