産婦人科医監修|陣痛は生理痛のような痛み?生理痛がない人の陣痛は軽い?重い?
臨月に入ると、下腹部に疼痛(とうつう)を感じることがあります。お腹が張るようだったり、下痢のような痛みだったり、生理痛のような痛みだったりすることも。生理痛と陣痛には、共通のホルモンが関係しているといわれています。痛みの強さにも関連があるのでしょうか。ここでは陣痛と生理痛について解説していきます。
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目次
陣痛とは?
陣痛とは、赤ちゃんを外に押し出そうとして、子宮が収縮するときの痛みです。痛みが規則的に起こり、徐々に強くなって分娩にいたるものを「本陣痛」、痛みが不規則に起こってそのうち遠のいていくものを「前駆陣痛」とよぶことがあります。
前駆陣痛と本陣痛の始まりは似たような痛みが起こることもあり、経産婦でも区別が難しい場合があります。前駆陣痛が起こった数日後にはお産が始まる人が多いといわれていますが、個人差が大きく、その日のうちに本陣痛が起こることもあれば、数週間かかることもあります。前駆陣痛は出産の予行練習のような意味合いもあるのかもしれません。
陣痛は生理痛に似ている?
臨月に入ると、生理痛に似た痛みを感じることがあります。それが不規則で、安静にしていると痛みが遠のくようなら前駆陣痛の可能性があります。前駆陣痛と生理痛には何か関係があるのでしょうか。
生理痛は子宮を収縮させる作用のある「プロスタグランジン」というホルモンの分泌が多いことが一因となります。生理中はプロスタグランジンの働きによって、はがれ落ちた子宮内膜を血液と一緒に身体の外に押し出しています。プロスタグランジンには子宮収縮や痛覚の伝達を強める働きがあるので、痛みを感じる場合があるのです。
陣痛が始まるときも、ママからはプロスタグランジンが多く分泌されています。分娩促進のための薬剤にも、プロスタグランジンは利用されています。そのため、前駆陣痛や本陣痛の始まりは生理痛と似た下腹部の疼痛を覚えることもあるようです。本陣痛の場合は、その痛みが徐々に強くなり痛みの周期が短くなるため、最終的には生理痛との区別がつくことがほとんどです。
もともと生理痛がない人の陣痛は軽い?重い?
生理痛にも陣痛にも「プロスタグランジン」という子宮収縮作用のあるホルモンが関係しています。それでは生理痛が少ない人は、陣痛が軽くなる、または重くなるという関連性はあるのでしょうか。
「生理が重いと陣痛も強い」というジンクスは存在するようですが、生理痛と陣痛には医学的に実証された関係はないようです。生理痛は子宮の出口の狭さや、冷えによる血行不良、精神的なストレスなども関連するといわれています。
陣痛は産道や赤ちゃんの胎位、お産の進み具合などが関係することがあります。つまり生理痛も陣痛も、そのときの状況で強さが変わるので、必ずしも両者の痛みは比例するわけではないようです。
臨月に生理痛のような痛みを感じたらどうする?
臨月に生理痛のような痛みを感じた場合、以下のような可能性があります。
・前駆陣痛
・本陣痛
・便秘や下痢
・その他の病気
前駆陣痛と本陣痛の違いは、痛みが規則的であるかどうか、間隔が徐々に狭まってくるかどうかです。陣痛アプリなどで間隔を測り、1時間に6回程度痛みが起こるようなら病院に連絡してみましょう。痛みが遠のくようなら、入院の準備を進めながら本陣痛を焦らず待ちましょう。
臨月に入ると大きくなった子宮が胃腸を圧迫し、消化不良を起こすこともあります。便秘や下痢になるママも少なくありません。消化に良い食事を摂ったり、冷えを防いだりすることで改善することもあります。産院に相談し、胃腸薬や便秘薬を処方してもらっても良いですね。胃腸炎や食中毒など、他の病気の可能性もあります。痛みが強くて継続している場合や、出血がみられる場合は、すぐに医師に診てもらったほうが良いでしょう。
自分ではどの痛みか判断できないときは、遠慮せずに医師や助産師にアドバイスを求めても良いかもしれません。ひとりで悩むよりも安心してお産に臨めることもありますよ。
本陣痛前の生理痛のような痛みの緩和法
楽な姿勢
本陣痛が始まって実際に分娩が終わるまでは、平均的に初産婦で11~15時間、経産婦でも6~8時間かかるといわれています。体力を温存するためには、少しでもママが楽だと感じる姿勢で過ごすことが大切になります。
どの姿勢が楽かは、個人差があります。たとえば、ベッドの上に四つん這いになってみたり、椅子に座ってみたり、立って壁にもたれかかってみたりしても良いでしょう。ベッドに横になるときは、枕やタオルなどを使って、足の下に敷いてみたり、お尻を支えたりして、痛み方が違うかどうかを試してみても良いですね。
身体を温める
身体を温めることで全身の血行がよくなり、子宮の筋肉が柔らかくなって疼痛が軽減する可能性があります。筋肉が硬くなると産道も狭くなり、お産がスムーズに進まなくなることもあるようです。リラックスと血行促進のために入浴や足湯をとりいれている産院もあります。
血行を促進しやすい首筋や手足などを温めてみましょう。腰やお尻など身体の一部が痛いときは、そのポイントを中心に温めても良いでしょう。温タオルや、貼らないホッカイロが便利ですよ。入院準備のときに毛布やカーディガンなどと一緒に入れておいても良いですね。
ツボ押し
陣痛緩和にツボ押しを試すママもいます。ツボは動脈や静脈の上に多く存在し、適度に刺激することで内臓に働きかけ、血液の循環を良くして、身体の不調を改善するといわれています。陣痛の緩和や促進に効くといわれているツボはいくつかあります。
・三陰交(さんいんこう)
足首の内くるぶしの一番上に人さし指をあて、指4本分上(小指の位置)にあるツボです。冷えを解消し、分娩を促進させるといわれています。深呼吸しながら指でゆっくり指圧してみましょう。
・足三里(あしさんり)
ひざの皿の外側のくぼみに人さし指をあて、指4本分下(小指の位置)にあるツボです。体力増強や胃腸の疲れ、疼痛緩和に効果があるといわれています。
ツボは刺激するだけではなく、温めても効果があるといわれています。手軽に試せるツボ押しですが、妊娠中のママの身体は通常とは違う状態にあります。安全を期すために、ツボ押しは医師に相談してから行うと良いでしょう。
アロマでリラックス
精神的にも肉体的にもリラックスすることで、筋肉が弛緩し、産道も広がりやすくなる可能性があります。陣痛待ちや分娩時に、アロマオイルマッサージをする産院もあるようですね。ひとりで試すなら、香りを楽しむ「芳香浴」のみのほうが安心かもしれません。
カモミールやラベンダー、ペパーミントなどのアロマは鎮痛効果があると考えられています。また、クラリセージやスイートマジョラムはホルモンバランスを整え、ジャスミンやパルマローザには分娩促進作用があるといわれています。
陣痛時は身体の力を上手に抜くことが大切なため、効果よりも香りの好みで選ぶと良いかもしれませんね。お気に入りのアロマが側にあると、心が安らぐこともあります。アロマテラピーの前に、医師や助産師に念のために相談しておくとさらに安心感が増しますよ。
ハーブティーを飲む
ハーブティーを飲むことで、血行促進やリラックス、陣痛緩和につながることもあります。安産のお茶として知られているのがラズベリーリーフティーです。また、気分を落ち着かせるラベンダーやカモミール、鎮痛作用があるといわれるマジョラムなどをブレンドすることもあります。
優しい香りのするお茶を飲むことで、不安な気持ちがほっとほぐれるかもしれませんね。ハーブは自然由来なので安全と思いがちですが、種類によっては身体に影響をおよぼす可能性もあります。他の医薬品と同様、摂取する前に医師に確認したほうが安全かもしれません。
呼吸法
身体をリラックスさせる呼吸法や、いきみや痛みを逃すための呼吸法を試してみても良いでしょう。まだ痛みが強くないときは、自然な腹式呼吸を意識し、吸う息よりも吐く息を長めにしてみましょう。
細く長くゆっくり息を吐くことで、緊張が取れていくことがあります。不安や緊張、疲れが外に吐き出されていくイメージで行うと効果的です。痛みが強くなってきたら、深呼吸をしてから「ふーふー」と浅めに吐き出します。
たくさん息を吐けば、自然と多くの酸素を吸うことができます。リラックスや筋肉の弛緩だけではなく、呼吸に集中することで痛みをまぎらわせることもできるかもしれません。まだ痛みが強くないときに、練習してみると良いでしょう。
陣痛の痛みに関する体験談
筆者は前駆陣痛はほとんど感じませんでしたが、本陣痛の始まりは生理痛とよく似た痛みでした。臨月の時期、朝起きると懐かしい下腹部痛を感じ、さらに軽い出血があったため「妊娠中でも生理になるのかな」と一瞬思ってしまったほどです。おしるしの知識はあったためパニックにはなりませんでしたが、本当に似ていました。
生理痛としては重めでしたが、陣痛としては予想よりも軽い痛みだったため、前駆陣痛か本陣痛か判断が難しいところでした。間隔が短くなるにつれ、立てられなくなるほど痛みに変化していったため病院に連絡し、その日のうちに産まれました。筆者は生理痛は重いほうでしたが、出産は「かなりの安産」と担当の先生に言われたので、痛みの強さに因果関係はあまりないかもしれませんね。
生理痛のような痛みは本陣痛の練習かも
臨月に入って生理痛のような痛みを感じたら、慌てずに痛みの間隔を測ってみましょう。痛みが遠のいていくようなら、前駆陣痛の可能性があります。身体が出産にむけて準備をしているのかもしれませんね。陣痛以外の原因もありますから、痛みが我慢できないほど強いときは、医師に相談してみましょう。