子宮体がんはどんな病気?ワクチンはある?初期症状や検査、ステージとは?
「子宮体がん」という病気をご存じでしょうか。「子宮頸がん」と比べると聞き慣れない病名だと感じる人が多いかもしれません。子宮体がんは子宮がんの一種で、年間1万人以上がかかる病気です。子宮体がんの原因や症状、検査や治療法、ステージ(病期)、ワクチンがあるのかどうかについてチェックしていきましょう。
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目次
子宮体がんとは?初期症状は?
子宮体がんは、子宮内膜から発生するがんで、「子宮内膜がん」と呼ばれることもあります。子宮体がんであると診断される人は年間1万人以上で、2,000人強の女性が子宮体がんによって亡くなっています。子宮の入り口にできる「子宮頸がん」や子宮の筋肉にできる「子宮肉腫」とは区別されます。子宮体がんの初期症状や発症しやすい年齢を知っておきましょう。
初期症状は不正出血
子宮体がんの初期症状の中でもっともよくあるのは、不正出血(生理以外の出血)です。少量の出血が長期間続くことが多いといわれています。不正出血のほかには、おりものの変化や性交時痛、排尿痛、排尿しにくい、骨盤の周辺が痛む、といった症状があげられます。これらの症状があるときには子宮体がんの検査を受けてみると良いでしょう。
閉経前後には特に注意
子宮体がんにもっとも注意すべき年齢は、40代~60代です。閉経前後の女性が子宮体がんと診断されることが多いため、閉経前後に生理以外の出血があった場合には原因のひとつとして子宮体がんを疑いましょう。
子宮体がんの原因は?リスクが高い人は?
エストロゲンの刺激が原因
子宮体がんの主な原因は、「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンによって子宮内膜が刺激され続け、子宮内膜が増殖してしまうことです。女性は普段、エストロゲンともうひとつの女性ホルモンである「プロゲステロン」のはたらきによって、女性らしい身体つきや美しさ、妊娠中は妊娠状態を保つことができています。
しかし女性ホルモンのバランスが崩れ、エストロゲンが分泌されているのにプロゲステロンが分泌されなかったり、エストロゲンの分泌量が異常に多かったりすると、子宮内膜が必要以上に厚くなって「子宮内膜増殖症」という状態になり、悪化すると子宮体がんにつながることがあります。
子宮体がんになりやすい人の特徴
肥満や糖尿病、高脂血症の人や、出産したことがない、初経が早かった、閉経が遅かったなどでエストロゲンが長く分泌され続けていた人は、子宮体がんを発症しやすいといわれています。これらにあてはまる人は特に日ごろから不正出血に敏感になり、症状があるときには子宮体がんの検査を受けにいきましょう。
乳がんや更年期障害の治療でリスクが高まることも
乳がん治療で使用される「タモキシフェン」というホルモン剤は、長期的に服用すると子宮体がんのリスクが高まることがわかっています。乳がんの治療中、治療後には、子宮体がんの検査も定期的に受けるようにしておくことが大切です。
また、更年期障害の治療では、更年期に減少するエストロゲンを補う治療(ホルモン補充療法)を行うことが考えられます。エストロゲンが増加して子宮内膜が厚くなりすぎると、子宮体がんになる可能性があるため、更年期障害の治療中にも注意が必要です。
子宮体がんの検査とは?痛みや費用は?
子宮体がんは、どのような検査をすれば発見できるのでしょうか。子宮体がんの検査で最初に行うのは細胞診や組織診で、一般にこれらの検査で子宮体がんが確定するとがんの広がりを調べるためにさらに検査を受けることになります。子宮体がんの検査には痛みがあるのでしょうか。また費用はどのくらいなのでしょうか。
細胞診と組織診
子宮体がんの検査では、最初に子宮内膜の細胞を採取して顕微鏡で観察する「細胞診」を行います。細胞診で異常があった場合には「組織診」に進み、子宮体がんの可能性のある部分の組織を吸い取ったり削り取ったりして顕微鏡で観察します。
子宮体がん検査の痛み・出血
子宮体がんの検査である細胞診や組織診では、痛みや出血を伴うことがあります。痛みの感じ方は人それぞれです。組織診では子宮内膜全体を採取する場合があり、この場合には痛みが強いため麻酔をかけて採取することが多いでしょう。そうでなくても痛みが心配なときや痛みが強いときには、医師に相談しましょう。麻酔を打ってもらえる可能性がありますよ。
子宮体がん検査の費用
子宮体がん検査の費用は、病院によって異なりますが、一例として保険適用で細胞診を行う場合は2,000~3,000円程度とみておくと良いでしょう。症状がある場合は基本的に保険適用になりますが、症状はなくても念のため受けておきたいという場合には保険適用外となります。
ただし、保険適用外であっても、地方自治体によっては割引などの助成を行っている可能性があります。検査を受ける前にお住まいの地方自治体のホームページなどで確認してみてくださいね。
子宮体がん検査の結果
子宮体がんの検査結果は1週間~10日程度でわかると考えておくと良いでしょう。細胞診では、「陰性」「疑陽性」「陽性」という3段階で結果が出ることが多く、疑陽性や陽性の場合には組織検査やがんの広がりを調べる検査に進むことになります。また、子宮頸がんの検査結果のように、細胞をI~Vの5つの段階にわけて悪性かどうかを判断することもあるでしょう。
子宮体がんの精密検査とは?
細胞診や組織診で子宮体がんであることが確認されると、がんがどこまで広がっているのか、身体のほかの部位に転移していないかを調べるためにさらに検査を行い、がんのステージや治療法が決定されることになります。どのような精密検査があるのでしょうか。
内診、直腸診
子宮体がんの広がりを調べるため、腟や肛門に指を入れて子宮や腟、直腸(腸のうち肛門の直前にあるところ)の状態を確認することがあります。
超音波検査(エコー検査)
腟に超音波(エコー)を発する器具を挿入し、超音波検査(エコー検査)を行うこともあります。超音波検査を行うことでがんの位置をより詳細に把握することができます。
CT検査、MRI検査
CT検査やMRI検査を行うと、がんがどのくらい深くまで浸透しているか、どのくらい広がっているか、子宮から遠い臓器(肺や肝臓など)にも転移していないか、といった情報を得ることができます。
これらの検査には造影剤を用いることがあるため、薬剤でアレルギーが出たことがある人は医師にあらかじめ相談しましょう。
子宮体がんのステージとは?生存率や予後は?
子宮体がんには、I~IVのステージ(病期)があり、どのステージにいるかによって生存率や治りの良さ(予後)、治療法が異なります。病期によってはさらに細かくわかれている場合もありますが、おおむね以下の状態をあらわしています。
ステージI(I期)
がんが子宮体部のみにとどまっているときにはステージI(I期)であると判断します。5年生存率は95%前後と高く、この段階で治療を開始すれば治りが良いといわれています。ステージI(I期)では外科手術やホルモン療法を行うことが多いでしょう。術後に再発するリスクが高い場合には、手術に加えて放射線治療や抗がん剤治療を行うこともあります。
ステージII(II期)
ステージIIは、がんが子宮頸部まで広がっているものの、子宮の外には出ていない状態を指します。5年生存率は80~90%程度で、ステージIに引き続き治りがまだ良い段階であると考えられます。II期においても手術でがんを切除する場合が多く、術後に再発するリスクが高いときは放射線治療や抗がん剤治療を行う場合もあるでしょう。
ステージIII(III期)
がんが子宮から出て広がっているものの骨盤まででとどまっている段階や、リンパ節に転移している段階は、ステージIII(III期)とされています。ステージIIIなると5年生存率は70%程度となり、病状や再発可能性によって手術や放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン療法を組み合わせて治療を進めることになります。
ステージIV(IV期)
ステージIV(IV期)は、子宮体がんの末期です。がんが骨盤を超えて広がっている、膀胱や腸の粘膜まで浸透している、子宮から遠く離れた臓器にも転移している、といった場合にステージIVと診断されます。ステージIVでは5年生存率は15~20%と低くなり、患者それぞれの状態にあわせて放射線治療や抗がん剤治療、ホルモン療法、転移した部分の手術などを行うことになるでしょう。
子宮体がんのワクチンはある?予防法は?
子宮体がんにならないようにするためには、どのようなことに心がければ良いのでしょうか。子宮体がんに効果的なワクチンはあるのでしょうか。
子宮体がんのワクチンはない
子宮がんというとワクチンのイメージがある人もいるかもしれませんが、子宮体がんにはワクチンはありません。ワクチンがあるのは「子宮頸がん」です。なお、子宮頸がんワクチンは子宮頸がんの原因となるウイルスへの感染を防ぐための予防接種なので、子宮頸がんワクチンを接種したからといって子宮体がんの予防になるわけではありません。注意してくださいね。
生活習慣の見直し
子宮体がんを予防するためには、まずは生活習慣を整えましょう。ストレスをためずに規則正しい生活をしてホルモンバランスを整えるとともに、高カロリー・高脂肪な食事を控えて肥満や糖尿病、高脂血症を予防しましょう。特別なことをするよりも、まずは基本的な生活習慣を見直して健康な身体づくりに努めることが大切ですよ。
検査で早期発見
子宮体がんになる手前の「子宮内膜増殖症」という病気も、子宮体がんの検査で見つけることが可能です。子宮内膜増殖症や子宮体がんのステージI~IIの段階で子宮体がんを発見することができれば、本格的にがんが広がったり深くなったりしてしまう前に取り除ける可能性が高まります。
乳がんや更年期障害の治療を受けている人や肥満、糖尿病、高脂血症の人、閉経が遅かった人など、リスクが高いと思われる人は、定期的に検査を受けることをおすすめします。特に、不正出血が起こった場合には必ず病院に行きましょう。
子宮体がんの治療法と治療費は?ガイドラインとは?
子宮体がんの治療法には手術、ホルモン療法、抗がん剤治療、放射線治療があります。これらの治療は具体的にはどのようなものなのでしょうか。治療費も気になりますよね。
外科手術
ステージI~IIの治療では、外科手術が中心になることが多いでしょう。がんが広がっている、あるいは浸透している範囲によって切除する範囲が異なり、子宮だけを摘出する場合もあれば、卵巣や卵管、腟、リンパ節など広範囲にわたって切除することもあります。
切除範囲によっては術後に後遺症が残る場合があるため、手術前には後遺症についても確認しておく必要があります。主な後遺症としては、排便・排尿困難、足のむくみ、更年期障害の症状があげられます。
ホルモン療法
子宮体がんがステージI、または子宮内膜増殖症(子宮体がんになる前)の状態で妊娠を希望する人に対しては、ホルモン療法が用いられることがあります。抗がん剤治療の代わりとして、あるいは術後の再発防止策としてホルモン療法を行うこともあるでしょう。
ホルモン療法では、がんが増殖するのを防ぐため、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」を投与します。手術抜きでホルモン療法のみを行う場合には、子宮を残すので再発のリスクが考えられます。妊娠の希望とリスクの両方を考慮した上で十分に話し合って治療法を選択してください。
抗がん剤治療
がんが進行して手術できない場合や再発したとき、術後に再発を防止したいときに行われる治療が「抗がん剤治療」です。飲み薬や点滴によって抗がん剤を体内に取り込み、がん細胞が増殖しないようにしたりがん細胞を破壊して小さくしたりします。
白血球や血小板の減少、脱毛、吐き気、嘔吐、下痢、臓器の障害といったさまざまな副作用があらわれる可能性があるため、医師と相談しながら抗がん剤の種類を変えたり治療を休んだり、中断したりすることになるかもしれません。
放射線治療
放射線治療は、抗がん剤治療と同じく再発時や再発を防止したいとき、手術できない場合に行われる治療です。身体の外や腟の中からX線やガンマ線を照射し、がん細胞を小さくします。白血球の減少、吐き気、嘔吐、食欲不振、膀胱炎(ぼうこうえん)、直腸炎、下痢など、副作用を伴うことがあります。
治療費は場合によるが高額
子宮体がんの治療費は治療法や治療を行う期間、入院期間などによって大きく変わりますが、外科手術だけの場合でも、諸費用を合わせると100万円を超えてもおかしくありません。年齢や所得によっては、「高額療養費制度」という制度で医療費の助成を受けることができるため、事前に確認しておきましょう。
子宮体がんの治療のガイドラインがある
日本婦人科腫瘍学会では、子宮体がんの治療ガイドラインを作成、公開しています。子宮体がんの治療法についてさまざまな場合を取り上げて解説しているため、詳しく知りたい方は見てみると良いでしょう。
子宮体がんの症状をチェックして早めに検査を受けよう
子宮体がんは、女性ホルモンのバランスが崩れたり分泌過剰、不全が起こったりすることで発症します。子宮体がんはもちろんのこと、あらゆる病気を予防するためにも、生活習慣を見直して健康な子宮を保ちたいですね。
子宮体がんの症状である不正出血や排尿痛、排尿困難、性交時痛といった症状は、子宮体がん以外の病気であっても起こりうるため、症状だけで子宮体がんと断定するのは難しいかもしれません。しかしどの病気であっても言えることは、早期に検査を受けて治療を開始するべきであるということです。早めに病院へ行き、子宮体がんをはじめとする病気の可能性についてしっかり検査してもらいましょう。
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