【産婦人科医監修】予定帝王切開はいつ決まる?前日の準備・陣痛が来たら
さまざまな理由により「帝王切開になるかもしれない」と医師に告げられた妊婦の多くは、漠然と「怖い」と思う人が多いかもしれません。いつごろ行うのか、費用や前日までに準備すべきものはあるか、手術前に陣痛や破水が起こったらどうするのか、さまざまなことが気になるでしょう。体験談を交えながら予定帝王切開について解説します。
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目次
経腟分娩と帝王切開、なぜ分娩方法が2種類あるの?
お産方法には大きくわけて「経腟分娩」と「帝王切開」の2通りの方法があります。自然分娩とも呼ばれる経腟分娩は、自然に任せて産道を通って赤ちゃんが生まれてくる方法です。帝王切開は手術を行い、ママのお腹から赤ちゃんを取り出す方法です。
帝王切開の割合は近年増加しており、全分娩のうち約20%、約5人にひとりが帝王切開で出産しています。帝王切開が必要だと判断されるケースは、逆子や双子以上の妊娠、病気などが原因で経腟分娩が困難である、一刻を争う緊急事態であるといった理由があげられます。帝王切開は、母子の安全を守るための手段であるといえるでしょう。
一般的に、帝王切開で出産した経験のある妊婦は次の出産でも帝王切開となることが多く、逆子も帝王切開が選択されますが、必ず帝王切開となるかどうかは病院や状況によって異なり、経腟分娩になることもあります。
予定帝王切開と緊急帝王切開の違いとは?
予定帝王切開
「予定帝王切開」は、事前に日時を決めて手術を行います。予定帝王切開を行う理由には、逆子や双子以上の妊娠、以前に帝王切開で出産したことがある人や子宮の手術をしたことがある人の出産、前置胎盤、巨大児などがあげられます。
緊急帝王切開
予定帝王切開があらかじめ日時を決めて行うのに対し、何らかの理由で経腟分娩を中断し、医師の判断で緊急的に帝王切開に切り替えることを「緊急帝王切開」といいます。緊急帝王切開はお産がなかなか進まない・止まってしまった、分娩中に赤ちゃんの心拍が弱くなった、常位胎盤早期剥離を発症した場合など、一刻も争う状況下で実施されます。
予定帝王切開のスケジュールはいつ決まる?
臨月にあたる妊娠10ヶ月目の妊娠37週0日目から妊娠41週6日目までの出産を「正期産」と呼びます。予定帝王切開を行う時期は陣痛が起こる前にする必要があるため、正期産前後の妊娠38週前後に行うことが多いようです。出産予定日より早まることが多いですが、母子の安全を最優先として、状況にあわせてスケジュールが決まります。
妊娠後期に入ると医師と相談の上、予定帝王切開の実施日時が決められます。ただし予定帝王切開の日程が決まっていても、胎児や母体に一刻を争うような事態が起これば、前倒しで緊急帝王切開が実施されることもあります。
任意の日にちを妊婦が選ぶことができる病院もあるようですが、緊急以外の年末年始などの休診日の手術には「時間外選定療養費」を徴収している病院もあるため確認が必要です。
予定帝王切開の入院準備、入院期間、前日の過ごし方
予定帝王切開の入院準備
予定帝王切開での入院時の持ち物は、経腟分娩の場合と大きな違いはありません。病院側でお産に必要な入院準備品を提供している場合もあるため、帝王切開用の産褥ベルトや消耗品のお産パッドなど、自分で準備しなければいけないものを確認しておきましょう。退院後の術後の傷跡ケアに市販の医療用テープを使いたい場合は、事前に医師と相談しておくと良いでしょう。
入院中に必要なケアグッズや消耗品などは、病院内の売店で購入できる場合が多いものの、回復状況によっては術後1日から数日は安静になることもあります。すぐに必要になりそうなものは事前に用意しておくと安心です。
出産は何が起こるがわかりません。予定帝王切開であっても、妊娠後期前から余裕をもって入院準備を進めておきましょう。
予定帝王切開の入院期間と前日の過ごし方
予定帝王切開の場合、入院期間は経腟分娩よりも長くおよそ1週間から10日間前後となるのが一般的です。予定帝王切開の入院日は病院によって異なり、手術の前日もしくは手術当日の朝からとなるケースが多いようです。
手術前日の活動制限は基本的にありませんが、手術当日は術前の飲食が制限されます。病院によっては、手術前日の夜から食事制限(絶飲食)が始まります。手術前には、手術の手順やメリット・注意点などの説明が改めて行われ、必要に応じて除毛やお腹の張り・胎児の心音の確認など検査や準備が進められます。
予定帝王切開手術の流れ
病院によって詳細は異なりますが、事前準備→術前の処置・検査→手術開始が大まかな流れとなります。わからないことがあれば質問し、少しでも不安をなくして手術に臨みましょう。
事前準備では手術前日もしくは当日の朝に入院し、手術前の説明を受け同意書を提出します。その後、剃毛や排便、術前の検査、感染予防の点滴や麻酔前の注射などを行います。処置や検査が済んだら、手術開始です。手術室に移動し、尿道カテーテルの挿入や麻酔の導入を行い、赤ちゃんの誕生に向け手術が進められます。
胎児をお腹から取り出した後は、医療用の糸やステープラー(ホチキス)でお腹を縫合します。手術当日は絶飲食となり、ベッドの上で安静に過ごします。手術自体は1時間から2時間前後で終わります。
予定帝王切開の切開方法と麻酔の種類
帝王切開で使用する麻酔の種類は大きく分けて「局所麻酔」と「全身麻酔」がのふたつがあります。予定帝王切開では、母体や赤ちゃんへの影響が少なく、下半身だけに効果がある局所麻酔で行われるのが一般的です。一方の全身麻酔は麻酔の効き目が早いため、経腟分娩から緊急性が高い緊急帝王切開に切り替えた際に使われることがあります。
帝王切開手術の切開方法には、下腹部の皮膚を縦に切る「縦切開」と横に切る「横切開」のふたつがあります。横切開は下着の縫い目に沿う形になり、傷跡が目立ちにくいといわれています。縦に切る方法は術後の傷は目立ちますが、皮膚に沿って切るため傷の治りが比較的早く出血も少なく済みます。
予定帝王切開では横切開が選択される場合が多く、緊急性が高い緊急帝王切開では手術時間が短くて済む縦切開で行われる場合があります。
予定帝王切開の費用はいくら?手当や保険を活用しよう
帝王切開の手術自体の費用は診療点数によって定められています。緊急帝王切開と予定帝王切開で値段が異なります。緊急帝王切開が22万2000円、予定帝王切開が20万1400円です。他に麻酔などの薬剤の料金が加算されます。ただし、32週未満の早産や常位胎盤早期剥離などの複雑な処置がある場合にはもう少し費用が加算されるでしょう。一般的な健康保険に加入している場合、このうちの3割が自己負担となります。
入院代中の食事や手術以外の処置代などが別途かかりますが、帝王切開手術は保険の対象になるため、入院費も3割負担で済みます。入院中の食事や差額ベッド代は病院間で差があるため、出産予定の病院での費用概算は事前に確認しておくと良いでしょう。
また出産一時金のほかにも高額療養費といった健康保険組合、国民健康保険から出る手当も活用できるでしょう。高額療養費に関しては帝王切開が決まった時点で「限度額適用認定証」を健康保険組合(国民健康保険の場合は、役所の担当窓口)に請求しておくと、出産後の精算時には限度額上限以上のお金を払わずにすみます。出産後でも「限度額適用認定証」を発行してもらうと、支払った医療費が還付されます。帝王切開となった場合は、忘れずに保険組合に問合せをしましょう。
加入している任意の医療保険では帝王切開手術が保障の対象になるのかを確認しておきましょう。妊婦は保険への加入ができない場合が多く、加入できても直近の出産に関しては適用対象外になることもあるため注意が必要です。
予定帝王切開手術での出産、産休はいつからになる?
予定帝王切開の場合に「産休(産前休業)はいつからになるのか」が気になる人は多いかもしれません。労働基準法では産前産後休業の起点はあくまでも自然の出産予定日を基準として定めています。このため勤め先の就業規則上でどう定められているかがポイントになるでしょう。勤務先の就業規則を確認し、担当者に相談しましょう。
予定帝王切開前のおしるし・破水・陣痛
予定帝王切開は、経腟分娩が難しいという判断のもとで選択される出産方法のため、万が一のときは緊急帝王切開となる可能性があります。手術予定日前におしるしや破水、陣痛などの出産間近の兆候があらわれたら、自己判断せずに病院の判断をあおぎましょう。できれば事前にそれぞれのケースでの対応を担当医に確認しておくと安心です。
おしるしは、卵膜がはがれて出血した血液が子宮頸管から分泌される粘液と混じったもので「産徴」とも呼ばれます。おしるしがあっても陣痛まで数日から1週間ほど時間があくこともありますが、陣痛のタイミングは予測できないため、病院に連絡しましょう。
一般的に破水は陣痛のピーク時に起こるといわれていますが、陣痛前に起こる破水が起こることもあるため注意が必要です。陣痛前の破水は「前期破水」といい、破水の量が少ないと、おりものや尿漏れと誤認し気づかない場合があります。少しでもいつもと様子が違うと感じたら、病院で確認することが大切です。
陣痛はお産が近づいているサインのひとつです。前駆陣痛と陣痛の見分けはつきにくく、前駆陣痛から本陣痛に移行する場合もあるため、規則的なお腹の張りがあれば迷わず病院に連絡してください。
帝王切開後の腹痛・吐き気などのトラブルや注意点
帝王切開後に腹痛・吐き気・嘔吐・熱・腰痛といった症状を訴える人は少なくありません。これらの症状は帝王切開に用いた麻酔などが原因で起こることがあります。赤ちゃんに関しても呼吸が浅くなったり、スリーピングベビーとよばれる麻酔の効果で眠そうな症状が現れたりするなどの副作用が出ることがあります。
いずれも自然と回復するか、もしくは必要な処置が行われますが、あまりにもつらい症状が続くようであれば病院のスタッフに相談しましょう。退院後も耐えられないほどの痛み・つらさであれば病院を受診しましょう。
予定帝王切開では、手術前に麻酔についての説明を受ける場があるでしょう。赤ちゃんもママも手術後しばらくすると副作用から回復しますが、不安がある場合はこのときに質問をしましょう。
また帝王切開後には眠れない・つらいといった心理的なストレスが深くかかることもあります。帝王切開と経腟分娩を比べて後悔したり、配慮の足りない周囲の声に傷ついたりする人もいます。帝王切開は母子の安全を最優先するための選択肢であるという理解があり、帝王切開後のママに対する精神的なケアができる環境だと良いですね。
予定帝王切開の不安は相談で解消していこう
予定帝王切開は、術後の傷跡や痛み・費用など気になることがたくさんあるでしょう。帝王切開も手術ではあるため、「失敗したらどうしよう」「何かトラブルが起きたらどうしよう」といった不安がある人もいるかもしれません。
比較的安全な手術だといわれていますが、予定帝王切開では手術前に医療スタッフから当日の流れや副作用など詳しい説明を聞く機会がありますので、その際にでも不安に思っていることを確認・相談しておくと良いでしょう。
※この記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。