「後医は名医」ってホント?医師が初診で大切にしていること【パパ小児科医コラムvol.18】

みなさんは、クリニックを受診した後に別の病院を紹介され、症状が改善した経験はありますか?今回のコラムでは、パパ小児科医の加納友環(ぱぱしょー)先生に、「後医は名医」という言葉と、クリニックを受診する上で患者さんに知っておいてほしいことについて教えていただきました。

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この記事の監修

目次

  1. ぱぱしょー先生が経験した患者さんとのエピソードとは?
  2. 後医が「名医」になるワケ
  3. 初診では緊急性の判断
  4. 患者さんにとっての「名医」
  5. ぱぱしょー先生によるお役立ち動画はこちら!
  6. パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム
  7. 著者:加納友環(ぱぱしょー)
  8. あわせて読みたい

ぱぱしょー先生が経験した患者さんとのエピソードとは?

前回はさまざまな病院の違いについて説明しましたが、今回は「後医は名医」
という言葉を紹介します。どのようなことなのでしょうか。

【症状別】知っておくと安心!小児科医から見た病院の選び方【パパ小児科医コラムvol.17】
https://mamanoko.jp/articles/31601

私が大学病院に勤めていた研修医のころのことです。

近隣のクリニックから患者さんが紹介されました。検査の結果、肺炎と診断したところ、患者さんが怒り出したのです。「前の医者が肺炎を見逃した!!」と。

そして私に対しては「よく肺炎を見つけてくれました、さすが大学病院の先生だ」とおっしゃいました。紹介してくださった先生は、古くから地域を支えている先生でしっかりと患者さんをみてくださる良い先生であると私は思っていて、当然私より経験も豊富です。一方当時の私は、まだ経験の浅い研修医でしたので、とても申し訳ない気持ちになりました。

初診のクリニックではまだ症状が現れ始めたころで、その後も改善がありませんでした。そのため、詳しい検査が必要とのことで総合病院を受診して肺炎があるとわかりました。

私の診断は、クリニックの先生の考えを引き継いだにすぎず、決して私の方が
優れた医者というわけではありませんでした。より詳しい検査ができる病院で
あったからこそ「肺炎」とわかり治療ができたのです。

後医が「名医」になるワケ

イラスト:ヤマハチ

このようなことは現場ではしばしば起こっています。後に紹介させる病院ほど情報が集まっているので、適切な診断に至りやすくなります。これまでの検査結果や治療は情報として参考になりますし、時間経過によってより情報が集まってきます。

たとえば、インフルエンザになったとしましょう。インフルエンザは発熱してすぐに受診しても、検査上ははっきりしません。初診では陰性という結果がでても、のちに陽性と診断されることもあります。今の時期ですと新型コロナウイルスにおいても、そのようなニュースを目にすることがしばしばあるでしょう。

よく、小児科医は「熱が続くようなら再受診してください。」と添えます。これは単なるリスク回避の言葉ではありません。数日経過を見ることで、状況が変わったり情報量が増えたりすることで、より適切な診断に近くためです。

症状が出てすぐは、その時点での暫定的な診断のみをすることもあります。たとえば赤ちゃんによくある「突発性発疹」の場合、発熱が数日続き、熱が下がるとともに発疹が出現します。発疹が出現して初めてわかる病気なので、発熱してすぐには診断ができません。ある意味どんな名医でも最初「見逃し」うるものです。

初診では緊急性の判断

イラスト:ヤマハチ

発熱してすぐのときは、診断が何かよりも、水分は取れているか、ぐったりしているかなど全身の状態が安定しているかどうかを中心に見ています。全身状態が良いかどうか、そして暫定的な診断をしてもらって、その次にどのような症状や状態になったら再度受診が必要か説明されるでしょう。

最初に受診するクリニックの役割は、最終診断にいたることよりも緊急性の判断、全身状態の把握に重きが置かれます。もちろん診断が明らかであるに越したことはありませんが、情報が少ない状態では暫定的な診断にならざるを得ません。病名より緊急度の高い状態を「見逃さない」ことの方が大切なのです。

患者さんとしては初診で適切な診断をしてほしいと感じるかもしれませんが、医療従事者の立場からすると、まずは緊急性や重症度の判断が大切なのです。

患者さんにとっての「名医」

イラスト:ヤマハチ

かかりつけ医から他の病院に紹介となり診断名が変わると、かかりつけ医に対して不安を覚えるかもしれませんが、ときにはそういったこともあることを知っておいていただけると幸いです。(もちろん、なかにはニュースで報道されるような大きな見逃しも存在します。)

人それぞれ「自分にとっての名医」は異なるものです。誰もできない難手術をやってのける凄腕ドクターは名医でしょう。誰も診断できなかった病気を探偵のようにわずかな違いから見破る医師も名医でしょう。

一般的に後の方で見た医師、つまり「後医」は「名医」といわれやすいですが、私は最初に患者さんを診察する「前医」にも、緊急性の判断を間違えずに適切に紹介することのできる「名医」がいると思います。

そんな信頼できるかかりつけ医に、皆様が出会われることを願っています。

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パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム

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著者:加納友環(ぱぱしょー)

二児(3歳、5歳)の父で小児科専門医。

TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。

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