【産婦人科医監修】陣痛はなぜ痛い?痛みの耐え方やメカニズムを解説
初めての出産を迎えるママにとっては、陣痛は未知の領域のため不安も大きくなりがちですね。そもそも陣痛とはどうやって起こるのでしょうか。痛みを逃す方法はあるのでしょうか。陣痛に関して予習しておけば、出産に少しでもリラックスして臨めるかもしれません。陣痛のメカニズムやすぐに試すことのできる耐え方を産婦人科医監修で解説します。
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この記事の監修
目次
陣痛とは?陣痛のメカニズムは?
本陣痛と前駆陣痛
子宮内の赤ちゃんが外に出ようとするとき、子宮は規則的に収縮します。このときに生じる痛みを陣痛といいます。出産にいたる規則的な陣痛を「本陣痛」ということもあり、本陣痛の開始が出産の始まりであり、胎盤を娩出することで終わりとなります。一般的には、陣痛の周期が10分以内になった時点で本陣痛となります。
本陣痛とは別に、出産以前に感じる子宮収縮の痛みを前駆陣痛とよびます。不規則で、しばらくすると痛みがなくなることもあるのが特徴です。前駆陣痛からすぐに本陣痛につながることもありますし、出産の数日前に前駆陣痛が起こって消えてしまうこともあります。
陣痛のしくみ
陣痛の間隔が10分以内となったとき、分娩の開始となります。分娩は第1期~第3期にわかれ、お産が進むにつれて子宮の収縮が強くなり、陣痛の痛みも増してきます。
分娩第1期の陣痛は子宮口を開大し、胎位を維持する役目を持ちます。子宮口の開きが4cmになるまでは会話ができるほどの余裕がありますが、4cm以上になると子宮口は一気に開大し、下腹部の痛みも急速に強くなります。
分娩第2期の陣痛は、胎児を外に押し出す原動力となります。子宮口が全開大となって陣痛はピークに達するでしょう。分娩第3期の陣痛は、胎盤を娩出させる役割があります。赤ちゃんが出たあとに胎盤を出すための陣痛が20~30分続きます。
陣痛のメカニズム
陣痛のメカニズムは明らかになっていないことも多く、何がきっかけで陣痛が起こるのか、さまざまな説が報告されています。その中には、オキシトシンアやプロスタグランジンといったホルモンの分泌量が増え、子宮頚管熟化が進み陣痛が初来するといったものがあります。
陣痛が起こるメカニズムのひとつとして、古来より月の満ち欠けや気圧の影響を唱える説もありますが、実際のところこれらを裏付ける科学的な根拠はなく、ジンクス的にとらえておくと良さそうです。
陣痛はなぜ痛い?どんな痛み?
陣痛の痛みの理由
陣痛は痛いもの、という認識を多くの妊婦さんが持っていることでしょう。それでは、陣痛はなぜ痛いのでしょうか。陣痛の痛みは、分娩第1期~第3期にかけて時間の経過とともに変化します。陣痛が始まった時点では、子宮口はまだ開ききっていない状態です。時間の経過とともに子宮の収縮は強くなり、子宮口は引き伸ばされます。この刺激が下腹部付近の痛みとなってあらわれます。
子宮口が全開大になり赤ちゃんがおりてくると、膣が引き延ばされ恥骨から肛門付近へと痛みの部位が拡大してきます。強い子宮の収縮と子宮口から腟へと連なる刺激、そして骨盤がきしむようなつらさが痛みとして伝わるのです。分娩第2期に入るまで、いきむのを我慢しなければならないことも、陣痛がつらく感じる一因かもしれません。
陣痛の痛み
妊娠後期に入ってお腹が痛むと、本陣痛なのか前駆陣痛なのかを悩むママもいます。陣痛は痛みの強さや起こる時期は個人差があり、ひとりで判断するのが難しいともいえます。
本陣痛の始まりは以下のように感じる人もいます。
・生理痛のような痛み
・下腹部がチクチクする
・お腹が張る
子宮口が開くにつれて、以下のように痛みも強くなることが一般的です。
・膀胱や肛門が強く圧迫されるような痛み
・激しい下痢のような痛み
・姿勢を変えても我慢できない痛み
普段とは違う痛みがあり、痛みの間隔に規則性があるようであれば、通院中の病院に相談してみましょう。
陣痛の間隔
本陣痛において、痛みがひどくなるときを陣痛発作、痛みを感じないときを陣痛間欠とよびます。発作と間欠の時間は分娩の進行によって変化します。最初の陣痛発作は10秒~20秒程度と短く、陣痛間欠は10~20分程度と長くなります。間隔が10分をきるようなら病院に連絡して判断を仰ぎましょう。
陣痛の間隔が短くなり、痛みが強くなるのに伴って、子宮口が開いていきます。個人差はありますが、初産のママでは子宮口が開ききるまでに10~12 時間ほどかかるといわれています。子宮口の大きさが9cmとなるころには陣痛発作は30秒~90秒程度と長くなり、陣痛間欠は1~2分程度と短くなります。
陣痛が起こったらどうする?
予定日の前3週間、後2週間(妊娠37週0日~41週6日)の出産は「正期産」とよばれます。正期産では、子宮外でも赤ちゃんが生きていける機能が整っているといわれます。この時期に陣痛を感じた場合、慌てず間隔を測りましょう。10分間隔になってきたら、落ち着いて病院に連絡します。陣痛が遠のくようであれば前駆陣痛の可能性が高いので、普段の生活を続けながら本陣痛を待ちましょう。
破水していなければ、入浴やシャワーを浴びても構いません。体力も重要ですから、食欲があるようなら消化の良いものを食べておいても良いですね。10分間隔になり病院に向かうことになれば、事前に用意しておいた入院準備をもって自家用車やタクシーで病院に向かいます。パートナーへの連絡も忘れないようにしましょう。
住んでいる地域によっては、陣痛タクシーなどのサービスもあります。いざというときに慌てないように、事前に登録しておきましょう。病院に着いたら、医師や助産師の指示に従ってください。楽な姿勢を保ち、眠れるようなら眠っておくと良いでしょう。
陣痛に耐える方法は?
陣痛時はできるだけリラックスして臨むことが大切になります。自分なりの痛みの逃し方、絶え方を探してみましょう。経験豊富な医師や助産師のアドバイスを受けながら、パートナーがそばにいるときはサポートしてもらいましょう。
楽な姿勢をとる
ゆっくり呼吸をしながら、自分にとって楽な姿勢を探してみましょう。どのような姿勢が楽と感じるかは、お産の進み方や赤ちゃんの動き、体質などで変わります。横向きは、陣痛が強くじっとしていられないときに用いられることもあります。子宮による腹部への圧迫が減るため、四つんばいが楽と感じるママもいるでしょう。
椅子に座った姿勢や立った状態が楽と感じることもあります。身体を起こした姿勢だと、赤ちゃんの重力によって、お産が進みやすい場合もあるようです。また、ひざを曲げたスクワットのような姿勢(蹲踞位:そんきょい)が良いというママもいます。この場合、パートナーや助産師に身体を支えてもらう必要があります。
身体をあたためる
身体をあたためると、痛みが軽く感じる場合があります。タオルをお湯で濡らしたものや、カイロを布で包んだものを痛む場所に当ててみても良いでしょう。熱くなりすぎないように注意しましょう。
腰やお尻、お腹などを優しく温めればリラックス効果も得られるかもしれません。お湯を入れたタライに足をつけて、陣痛の合間に足湯をしても良いですね。入院時にお気に入りの毛布を持ってくると、冷えを防げるので便利かもしれません。
正しい呼吸法をマスター
痛みを感じると息がつまりがちになりますが、リラックスして出産を進めるためには深く呼吸することも大切です。陣痛が始まる前に、正しい呼吸法を練習しておくと良いでしょう。ポイントは、吐く息を意識することです。ゆっくり息を吐けば、自然と多くの空気を吸い込めます。
陣痛が始まってすぐに呼吸法をとろうとすると疲れる場合もあるので、最初は自然に呼吸しましょう。静かに鼻から吸って、ゆっくりと口から吐くようにします。陣痛が強くなり深呼吸がしづらくなってきたら、深呼吸に続いて「ふーふー」と吐き出します。一点をみつめ、リズムに乗って呼吸を整えましょう。
子宮口が全開し「いきんで」と助産師や医師に言われるまでは、いきみを逃す必要があります。ヒッヒッと短く吐いたあと、フーッと長めに吐き、力を抜いていきみを逃すように努力してみましょう。
人の手やタオルを握る
痛みを耐えるとき、何かをぎゅうっとつかむことで楽に感じる場合もあります。タオルや抱き枕を用意しても良いでしょう。パートナーの手を握るのもひとつの手です。手の痛みと陣痛の痛みを同時に感じることで心をあわせ、ともに頑張っているような気持ちが持てるかもしれません。
硬いものにしがみつく、柔らかいものを握る、温かいものを抱きしめるなど、いろいろな方法を事前に試し自分が一番リラックスできそうな方法を用意しておけると良いですね。バランスボールやクッションが良いというママもいるようです。
テニスボールやゴルフボール
陣痛時のいきみ逃しによく使われるアイテムとして、テニスボールやゴルフボールがあります。用意してある病院もありますし、自分で購入し入院時に持っていったというママもいます。硬く、手のひらにおさまる大きさというのがポイントです。
お尻の穴にぐっと押し付けることで、痛みが少し治まり、いきみを我慢できるかもしれません。腰や尾てい骨をマッサージすることで、痛みが緩和される場合もあります。自分で押し付けるのが難しい場合は、パートナーや助産師にサポートしてもらいましょう。
アロマでリラックス
陣痛中にリラックスすることができれば、力が抜けて痛みもまぎれる可能性があります。最適なリラックス方法は人によって異なります。お気に入りの音楽を聞いたり、誰かとおしゃべりしたり、アロマを楽しんだりするのも良いでしょう。アロマは精神的な不安を軽減したり、身体をリラックスさせたりすることもあります。また、アロママッサージをすることで身体の血行をうながす可能性もあります。
アロマオイルのなかには陣痛時用に配合された製品もありますし、アロマテラピーを行う病院もあるようです。たとえば、クラリセージには分娩促進作用、ラベンダーやペパーミントには沈静・鎮痛作用があるといわれており、陣痛時に使うこともあります。苦手な香りはリラックスにならない可能性もあるので、効能よりも自分が好ましいと感じる香りで選んだほうが良い場合もあるかもしれません。
ツボ押し
陣痛に効果があるとされるツボを刺激するのも良いでしょう。ツボは身体中に存在し、体調を整える効果があるといわれています。痛みの軽減や陣痛の促進などに、ツボ押しを試すママもいます。陣痛中は姿勢を保つのも難しいことがあるので、押しやすい「手」や「足」などのツボを覚えておくと良いでしょう。
足には「三陰交(さんいんこう)」というツボがあります。足の内側のくるぶしの頂点から指幅4本分上がったところです。手の甲には「会谷(ごうこく)」というツボがあります。親指と人差し指のあいだ、骨がつながっている場所のくぼみです。どちらも陣痛促進や安産のために押すと良いといわれています。身体に思いがけない影響を与えることもあるため、ツボ押しは助産師や医師に相談してから行ったほうが良いでしょう。
陣痛中の耐え方に関する体験談
筆者の初めての陣痛時は、とにかく助産師さんのアドバイス聞いて、試せそうなものは全て試しました。呼吸法はヨガなどで練習していたので、陣痛がそれほど強くないときはリラックスできました。しかし陣痛のピーク時はうまく息が吸えず、助産師さんの声にあわせて呼吸のリズムを必死に整えました。痛くても、目を開けて周りの声に耳を傾けるのは大切だと思います。
いろいろな姿勢を取ってみましたが、筆者は座った状態が楽でした。身体をねじったり動かしたり好きにできるので力を逃しやすかったのだと思います。夫に腰をさすってもらったり、お尻を押してもらったりしながら、痛みがひどいときは声を我慢せずに出しました。少し恥ずかしいですが、うめき声、泣き声を出すことで呼吸も自然とできますし、夫に自分の頑張りを主張することもできて、精神的な余裕につながったかもしれません。
自分にあった耐え方を探して陣痛に備えよう
ママによっては不安に感じる陣痛ですが、大事な役目があります。陣痛によって子宮が開き、赤ちゃんを押し出すことができます。陣痛を乗りきるために大切なのは、リラックスできる環境です。陣痛の知識を身につけ、事前の用意を怠らないようにしましょう。
陣痛の間隔が狭まったら、焦らず慌てず病院に連絡しましょう。陣痛中に酸素不足にならないよう、呼吸法の練習をしておくと安心です。抱き枕やボール、アロマオイルなど自分にあった陣痛対策グッズを用意しておくと良いですね。
※この記事は2024年9月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。