スケジュール通りに出産ができる「計画分娩」とは?メリット・デメリットや費用【産婦人科医監修】
立ち会い出産や無痛分娩など、出産にはどのような方法があるのか気になりますね。近年はスケジュールが立てやすい計画分娩を希望する人も増えているようです。そこで計画分娩とはどのような出産方法なのか、その概要や選ばれる理由、想定されるメリットとデメリットについて解説します。気になる費用を産婦人科医監修で解説します。
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この記事の監修
目次
計画分娩とは?
出産日をあらかじめ決める
計画分娩とは、あらかじめ出産する日を決めて計画的に分娩を行う出産方法のことをいいます。分娩日は妊娠の経過、既往歴、医療体制、ママの希望などを踏まえて医師と相談し決定します。
人工的に分娩を誘発する
通常の出産では陣痛が自然に起こるのを待ちますが、計画分娩では予定した出産日に人工的に陣痛を起こします。これを分娩誘発といいます。分娩誘発は子宮頸管の熟化(じゅくか)、陣痛促進剤投与、人工破膜(じんこうはまく)といった方法が用いられます。
子宮頸管の熟化を目的に行われるのは、俗に「内診ぐりぐり」と呼ばれる卵膜剝離(らんまくはくり)です。医療用バルーンと呼ばれる子宮頸管拡張器を使用したり、頸管熟化薬を投与したりすることもあります。
陣痛促進剤の使用や卵膜を人工的に破る人工破膜の実施については、分娩の進行に応じて決定します。陣痛が自然に強くなれば、こうした処置を行わずに出産にいたることもあります。
産院の方針によって実施内容が異なるため、計画分娩を希望する場合は、まず計画分娩を実施しているか、どのような実施方法なのかを確認すると良いでしょう。
※子宮頸管の熟化…子宮頸管がやわらかい状態になること
※卵膜剥離…赤ちゃんを包んでいる卵膜を子宮壁から剥がすこと
計画分娩を選択する理由は?
母子の危険を避けるため
そのまま妊娠を継続しているとママやお腹の赤ちゃんに危険が生じる可能性がある場合に、医師の判断で計画分娩が選択されます。このような計画分娩を「医学的適応による分娩誘発」といいます。
医学的適応となるのは、出産予定日を経過していたり胎児発育不全があったりする場合、妊娠高血圧症候群、前期破水などがあげられます(※1)。経過が順調であっても前回のお産が急に進んだ経産婦さんは、医師の判断で計画分娩がすすめられることがあります。
要因 | 適応理由 |
---|---|
胎児側 | ・胎児救命等のために新生児治療を必要とする場合 ・絨毛膜羊膜炎 ・過期妊娠またはその予防 ・糖尿病合併妊娠 ・胎児発育不全 ・巨大児が予想される場合 ・子宮内胎児死亡 ・その他 |
母体側 | ・微弱陣痛 ・前期破水 ・妊娠高血圧症候群 ・急産予防 ・妊娠継続が母体の危険を招くおそれがある場合 |
希望する日に出産するため
働くママが増えパパの育児に対する意識も変化する中、出産方法へのニーズは多様化しています。立ち会い出産や無痛分娩の希望も増加傾向にあり、計画分娩を行う産院が増えてきました。
スケジュールが立てやすいため、「産院までの交通手段の確保が難しい」「きょうだいの預け先がみつからない」「仕事を長く休めない」といった事情を背景に計画分娩を選択する場合もあります。
このような医学的な理由以外で行う計画分娩を「社会的適応(非医学的適応)による分娩誘発」といいます。ほかにも、分娩に対応するスタッフを確保するなど産院側の管理体制を整えるという理由でも計画分娩が行われています。
計画分娩に含まれる出産方法は?
計画分娩は、子宮頸管拡張器や陣痛促進剤を使用して陣痛を起こす分娩誘発(選択的分娩誘発)を指すのが一般的です。分娩誘発は経腟分娩で行うという取り決めがありますが、母子の安全を考えて行われる予定帝王切開も計画分娩に含まれます。
また、麻酔薬を投与して分娩の痛みを軽くする無痛分娩は手厚く対応できる平日の昼間に行われることが多く、日にちを指定した計画分娩と麻酔を使用した無痛分娩を併用して実施することがほとんどです。そのため、無痛分娩を計画分娩として扱っている産院もあります。
名称 | 出産方法 |
---|---|
分娩誘発 | 主に子宮頸管拡張器や陣痛促進剤を使用する |
無痛分娩 | 主に硬膜外麻酔を用いる |
予定帝王切開 | 下腹部や子宮を切開する |
計画分娩のメリットは?
スケジュール調整がしやすい
通常の出産では陣痛がいつ起こるかわかりませんよね。そのため出産予定日が近くなると、分娩の開始にいつでも対応できるよう家族も含めて行動が制限されます。
一方の計画分娩ではパパや家族のスケジュールが調整しやすく、立ち会い出産やきょうだいのお世話をする人の予定が立てやすいのが利点です。出産に向けた準備が十分にでき、安心感も得られますよ。
ママと赤ちゃんの命を守る
妊娠を継続した場合や分娩時に生じる困難を避け、ママや赤ちゃんの命を守ることにつながることも計画分娩のメリットといえるでしょう。自宅や移動中など、産院以外で出産が進行することも防げます。
社会的適応による計画分娩では、自然に陣痛が起こるのを待っていた場合と比べ、妊娠37週以降の周産期死亡率が低かったという報告もあります(※2)。
スタッフを集約できる
自然な陣痛は昼夜を問わず起こるため、産院は夜間や休日の出産に備えスタッフを配置しています。しかし夜間や休日と比べると、平日の日中のほうが医療スタッフの人数や緊急時の対応が勝ります。その点、計画分娩なら体制が充実している平日の日中を選択でき、もしものときにも安心ですね。
計画分娩のデメリットは?
陣痛促進剤の副作用の可能性
分娩誘発を行った際に、陣痛促進剤による副作用や人工破膜による感染症、臍帯脱出(さいたいだっしゅつ)が起こる可能性があります。
陣痛促進剤の主な副作用としては、新生児黄疸や不整脈などが報告されています。また過強陣痛、微弱陣痛、胎児機能不全、子宮破裂など重い副作用が起こる可能性についても理解しておきましょう。
産院ではこうしたリスクに備え、分娩誘発の際には胎児心拍モニタリングを行い赤ちゃんの状態を慎重に観察します。異常があらわれたときは投与を中止するか量を減らして調整します。こうした副作用について必要以上に心配することはありませんが、気になることがあれば医師に確認すると良いでしょう。
※臍帯脱出…破水後に胎児が出てくる前にへその緒が腟内に突出、もしくは腟の外に出てくること
発達障害や呼吸障害
妊娠37~38週で分娩誘発を行った場合に、新生児一過性多呼吸や呼吸窮迫症候群(こきゅうきゅうはくしょうこうぐん)などの呼吸障害の発生率が高くなることが報告されています(※1)。さらに妊娠39週未満での分娩誘発は、発達障害のリスクを抱える子どもの割合が増加することが示されています。
※新生児一過性多呼吸…出生後、肺の中に水分が残っているため一時的な呼吸困難が起こること
※呼吸窮迫症候群…肺が十分にふくらまず、呼吸がうまくできなくなること
計画分娩が中止されることもある
子宮頸管の熟化が不十分だったり陣痛が弱いままだったりすると、ママや赤ちゃんの安全を優先して分娩誘発を中止することがあります。この場合、計画分娩を延期するか自然に陣痛が起こるのを待つことになります。
計画分娩の費用は?
計画分娩は通常の自然分娩にかかる費用に加え、分娩誘発に使用した陣痛促進剤や子宮頸管拡張の処置費用がかかります。ここに入院日数の延長でかかる室料や食事料、無痛分娩もしくは帝王切開の費用が加わるのが一般的です。
分娩費用や入院費用は産院によって、処置の内容によっても変わりますが、相場は自然分娩にプラスして5~20万円ほどと想定しておくと良いでしょう。
計画分娩のメリットとデメリットを知ろう
ママたちのライフスタイルや育児に対する考え方はここ数十年でさまがわりしています。自然な陣痛を待つことへのリスクやママへのサポートなど生活環境を考えると、計画分娩はママたちに寄り添った選択肢のひとつといえるのかもしれません。
しかし、計画分娩は希望すれば誰もが受けられるサービスではなく、実施にあたっては医師による慎重な判断が求められます。妊娠・出産の経過によっては想定通りにいかないこともあると理解することが大切です。計画分娩のメリットとデメリットをよく検討し、良い出産が迎えられると良いですね。
※この記事は2022年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。