【産婦人科医監修】出産を促すバルーンって何?バルーンの方法と費用、痛みは?|産婦人科医監修

分娩開始後に出産がスムーズに進まなくなった場合や人工的に分娩を誘発する場合、分娩を進行させるための処置が行われます。その中のひとつにバルーンを使った頸管熟化法があります。出産で使われるバルーンとはどのようなものなのでしょうか。使われ方や効果、痛み、費用はどの程度かかるのかについて産婦人科医監修の記事で解説します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 出産を促すバルーンとは
  2. 出産を促進するバルーンの挿入法
  3. バルーンの効果
  4. 出産を促すバルーンは痛い?
  5. バルーンを使うときのリスク
  6. 出産を促すバルーンの費用
  7. 元気に生まれてくれることが一番
  8. あわせて読みたい

出産を促すバルーンとは

誘発分娩のひとつ

何らかの理由により自然に陣痛が起こるのを待つことが困難で人工的に分娩を誘発する場合や、出産開始後に微弱陣痛となり陣痛促進が必要な場合に、分娩を進めるための処置がとられます。この措置を分娩誘発(陣痛誘発)といいます。誘発分娩と呼ばれることもあります。

分娩誘発の方法はいくつかありますが、そのうちのひとつがバルーンを使用した頸管熟化法です。バルーンはその名の通り風船のような形状をしており、正式名称をメトロイリンテルといいます。

どんなときに使われる?

子宮頸管は妊娠中から徐々にやわらかく伸びやすい状態に変化し、陣痛が起こると一気に開大します。子宮頸管の変化を熟化と呼び、成熟度は「ビショップスコア」という指標であらわします。ビショップスコアには頸管開大度、展退度、頸管硬度、子宮口位置、児頭先進部の高さという5つの項目があり、スコアが低いと熟化していないと評価されます。

子宮頸管が熟化していないと、帝王切開となる可能性が高まってしまいます。そのため、子宮頸管の熟化が足りないときはバルーンを使って子宮口を広げ、子宮収縮を促すのです。

そのほかの誘発分娩

バルーン以外の分娩誘発には、バルーンと同じように子宮頸管に入れて使うラミナリア桿(かん)、手技により子宮口周辺の子宮壁から卵膜をはがす卵膜剥離、オキシトシンといった陣痛促進剤の点滴投与、卵膜に穴をあけて人工的に破水させる人工破膜などがあります。

【産婦人科医監修】陣痛促進剤の費用やリスク、痛みは?効かない場合は点滴…

出産を促進するバルーンの挿入法

しぼんだ状態のバルーンを子宮の入り口にセットし、中に滅菌水を入れて徐々にふくらませていきます。風船がふくらむことでだんだんと子宮口が広がっていき、子宮口が十分に開くと自然と外れ、その流れで出産を促します。

バルーンの効果

陣痛を起こす

予定日を過ぎても陣痛が起こらない場合や、医学的介入が必要と判断された場合、バルーンを使って陣痛を引き起こし、出産を促します。出産日を決めてお産を行う「計画分娩」の場合にも、陣痛を引き起こす目的でバルーンを使用します。

陣痛を促進する

子宮口が2cm程度開いているけれど、陣痛が弱いために子宮口がなかなか開かず、お産の進みが悪い、などの場合に陣痛を促進する目的で使用されることがあります。バルーンを使用して子宮を刺激し、子宮口を柔らかくして広げることで出産を促します。

出産を促すバルーンは痛い?

バルーンの挿入時

バルーンは、少し開き始めた子宮口にしぼんだ状態で挿入するので、内診時のような痛みがあるくらいでそこまで大きな痛みはありません。しかし、恐怖心や不安から力が入ってしまい、痛みを強く感じてしまうこともあります。内診程度の痛みといわれていますが、内診も痛みをあまり感じない人や痛みを感じる人がいるように、痛みの感じ方は人によって違うようです。

バルーンの挿入後

子宮口に入れてから、適正な大きさまでバルーンをふくらませていきます。いったん挿入してしまえば、違和感があるくらいで、痛みは感じないようです。その後に起こる陣痛と分娩に比べれば、我慢できる痛みといわれています。

バルーンを使うときのリスク

出産を促すためのバルーンでも、何かしらのリスクはないのか気になるのではないでしょうか。

バルーンを使うと、バルーンの先で赤ちゃんの頭を押し上げるような形になってしまい、子宮壁と赤ちゃんの頭のあいだに隙間ができます。その隙間に臍帯(へその緒)が挟まって出てしまうリスクもあるので、慎重に行わなければなりません。お医者さんから提案された場合は、しっかりと説明を受けて不安なことは聞いておくようにしてくださいね。

出産を促すバルーンの費用

病院によって異なる

バルーンを使う場合、費用は別途かかります。費用は病院ごとに異なるので、事前に確認しておくと安心ですね。また、バルーンは入院してから挿入するので、入院日数が1日プラスされることもあります。入院日数が増えると、数万円ほどの費用が追加でかかることも頭に入れておいてください。

保険適用されない

基本的に誘発分娩も自然分娩の範囲内と考えられ、誘発分娩に健康保険は適用されません。しかし、民間の医療保険の中には誘発分娩の処置の内容によって給付金の対象となるケースがあります。

医師が疾病と判断して治療行為を行えば医療保険での給付金対象となる場合があるので、保険に加入している人は事前に保険会社に確認しておきましょう。

元気に生まれてくれることが一番

バルーンや陣痛促進剤を使う誘発分娩は、痛いイメージがありますが、お産が始まればどんな痛みからももう逃れることはできません。つらい出産の痛みに必死に耐えたごほうびは、生まれてきた赤ちゃんがプレゼントしてくれます。あまり不安になりすぎず、出産の日を迎えてくださいね。

※この記事は2023年6月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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