陣痛が痛くない人の特徴は?痛くないようにする方法はあるの?|産婦人科医監修

産婦人科医監修|赤ちゃんには早く会いたいけれど、陣痛のことを考えると不安になるママもいます。誰だって痛いのは嫌ですし、避けたいものですよね。痛みを強く感じない人に共通する傾向はあるのでしょうか。陣痛の痛みを緩和する方法や、陣痛が始まる前に試してみたいこともあわせて解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 陣痛が痛くない人もいるのは本当?
  2. 陣痛が痛くない人の特徴は?
  3. 初産婦と経産婦で陣痛の痛みは異なる?
  4. 陣痛が痛くないようにする方法は?
  5. 陣痛が痛くないときも病院へ行く?
  6. 陣痛を乗り切るためにやっておくべきこと
  7. 陣痛の痛みに関する体験談
  8. 心と身体の準備を整えて陣痛を迎えよう
  9. あわせて読みたい

陣痛が痛くない人もいるのは本当?

陣痛とは、赤ちゃんが子宮から外に出ようとするときの子宮の収縮による痛みです。個人差はありますが、最初は生理痛や下痢のような痛みから始まって、徐々に痛みが強くなっていきます。麻酔を使って痛みを軽減する「和痛分娩」や「無痛分娩」という出産方法を選んだ場合には痛みを感じないことはありますが、自然分娩を選んだ場合にはまったく痛くないという人はまれなようです。

陣痛にはママの子宮口を開き、赤ちゃんを外に押し出すという大切な役割があります。強すぎる陣痛はママの身体の負担になることがありますが、弱すぎる陣痛もまた赤ちゃんを押し出す力が不足する可能性があります。出産においては適度な痛みが起こると安産になりやすいとされます。

しかし「適度な痛み」であっても、感じ方には個人差があり、身体が割かれそうなほど痛いという人もいれば、お腹の張りを強くした程度という人もいます。陣痛を比較的軽く感じた人にはどのような特徴があるのでしょうか。

陣痛が痛くない人の特徴は?

もともと痛みに強い

たとえば同じ料理を食べても、味の感じ方に差があるように、痛みの感じ方にも個人差があります。性別も痛みの感じ方の差が出る原因のひとつとしてあげられることがあります。男女では、昔は女性のほうが痛みに強いといわれていました。しかし最近では、女性のほうが痛みを感じる限界値が低いため、同じ痛みでも強く感じるという説もあるようです。

他にも痛みに強い、弱いを決める要因に遺伝的な要素があります。生まれつきのものなので、自分では判別しにくいかもしれません。もし母親や姉妹が「陣痛はそれほど痛くなかった」という場合、あなたも痛みに強い遺伝をもつ可能性があります。しかし陣痛の痛みは環境や姿勢、赤ちゃんの位置など、さまざまな要因が関わってくるので必ずしも同じとは限りません。

痛みはそもそも、身体になにかトラブルがあったときに危険を知らせるセキュリティのような役割を持ちます。痛みに弱い、痛みを感じやすいというママは、そのセキュリティ機能が強いともいえます。痛みに強い女性は、陣痛が始まっているのになかなか気づかず、いつの間にか進行しているということもあるかもしれません。

身体に余計な力が入っていない

身体中の力を上手に抜き、リラックスできたママのほうが、陣痛を乗り越えやすい場合もあります。子宮は筋肉なので、緊張状態が続くとカチカチに硬くなり、子宮口が開きにくくなったり、痛みを感じやすくなったりすることもあります。ママにリラックスしてもらうために、音楽や照明などを工夫している産院もあります。

しかし、痛みを感じると反射的にどうしても力が入ってしまうもの。余計な力を吸収するために、事前に抱き枕やバランスボールなどのしがみつくものを用意しているママもいます。病院に持ち込みの許可を取って、入院準備の品と一緒に入れておいても良いですね。

正しい呼吸法ができている

陣痛の痛みの軽減や、いきみ逃しのための呼吸法というものもあります。産院のマタニティクラスや、自治体の母親学級(プレママ教室)、マタニティヨガなどで陣痛時の呼吸法を練習する機会があるかもしれません。もちろん、自分でトレーニングすることも可能です。

正しい呼吸法は、急にできるものではありません。とくに陣痛が進んでいくと、痛みで普通の呼吸さえ困難になることもあります。陣痛が始まる前に何度もトレーニングしておくことで呼吸法が身につき、無意識でも深い呼吸ができるかもしれません。陣痛時だけではなく、お腹が張ったときや緊張したときにも、リラックスできる呼吸法は役立ちますよ。

アドバイスをしっかり守る

初産のママにとって陣痛は未知のもの。どれくらい痛いのか、どのように我慢をするのか、不安に思うこともあるでしょう。そんなときに頼れるのが助産師や先輩ママです。自分だけで解決しようとせず、わからないこと、心配なことは聞いてみましょう。

とくに分娩や赤ちゃんのプロフェッショナルである助産師は陣痛時に最も頼れる存在です。恥ずかしがらずに、いろいろ相談してみると良いですね。的確なアドバイスをもらったママは陣痛を上手に乗りきることができるかもしれませんよ。

微弱陣痛

陣痛の間隔が規則的になっているのに痛みを感じない場合「微弱陣痛」という可能性もあります。一般的な陣痛と比べると陣痛の間隔が長く、陣痛の持続時間が短くなっています。

陣痛の開始から陣痛の弱い状態が続くことを「原発性微弱陣痛」とよび、子宮の異常や子宮筋の過伸展、精神的不安などが原因となることもあります。陣痛の途中から弱くなる状態は「続発性微弱陣痛」とよび、子宮筋の疲労や産道の異常、胎児の位置などが原因として考えられます。

微弱陣痛によって出産が進まない場合、医師と相談し、場合によっては薬による陣痛促進などの対策が取られることもあります。

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初産婦と経産婦で陣痛の痛みは異なる?

経産婦は初産婦よりも痛みが少ないという説があります。これは本当なのでしょうか。実際に、分娩にかかる時間では経産婦と初産婦で差があることが多いとされます。陣痛が始まってから赤ちゃんと胎盤を娩出するまでの平均的な時間は、初産婦の場合11~15時間ほど、経産婦の場合6~8時間ほどといわれています。産道が柔らかく子宮口が開きやすいことが一因でしょう。全体の陣痛時間が短いため、初産よりは楽と感じることもあるかもしれません。

陣痛の強さについては、初産婦と経産婦ではそれほど差がないといわれています。同じ人間でも出産のたびに痛み方は変わるため、経産婦でもどれくらい痛みが強いかを予測することは難しいのです。痛みとは別に、出産における自己評価は経産婦が高いという研究結果もあります。これは「陣痛の強さにあわせて呼吸法ができた」「お産の痛みをうけとめた」「精神的に落ち着いてお産ができた」などの産痛コーピングスキル(産痛に対処し乗りきる技術)が経産婦のほうが高いからといわれています。

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陣痛が痛くないようにする方法は?

楽な姿勢をとる

出産には、初産婦で11~15時間、経産婦で6~ 8時間ほどかかるといわれています。そのあいだ、じっと仰向けの姿勢でいるのはつらいかもしれません。子宮口が全開してからは姿勢を固定されることはありますが、陣痛に耐える際、基本的には姿勢は自由です。自分が楽だと感じる姿勢を探してみましょう。

楽だと思う姿勢は個人差があります。横に寝そべったり、四つんばいになったり、椅子に逆向きに座ったりしてみても良いでしょう。立って歩き回ったほうが楽に感じたというママもいます。パートナーにもたれかかっても良いでしょう。リラックスできる姿勢が見つかれば、陣痛の痛みも軽減できるかもしれません。

呼吸に集中する

自分の呼吸に集中することで、陣痛の痛みを逃したり、やわらいだりすることもあります。ポイントは吐く息を意識することです。深く吐くことで、自然と多くの空気を吸い込むことができます。

禅やヨガなどでも、呼吸に集中し瞑想することで、心身をコントロールする方法があるようです。呼吸が整うことで全身に酸素がいきわたり、自律神経が整えられ、精神的なリラックスにもつながる可能性があります。

身体を温める

足や腰、手などを温めることで血液の循環が改善し、子宮筋への酸素の供給をうながすことがあります。子宮筋がほぐれると、子宮収縮が順調に進み、陣痛もまぎれる可能性があります。また「温かい」という心地よさが、精神的なリラックスにつながることもあるようです。

痛むところに温かいタオルや使い捨てカイロをあてて、じんわり温めてみるのも良いですね。熱すぎるのが不快なら、パートナーにただ手を当ててもらうだけでも良いでしょう。毛布やカイロなどを用意しておくと便利ですよ。

ツボを押す

陣痛の促進や緩和にツボ押しが有効なこともあります。有名なのが「三陰交(さんいんこう)」です。足の内側、くるぶしの頂点から指幅四本分上がったところにあるツボです。ゆっくり息を吐きながら、控えめな力で静かに押します。息を吸いながら離して、何度か繰り返します。

靴下やカイロなどでツボ付近を温めるのも良いでしょう。手軽に試せるツボ押しですが、思わぬ影響が身体に出ることもあります。妊娠中は身体が特別な状態にあるので、ツボ押しは事前に担当の医師や助産師に相談してからのほうが良いかもしれません。

パートナーの手を握る

陣痛が強くなると、何かにしがみついたり硬いものを握ったりして、過剰に入りすぎた力を逃したくなることがあるかもしれません。もしパートナーがそばにいるのなら、手をギュッと握ってもらうのもひとつの手です。

人の手の温かみや「この人も一緒に頑張ってくれている」という思いが精神的な余裕につながることもあります。「痛い」という感情の共有もできるので、パートナーがより献身的につくしてくれるかもしれませんよ。

声を出していきみ逃し

痛みを声に出すことで、呼吸が自然とできるというメリットがあります。子宮口が全開になる直前は、いきみたくてもいきむことが許されず、陣痛といきみの狭間でママは呼吸もしにくいことがあります。呼吸法を練習していても、余裕がなくてうまくいかないこともありえるのです。

そんなときは、大きな声を出すだけでもいきみ逃しになるかもしれません。助産師が横で呼吸のタイミングを教えてくれる場合は、それにあわせて声を出してみましょう。呼吸をあわせるのは難しくても「ふぅーーっ」と長めにうめき声を出せば、自然と多くの酸素を取り込むことができます。周囲を気にせず声を出すことで、気がまぎれることもありますよ。

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テニスボールやゴルフボールを使う

多くの産院でいきみ逃しや陣痛の緩和に使われているのが、テニスボールやゴルフボールです。手に握りこむことができる大きさと、ちょうど良い硬さが大事なようです。かさばるものではないので、入院準備の荷物にテニスボールなどをひとつ入れておいても良いでしょう。

どうしてもいきみたくて肛門付近に力が入ってしまうとき、ボールで肛門を強く圧迫することでいきみを逃すことができる場合があります。自分で押しこむのが難しいときは、助産師やパートナーに手伝ってもらいましょう。あまり強く押し付けすぎると脱肛の原因になることもあるので、ほどほどの強さが良いですね。

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陣痛が痛くないときも病院へ行く?

痛みの感じ方は個人差があります。普通では動けないほどの痛みでも、生理痛やお腹の張りぐらいに感じることがあるかもしれません。陣痛は赤ちゃんが生まれるときの子宮収縮をさし、必ずしも強い痛みが条件とはなりません。陣痛の特徴としては、子宮が収縮する「発作」と痛みがなくなる「間欠」が定期的に訪れます。

痛みが強くなくても、普段と違うお腹の張りや生理痛のような疼痛が規則的に10分間隔で起こるようなら、陣痛の可能性もあります。病院に連絡して、念のために診てもらったほうが安心でしょう。急に分娩が進むこともあるので、痛くないからといって病院まで自分で運転せず、陣痛タクシーやパートナーの車での送迎など、安全な移動手段を確保しましょう。陣痛タクシーの使用を検討している場合は事前に登録しておくと安心です。

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陣痛を乗り切るためにやっておくべきこと

呼吸法の練習

呼吸法は陣痛のいきみ逃しや痛みの緩和に有効とされ、多くの産院でも指導されています。有名なのが「ラマーズ法」です。呼吸法に集中することで、痛みをまぎらわせるという考えであり、さまざまな呼吸法のベースになっています。

陣痛の初期から呼吸法を始めると疲れることもあるので、できるだけ自然な呼吸を心がけます。静かに鼻から吸って、ゆっくり口から吐くようにしましょう。陣痛が進み、深呼吸がしづらくなってきたら、一点を見つめて、リズムを整えながら「フーフー」と短く吐きます。

子宮口が全開する前にいきみたくなった場合はいきみ逃しの呼吸法をします。「ヒッヒッ」と短く息を吐き、次に「ふーッ」と長めに吐き、脱力します。痛みが強くなると、普通の呼吸をすることも難しい場合があります。赤ちゃんにも十分に酸素が行き届くよう、陣痛が始まる前に呼吸法を繰り返し練習してみましょう。

イメージトレーニング

最近では「ソフロロジー」という分娩方法をとりいれる病院も多くなってきました。ソフロロジーとは妊娠中から、さまざまなことをポジティブにイメージトレーニングする方法です。呼吸法やリラックス法、赤ちゃんとの対話、赤ちゃんとの生活などのイメージトレーニングをかさね、陣痛も前向きにとらえます。

イメージトレーニングでは、陣痛を「痛い、怖い」ではなく「もうすぐ赤ちゃんに出会える、嬉しい」と考えます。イメージトレーニングを繰り返すことで、自然と心や身体をコントロールしやすくなることもあります。ママがひとりで頑張るのではなく、赤ちゃんとふたりで協力しながらお産を進めるとイメージすることで、不安や恐怖が軽減し、リラックスにつながるかもしれませんね。

自分にあったリラックス方法探し

身体も心もリラックスすることで、出産がスムーズに進んだり、陣痛の緩和につながったりすることもあります。痛みで不安な状態が続くと身体は緊張し、過度な緊張は痛みをさらに強く感じさせることがあります。「恐怖」と「緊張」と「痛み」の悪循環は交感神経を過度に活動させ、子宮の収縮を妨げる可能性があるのです。

そのため、産院では「リラックスして」とアドバイスされることが多いですが、何の用意もなしにリラックスするのは難しいものかもしれません。リラックスするための方法は、人によって異なります。まずは自分にあった方法がどういうものなのかを普段の生活から探してみましょう。

アロマや音楽が緊張をほぐすこともあります。また、ひとりで本を読んだりゲームをしたりして集中したいという人もいるでしょう。足湯に浸かるなど、身体の一部を温めてみても良いでしょう。家族やパートナーとお話することで、心が落ち着くこともあります。リラックスするための道具などは事前に用意しておいて、入院時に持ち込むと良いかもしれません。

パートナー・家族とのコミュニケーション

赤ちゃんはとてもかわいいものですが、新生児の育児中は他の家族とゆっくりした時間を過ごすことができないこともあります。夫と会話したり、上の子どもと遊んだりする機会が減ってしまう可能性もあるのです。赤ちゃんが産まれる前にたっぷりと家族の時間を作ることで、産後のコミュニケーション不足を補うことができるかもしれません。

体調が良いときは家族と近くにおでかけしたり、一緒に食事をしたりして、会話の機会を増やしてみましょう。上の子どもは赤ちゃんをうらやましく思うこともあります。愛情を言葉で伝え、甘えさせてあげてあげましょう。出産の不安や、母親学級で学んだことなどをパートナーに話してみるのも良いですね。育児のサポートを先にお願いしておくのも良いでしょう。

立ち会い出産をするときは、パートナーに出産の流れや、サポートしてほしいことを伝えておきましょう。出産時にパートナーが頼りになり、パートナーからの十分なサポートを得られると、出産満足感が高くなるという結果も出ています。

陣痛の痛みに関する体験談

痛みより産んだ後の喜びが上回る

筆者の場合、一人目の出産時の陣痛と二人目の出産時の陣痛は、それぞれ違ってそれぞれ痛いものでした。しかし二人目のときのほうがやはりスムーズに進んだため、比較的回復は早かったように思います。

痛いときは大きな声を上げて気を紛らわしつつ、そばにいた夫に「私はこんなに痛い思いをしている。出産は本当に大変なものだ」というアピールを大げさなほどにしました。現実的な痛みを共有できなくても「痛い、苦しい」という感情を夫と共有することができたのが、筆者にとっては精神的な安定につながったと思います。

筆者は怪我や病気をほとんどしないタイプなので、痛みに弱いと思っていました。そして一人目を出産したときは「こんな痛い思いをするぐらいなら、絶対に次はない」と強く感じました。しかし自然と二人目の出産を望むようになったのは、赤ちゃんを産んだ達成感と赤ちゃんに出会えた喜びが、恐怖を上回るものだったからなのでしょうね。

心と身体の準備を整えて陣痛を迎えよう

陣痛の痛みの強さは個人差が大きいものです。同じ人でも、一度目の出産と二度目の出産でまったく違うこともあります。痛みの強さやかかる時間を予測するのは難しいですが、イメージトレーニングなどで心と身体の準備を整えることは可能です。身体の力を上手に抜くことが、痛みを緩和し、出産満足感を高めるといわれています。呼吸法やパートナーのサポートなど、リラックスできる方法を探してみましょう。

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