【産婦人科医監修】無痛分娩の体験談!分娩の流れやリスクは?本当に痛くない?
麻酔を使い、お産の痛みを軽減させながら出産できる「無痛分娩」は、ここ10年程のあいだで広まってきた分娩方法です。今では無痛分娩を選択する人も増えましたが、実際どのような流れで進むのでしょうか。筆者の体験談をもとに、無痛分娩のメリット・デメリット、無痛分娩の流れやリスクをお伝えします。
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この記事の監修
目次
無痛分娩とは?リスクはある?
麻酔を使用する分娩方法
無痛分娩とは、麻酔の力でお産の痛みを軽減させて出産する方法です。麻酔の方法は硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔のふたつの方法があり、どちらの方法で行うかは病院によって違いがあります。
硬膜外麻酔は、脊髄を覆う硬膜の外側の硬膜外腔に細い管を入れて麻酔を注入します。一方の脊髄くも膜下麻酔は、硬膜の内側のくも膜下腔に細い注射針で局所麻酔を施す方法です。硬膜外麻酔の方が長時間の分娩に対応できるという違いがあります。筆者が出産した病院では、必要に応じて麻酔薬を注入できる硬膜外麻酔の方法が用いられていました。
無痛分娩のメリットとデメリット
無痛分娩のメリットとして、痛みが軽減されることでお産の疲労が少なく、産後の回復も早いことがよくあげられます。また一般的に、お産の強い痛みに耐えているときはママから赤ちゃんへ届けられる酸素の量が減り、無痛分娩で痛みをやわらげることによって赤ちゃんへの酸素の供給量が増えるといわれています。
反対に、無痛分娩では無痛分娩は陣痛が弱くなる傾向があり、陣痛促進剤を使用したり、吸引鉗子分娩となったりするリスクがあります。また、麻酔の効き目には個人差があり、無痛分娩を選択しても麻酔の効果が薄く痛みを感じることもあります。100人に1人程度というまれな確率ですが、麻酔用のチューブを入れるときに硬膜という場所が傷つき頭痛が起こるケースや、かゆみや血圧の低下がみられることもあります。
無痛分娩は麻酔を使うため、処置をする医師やスタッフのいる時間に行われるのが一般的で、ほとんどの病院が計画分娩で行います。そのため、予定日より前に分娩が始まった場合や夜間の分娩には対応できない可能性があるのも無痛分娩のデメリットといえるでしょう。
病院によっては無痛分娩を実施していないこともあるため、里帰り出産を希望している場合は事前の確認が必要です。このほか、自然分娩に比べて費用が高い傾向がある点や、事前にカウンセリングや無痛分娩の講座を受けなければいけない病院もあることなども無痛分娩のデメリットのひとつかもしれません。
無痛分娩に決めた理由
そもそも筆者が無痛分娩を知ったのは、妊娠前に無痛分娩の体験記をマンガで読んだことがきっかけでした。痛みを軽減した状態で出産できるメリットから「将来的に自分も出産することがあったら、選択肢のひとつとして無痛分娩も加えよう」と、自然な流れで思っていましたね。
実際に妊娠が判明して、地域の病院を調べているときも「無痛分娩」が可能かどうかも条件のひとつにあげて探しました。幸い、自宅から近い場所に無痛分娩が可能な病院を見つけ、最初の妊娠確定の診察から出産までお世話になりました。無痛分娩で出産したい場合、妊娠34週前後にその旨を伝えれば良いという比較的ゆったりとした病院だったため、ギリギリまで自然分娩にするか無痛分娩にするかを考えることができたのも、ありがたかったですね。
筆者の場合、お腹の赤ちゃんが妊娠8ヶ月頃から急成長して平均より大きめだと分かり、少しでも分娩をスムーズにしたいという思いと、やはり無痛分娩という分娩法自体に興味があったため、リスクも承知したうえで無痛分娩を選択しました。
無痛分娩の体験談:無痛分娩日を決めるタイミング
筆者が出産した病院では、妊娠38~40週の出産予定日が近づいてきたタイミングで分娩日を決めるのが通例のようでした。
しかし筆者の場合、お腹の赤ちゃんが平均より大きく育っており「赤ちゃんがこれ以上大きくなると分娩が大変なので、なるべく早い出産が望ましいです。ですが、赤ちゃんが出てくるための子宮口がまだ開いていないため、開いてきたタイミングで分娩日を決めます。」と、妊娠36週の段階で先生から言われました。この時点で「予定日より早い出産になりそう」とドキドキしたのを覚えています。
実際に分娩日が決められたタイミングは翌週の妊娠37週の健診で、出産予定日より1週間早い日が分娩日として決定しました。
無痛分娩の体験談:前日の流れ
病院到着後にしたこと
分娩予定日前日の午後から入院するために病院へ。入院の数日前から不規則なお腹の張りとおしるしが来ていたので、「決めた分娩日より、先に陣痛が来るのでは?」とソワソワした日々でした。
病院に着くと、まずはいつもの妊婦健診と同じように血圧測定からスタートしました。入院する部屋に通されてもホッと一息つく暇はありません。すぐにトイレと着替えを済ますように指示され、赤ちゃんの心拍をはかる機械をお腹につけてベッドで40分間過ごしました。
機械を通して「ドクドクドク…」と規則的に聞こえてくる赤ちゃんの心音が、明日には機械を通さなくても聞こえるようになるのかと思うと、不思議な気持ちになりましたね。
分娩誘発の処置
その後は、分娩室に移動して先生による診察です。「子宮の入口が、明日の分娩にちょうど良いやわらかさになっていますね。でも、開き具合がまだまだなので処置をしますね。」と言われ、子宮口に水分を吸収するとふくらむ棒のようなものを何本か入れられました。
先生いわく、この処置でそのときはまだ1~2cmの子宮口が次の日の朝には3~4cmに開き、お腹も定期的にはってくるということでした。今思うと、これは分娩を誘発させるためのラミナリアと呼ばれる処置だったのかもしれません。
この処置の後には早々に、産褥用ナプキンがセットされた産褥用ショーツを看護師さんにはかせてもらい病室へ戻りました。しかし、病室に戻る際の階段で股間から水があふれ出るような感覚が…。「これは破水でしょうか?」と、とても焦って看護師さんに聞くと「先ほどの処置で使用した生理食塩水です」と言われホッと一安心したのも、今となっては良い思い出です。
食事ができるタイムリミット
無痛分娩で使用する麻酔の関係で、分娩日前日の22時以降は絶飲絶食と言われていたので、病院の夕食を食べた後も22時ギリギリまで食べたり飲んだりしていました。基本的に翌日も、麻酔を使用している間は飲食ができないので、次の食事は赤ちゃんを産んだ後ということになります。
この夕食後には、定期的にお腹の張りも感じるようになっていたのですが、いつもと変わらない激しい胎動も感じていたので「本当に明日出てきてくれるのだろうか」と思いながら眠りにつきました。
無痛分娩の体験談:当日の流れ
無痛分娩前の処置
無痛分娩当日の朝は早かったです。午前6時の無痛分娩前の浣腸からはじまりました。「なるべく我慢してから出してね」と看護師さんにいわれたものの数秒しか我慢できず、すぐにトイレに直行。人生ではじめての浣腸だったので、効果に驚くと同時にどれくらいの我慢が適正だったのか疑問に思ったのを覚えています。
ただし、無痛分娩前に浣腸を行うかどうかは病院によります。すべての無痛分娩で浣腸を行う病院もあれば、排便がない妊婦さんに対し必要に応じて浣腸を行う病院もあります。病院によっては前日までに浣腸を済ませるケースや、無痛分娩であっても浣腸をしないケースもあるようです。
麻酔開始
浣腸を終えると分娩室に移動です。このときで、だいたい朝の7時前後だったと思います。まずは水分を補給するための点滴が注入され、次に麻酔用のチューブを背中に入れるための麻酔が行われました。この麻酔が少し痛かったことを記憶しています。
それ以降の、麻酔用のチューブが実際に背中に挿入されるときや、テストとして少量の麻酔を入れられているときなどは特に痛みを感じませんでした。ただ、麻酔を注入された瞬間に背中から腰にかけてジワーと冷たさが伝わってきたのが、とても不思議な感覚でしたね。
また、固定してある背中の麻酔のチューブをずらさないようにするために、自分で姿勢を変えないよう指示がありました。寝返りを打ちたいときは、看護士さんをその都度呼ぶのですが、好きなときに好きな姿勢ができないことは少しストレスでしたね。
陣痛促進剤
筆者の場合、なかなか子宮口が全開にならず途中から陣痛促進剤が使用されました。すると、薬の効果かお産が瞬く間に進み、同時に強い痛みがやってきました。痛みが強いことを先生に伝えると、麻酔を背中から入れてもらえます。この1回の麻酔の注入で、だいたい1時間半~2時間ほど麻酔がきく感じでしょうか。
麻酔がきいている間は、立ち会っていた夫と普通に会話ができました。お腹のはりと強い生理痛のような痛みをときどき感じましたが、麻酔のおかげでかなり痛みが軽減されていたと思います。というのも、麻酔が切れてくるととてつもない痛みがやってくるのです。私の場合は赤ちゃんが生まれるまで何回か麻酔を入れてもらいました。
麻酔をしていても赤ちゃんが下がってくる感覚がわかり、いきむことができたのは嬉しかったですね。分娩台にあがって約10時間。3600gの赤ちゃんにようやく出会えたのは、夕方の17時になるころでした。
無痛分娩の体験談:無痛分娩後の身体の様子
出産直後は軽い脱水症状に
分娩台の上でつらかったのは、姿勢を自由に変えられないことと飲食ができないこと。水分補給のための点滴をされていても、それ以上に汗をかいていたためか常にのどが渇いた状態でした。
その為出産直後は、軽い脱水症状がありました。通常のお産より出血量が少し多かったために貧血も起こり、寒気がひどかったです。先生から「もう飲んでもよいですよ」と言われ、ゼリー飲料を口に入れたときは、身体がみるみる元気になっていくのを感じました。水分と鉄分は本当に大事ですね。
産後の流れは自然分娩とほとんど同じ
赤ちゃんを生んでからは、自然分娩の妊婦さんと基本的に同じです。出産後2時間ほど分娩室で過ごし、問題がなければ麻酔用のチューブと点滴を抜いてもらい自分の病室に戻るという流れでした。
ただ筆者の場合、貧血がひどかったため他の人より長めに分娩室に残り、看護師さんや夫に介助してもらいベッドのまま病室に戻りました。正直なところ、分娩中より出産後の数時間の方が意識がもうろうとしていてつらかったですね。
筋肉痛や痔に驚く
自然分娩の人と同じように、無痛分娩でも産後6時間後に歩行を開始してOKでした。小さい歩幅ながらも歩いて元気に過ごすことができたので「無痛分娩のおかげかな」と思った出産翌日でした。しかし、分娩中は麻酔がきいていたため気づかなかったのですが、身体のいろいろなところに負担をかけていたようで全身筋肉痛でしたね。
加えて、産後に驚いたのはひどい痔ができたことです。先生の診察では「赤ちゃんが大きかったことと、麻酔の影響で力みすぎたことに気づかなかったのが原因かもしれません」と言われ、つくづく出産は産んでからが大変だと感じました。
無痛分娩を通して感じたこと
筆者は初産で無痛分娩を選択したので、自然分娩と一概に比較はできないのですが、看護師さんからは「お腹の赤ちゃんが大きかったので、自然分娩だったらさらに10時間くらい時間がかかっていたかもしれませんね」と言われました。
無痛分娩によって分娩がスムーズに進行したこと、お産の痛みに気をとられずに赤ちゃんと対面できたこと、そして何より母子ともに健康に出産できたことは、今でもありがたく感じています。
この記事はあくまで筆者の体験談です。無痛分娩を選択するときは家族とよく話し合い、メリットやデメリットをしっかり医師から聞いたうえで決めるようにしてくださいね。
無痛分娩という分娩方法を希望していても、早めに陣痛がきて自然分娩になったり帝王切開になったりするケースもあります。お産はケースバイケースなので、自分の身体や赤ちゃんにあった分娩方法で、母子ともに健康な状態で赤ちゃんに会えると良いですね。
※この記事は2024年9月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。