【産婦人科医監修】子宮口が開きやすい体勢は?運動などの方法や処置、感覚・痛み
陣痛が始まると、子宮口が開いて赤ちゃんが生まれるための準備が進みます。子宮口が開くとどのような感覚・痛みなどの自覚症状があるのでしょうか。お産をスムーズにするために、子宮口を柔らかくするストレッチや、臨月に病院で行われる処置はあるのでしょうか。子宮口が開くにはどうすれば良いのか、メカニズムや方法について解説します。
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目次
「子宮口が開く」とは?
子宮口とは、子宮の入り口であり、赤ちゃんが産まれる際の出口ともなるところです。子宮の下部にあり、腟とつながっている細い管の部分を子宮頸管と呼び、腟側が外子宮口、胎児側を内子宮口といいます。「子宮口が開く」とは外子宮口も内子宮口も開くことをさします。
陣痛が始まると、ママの体内では「オキシトシン」や「プロスタグランジン」というホルモンが多く分泌されます。このホルモンは、ママの子宮頸管や子宮口を柔らかくして、赤ちゃんが通りやすいようにしてくれます。分娩が進むと子宮口はどんどん開いていき、赤ちゃんが産まれるときには子宮口は直径10cm程度まで開くのが一般的です。
子宮口が開くとどうなるの?
陣痛が規則的に10分間隔で起こったり、1時間に6回以上起こったりすると、お産の開始となります。陣痛が始まってから子宮口が完全に開き終わるまでを「分娩第一期」といいます。経産婦では4~6時間、初産婦では10~12 時間くらいかかることが多いようです。分娩第一期の子宮口の変化を見てみましょう。
準備期
陣痛が8~10分間隔で起こっている時期を「準備期」と呼びます。潜伏期と呼ぶこともあります。準備期になると、ほとんどのママは病院に連絡し、入院することになります。比較的痛みが弱い時期なので、慌てず落ち着いて行動しましょう。
準備期では、子宮口が0~3cm程度開いていきます。なかには陣痛が始まっても、しばらくは子宮口がぴったり閉じているママもいます。子宮口が開いているかどうかは自分ではわからないことが多く、1cmや2cm程度では痛みを感じないこともあります。
一般的に、陣痛の始まりと子宮口の開大は妊娠37週0日〜41週6日のあいだに起こります。しかし、妊娠37週未満に感染症などが原因で、ママの子宮口が開いてしまうこともあります。治療しても子宮口の開大が止まらない場合は、早産となる可能性もあることを覚えておきましょう。
活動期
子宮口が4cm程度開くと活動期に入り、子宮口の開大が急速に進むことになります。活動期は開口期とも呼ばれ、陣痛の間隔は3~5分ほどになります。陣痛が強くなり、ママが大変なときでもありますね。
陣痛の間隔が短くなるにつれて、子宮口もどんどん柔らかくなっていきます。子宮口が開くことで、おしるしが起こったりおりものが増えたりすることもあります。子宮口は4~7cmほど開き、定期的に助産師が指で確認してくれます。
移行期
陣痛が最も激しく、短くなるころが移行期です。極期とも呼ばれます。子宮口の開きは8~10cm程度となり、分娩室へ移動するタイミングです。腰や肛門付近が強く痛みますが、子宮口が完全に開くまでは、いきまないように力を逃す必要があります。
子宮口が全開大に近くなると赤ちゃんの頭が骨盤内に下り始め、いよいよ出産となります。時間が経っても子宮口がなかなか全開大にならないときは、陣痛促進剤などの処置を取ることもあります。
予定日超過しても大丈夫?子宮口を開く方法は?
出産予定日を超過しても、あせる必要はありません。しかし、予定日を2週間以上過ぎると過期産になる可能性があるため、それまでには陣痛が起こって欲しいと思うママも多いでしょう。また、陣痛が始まってもなかなか子宮口が開かず、お産が進まないこともあります。子宮口をスムーズに開くには、どのような行動が効果的なのでしょうか。
マタニティヨガ・妊婦体操
子宮口を柔らかくするストレッチはあるのか、臨月の妊婦さんは気になることでしょう。実は子宮口は子宮頸管の内側にあるため、直接的に子宮口を柔らかくするストレッチはありません。しかし、子宮を支える骨盤底筋を鍛えることで、子宮口周辺の筋肉がしなやかになり、子宮口を開きやすくすると考えられています。
そこで臨月に入った妊婦さんにおすすめなのが、マタニティヨガや妊婦体操です。股関節や腰回りに効果があるストレッチをして、出産に備えましょう。
ただし、子宮口を柔らかくするのはストレッチの効果だけではなく、ホルモンの分泌などさまざまなことが関係しています。臨月だからといって焦らずに、心配なことがあれば医師に相談しながら取り組みましょう。
あぐら
臨月に入ったら、股関節を柔軟にするストレッチをしてみましょう。誰にでもできる「あぐら」がおすすめです。あぐらは子宮口に直接働きかけるわけではありませんが、あぐらの姿勢は股関節の柔軟性を高め、産道の広がりをスムーズにしてくれるでしょう。
夜、寝る前のリラックスタイムに行っても良いですし、普段から座るときはつねにあぐらを意識しても良いですね。陣痛が始まってから、あぐらで呼吸法を試してみても良いでしょう。あぐらをするときは全身の力を抜いて、リラックスを心がけると良いですよ。
ウォーキング
妊娠36週以降は、適度な運動をするのがおすすめです。ウォーキングは気分転換にもなりますし、お産に必要な体力をつけてくれます。また、上半身を立てた姿勢で歩くため、重力がかかって赤ちゃんが下りやすくなるかもしれません。
階段を上り下りすることも、縦揺れで重力がかかるため、子宮口を開きやすくする可能性があります。手すりをしっかりつかんで、ゆっくり歩き、安全に気をつけましょう。疲れたり、お腹が張ってきたりしたら、すぐに休むようにしましょうね。無理をしないことが大切です。
雑巾がけ
四つん這いの姿勢は、股関節を柔軟にして子宮口を柔らかくしてくれることがあります。また、陣痛が始まった後で、四つん這いの姿勢を取ると腰痛が緩和されたというママもいます。
雑巾がけならば、四つん這いの姿勢をとったまま床をきれいにすることができて一石二鳥ですね。赤ちゃんが産まれる前に、小さいものが落ちていないか点検をかねてゆっくり雑巾がけをしてみても良いでしょう。
四つん這いの脚の開き方は、赤ちゃんが下りてくるのを手助けするともいわれています。しかし、長いあいだ四つん這いでいると、膝が痛くなることもあるので注意しましょう。
ツボ
陣痛が起こったら、マッサージやツボ刺激を試してみても良いでしょう。腰やお尻など痛む部分をさすると、リラックスして全身の力が抜け、結果的に産道が開きやすくなることもあります。また「三陰交(さんいんこう)」というツボは、冷え性を改善し、お産をスムーズにするといわれています。
足の内くるぶしの一番高いところから、指4本分上にあるくぼみが三陰交です。深呼吸しながら親指で押すと効果的ですよ。お風呂でゆっくり温めながら刺激しても良いですね。ツボの刺激が思わぬ影響を与えることもあるので、担当の医師に相談してから試したほうが良いかもしれません。
スクワット
スクワットも、予定日が近いママにおすすめの体操のひとつです。股関節の柔軟性を上げ、骨盤を緩め、産道を開きやすくしてくれることがあります。
大きなお腹や腰に負担をかけないように、スクワットは手すりにつかまったまま行ったり、壁に背中をつけて行ったりすると良いですね。スクワットをすると想像以上に身体が疲れることもあるので、休みながら体調が良いときに試してみましょう。
子宮口を開くための処置とは?
なかなか子宮口が開かないときや、過期妊娠となりそうなとき、母体や赤ちゃんの状態によっては人工的に子宮口を開くこともあります。子宮口を開くには、薬や器具などを使う方法があるようです。
陣痛促進剤
子宮口がスムーズに開かない原因のひとつに、微弱陣痛が考えられます。微弱陣痛の場合、子宮の収縮を促す薬剤によって陣痛を促進させることもあります。また、前期破水や過期妊娠など、妊娠を継続すると母体や赤ちゃんにリスクがある場合も陣痛促進剤を使用することがあるようです。
陣痛促進剤には、オキシトシンやプロスタグランジンなどの種類があり、錠剤を服用したり、点滴で投与したりします。陣痛促進剤は副作用などのリスクもあるため、助産師や医師など、医療スタッフによるしっかりとした管理体制が必要です。
子宮頸管熟化剤
陣痛が起こると、一般的にはホルモンの影響で子宮口が柔らかくなり、子宮口が開き始めますが、陣痛が始まっても子宮口が閉じた状態が続くこともあります。子宮頸管が柔らかくならない場合には「子宮頸管熟化不全」と診断されることがあり、子宮口開大や子宮頸部の軟化を促す「子宮頸管熟化剤」を使うことになるかもしれません。子宮頸管熟化剤は、錠剤と静脈注射があります。
子宮頸管熟化剤は、効果が現れるタイミングに個人差があり、必ずしも効果があるわけではありません。医師からリスクや副作用などの説明を受け、使用するかどうかを相談しましょう。
子宮頸管拡張器具
予定日超過などで陣痛を誘発する場合、先に子宮頸管が熟化し、子宮口が柔らかい状態になっている必要があります。子宮頸管の熟化が起こっていないときは、熟化を促すために「子宮頸管拡張器具」を使った処置を行うことがあります。
子宮頸管拡張器具はさまざまな種類があります。親水性ポリマーでできているスティック状の器具や、ラミナリア桿(かん)という円柱状の器具を使うこともあります。子宮口に挿入し、水分を吸わせて徐々に子宮口を押し広げていきます。
風船状の器具を子宮口に挿入することもあります。注射器で風船の中に滅菌水を入れると、風船がふくらみ子宮口が広がっていきます。子宮頸管拡張器具を使う場合は入院して処置を行うのが一般的です。器具を使用した次の日に、陣痛促進剤でお産を進めたり、自然の陣痛が始まったりします。
内診ぐりぐり
出産予定日が近づいても子宮口が硬く閉じている場合、医師の判断で「内診ぐりぐり」と呼ばれる処置をすることがあります。内診ぐりぐりは妊婦さんたちのあいだの俗称で、医学的には「卵膜剥離(らんまくはくり)」と呼ばれます。
妊婦健診の内診時、指や器具で子宮の壁と卵膜の隙間をぐるりと刺激し、卵膜の一部を子宮壁から引き剥がします。妊娠40週以降のママに対し、薬剤などによる陣痛誘発の前に行われることが一般的です。卵膜剥離後は自宅安静で陣痛が起こるのを待ちます。
子宮口が開く感覚は?痛みはある?
子宮口が開く感覚は個人差があり、チクチクした痛みを感じるママもいれば、ほとんど気づかないママもいます。子宮口がうずくような痛みや、くすぐったさを感じるママもいるようですね。大きな自覚症状はないかもしれません。子宮口がなかなか開かない場合も、陣痛の間隔が3~5分ぐらいになるころには、急速に開口が進むのが一般的です。
出産前以外に子宮口が開くことはある?
陣痛が始まった後に子宮口が開くことが一般的ですが、それ以外のタイミングで子宮口が開くこともあります。十分に赤ちゃんが成熟していないときに子宮口が開いてしまうと、妊娠超初期では早期流産、妊娠初期では切迫流産の可能性があります。妊娠22週以降から37週未満では「切迫早産」のリスクがあります。
流産や早産の原因はさまざまで、細菌の感染や子宮の奇形、ストレスなどが考えられます。また、妊娠や出産とは関係なく、生理前になると子宮口の位置が下がり、柔らかくなる傾向があります。
子宮口の開きに関する体験談
筆者は陣痛の間隔が10分以内になったころに入院しましたが、数時間経っても子宮口が開きませんでした。今ではそれが普通なのだとわかりますが、当時は陣痛が始まったらすぐに産まれるものだと思っていたので、子宮口の開きを確かめる助産師さんに「まだですか、本当にまだ1cmですか」と何度も聞いてしまいました。
子宮口が5cmくらいになるまでは、本当に長く感じました。しかし、子宮口の開きが5cmを過ぎるとあっというまに全開大になって分娩台へ移動し、無事に赤ちゃんが産まれました。これまでかかった時間が嘘のような怒涛の展開でした。「子宮口がなかなか開かない」と焦って待つと、余計に時間を長く感じてイライラしまうかもしれません。赤ちゃんのことを考えながら、リラックスして待てると良いですね。
子宮口が開いたら赤ちゃんにもうすぐ会える
子宮口が開き始めれば、赤ちゃんに会えるまであと少しですね。子宮口が開く感覚は人それぞれですが、場合によっては子宮口が閉じたまま、お産がスムーズに進まないこともあります。普段から、股関節を広げて産道を柔らかくするような運動をすると良いかもしれません。赤ちゃんに会うことを楽しみに、万全な準備で出産にのぞみたいものですね。
※この記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。