【産婦人科医監修】神経管閉鎖障害は葉酸で予防?エコーでわかる?原因・症状・確率・治療法についても解説

妊娠初期に起こる「神経管閉鎖障害」は、発生頻度は決して高くありませんが、 胎児に重大な影響をおよぼす病気のひとつです。原因や症状について気になる妊婦さんも少なくないでしょう。発症リスクを下げる予防法はあるのでしょうか。ここでは、神経管閉鎖障害の診断方法や、原因、症状、確率、治療法、葉酸摂取との関連性について解説します。

22491

本ページはプロモーションが含まれています

この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 神経管閉鎖障害とは?
  2. 神経管閉鎖障害の原因・症状・確率
  3. 二分脊椎と無脳症の特徴
  4. 神経管閉鎖障害はいつわかる?検査方法は?
  5. 神経管閉鎖障害の治療法と予後は?
  6. 神経管閉鎖障害は葉酸で予防できる?
  7. 葉酸の摂取と肥満予防で神経管閉鎖障害のリスクを下げよう

神経管閉鎖障害とは?

神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)は、英語での病名を「Neural Tube Defects」といい、頭文字をとって「NTD」と略されることがあります。神経管閉鎖障害は、妊娠4~5週目の妊娠初期に起こるもので、「神経管欠損症」と呼ばれることもあります。

神経管は、赤ちゃんの生命維持に欠かせない脳や脊髄など中枢神経の元となります。神経管閉鎖障害は、その名の通り神経管がうまく閉じなくなる病気です。最近の研究によって、発症に葉酸の摂取不足が関わっていることがわかったため、厚生労働省や日本産科婦人科学会などから、神経管閉鎖障害の予防のための葉酸摂取が奨励されています(※1,2)。

なぜ神経管閉鎖障害が起こるのか、原因や症状、発症率について確認しておきましょう。

神経管閉鎖障害の原因・症状・確率

葉酸不足・遺伝・肥満が主な原因

神経管閉鎖障害の原因は、はっきりとわかっていませんが、ママの葉酸不足や肥満によってリスクが上がるといわれています。葉酸不足が神経管閉鎖障害のリスクを高める理由は、葉酸が赤ちゃんの細胞の増殖に深く関わっているためです。

妊娠初期は、胎児の新しい細胞がどんどん増える時期です。このときに葉酸が不足していると細胞の増殖がさまたげられ、神経管の形成に影響がおよぶ可能性があります。葉酸の摂取不足の他、遺伝で葉酸が不足しやすい体質であることも要因として考えられます。

肥満の妊婦さんは神経管閉鎖障害のリスクが高いといわれていますが、その理由については詳しくはわかっていません。肥満は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などのリスクも高めるとされているので(※3)、カロリーの摂りすぎには気をつけるようにしましょう。また、日ごろから運動不足の人も肥満になりやすいので注意が必要です。

二分脊椎と無脳症の2種類

神経管閉鎖障害を大きく2つに分けると、神経管の下部に閉鎖障害がおこる「二分脊椎(にぶんせきつい)」と、神経管の上部の閉鎖障害によって引きおこされる「無脳症(むのうしょう)」に分類されます。

お腹の赤ちゃんが二分脊椎や無脳症である確率が高い場合、妊婦さんの血液から赤ちゃんの先天性疾患の可能性について調べる母体血清マーカー検査(=クワトロテスト)では、AFPという成分が高い値で測定されます。母体血清マーカーは、あくまで先天性疾患が起こる確率を予測する検査なので、確定診断ではありません。確定診断のためには羊水検査をする必要があります。

発症率は1万人に5~6人

神経管閉鎖障害の割合は、1万人あたり約5~6人とされています(※4)。発生率は0.05~0.06%です。確率は高くありませんが、神経管閉鎖障害のリスクを高めるとされる葉酸不足や肥満に注意するようにしましょう。

二分脊椎と無脳症の特徴

二分脊椎

本来は、脊椎の骨が脊髄の神経組織を覆って保護しています。二分脊椎(にぶんせきつい)では、神経組織が脊椎の骨によって覆われていないため、神経組織が損傷したり癒着したりすることで、さまざまな症状が引きおこされます。腰椎や仙椎の神経組織が壊されることが多く、障害がおこったところから下の運動機能と知覚が麻痺する他、直腸や膀胱の機能に悪影響がおよぶ可能性があります。

また、出生後に水頭症を発症することが多いとされています。水頭症は、脳内の脳脊髄液が過剰にたまる病気で、神経に影響をおよぼすことで視力の低下や眼球の動きに関わる障害などが起こることがあります。

どの部分の神経組織が損傷しているかによって症状が異なるため、個人差が非常に大きいことも二分脊椎の特徴です。症状によっては、生涯にわたってリハビリが必要になるケースもあります。

無脳症

神経管の上部に閉鎖障害がおこると、脳の形成に問題が発生し、無脳症になることがあります。無脳症は、生命維持に大きな役割を果たす脳幹の多くが失われているため、健康な胎児と比べて流産や死産の可能性が高くなります。無事に生まれたとしても数日~数週間しか生きられないことが多いようです。

神経管閉鎖障害はいつわかる?検査方法は?

神経管閉鎖障害は、妊娠4~5週頃に起こります。実際に神経管閉鎖障害と診断できるのは、二分脊椎が妊娠4ヶ月以降、無脳症が妊娠11~14週頃です。どちらも、エコー検査によって赤ちゃんの手足や頭部などの特徴から診断されます。また、母体血清マーカー検査を受けた場合、AFPの値が高く測定されることから、診断の一助となることがあります。羊水検査によって診断されることもあります。

神経管閉鎖障害の治療法と予後は?

二分脊椎は、治療によって改善することはできないといわれています。二分脊椎の症状による運動機能の麻痺に対しては、リハビリや車いすの利用を検討することになるでしょう。直腸や膀胱の機能の障害に対しては、浣腸や洗腸、導尿などによってできるだけスムーズな排泄・排尿を促します。

無脳症も、残念ながら具体的な治療法は発見されていません。脳が欠損していても、各臓器の機能に問題がおこっていない場合はママのお腹の中で亡くなることは少ないといわれています。しかし、出生後は早くに亡くなるケースが多いため、悩んだ結果、人工妊娠中絶を選択する妊婦さんもいます。

神経管閉鎖障害は葉酸で予防できる?

神経管閉鎖障害は、葉酸を十分に摂取することで予防できる可能性があります。葉酸の摂取量や摂取時期などについて確認しておきましょう。

葉酸とは

葉酸はビタミンBの一種で、細胞の中でホモシステインというアミノ酸が別のアミノ酸であるメチオニンに変化する現象に関わっています。メチオニンは、身体のあらゆる組織を構成するタンパク質と細胞の増殖に必要なDNAの合成において、重要な役割を果たしています。

そのため、葉酸の摂取が胎児の成長に必要と考えられているのです。葉酸は、レバーや大豆製品、ホウレンソウ、果物などに多く含まれています。

葉酸を摂取すべき時期と量

妊活中・妊娠の可能性のある時期(妊娠1ヶ月前~妊娠3ヶ月)
妊娠中(妊娠4ヶ月~)
一般的な女性(18歳以上)240μg240μg
付加推奨量+400μg(サプリメントなど)+240μg
合計推奨量640μg480μg

厚生労働省は、神経管閉鎖障害を防ぐことを目的として、妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月までの女性に対して普段の食事に加えて栄養補助食品などから1日あたり400μg(マイクログラム)の葉酸を摂取するよう推奨しています(※1)。また妊娠4ヶ月以降の妊娠中の女性に対しては、通常の推奨摂取量に加えて240μgの葉酸を食事から摂取することを推奨しています(※1)。

葉酸摂取以外の予防法

葉酸が不足しやすい遺伝的体質の場合、残念ながら対策を講じることは難しいといえます。肥満については、普段の食事などを注意することで防げるでしょう。胎児にしっかり栄養を届けようと、つい食べすぎてしまう妊婦さんもいるかもしれません。神経管閉鎖障害は妊娠初期におこるので、妊娠前からカロリーの摂りすぎや運動不足に注意しましょう。

同じものばかりを食べる食生活を続けると、太りやすい体質になります。また、過度なダイエットはリバウンドが懸念されるので、炭水化物や脂質を制限しすぎないことが大切です。不足しやすいビタミンやミネラル、食物繊維などを意識的に摂りましょう。

また、運動する時間がない場合には、階段を使う、最寄り駅より前に降りて一駅分歩くなど工夫してみると良いかもしれませんね。

葉酸はサプリでの摂取がおすすめ

野菜や果物に含まれる葉酸(食事性の葉酸)はバランスの良い食事を心がけることで摂取できますが、熱や水に弱いため、50%ほどしか体内に吸収されないという弱点があります(※1)。そのため厚生労働省は、とくに積極的に葉酸を摂取する必要がある妊活中や妊娠初期の女性に対して、食事からの葉酸の摂取に加えて吸収率の良いモノグルタミン酸型の葉酸(合成葉酸)400μgをサプリメントなどから摂取することを推奨しています(※1)。

ただし、葉酸の過剰摂取には注意が必要です。厚生労働省では、合成葉酸は1000μg/日を上限としています(※5)。サプリメントを使用する際は摂取目安量を守るよう心がけてください。

出典:belta-ad.jp
ベルタ葉酸
¥1,980〜(2023/10/05 時点)

[広告]

妊活中~妊娠3ヶ月の女性は葉酸の積極的な摂取が望ましいとされています。厚生労働省は妊娠可能性のある女性に対し、食事からの摂取に加えて1日400μgの葉酸を摂取することを推奨しています。 ベルタ葉酸からは400μgの葉酸を手軽に摂取できるほか、鉄分やカルシウム、ビタミン、ミネラルなどが摂取でき、妊娠中の健康維持に役立ちますよ。

葉酸を効率良く摂取できるように体内にとどまりやすい「酵母葉酸」を使用している点もこだわりポイントのひとつ。香料、着色料、保存料などを使用していないところもうれしいですね。サプリメントの大きさは直径9mmと小さく比較的飲みやすいでしょう。

はぐくみ葉酸
¥1,980〜(2021/07/27 時点)

はぐくみ葉酸は、レモンから抽出された食事性葉酸が含まれるサプリで、天然由来の成分が配合されている点が大きな特徴です。オーガニックのレモンを使用している点もうれしいポイントのひとつですね。 MP認定工場で製造されているため、安全管理が行き届いているといえるでしょう。

購入後に販売元に問い合わせをすると、1,000人以上の妊活・妊娠中の食事のサポート実績がある、専任の栄養士さんから出産までの食事について継続的にアドバイスを受けることもできます。サプリを飲むだけではなく、日頃の食事から改善し、自分の身体や赤ちゃんの健康を維持したい方におすすめですよ。

メルミー
¥2,980〜(2022/12/15 時点)

メルミーの魅力は、産婦人科医と管理栄養士によるダブル監修を受けていることです。葉酸のほか鉄やカルシウムなど、妊娠中に特に重要な17種類の栄養素を配合し、内14種類の栄養素については厚生労働省の定める栄養機能食品の基準値をクリア。「無添加」なのも嬉しいポイントですね。

厚生労働省が定める管理基準を満たしたGMP認定工場で生産されているほか、放射能検査や残留農薬検査もクリアして品質にこだわって作られています。また、配合されているすべての成分について、原産国と最終加工国の両方が公開されています。

葉酸の摂取と肥満予防で神経管閉鎖障害のリスクを下げよう

神経管閉鎖障害は、発症する確率は高くありませんが、胎児の身体に大きな影響をおよぼす病気です。治療法はありませんが、予防することならできます。葉酸不足や遺伝、肥満などのリスク要因のうち、葉酸の摂取と肥満は日々の食生活や運動習慣に気をつけることで対策できるでしょう。妊娠を望んでいる方は日々の生活を一度見直し、葉酸の摂取と肥満の防止に努めてみてはいかがでしょうか。

※この記事は2022年3月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。