【産婦人科医監修】陣痛が遠のく原因は?5分間隔になっても遠のくことはある?
妊娠37週を超えると、いつ陣痛が始まってもおかしくない状態です。しかし、とうとう陣痛が始まったと思いきや「途中で痛みが消えてしまった」「陣痛の間隔が縮まらない」という経験をするママもいます。陣痛が遠のく原因として何が考えられるのでしょうか。ここでは陣痛が弱くなったり、なくなったりする状態を産婦人科医監修で解説します。
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目次
陣痛とは?遠のくこともある?
陣痛とは、赤ちゃんを押し出そうとするときの子宮の収縮をいいます。間隔が不規則な「前駆陣痛」と、分娩につながる「本陣痛」に分けて考えることもあります。
前駆陣痛
陣痛のような下腹部痛やお腹の張りが起こっても、間隔が縮まらず、いつの間にか消えてしまうことがあります。これを「前駆陣痛」といいます。痛みを感じる時間や痛くなる間隔が不規則で、分娩には直接つながらないことが特徴です。前駆陣痛が起こると、数日内に出産が始まるといわれていますが個人差はあるようです。
痛みの感じ方は人それぞれなので、前駆陣痛なのか本陣痛なのかを見極めるのは経産婦でも難しい場合があるといわれています。不規則なうちはまだ前駆陣痛である場合が多いので、お腹の痛みや張りを感じたら、アプリなどで間隔を測る練習をしておくと良いかもしれません。
前駆陣痛を感じるころになると、子宮口は開大する準備を始めます。子宮頸管の熟化が始まって、身体は分娩に適した状態に近づいています。前駆陣痛は陣痛の練習であり、出産の予兆のひとつと考えても良いでしょう。他にも出産の予兆としては、おりものに血が混ざったような状態になる「おしるし」があります。
本陣痛
規則的な下腹部の痛みが次第に強くなり、10分間隔で感じるようになってきたら「本陣痛」が始まったとされます。定義上は陣痛周期が10分以内、または1時間に6回の頻度になった時点で分娩の開始です。
病院の方針にもよりますが、初産婦は陣痛の間隔が約10 分おきになったとき、経産婦は約15分おきになったときに病院に連絡し、入院となるケースが多いかもしれません。陣痛が5分間隔になると、子宮口は全開大の状態に近づいていき、陣痛はますます強くなります。
個人差はありますが、本陣痛から赤ちゃんと胎盤が出てくるまでの平均時間は、初産婦で11~15時間、経産婦で6~8時間程度です。陣痛は赤ちゃんを娩出する力の元なので、弱すぎても強すぎてもリスクがあり、適度な強さが必要とされます。
本陣痛を感じる前に、腟から羊水が流れ出る「破水」が起こることもあります。その場合はすぐに病院に連絡して向かいましょう。本陣痛が始まらなくても、激しい痛みや大量の出血がある場合は病院に連絡したほうが良いでしょう。
陣痛が遠のく原因は?
まだ前駆陣痛
「これは陣痛かも」と思っても、痛みが時間経過とともに遠のく場合、前駆陣痛である可能性が高くなります。陣痛計測アプリなどで間隔を測り、不規則なようであれば前駆陣痛かもしれません。
前駆陣痛の起こり方はさまざまで、一度は5分~10分間隔まで縮まっても、そのあとに遠のいてしまうこともあります。また、前駆陣痛かなと思ったらその日のうちに本陣痛が始まることもあるようです。
自分だけでは判断できず、どうしても心配な場合は医師や助産師に相談してみても良いでしょう。もし病院で前駆陣痛と診断された場合は、一度帰宅し自宅待機となることが多いようです。
微弱陣痛
本陣痛が始まり分娩開始となった場合でも、痛みが遠のくことがあります。微弱陣痛とよばれる状態で、分娩開始からずっと陣痛が弱い「原発性微弱陣痛」と、分娩の途中から痛みが遠のく「続発性微弱陣痛」があります。痛みが弱くても、規則的に陣痛が起こり間隔が徐々に短くなるのであれば微弱陣痛の可能性があります。
原発性微弱陣痛の原因はさまざまですが、以下のようなものが考えられます。
・子宮筋腫や子宮奇形などの子宮の器質的な問題
・多胎妊娠や羊水過多による子宮の筋肉の伸び過ぎ
・胎位、肥満、精神的な不安など
続発性微弱陣痛の原因もいろいろ考えられますが、以下のようなものがあります。
・子宮の筋肉の疲労
・産道のトラブル
・巨大児など赤ちゃん側の問題
・胎位や胎児の姿勢、回旋異常、ママの身体の疲労、麻酔など
分娩に問題がないようならそのまま経過を見ますが、微弱陣痛が原因となって分娩が大幅に遅れそうな場合は、医師と話しあって陣痛促進剤の使用などを決めます。
無痛分娩では陣痛が遠のくことが多い?
無痛分娩とは、脊椎(せきつい)の中に細い管を挿入し局所麻酔薬を注入して、陣痛の痛みを和らげる方法です。陣痛促進剤を使って計画的に無痛分娩を行う場合と、自然の陣痛を待ってから麻酔を行う場合があります。
麻酔のタイミングは病院の方針や、ママの意思によっても変わります。一般的には子宮口が5cmほど開いた時点で麻酔をすることが多いようです。麻酔をした場合、5分~20分程度で痛みは弱まっていきます。子宮収縮は感じるので、いきむタイミングなどは問題ないとされています。
麻酔を早くから開始すると、陣痛が遠のいて分娩が遅くなってしまうのではないかという考えもありますが、近年では麻酔法が進歩し、早めに麻酔を開始しても分娩経過にはあまり影響しないといわれています。しかし、分娩時間が延長したり、吸引分娩が必要となったりするリスクはゼロではありませんから、事前に担当の医師としっかり話しあって、デメリットとメリットを理解することが大切ですよ。
陣痛が遠のいたときの対処法は?
前駆陣痛の場合は、気にせず本陣痛を待ってみましょう。陣痛促進になるというジンクスを試してみても良いですね。出産予定日を2週間過ぎても、まだ「正期産」とよばれる正常の範囲内ですから、あせらないようにしましょう。本陣痛が始まった後で微弱陣痛となった場合は、担当の医師と今後の方針をしっかり話しあいましょう。
姿勢を変えてみる
椅子に座ってみたり、あぐらや四つん這いをしてみたり、姿勢を変えてみるのもひとつの手です。上半身を立てた状態は、ママの赤ちゃんを押し出そうとする力に赤ちゃんの重力が加わるため、赤ちゃんが下降しやすい姿勢といわれています。
また、四つん這いの姿勢が陣痛促進につながることもあります。子宮がお腹を圧迫しないため赤ちゃんにストレスがかからず、股関節が柔らかくなって子宮底筋を鍛えられることもあります。床の雑巾がけなどすれば、お産の体力づくりと掃除が一緒にできますし、気分転換になるかもしれません。
スクワットや階段昇降
スクワットや階段昇降など、立った状態で揺れながら運動することで、陣痛が促される可能性もあります。臨月のママはバランスを崩しやすいので、スクワットは壁に頭とおしりをつけた状態で行うと安心です。階段昇降は手すりを持って、転ばないようにゆっくり昇りましょう。降りは足元が見えず危険なので、とくに慎重に歩きましょう。
適度な運動をすることで、脚や骨盤周りの筋肉が強化され、お産に必要な体力がつくこともあります。はやく陣痛がきてほしくても、無理は禁物です。お腹が張るようなら、いったん休憩し、横になると良いですよ。
ツボ押しやアロマを試す
陣痛促進にツボ押しやアロマセラピーを試すのもひとつの手です。ゆっくり入浴しながらツボ押しを試してみても良いでしょう。「三陰交(さんいんこう)」は、子宮を活性化し、安産や陣痛促進に効果があるといわれるツボです。内くるぶしの高いところに小指をおき、指を4本そろえ、人さし指があたるところにあります。入浴中に温めながら指で押してみても良いですね。
ハーブを利用したアロマも、子宮収縮に関係するものがあるといわれています。「クラリセージ」ジ」や「ジャスミン」、「パルマローザ」などが子宮収縮の作用があるといわれています。お気に入りのアロマを嗅ぐことで心身ともにリラックスすれば、骨盤底筋や軟産道が弛緩して、赤ちゃんが下りやすい環境が整うかもしれません。
医師や助産師に相談してみる
前駆陣痛なのか微弱陣痛なのかを判断できない場合は、病院で相談してみても良いでしょう。病院では、ママの自覚症状だけではなく、子宮口の開きや子宮頸管の硬さ、赤ちゃんの下降度、子宮収縮の状況などいろいろな方法で診断してくれます。また、経験豊富な助産師や医師と話すことで、陣痛待ちの不安やイライラを改善できることもありますよ。
陣痛が始まったと思って病院に向かっても、まだ入院する必要はないと帰宅することになるケースもみられますが、相談することで安心できる人も多いかもしれません。
陣痛促進剤を投与することも
微弱陣痛の場合、ママや赤ちゃんの状態をみながら陣痛促進剤(子宮収縮薬)を使うかどうかを判断します。薬剤投与には医師の説明とママの同意が必要となります。初産婦で30時間以上、経産婦で15時間以上かかっても産まれない「遷延分娩(せんえんぶんべん)」となる場合は、分娩監視装置をチェックしながら、陣痛促進剤を使った対処をすることが多いようです。
あせらずゆっくり本陣痛を待とう
陣痛が遠のくときは、本陣痛の数日前に起こる不規則な「前駆陣痛」と、痛みが弱い「微弱陣痛」の可能性があります。臨月に入って生理痛のような痛みを感じたら、まずは痛みの間隔を測ってみましょう。
経産婦はお産の進行が速いといわれますが、陣痛がおさまることは経産婦でもめずらしくありません。痛みが遠のいてしまっても、妊娠41週6日まではあせる必要はありません。軽い運動をしたり、アロマを試したりと、リラックスしながら陣痛が始まるときを待ちましょう。
※この記事は2023年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。