【産婦人科医監修】帝王切開での出産は何人までOK?年子や2回目以降のリスクは?

手術によってお腹から赤ちゃんを取り出す「帝王切開」は、自然分娩よりもリスクがあるという意見の人もいます。二人目、三人目といった家族計画を考えている場合には、何人まで出産できるといった制限があるのかが気になるでしょう。帝王切開になる原因、リスクなどを産婦人科医監修で解説します。

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この記事の監修

寺師 恵子
産婦人科医
寺師 恵子

目次

  1. 帝王切開の場合、出産回数の制限がある?
  2. 自然分娩ではなく帝王切開になる理由
  3. 帝王切開手術では具体的に何が行われる?
  4. 帝王切開数によってリスクが上昇するものもある
  5. 帝王切開数によってリスクが上昇する癒着胎盤とは?
  6. 帝王切開と子宮破裂
  7. すべての人にリスクはある!家族とよく相談しよう
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帝王切開の場合、出産回数の制限がある?

「帝王切開では出産回数に限界がある」「帝王切開には回数制限がある」といった話を聞いたことがあるでしょうか。お産の方法には、産道を通って赤ちゃんが腟から生まれる自然分娩、手術を行うことでお腹から赤ちゃんを取り出す帝王切開の2種類があります。

帝王切開は比較的安全な手術であるといわれていますが、手術であることには変わりなく、自然分娩よりはリスクがあるという意見もあります。この「リスク」は、手術に対するリスクであり、産後の影響に対するリスクも含んでいるでしょう。

それでは「帝王切開で何人まで産める」という制限はあるのでしょうか。この答えとしては、帝王切開での出産回数には「限界がある人もいる」というのが正しい表現かもしれません。

帝王切開手術といえども、原因・切開方法・傷の回復状態には個人差があります。このため、人によっては出産後の家族計画について医師から指導を受け、今後の出産回数について言及される人もいるようです。人によって年齢や持病の有無などの状況は異なるため、平均何回である・帝王切開で何人まで産める・何回が限度であるという考え方よりは、「自分の場合は帝王切開を含めた出産に制限はあるのか」ということを把握する必要があるかもしれませんね。

自然分娩ではなく帝王切開になる理由

出産方法には自然分娩(経腟分娩)と帝王切開があります。一般的には腟から赤ちゃんを産む自然分娩ができないかをギリギリまで検討し、難しい場合のみ帝王切開手術の実施が決定するケースが多いようです。

帝王切開には「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」があります。予定帝王切開はあらかじめ日時を決めて行い、緊急帝王切開はその場の状況に応じて判断され実施します。予定帝王切開では双子・逆子・妊娠高血圧症・前置胎盤・常位胎盤早期剥離、緊急帝王切開ではお産が進まない・お産が止まったといったことが原因となり、帝王切開が実施されます。

帝王切開で出産したことがある人は、次の出産も帝王切開になるケースが多いといわれていますが、双子以上の妊娠や逆子を含め、病院や医師の判断や状況によっては自然分娩になることもあります。

帝王切開手術では具体的に何が行われる?

帝王切開手術では、手術前日または直前にまでに手術や手術に用いる麻酔の説明が担当医・麻酔医などからあるでしょう。そこで手順やリスクなどの説明がありますが、わからないことがあれば後からでも医療スタッフに確認すると良いでしょう。帝王切開手術を行う際には、全身麻酔もしくは局所麻酔が用いられます。一般的には比較的母子への影響が少ないといわれる局所麻酔を用いることが多いようです。

麻酔が効いてきたら、お腹の切開を行います。縦切開(縦に切る方法)と横切開(横に切る方法)がありますが、緊急時以外は横切開が最近では主流のようです。それぞれの切開方法でメリットが異なり、横切開では下着に沿う形になるため傷跡が目立ちにくく、縦切開では皮膚の繊維に沿って切る形になるため傷の回復が早い場合があるといわれています。

無事に赤ちゃんを取り出すことができたら、医療用の糸やステープラー(ホチキス)などを用いて縫合を行います。縫合が無事に終わったら、手術は終了です。手術当日はそのまま安静に過ごし、翌日から食事や歩行トイレなどが次第に再開されていきます。

帝王切開数によってリスクが上昇するものもある

すべての人が帝王切開での出産数に制限があるわけではありませんが、帝王切開の数に応じてリスクが上昇するものは存在します。「癒着胎盤」は帝王切開が多い妊婦ほどリスクが高まる可能性があるとする意見があるようです。癒着胎盤の診断は超音波検査でも発見できることもありますが、帝王切開手術の最中に発見されることもあります。

帝王切開数によってリスクが上昇する癒着胎盤とは?

「前置胎盤」は、胎盤が子宮の下の方にある子宮口を覆ってしまう状態を指します。前置胎盤の場合は、帝王切開での出産となります。

前置胎盤になる原因としては妊娠回数・帝王切開での出産経験・喫煙・双子以上の妊娠などがあげられます。前置胎盤は、妊娠初期に子宮口の近くに胎盤がある人もいますが、お腹の赤ちゃんの成長に伴い子宮が大きくなるにつれて胎盤の位置が変わるため、妊娠後期にならないと前置胎盤と判断されることはないでしょう。

前置胎盤のうち、約5%から10%が癒着胎盤になるといわれています。「癒着胎盤」は、胎盤の組織の一部が子宮の筋肉の内側に入り込み、子宮から胎盤がなかなか剥がれないことで大量出血を引き起こす可能性がありえるものです。大量出血が原因で母子の命が危険にさらされる可能性があり、必要であれば輸血や子宮摘出が行われることもあります。

前置胎盤や帝王切開での出産、中絶や流産などでの開腹手術を受けたことがある場合には癒着胎盤が起こる可能性があります。帝王切開の手術数に比例して、癒着率も上昇するといわれています。ある調査では帝王切開数1回で約14%、2回で23%、 3回で35%というデータがあるようです。

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帝王切開と子宮破裂

「既往帝王切開」と呼ばれる、帝王切開をしたことがある妊婦の代表的な合併症のひとつに「子宮破裂」があります。帝王切開の経験がある妊婦の約0.2%から0.5%が子宮破裂を発症するといわれており、母子ともに死亡含めた深刻な影響を与える可能性があるものです。

最近の研究では帝王切開をしたことがある妊婦の出産と子宮破裂の因果関係について、発展途上国での症例が関係あるのではないかとする研究結果も出ているようですが、リスクとして存在するという事実は変わらないでしょう。

帝王切開をしたことがある妊婦は、子宮筋と呼ばれる部分を手術で切開しているため、帝王切開をしたことがない妊婦に比べると子宮破裂の頻度は高まるといわれています。ただし帝王切開での出産経験がある人のみのリスクではなく、子宮筋腫手術など子宮手術・開腹手術を行ったことがある人にも同様のリスクがあるといわれています。

帝王切開をしたことがあるすべての人にリスクとして存在しますが、可能性が高い・低いはその人の状況によっても変わるかもしれません。帝王切開での出産後の二人目、三人目、四人目といった家族計画がある場合には、今後の出産におけるリスクなどを医師によく説明してもらった上で、家族間で話しあうと良いでしょう。

すべての人にリスクはある!家族とよく相談しよう

一般的には・平均的にはといった説は数多くありますが、帝王切開手術での出産が何回までできるか、帝王切開で何人まで産めるかというのは個々のケースで考える必要があるかもしれません。帝王切開手術になった原因や切開方法、傷の開腹状況、年齢、持病の有無などをふくめて総合的に判断する必要があるでしょう。

帝王切開だから二人目は難しい、年子や3回目は無理だといった決めつけをせず、まずは医師に相談してみましょう。妊娠前から相談することでさまざまな方法を模索することができる可能性もあるため、妊娠前から家族計画について家族とよく話し合い、必要であれば病院に相談しましょう。

※この記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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