子宮口が開かない原因は?開かないときの陣痛や処置、帝王切開になるケースについて解説|産婦人科医監修
出産が始まると、子宮口は柔らかくなって赤ちゃんが通りやすいように開いていきます。しかし、子宮口がなかなか開かないケースもあるようです。子宮口が開かないときの陣痛や無痛分娩の流れはどうなるのでしょうか。ここでは子宮口が開かない原因や医療的な処置、予定日超過した場合や自分でできる対処法を産婦人科医監修で解説します。
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この記事の監修
目次
「子宮口が開かない」とはどういうこと?
ママの子宮と腟は細長い管でつながっています。この管を「子宮頸管(しきゅうけいかん)」と呼び、子宮に近いほうを「内子宮口」、腟に近いほうを「外子宮口」と呼びます。「子宮口が閉じている」という表現は、一般的に「内子宮口」「外子宮口」の両方が閉じている場合に使われることが多いようです。
出産予定日が近づくと、ママの子宮頸管は少しずつ柔らかくなっていきます。規則正しい陣痛が始まると、ホルモン分泌の影響でさらに柔らかくなり、最終的にはマシュマロのような柔らかさになります。子宮頸管が伸びて赤ちゃんが押し出されるのと同時に、子宮口も開いていきます。赤ちゃんが産まれる直前には、直径10cmくらいにまで開くのが一般的です。
予定日を超過しても子宮口がかたいままの状態が続くこと、陣痛が始まっても子宮口の開大がスムーズに進まないことを「子宮口が開かない」ということがあります。前者では、出産予定日を大幅に超過して過期産となるリスク、後者では分娩が長引いて難産になるリスクがあります。
子宮口が開かない原因は?
なぜ子宮口が開かないことがあるのでしょうか。原因は不明であることも多いですが、子宮口が開きにくい人の傾向を見てみましょう。
軟産道強靭(なんさんどうきょうじん)
赤ちゃんが産まれるときの通り道(産道)は、骨からなる「骨産道」(こつさんどう)と、筋肉からなる「軟産道」(なんさんどう)でできています。子宮口や子宮頸管、腟なども軟産道の一部です。この軟産道が平均よりもかたく、お産が始まっても伸びが悪い状態を「軟産道強靭(なんさんどうきょうじん)」と言います。
赤ちゃんの状態や骨産道に異常がなく、陣痛が起こっているのに分娩が止まったり遅くなったりする場合は「軟産道強靭」と判断されることがあります。お産が通常より長引く遷延分娩(せんえんぶんべん)や腟の裂傷による出血などのリスクがあがります。
軟産道強靭の原因はさまざまで、子宮の奇形、過去の手術や出産による子宮の傷跡、体質などが関係しているといわれています。加齢によって筋肉の柔軟性がなくなることもあり、高齢出産では軟産道強靭のリスクが上がるといわれています。
初産婦
初産婦は子宮口がかたい場合が多く、経産婦と比較すると子宮口が開きにくいといわれています。個人差はありますが、陣痛が始まってから子宮口が全開大になるまで、初産婦は10~12時間、経産婦は4~6時間ほどかかるようです。2倍近く差がありますね。
そのほかの原因
子宮口が開きにくい人には以下のような傾向があります。
・高齢出産
・過去の分娩で子宮頸管を損傷した
・子宮頸部に子宮筋腫がある
・精神的な不安やストレスがある
子宮口が開くのが遅くても、必ずしも難産になるわけではありません。初産婦では、子宮口が全開大になるまで30時間近くかかることもあるようです。
子宮口が開かないまま陣痛がくることはある?
子宮口が開いていない状態で、陣痛が起こることは珍しくありません。妊婦健診で「子宮口はまだかたいですね」と言われた翌日に陣痛が始まったというパターンもあります。陣痛が始まってから、急速に子宮口が柔らかくなって開いていくこともあります。
一般的には陣痛の間隔が短く、痛みが強くなるにつれて、子宮口もどんどん開いていきます。陣痛が持続しているのに子宮口がスムーズに開かない場合は「軟産道強靭」の可能性もあります。その場合、微弱な陣痛が長時間続くことになります。
反対に、子宮口が開いているのに陣痛がこないケースもあります。妊娠中期など、まだ早い時期に子宮口が開いて「子宮頸管無力症」と診断されると、早産のリスクが高くなることもあります。
子宮口の開きとお産の流れ
お産の流れは個人差があるので、なかには当てはまらないママもいるかもしれませんが、一般的なお産の流れと子宮口が開いていく目安を見ていきましょう。
前駆陣痛
お産にはさまざまな前兆があります。陣痛に似た子宮収縮の痛みを感じる「前駆陣痛」もそのひとつです。前駆陣痛は、痛みの間隔が不規則で、そのうち遠のいてしまうのが特徴です。前駆陣痛が起こったその日のうちに本陣痛が始まることもあれば、数日~数週間かかることもあるようです。
前駆陣痛を感じたら、子宮頸管の熟化が進んでいるサインです。子宮収縮を繰り返しながら、子宮口は柔らかくなり、子宮頸管は短くなっていきます。痛みの間隔をはかりながら、本陣痛を待ちましょう。
本陣痛
本陣痛とは、お産にいたる規則的な子宮収縮をさします。妊娠40週0日である「出産予定日」の近くに本陣痛は起こることが多いですが、妊娠37週、38週、39週、40週、41週の範囲であれば赤ちゃんは十分に成熟しているので問題ないといわれています。
臨月に入って、何度もお腹の張りや痛みを感じるようであれば、本陣痛の可能性がありますね。一般的には、陣痛の間隔が10分以内になった時点か、1時間に6回以上陣痛を感じた場合に病院に連絡するように指示されます。
本陣痛の前兆として「おしるし」が生じる場合があります。赤ちゃんを包んでいる卵膜という袋が子宮の壁からはがれて出血し、子宮頸管の粘液に交じって出てくるものが「おしるし」です。おしるしは、量や色には個人差があり、人によってはおしるしがない場合もあります。
分娩第一期(開口期)
本陣痛が始まってから、子宮口が全開大(約10cm)となるまでの期間を分娩第一期と言います。子宮口が1~2cm程度開いている時期を「潜伏期」と呼び、多くのママが陣痛の始まりに気づき病院に向かうころです。
お産が少し進み、子宮口が3~4cm開いているときを「移行期」と呼びます。痛みの強さが増し、間隔も短くなってくるころです。さらに進むと、子宮口は5~9cm開いて「活動期」となります。
活動期に入ると陣痛は3~5分間隔となり、子宮口が開く速度が急に速まることもあります。活動期で破水が起こるのが一般的ですが、早いタイミングで破水が起こる場合もあります。
分娩第二期(娩出期)
子宮口が全開大になり、赤ちゃんが産まれるまでを分娩第二期と言います。陣痛は2~4分ごとに起こります。赤ちゃんが下がっているため、下腹部よりも腟や会陰、お尻のあたりが痛むようになります。
分娩第二期に入ったら、子宮の収縮にあわせてタイミング良くいきむことが大切です。早い時期から力を入れていきむと、会陰部が切れてしまったり、ママが疲れてしまったりするので、医師や助産師の指示に従うようにしましょう。
分娩第三期(後産期)
赤ちゃんが産まれて、ママの体内から胎盤が出てくるまでを分娩第三期と言います。胎盤が出るときに、軽い陣痛のようなものを感じることがあります。胎盤と一緒に卵膜やへその緒が娩出されて、お産が終わります。分娩第三期の時間は10分~30分程度ですが、その後も2時間程度は分娩台の上で安静にする必要があります。ママはお産の疲れをしっかり癒やしましょう。
子宮口が開かないときの医療行為は?
子宮口の開きが遅くても、自然に陣痛が起こるのを待つのが一般的です。しかし、出産予定日を大幅に超過してしまう「過期妊娠」の場合や、ママや赤ちゃんの健康状態によっては、医師と相談してお産を早める処置を取ることもあります。
内診ぐりぐり
出産予定日前後の妊婦健診のときに、医師が子宮口を指や器具でグリッと刺激することがあります。「卵膜剥離(らんまくはくり)」という分娩誘発方法のひとつで、ママたちのあいだでは「内診ぐりぐり」といわれることもあります。
卵膜剥離は内診のときに行われるのが一般的で、子宮の下部から卵膜を引き剥がして子宮の収縮を促します。子宮頸管が閉じているときは、開いたり指で伸ばしたりすることもあります。
バルーン、ラミナリア
医療器具を使って子宮口を開きやすい状態にすることもあります。とくに「計画分娩」といって、分娩の日時が決まっている場合は、陣痛促進剤を投与する前日に器具を使用することが多いようです。
子宮頸管が閉じている場合は、ラミナリア桿(かん)という器具を使うことが一般的です。細い棒状の器具を子宮口に差し込むと、水分を吸収して膨脹し、ゆっくりと子宮口を拡張します。
子宮頸管が少し開いている場合は、メトロイリンテルというバルーン状の器具を使用することもあります。子宮内に風船を挿入し、生理食塩水を注入してふくらませることで、子宮頸管を拡大させます。
バルーンやラミナリアを使用すると子宮口が広がりやすくなり、陣痛が起こる可能性が高くなりますが、副作用などのリスクも存在します。不安なことは医師にしっかりと説明を受けましょう。
陣痛促進剤
陣痛促進剤を使って人工的に子宮収縮を促し、子宮口を広げようとすることもあります。陣痛を誘発したいとき、お産を促進したいときに使われます。陣痛促進剤には、プロスタグランジンとオキシトシンの2種類があります。錠剤と点滴がありますが、血中濃度のコントロールがしやすい点滴投与が主流のようです。
陣痛促進剤を使用するときは、必ず医師から薬剤の必要性やリスクの説明があります。不安なことやわからないことは何でも質問してみましょう。陣痛促進剤で効果が出ない場合や、投与が危険と判断された場合は、帝王切開分娩に切り替えることもあります。
帝王切開
遷延分娩や軟産道強靭などでなかなか子宮口が開かない場合、ママや赤ちゃんの健康状態によっては「緊急帝王切開」が行われることもあります。下半身にだけ効く麻酔を使うのが一般的ですが、緊急で時間的余裕のない場合は全身麻酔となることもあります。
もしものときの処置であり、ママは心配しすぎる必要はありませんが、帝王切開の可能性もあるということだけ知っておきましょう。
無痛分娩で子宮口が開かない場合は?
分娩日を調整する
無痛分娩の多くは、分娩日を事前に決めておく「計画分娩」となっています。分娩日は、子宮口の柔らかさや赤ちゃんの状態を考慮して、医師とママが相談して決めます。
子宮口がまったく開いていない場合は分娩日を調整することもありますが、そのまま分娩予定日に陣痛促進剤などで人工的に子宮口を開くこともあるようです。
医療行為で開かせる
無痛分娩の多くは計画分娩のため、陣痛促進剤を使用します。自然の陣痛を待ってから無痛分娩を行う施設も一部ありますが、その場合も子宮口が開かない場合は陣痛促進剤を使用します。副作用などのリスクもあるため、医師から十分な説明を受ける必要があります。
分娩予定日前日に子宮口が十分に開大していないときは、医療器具を使って子宮口を広げる場合もあります。バルーン状のメトロイリンテル、子宮頸管内に挿入すると水分でふくらむ円筒状のラミナリア桿や、親水性ポリマーで形成されたダイラパンなどが用いられます。
子宮口が開かない・かたい場合に自分で柔らかくする方法は?
ウォーキング
妊娠中は、全身の筋肉を使う有酸素運動が好ましいといわれています。ウォーキングや水泳、激しくないエアロビクスダンスなどです。そのなかでもウォーキングは、場所や時間を選ばず、誰でも気軽に試すことができます。お産に必要な体力と筋力がつきますし、気分もすっきりするでしょう。
適度に歩くことで、股関節が柔軟になったり、重力を借りて赤ちゃんが下りやすくなったりするので、ウォーキングは臨月に効果的な運動です。しかし無理をせず、お腹が張ったらすぐに休みましょう。陣痛が始まった後も、許可があれば病院内を軽く歩くことは可能です。身体と心のリラックスにもつながりますよ。
ストレッチ
下半身を中心としたストレッチもおすすめです。骨盤まわりの筋肉を伸ばすことで、軟産道の血流が良くなり、子宮口が開きやすくなるかもしれません。一番簡単なストレッチは「あぐら」の姿勢です。あぐらは、股関節のストレッチにつながります。姿勢を正してゆっくり呼吸すれば、呼吸法の練習にもなりますね。
ツボ押し
子宮口を柔らかくして、陣痛を促進するといわれるツボもあります。有名なものが「三陰交(さんいんこう)」です。内側のくるぶしの一番高い位置に小指を置き、指をそろえて人さし指が当たる場所が三陰交となります。血行を改善し、子宮口を活性化させるといわれています。
親指でゆっくり押したり、温めたりすると良いでしょう。お風呂でマッサージしても良いですね。妊娠中のツボ押しは、身体に思わぬ影響を与える可能性もあるので、担当の医師に相談してから試すようにしましょう。
リラックスする
リラックスすると筋肉がゆるむため、子宮口が開きやすくなります。また、安産に必要なホルモン分泌も正常化するといわれています。陣痛の緩和や安産のためにも、まずはリラックスする方法を身につけたいところですね。
リラックスの方法は人それぞれです。お気に入りのアロマをかいだり、音楽を聞いたりしても良いでしょう。また、足湯など身体の一部を温めるとリラックスできるという人もいます。
また、リラックスに効果的な呼吸法もあります。ゆっくりとした腹式呼吸を心がけ、吸う息よりも吐く息を長くすると良いでしょう。意識して身体の力を上手に抜くことができれば、子宮口の開大だけではなく陣痛時にも役に立ちますよ。
子宮口が開かないときの体験談
筆者は陣痛が10分間隔になった後、子宮口が開くまでがとても長く感じました。入院をして、陣痛が何度も繰り返しやってくるのに、子宮口の開きは1~2cmからほとんど動かず、20時間近く待機しました。何度も助産師さんが子宮口を確かめてくれましたが、そのたびに「まだか」とがっくりしたものです。
しかし子宮口が4cmに開いてからはお産が一気に進み、2時間ほどで分娩にいたりました。筆者のように、なかなか子宮口が開かなくても結果的に安産になる場合もあるので、子宮口の開き具合を気にしすぎるのも良くないかもしれません。陣痛の合間は赤ちゃんのことを考えながら、ゆったりした気持ちで子宮口の開大を待てると良いですね。
子宮口を意識した行動でスムーズなお産を
子宮口の開き方には個人差があります。経産婦と初産婦でも子宮口の開大にかかる時間は変わってくるので、子宮口が開かないときでもあせらず待つことが大切です。柔軟な産道は安産につながりますから、適度な運動を試してみるのも良いでしょう。リラックスしてスムーズなお産を迎えられると良いですね。
※この記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。