【産婦人科医監修】陣痛・破水で救急車を呼んでもいい?妊婦が救急車を呼ぶべきケースとポイント
本陣痛や破水が起こったら、産院に向かう必要があります。陣痛・破水時に、救急車を呼ぶのは非常識な手段なのでしょうか。いざというときにパニックを起こさないためにも、救急車を呼んでいいケースや、救急隊員への受け応えなどを学んでおきましょう。ここでは妊婦が知っておきたい救急車の知識を産婦人科医監修で解説します。
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この記事の監修
目次
陣痛・破水で救急車を呼ぶのはOK?
基本的には自家用車やタクシーがベター
陣痛が始まってもすぐに出産となるわけではないため、通常の出産の場合には基本的には救急車を呼ぶ必要はありません。破水が起こると赤ちゃんの誕生は近いといえますが、そのまま車で病院に移動しても問題ないことがほとんどです。救急車はあくまでも緊急性の高い症状の人の移動手段ととらえましょう。(※)
大切なのは、いざというときにパニックにならないように、陣痛・破水時の移動手段を確保しておくことです。夫やパートナー、親族などに病院の場所や連絡先を伝え、車を出してもらえるようにしておくと良いでしょう。仕事などでそばにいないときを考えて、ひとりだけではなく何人かにお願いしておくと安心です。
外出中に破水した場合や誰かに頼れないときは救急車を呼ぶのではなく、陣痛タクシーを利用するのもおすすめです。ママが自分で運転するのはやめましょう。痛みが強くなって運転ができなくなる可能性もありますし、注意力が散漫になり母体にとっても周りの人にとってもリスクがあります。
陣痛タクシーは事前にママの住所や産院、出産予定日を登録しておくことで、優先的にタクシーを配車してもらえるタクシー会社のサービスです。費用は、基本的に通常のタクシー料金と変わらないことが多く、後払いに対応していることもありますよ。
すぐに救急車を呼ぶべきときもある
基本的には、陣痛・破水時は自家用車やタクシーの移動で大丈夫ですが、すぐに救急車を呼んだほうが良いときもあります。激しい痛みがあるとき、大量の出血があるとき、医師が指示したときなどケースバイケースです。自分で判断できないときのために、周囲の人にも状態を伝えるようにしましょう。陣痛が起こったらまずは産院に連絡して、指示を仰ぐようにすると安心です。
迷ったら病院や救急相談窓口に電話しよう
救急車を呼ぶべきなのかどうかを迷ったときは、まずは分娩予定の産院に連絡して担当医の指示を仰ぎましょう。ほとんどの産院は24時間体制で動いているので、真夜中でも連絡を取ることは可能です。自家用車で病院に向かう場合、突然の雪などでも困らないよう、冬はスタッドレスタイヤに履き替えておいたほうが安心です。
救急車の要請を迷ったときに便利なのが救急窓口です。医師や看護師、救急隊経験者などの医療相談員が、24時間年中無休で電話対応をしてくれます。ママの症状に基づく緊急性のアドバイスや受診の必要性に関するアドバイス、近くの医療機関の案内などをしてくれます。
東京都の救急連絡センター、大阪府の救急安心センターの番号は「♯7119」となっています。反射的に「119」を押す前に、窓口の存在を思い出してみましょう。住んでいる自治体の救急連絡窓口の番号を事前にメモしておくと安心ですね。
陣痛・破水が起こったらやるべきこと
病院に連絡
陣痛が10分間隔で起こっている場合、または破水が起こった場合は慌てずに落ち伝いて病院に連絡しましょう。「そのまま自宅で安静にしてください」「すぐに入院準備をして向かってください」など、医師や助産師から指示があるはずです。
破水とは、赤ちゃんの頭や子宮内圧に押されて羊水が流れ出ている状態のことです。尿漏れと似ている場合もあるため、自分で判断ができない場合は病院に相談してみましょう。陣痛のみの場合は軽くシャワーを浴びても構いませんが、破水が起こっているときは細菌の感染を防ぐために入浴は避けましょう。
必需品を用意
産院に連絡して入院を指示されたときは、入院時に必要になるものを用意しましょう。すぐに必要になるものと出産後に必要になるものを分けておき、後でパートナーに持ってきてもらっても良いですね。何が必需品かは、産院からもらうパンフレットなどで確認しておきましょう。以下のものはバッグに入れてすぐに持ち歩けるようにしておくと安心です。
・健康保険証
・母子手帳
・診察券
・携帯電話
これらに加えて、以下のものが必要なこともあります。病院側で用意してくれることもあるので確認しておきましょう。
・前開きのパジャマ
・産褥ショーツ
・ナプキン
・タオル
・スリッパ
陣痛緩和やリラックスのためのアイテムを用意してあるときは、それも忘れずに持参してくださいね。
楽な姿勢をとる
陣痛は痛みが強くなる「発作」と、痛みが楽になる「間欠」が繰り返されます。間欠時は身体を休め、発作時はなるべく痛みが楽になる姿勢を取ってみましょう。座っている状態が楽なこともありますし、四つん這いや横向きに寝る姿勢が楽と感じることもあります。立って壁にもたれたり、クッションを抱きしめてみたりして、自分にとってベストな姿勢を探してみると良いでしょう。
リラックスを心がける
心身が緊張していると、子宮の筋肉も緊張してしまうかもしれません。できるだけリラックスして待ちましょう。移動中の車内でも、お気に入りのアロマや音楽を楽しんだり、友人と連絡をとったりして、落ち着ける環境を整えていけると良いですね。
生理用ナプキンやバスタオルをあてる
破水に備えて、厚めの生理用ナプキンをショーツにあてておくと安心です。破水では一気に羊水が流れ出たり、複数回に分かれて出たりするので、漏れにくい夜用羽根付きナプキンがおすすめです。
自家用車やタクシーに乗るときは、バスタオルを敷いてから座ると良いでしょう。防水用のレジャーシートを置いても良いですね。病院についてからは、下が開閉できる産褥ショーツに着替えることが多いようです。
妊婦や周囲の人が救急車を呼ぶべきタイミング
陣痛時には自家用車や陣痛タクシーで移動することが推奨されていますが、すぐに救急車を呼ぶべきときもあります。それはどのような場合でしょうか。
今にも産まれそうなとき
自宅や外出先で、破水して赤ちゃんの頭がもう見えている場合など、今にも産まれそうな場合は緊急を要することがあります。大体2分ぐらいの間隔で陣痛が起こっている状態です。この状態では、ママ自身は連絡を取れないことが多いため、周りの人が連絡をする必要があるかもしれません。必ず産院にも連絡を取りましょう。医師の指示で救急車を手配する場合もあります。
ただし、破水したからといってすぐに生まれるわけではなく、「破水したら救急車」という判断は適さないでしょう。破水しても慌てずに状況を見極められるよう、準備と心がまえをしておきたいですね。
動けないほどの激痛や大量出血があるとき
動けないほどの激痛や大量の出血があるときも、緊急を要する可能性があります。救急車と産院、どちらにも連絡しておきましょう。出血は周りから気づいてもらえないこともあります。可能であればママができるだけ周囲に自分の状況を詳しく伝えましょう。
周囲から見て明らかに異変があるとき
ママの意識がなかったり、意識がもうろうとしていたり、痙攣を起こしていたり、周囲から見て明らかに異変があるときは救急車を呼びましょう。
ママの意識が混濁していると、産院の連絡先を伝えられないこともあります。そばにパートナーがいるときは、向かうべき場所をママのかわりに救急隊に伝え、病院にも状況を連絡すると良いでしょう。
妊婦や周囲の人が救急車を呼ぶ場合のポイント
住所をすぐに伝える
最初に「火事か、救急か」を聞かれるので「救急です」と答えます。その後に住所を聞かれるので、現在地をはっきりと伝えましょう。市町村名から丁寧に伝えるのがポイントです。自宅であればすぐに住所はわかりますが、外出先などでは住所がわからないこともあります。
はっきりとした住所がわからないときは、目立つ建物や大きなお店、目印になりそうなものを伝えましょう。近くに電信柱や自販機があるときは、そこに住所が書かれていることもあります。バス停があったり、信号機に地名が書かれていたりすることもありますから、冷静に周りを観察して救急車が速やかに現在地に到着できるようにサポートしましょう。
正しい応急処置をする
救急車から応急処置の方法を指示されることもあります。可能なかぎり指示に従いましょう。知識がない人が個人の判断で身体を動かしたり、処置をしたりするのは危険なこともあります。いざというとき、基本的な応急手当の知識があれば、パニックを起こさず冷静に対処できる場合があります。
応急手当の知識は赤ちゃんが産まれた後にも役立つ可能性もありますね。ママだけではなく、パートナーや家族が救命の講習会に参加したり、応急手当の本を読んでおいたりすると安心かもしれません。消防庁のウェブでも基本的な応急手当を学ぶことができますよ。
人手が多いなら救急車の案内役を設ける
人手が足りている状況であれば、救急車に指示を仰ぐ人、患者に付きっきりで様子を見る人のほかに、救急車の案内役がいると良いでしょう。細い道や複雑な道の場合、救急車がすぐにたどりつけない可能性もあります。
大通りやわかりやすい場所まで案内に出て誘導すれば、救急隊がスムーズに患者の場所にたどりつけるので、処置や搬送の時間に余裕が持てるかもしれません。
必需品・あると便利なものを用意
保険証や診察券、母子手帳などの必需品はつねに持ち歩くようにしておきましょう。また、救急車を待っているときにお薬手帳や普段飲んでいる薬の袋を用意しておくことで、診察がしやすくなる可能性もあります。
下着や靴、タオルなど、後で必要になりそうなものも用意しておくと良いでしょう。ママが自分で用意できない状況もありえるので、いざというときのためにパートナーや家族にも入院セットの場所を知らせておきましょう。
救急車が来たら状況を詳しく伝える
救急車が到着したら、具合が悪くなったときの状況を詳しく伝えましょう。いつごろから症状が起こり、どのようになったのかをわかる範囲で良いので思い出してください。また、救急隊が到着するまで、顔色や出血など、どのような変化があったのか、実施した応急手当の内容も伝えましょう。
妊婦本人の情報も可能な限り伝えておきましょう。たとえば、持病やかかりつけの病院、普段から飲んでいる薬、医師からの指示などです。臨月に入ったママはいざというときに備えて、これらの情報をメモにまとめ、つねに持ち歩いておくと良いでしょう。
陣痛・破水時の移動手段に関する体験談
筆者は陣痛時の移動手段が夫しか頼れず、その夫も仕事ですぐに来られる状況ではなかったため、里帰り出産を選びました。実家であれば実母や実父、姉など複数の人に頼れたからです。外出時や全員が忙しいときに備え、陣痛タクシーにも登録しておきました。いざというときに複数の人に頼れるというのは安心できましたし、心の余裕にもつながりましたよ。
筆者の実家は雪国なので、雪対策はしっかりとっていました。早めにスノータイヤに取り換え、いつでも出発できるように朝一番に車まわりの雪かきをしていました。しかし、いざ陣痛がきて産院に向かおうとしたとき、いつも通っていたルートがお祭りのために通行止めになっていたのです。ナビを活用し、かなり遠回りして無事到着しましたが、通行止めを見たときは少しパニックになりました。何があるかわかりませんから、産院までのルートも複数知っておくと良いかもしれませんね。
陣痛・破水時は状況に応じて救急車を呼ぶか判断しよう
陣痛や破水が起こっても、できるだけパニックを起こさずにまずは状況を把握しましょう。救急車を呼ぶべきかどうかを迷ったら、まずは産院に連絡すると良いでしょう。医師の指示通りに動くことが大切です。
ママが冷静でいられないときは、周囲の人がしっかりサポートしてあげられると良いですね。緊急かどうか、ママに普段と違う変化がないかをどうかを確認し、病院や救急車にしっかりと状況を伝えられるようにしておきましょう。