破水があったのに陣痛がこない場合は誘発剤を使う?出産までにかかる時間は?【産婦人科医監修】
破水して、いよいよ出産…と思っても人によってはなかなか陣痛が来ない場合もあります。破水したのに陣痛が来ない場合はどのような対応がされるのでしょうか。いざというときに安心して出産に臨めるよう、破水後どのくらいの時間で陣痛が起こるのか、陣痛誘発剤とはどのような薬なのかについて、破水の基本的な知識とあわせて解説します。
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この記事の監修
目次
破水とは?量や色、においは?
破水とは
破水とは、赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れて、赤ちゃんを囲んでいた羊水が身体の外に出てくる状態を言います。量は人それぞれで、チョロチョロと少しずつ出る人もいれば、動くたびにドバっとたくさん出る人もいます。色は透明や乳白色、あるいはおしるしが混ざった薄いピンク色をしていることがほとんどで、生臭いにおいや精液のような独特なにおいが特徴です。
出産が近づいたことで、特に何もしていなくても自然に破水するケースもありますが、重たい荷物を持つことや性行為、卵膜の異常などが原因で突然破水するケースも見られます。臨月はいつ破水があってもおかしくないことを頭に置き、いざというときに適切な対処ができるよう準備と心構えをしておくと良いでしょう。
破水の種類
破水には4つの種類があります。陣痛が始まってから子宮口が全開になったときに起こる一般的な破水を「適時破水」、陣痛が始まったものの子宮口が全開になる前に起こる破水を「早期破水」、陣痛が始まる前に起こる破水を「前期破水」、子宮口から離れたところの卵膜が破れることで、少しずつ羊水が出る破水を「高位破水」と言います。
破水したけど陣痛がこない場合、出産はできる?
前期破水でも約80%の人は、破水してから24時間以内に陣痛が起こります。陣痛が起こってから出産までにかかる時間は初産婦で一般的に12~15時間です。
しかし、破水が起こってもなかなか陣痛がこないこともあり、その場合は赤ちゃんを守っていた卵膜が破れた状態が続くので、感染症にかかるリスクが高くなってしまうことが考えられます。そのため、陣痛誘発剤を使って陣痛を誘発させる方法をとります。人によっては陣痛誘発剤を使ってから数日たってようやく陣痛が来る場合もあり、出産までにかかる時間にはかなりの個人差があります。
また、妊娠何週目であるかによっても対応が変わってきます。妊娠37週に満たない早産の時期は、胎内でできるだけ赤ちゃんが育ってから生まれるよう、慎重に対応する必要があります。その場合は感染予防のための抗生剤や子宮収縮抑制薬を投与し、陣痛を遅らせる処置がとられることになるでしょう。
破水した場合でも陣痛誘発剤は使える?
陣痛がなかなかこないときに使用される「陣痛誘発剤」。陣痛が起こる前に破水してしまった場合でも使用されることがあるのでしょうか。
陣痛誘発剤とは
陣痛誘発剤とは、陣痛がこないときに陣痛を誘発する目的で使う薬のことです。陣痛がきているけれど弱いときに促進させるために使う薬は「陣痛促進剤」と言います。ただし、どちらも同じ薬で、使う時期によって呼び方が変わります。「誘発」のときは飲み薬と点滴タイプの2種類があり、「促進」のときは点滴を使用します。
破水後になかなか陣痛が来ないケースでは、医師の管理のもと陣痛促進剤を使って陣痛を誘発する可能性が高いといえるでしょう。
陣痛誘発剤のリスク
陣痛誘発剤はお産をスムーズに進めるために使用される薬ですが、リスクがまったくないわけではありません。人によっては、陣痛の痛みが強く出てしまう「過強陣痛」になってしまうこともあります。過強陣痛は陣痛誘発剤が正しく適用されていなかった場合に起こりやすく、あまりの痛みに母子が興奮状態に陥ったり、お腹の中の赤ちゃんを圧迫して負担をかけてしまったりする恐れがあるとされています。
しかし、過強陣痛は必ずしも陣痛誘発剤が原因で起こるわけではありません。母子や胎児の状態によっては陣痛誘発剤を投与していなくても症状が出てしまう場合もあります。
また、過強陣痛とまではいかなくとも、陣痛誘発剤を使うと痛みを強く感じやすくなるといわれます。しかし、痛みの感じ方は人それぞれのため、必ずしも陣痛誘発剤が痛みを助長したとは言い切れません。なかにはあまり痛みを感じない人もいます。医師のもとで正しく使用されていれば、このような副作用は起こらない場合がほとんどなので、過度に心配しないでくださいね。
陣痛誘発剤・陣痛促進剤の費用
陣痛誘発剤は一般的に出産を助ける薬であって、病気を治すことを目的とした薬ではないので保険が適用されません。そのため基本的には薬代は自己負担となり、費用は約1~5万円かかります。ただし、陣痛が弱く、出産がなかなか進まない「微弱陣痛」と判断された場合に投与される陣痛促進剤には保険が適用されます。
破水したらどうする?救急車を呼んでもいい?
早期破水の場合
早期破水の場合、陣痛が始まっていることに気がつかないまま破水することもあります。予定日が近づいたら、外出時にはタオルや大きめの生理用ナプキンを持ち歩いておくと破水が起こっても焦らなくて済むでしょう。
また、いきなり陣痛が始まると、救急車を呼ぶべきかどうか迷うかもしれませんが、まずは病院に連絡しましょう。基本的には救急車を使わずに移動することになります。いざというときに移動手段がない、というようなことにならないよう、家族と連携を取ったり陣痛タクシーに登録したりしておくと良いでしょう。
また、早期破水の場合、陣痛が来てから子宮口が開き始めているので、前期破水と比べてリスクは高くありません。しかし、出産に時間がかかってしまうと、母子の体力が低下したり、感染症のリスクが高くなったりすることが危惧されるため陣痛促進剤を使うこともあります。
前期破水の場合
陣痛が来る前に突然破水をすると焦ってしまうかもしれませんが、まずは病院に連絡しましょう。陣痛の前に破水しても、すぐに出産となることはほとんどありません。大量出血や動けないほどの痛みがあったり、赤ちゃんが今にも生まれそうになっていたりする場合は、救急車を呼ぶ必要があります。自分で判断がつかない場合は、まずは病院に連絡して救急車を呼ぶべきかどうか、医師の判断を仰ぎましょう。
一般的には、タクシーや家族が運転する自家用車で病院に行く人がほとんどです。しかし、救急車を呼ばなくても大丈夫だと自分で判断した場合でも、病院へ必ず連絡をしてから向かうようにしましょう。
また、破水後のシャワーや入浴、トイレのウォシュレットは避けましょう。破水後は卵膜が破れているので、身体の外からの雑菌が入って来やすくなっています。下着を清潔なものに替え、バスタオルや大きめの生理用ナプキンを当てて対処すると良いでしょう。
高位破水の場合
高位破水は流れ出る羊水の量が少ないので、破水が起こっていることに気づきにくいという問題があります。人によっては尿漏れやおりものと勘違いして、特に何も対処しないで放置してしまう場合もあるようです。
もしかして破水かな、と思ったら、色やにおいに注意し、自分の意志で止めることができるかどうか、自分が動くたびに出てくるかどうか、といった点から見分けるようにしましょう。高位破水か疑われる場合は、早めに病院に連絡して指示を仰いでくださいね。
破水に気づかなかったときのリスクは?
破水していても、おりものや尿と勘違いしたり、量が少なくて気づきにくかったりすることもあるかもしれません。そうした場合にはどのようなリスクが生じることが考えられるのでしょうか。
破水に気付かないまま長時間放置してしまうと、感染症や胎児のストレスにつながることがあります。破水すると赤ちゃんを守る卵膜が破けているので、外の細菌に感染し、感染症を引き起こしてしまう可能性があるといわれています。また、破水によって羊水が少なくなり、赤ちゃんの成熟障害や赤ちゃんへ酸素が十分に届かなくなる「臍帯圧迫」や「臍帯(へその緒)脱出」を引き起こしてしまうこともあります。
必ずしもこうした状況に陥るわけではありませんが、このようなリスクを避けるためにも、できるだけ早期に発見できるよう、自分で判断がつかない場合は迷わず病院に相談しましょう。
破水があってもあわてないよう準備を
破水したのになかなか陣痛が来ないと、不安になる人もいるかもしれません。出産までにかかる時間についても気になる人が多いのではないでしょうか。破水から陣痛・出産までの時間は人によって異なり、そのときになってみないとわからないことだらけです。破水後の陣痛待ちの時間も落ち着いて過ごしようにしましょう。
破水と陣痛の関係や、陣痛誘発・促進剤について知っておくことで、いざ自分がその状況になっても必要以上に不安にならずに出産に臨めると良いですね。わからないことや不安なことがあれば、ひとりで抱えこまずに医師や周りの人に相談するようにしてくださいね。
※この記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。