【産婦人科医監修】破水とは?色や量、においの見分け方と破水の種類
出産予定日が近づくと、前駆陣痛やおしるしのほかに「破水」が起こることがあります。破水とはどのようなものでしょうか。実際に起きたとき、自分でそれと気づくことはできるのでしょうか。破水の種類や見分け方など基本的な知識とともに、おりものや尿漏れとの見分け方や破水後の対処法について解説します。
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目次
破水とは?
お腹の中の赤ちゃんは羊水に包まれていますが、出産が近づくと、赤ちゃんと羊水を包んでいる卵膜が破れて中の羊水が外に出てくることがあります。これを「破水」と呼びます。流れ出る羊水は、基本的にはサラサラとした粘り気のない液体です。破水の仕方は人それぞれで、いきなりドバっと大量に出る人もいればチョロチョロと少しずつ出る人もいます。また、破水が起こるタイミングは、一般的には本格的な陣痛が始まってからといわれています。
破水の色はたいてい無色透明ですが、黄色味を帯びていたり、血液が混じって薄いピンク色をしていたりすることもあります。破水したときのにおいにも個人差があり、生臭い独特なにおいや精液のようなにおいを感じる人もいれば、ほとんど無臭の人もいます。
破水の種類
適時破水
一般的な出産では、本陣痛が始まり子宮口が10cmの大きさに開く子宮口全開大になってから破水が起こります。これを「適時破水」と呼びます。
早期破水
早期破水とは、本陣痛が始まり子宮口は開き始めているものの、子宮口全開大になる前に破水することです。出産に時間がかかる場合は感染症に注意する必要がありますが、出産自体は始まっているので、早期破水をしたからといってあまり心配する必要はありません。
前期破水
本陣痛が起こる前に破水することを前期破水と言い、全体の5~10%の確率で生じます。本陣痛が始まっていないので出産に時間がかかり、適時破水や早期破水に比べて感染症にかかりやすい傾向があります。その場合は人工的に陣痛を誘発したり、抗生剤を使用して感染症を予防したりします。
高位破水
一般的な出産ではお腹の赤ちゃんの頭の付近の卵膜が破れて破水します(=低位破水)。これに対し、高位破水では何らかの理由で卵膜が赤ちゃんの頭の付近よりも上の方の位置で破れて破水します。高位破水では量が少ないことが多く、尿漏れやおりものと勘違いしてただちに気づけないことがあるので注意が必要です。
おりものや尿漏れとの違い・見分け方は?
おりものとまぎらわしい場合
臨月に入ると、おりものの量が増加することがあります。そのため下着が濡れたような感覚があると、破水したかも、と気になる人もいるのではないでしょうか。判断に迷う場合は色やにおい、粘り気の有無などの状態をみるようにしましょう。臨月のおりものは、透明や白色、クリーム色をしていて少し酸味のあるにおいがすることがあります。一方で、無色透明や薄いピンク色をしていて生臭く、さらっとした粘り気のない液体の場合は破水である可能性があります。
ただし人によってはさらっとした透明なおりものが出たり、破水でもにおいがしなかったりすることもあるので、破水かどうか自分ではわからないこともあるでしょう。破水が起こっていた場合、そのまま放置すると感染症などのリスクが高くなってしまいます。おりものか破水か色やにおいでわからないときは、自分で判断せずに病院で相談するようにしてくださいね。
尿漏れとまぎらわしい場合
臨月に入ると赤ちゃんがお腹の下の方に降りてきて膀胱が圧迫されるので、トイレが近くなったり、尿漏れを起こしやすくなったりします。そのため、妊娠中のママのなかには破水を尿漏れと勘違いしてしまう人がいるかもしれません。
尿漏れか破水かわからないときは、まずはにおいで判断するようにしましょう。尿はアンモニア臭がしますが、破水のにおいは独特で、生臭さをともなうことが多いです。また、尿漏れは自分の意思で止められる感覚があるのに対し、破水では自分の意思で止めようと思っても止められず、動くたびに流れ出てしまう傾向があります。
病院に行って診てもらった結果、破水でなく尿漏れだったら恥ずかしい、と病院に行くのをためらってしまう人もいるかもしれませんが、おりものと同様、自分で判断がつかない場合はそのままにせず病院で診てもらうようにしましょう。
こんな症状のときはどうすれば良い?
少量であったり止まったりする
破水の種類によってはチョロチョロと少しずつ流れ出ることがあります。特に高位破水をしたときにみられる症状で、なかにはしばらくのあいだ破水が止まるというケースもあります。
少量の破水であっても、卵膜が破れていることに変わりはないので、医師に診てもらう必要があります。破水が止まっていたり少量だったりするケースでも、後からだんだんと量が増えることがあります。突然ビシャッと大量の破水が起こることもあるかもしれません。病院へ向かうときはタクシーの座席などに敷けるような大きめのバスタオルを持ち、生理用のナプキンを当てておくと良いでしょう。
血液が混じっている
人によっては破水に血液が混じっていることがあります。破水に少量の血液が混ざり、ピンク色をしているような場合はあまり心配する必要はありません。破水と同時に見られる出血は出産の兆候である「おしるし」の可能性もあります。
しかし、サラサラとした真っ赤な鮮血が大量にみられる場合は、異常出血の可能性があります。破水と異常出血ではいずれにしても病院に行く必要がありますが、異常出血の場合はより緊急を要することがあるので注意が必要です。破水や出血が突然起こるとママは焦ってしまうかもしれませんが、まずは落ち着いて破水の色や出血がどのような状態であるのか確認し、医師にできるだけ正確に自分の状況を伝えられるようにしましょう。
破水に気づかない場合のリスクは?
少量の破水の場合、尿漏れやおりものと勘違いしてしまうことがあるかもしれません。しかし、破水に気づかなかった場合、さまざまなリスクが高まるので注意が必要です。具体的にはどのようなリスクがあるのでしょうか。
破水に気づかないまま長時間が経過してしまうと、感染症にかかる可能性が高まります。破水が起こると赤ちゃんを守っている卵膜は破れているので、子宮頸管を通じて入ってくる細菌に赤ちゃんが感染しやすくなってしまうからです。
また、破水に気づかないまま羊水が体外へ流れ出続けて子宮内の羊水量が減少すると、臍帯(さいたい:へその緒)が赤ちゃんよりも先に出てしまう「臍帯脱出」が起こる可能性もあります。臍帯脱出が起こると、臍帯が圧迫されて赤ちゃんに十分な酸素や栄養が届きにくくなるという問題があります。
破水したらどうすれば良い?
病院に連絡する
破水が起こったら、病院に向かう前に、破水が起こったことを医師に連絡しておきましょう。医師の指示を仰ぐことができるとともに、病院に到着することが事前にわかっているため病院側もスムースに受け入れ体制をとれるでしょう。
生理用のナプキンを当て、バスタオルを用意する
初めに大量の破水が起こった人はもちろん、最初に少ししか出なかった人も、後から大量に破水する可能性があります。生理用のナプキンやバスタオルを当てて対処するようにしておけると安心です。夜用タイプの大きめのナプキンも良いでしょう。
シャワーや入浴は避け、清潔な下着に着替える
破水すると卵膜が破れた状態になってしまっているので、細菌が体内へ入ってきやすくなっています。破水で下半身が濡れてしまうとシャワーを浴びたくなるかもしれませんが、細菌感染を防ぐため、破水後のシャワーや入浴は避け、清潔な下着に着替えるのにとどめましょう。同じように、トイレのウォシュレットも使用しないほうが良いでしょう。
自分で運転せず、タクシーなどで病院へ
破水しても、基本的には救急車を呼んだりする必要はありません。たいていの場合は病院まで自家用車やタクシーで行くことになります。自家用車で行く場合は家族に運転してもらうようにし、自分で運転するのは避けましょう。破水後すぐに陣痛が始まる可能性もあるので要注意です。破水や陣痛に備えて、陣痛タクシーなどに登録をしておくと安心ですね。出産予定の病院でおすすめのタクシー会社を紹介してもらうのも良いでしょう。
ただし、破水の量があまりにも多かったり、異常出血がみられたりする場合など、なかには救急車を呼んだほうが良いケースもあります。救急車を呼ぶべきかどうか迷った場合は病院に連絡し、医師の指示に従うようにしましょう。
破水後になかなか陣痛が起こらないときは?
破水後になかなか本陣痛が起こらないと、感染症などのリスクが高くなってしまいます。しかし、妊娠37週目以降の正産期に入ってから前期破水した人のうち、約8割は24時間以内に本陣痛が起こっています。前期破水後すぐに本陣痛が起こらないからといって、過度に不安になる必要はないでしょう。
本陣痛がくるのに時間がかかる場合は、陣痛促進剤を使って人工的に陣痛を誘発するケースがあります。陣痛促進剤には錠剤と点滴の2種類があり、陣痛が弱いときに適切な強さとなるよう促進したり、陣痛が起こらないときに陣痛を誘発したりする目的のもと使用されます。
陣痛促進剤の使用においては陣痛の痛みが強く出てしまう「過強陣痛」となる可能性もあるといわれていますが、医師の指示のもと正しく使用されれば、このような症状はほとんど起こらないので安心してくださいね。
もうすぐ赤ちゃんに会える大切なサイン
破水はお産の始まりのひとつであり、赤ちゃんからママへの大切なサインです。臨月に入ったママのなかには、いつ破水が起こるのか、緊張や心配をしている人もいるのではないでしょうか。破水の仕方は人によって異なり、おりものや尿漏れと見誤るような見た目であったり、見逃してしまうくらい量が少なかったりする場合もあります。破水が起こるタイミングや症状は、そのときになってみないとわからないものです。破水したかな、と思ったら迷わず病院で受診するようにしてくださいね。
いつ、破水が起こって入院することになってもあわてなくてすむように、予定日が近づいたら入院準備を万全にしておきましょう。破水が起こったときの対処法を改めて確認したり、病院までの移動手段を確保したりしておくことも大切です。
※この記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。