【産婦人科医監修】帝王切開の手術時間は?術前検査から当日の流れについて
双子や逆子、帝王切開で出産したことがある場合などには帝王切開での出産になることがあります。帝王切開での手術にかかる時間、傷が治る時間などさまざまな部分が気になる人は多いかもしれません。帝王切開にまつわるさまざまな「時間」について解説します。
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目次
帝王切開と自然分娩、分娩時間に差はある?
出産方法は大きく分けて2種類あり、自然分娩(経腟分娩・普通分娩)と帝王切開があります。自然分娩は産道を通って赤ちゃんが腟から生まれる方法で、帝王切開は手術によりお腹を切開して赤ちゃんを取り出す方法です。出産というと自然分娩をイメージする方が多く、出産には時間がかかるイメージがある人が多いかもしれません。
自然分娩では個人差があるものの、陣痛開始から赤ちゃんの誕生まで初産婦は12時間から16時間、経産婦は5時間から8時間かかるといわれています。一方で、帝王切開の手術の時間は処置内容にもよりますが、1時間前後ほどで終わることが多いようです。自然分娩の場合は陣痛から誕生までの時間となるため大きな時間差があるようにみえますが、子宮口が全開になり赤ちゃんが誕生する時間のみであれば初産婦が平均50分、経産婦が平均20分です。個人差や体感も考慮すると、どちらが長い・短いと判断するのは難しいかもしれません。
二人目、双子、逆子、破水、帝王切開になる原因
帝王切開は自然分娩が難しいと判断された場合に、母子の安全を守るために実施される手術です。近年、日本での帝王切開率は増加傾向にあり、4人から5人にひとりが帝王切開で出産しているといわれています。帝王切開には、あらかじめ日時を決めて実施する「予定帝王切開」と緊急時に状況に応じて実施が決定する「緊急帝王切開」があります。
予定帝王切開では、以前に帝王切開で出産をしたことがある・逆子・双子・前置胎盤・子宮筋腫などの合併症がある場合に実施されることが多いです。緊急帝王切開では、お産が進まない、お産が止まった・赤ちゃんの心拍異常といった場合に実施されます。破水の場合には一定の時間が経過してもお産が始まらない場合には感染症予防の観点から帝王切開になることがあったり、逆子や双子の場合には状況や病院によって自然分娩になったりと、それぞれの妊婦の状況にあわせて医師が適切な判断を行います。
帝王切開が決まる時期、手術までに検査すること
帝王切開手術は、妊娠後期に時期を決定します。帝王切開の原因となるものにより異なりますが、基本的には自然分娩を目指して経過を観察することが多いため、正産期にあたる妊娠37週から41週のあいだの分娩を目指し、妊娠36週前後に決定することが多いようです。
帝王切開手術の前には、さまざまな検査を行い手術に向けて準備をします。血算などの血液検査や心電図、必要に応じて胸部エックス線撮影、輸血用のクロスマッチ採血などが行われます。帝王切開の原因にもよりますが、必要に応じて合併症などの経過確認なども行われます。
帝王切開手術前日から当日
帝王切開では手術前日から入院となるケースが多いです。手術前日から術後1日に関しては、状況によりさまざまな行動制限がかかります。食事やトイレ、シャワーといった制限が代表的でしょう。食事に関しては、手術前日ごろから絶飲食になり術後当日に関しては点滴のみ、術後2日目あたりから流動食から再開されます。トイレに関しては、術前までは制限はありませんが、術後は膀胱に尿道カテーテルと呼ばれるチューブを入れます。シャワーには術後数日は入れず、身体をふくだけになります。
術後1日は安静となり、ベッドで横になったまま過ごします。問題がなければ翌日よりトイレなどに行けるようになります。それぞれの制限は症状や状況により異なるため不明点があれば担当の医療スタッフに確認しましょう。
帝王切開の手術時間はどれぐらい?
帝王切開の手術時間はおよそ1時間といわれていますが、処置内容や他の手術とあわせて行う場合など状況によって手術の流れやかかる時間は前後します。帝王切開手術では麻酔の種類や切開方法、縫合方法といった細かな部分が状況にあわせて変わります。緊急帝王切開・予定帝王切開・既往帝王切開と呼ばれる2回目以上の帝王切開、いずれのケースでも手術時間の長さはそのときの状況によって所要時間が決まるでしょう。今後のための避妊として卵管結紮(らんかんけっさつ)などの手術を同時に行うと、さらに時間がかかる可能性は高いです。
帝王切開で用いられる麻酔の種類としては、手術中に意識がなくなる「全身麻酔」と一部の神経のみに効果を与える「腰椎麻酔(下半身麻酔)」がありますが、母子への影響が少ないといわれている腰椎麻酔を用いるのが一般的です。切開方法としては縦に切るケースと横に切るケースがありますが、現在は横に切る方法が主流であり、縦に切るのは緊急時などの場合のみとなります。縫合方法は傷の状況やアレルギーの有無などで医療用の糸やステープラー(ホチキス)、テープ、接着剤などが用いられます。
帝王切開の手術で用いられる麻酔の効果持続時間
帝王切開に用いられる麻酔には、手術中に意識がなくなる「全身麻酔」と一部の神経にのみ効果を与える「腰椎麻酔」の2種類があります。腰椎麻酔にはさらに「脊髄くも膜下麻酔」「硬膜外麻酔」「脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔」という種類があります。基本的には帝王切開では母子への影響が比較的少ないといわれる腰椎麻酔が用いられることが多いといわれていますが、どの麻酔が用いられるかは緊急度や他の手術の有無、アレルギーなどにより決定します。全身麻酔・腰椎麻酔ともにそれぞれ利点や欠点があり、副作用もあります。手術前には麻酔による副作用などの説明が担当の医師・麻酔医からあるため、気になる点があれば質問しましょう。
麻酔に用いる薬の種類によって、麻酔の効果が出る時間・効果が持続する時間は異なります。腰椎麻酔に用いられる薬であれば10分から30分ほどで効果が現れ、45分から120分程度効果が続くものがあるようです。効果が現れる時間・効果が切れる時間、また麻酔の利き方をふくめて個人差はあります。耐えられないような痛みを感じる場合には近くの医療スタッフに相談しましょう。腰椎麻酔の場合には痛みは感じなくとも、触られる・引っ張られる・押さられる感覚は残っています。
術後のさまざまな痛み、回復までにどれぐらい時間がかかる?
帝王切開手術後には傷の痛み・かゆみ、産後に子宮が収縮することにより痛みを感じる後陣痛といったものがいつごろ回復するのかが気になる人は多いでしょう。それぞれの回復までにかかる時間は個人差があり、適切なケアを行なっているかどうかによっても正常な回復までに要する時間は変わるでしょう。
帝王切開手術後の傷の痛みに関しては、手術直後であれば座薬などの痛み止めの薬を処方してもらえる場合もあります。退院までに良くならないようであれば、退院後もしばらく使えるような量の痛み止めを処方してもらえないか相談すると良いでしょう。術後の傷に関しては術後3日程度で傷口自体はふさがることが多いですが、その後も傷口の下では炎症が続いており、約1ヶ月程度のあいだ新しい細胞が傷を埋めていき、約1年程度をかけて傷が目立たない肌色に近づいていきます。
傷の痛み以外で気になるものとしてよくあげられるのが、「後陣痛」と呼ばれる子宮収縮の痛みです。後陣痛は自然分娩の場合にも、帝王切開の場合にも起こる可能性があります。ただし個人差があり、ひどい痛みが続く人もいれば痛みを感じない人もいます。妊娠中に大きくなった子宮が産後に元に戻ろうとすることで痛みを感じます。一般的には一定期間を過ぎれば自然と痛みはなくなります。
時間帯によって料金が変わる?時間外加算は出産でも
出産費用について気になる人は多いでしょう。出産費用は入院日数・部屋代や祝い膳などの医療目的以外の費用によって大きく変わることがあります。出産は病気ではないため自然分娩自体は自費診療になりますが、帝王切開手術や各種処置・投薬や検査は健康保険が適用されます。また、時間帯によって出産時の金額が変わることをご存知でしょうか。「時間外加算」と呼ばれる仕組みで、病院が定めた診療時間外の夜間・休日には料金が別途加算されます。なお、医療機関や診療所によって加算金額は異なる場合があるため、詳細は出産予定の病院に確認しておいても良いでしょう。
手術、痛み、傷の回復などにかかる時間は人それぞれ
手術の時間や痛み、傷の回復までの時間には、それぞれ平均はあれども個人差があります。妊娠中の症状や状況などと同じように、他の人のケースは参考にする程度にすると良いかもしれません。
不明点があれば専門の医師や医療スタッフに質問し回答を得ることで、多少は不安が和らぐでしょう。帝王切開は自然分娩と比べるとまだまだ少ないものの、妊婦全体の約4人から5人に1人が経験する出産方法です。経験者の話を聞いたり、経験者の本などを読んだりすることで理解を深めるのも良いかもしれませんね。