無痛分娩の費用の相場は?自然分娩よりどれくらい高い?保険適用のケースは?

痛みを和らげながら出産でき産後の回復が早い無痛分娩は、高齢出産の場合に起こりやすい症状のリスクを下げるともいわれています。しかし、無痛分娩は無痛分娩管理料や麻酔薬・陣痛促進剤の料金などがかかる分、通常の分娩よりも費用がかさみがちです。ここでは、無痛分娩の費用や保険適用のケースについて解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 無痛分娩とは
  2. 無痛分娩ができる病院を探そう
  3. 無痛分娩の費用
  4. 無痛分娩でも保険が適用されるケースは?
  5. メリットとともに費用やリスクを考慮して
  6. あわせて読みたい

無痛分娩とは

無痛分娩の概要

無痛分娩とは、麻酔薬を使って陣痛を軽減するお産の方法です。お産の痛みがまったくないというわけではありませんが、通常の陣痛の10分の1程度の痛みですむといわれています。

分娩中は麻酔で眠ってしまうわけではなく、自分でいきみながら、赤ちゃんを出産します。意識はしっかりあるので、生まれた赤ちゃんをすぐに抱っこすることもできるでしょう。無痛分娩は分娩中の体力の消耗が少なくてすみ、産後の回復が早いのもメリットです。

無痛分娩の麻酔の方法

無痛分娩の麻酔の方法には下記の2通りあります。

硬膜外麻酔(こうまくがいますい)
点滴麻酔
背骨の脊髄に近い硬膜外腔に注入する静脈から麻酔薬を注入する

硬膜外麻酔は、点滴麻酔に比べて鎮痛効果が高く赤ちゃんへの影響もほとんどないといわれています。そのため、無痛分娩が普及している欧米では硬膜外麻酔が一般的で、日本でも選択されるケースが多いようです。

無痛分娩の流れ

無痛分娩は、出産の準備が整っている正産期に分娩日を決め、陣痛促進剤でお産を進める「計画分娩」が一般的です。硬膜外麻酔による無痛分娩の流れは、病院の方針や母子の状態によっても異なりますが、おおよそ以下の通りです。

1.分娩予定日前日に入院し、背骨の脊髄の近くに硬膜外麻酔のカテーテルを挿入します。子宮口を開くために、「バルーン」と呼ばれるゴム球を腟から入れる処置を行う場合もあります。

2.出産日当日、点滴で陣痛促進剤を投与し始めて、陣痛が起こり子宮口が開くのを待ちます。麻酔薬を早く投与しすぎると、分娩が長引くといったリスクがあるため、妊婦さんが痛みに耐えられなくなるまでは麻酔薬を注入しないことが多いようです。

3.妊婦さんが陣痛に耐えられなくなり、麻酔を希望した時点で、カテーテルから麻酔薬の注入を始めます。その後、子宮口が全開大になるまでベッドで安静にします。

4.子宮口が全開大となり、赤ちゃんの頭も下りてきたら分娩台で出産です。麻酔で陣痛を抑えているといきむタイミングがわかるかどうか心配かもしれませんが、お腹の張りの感覚は残っていますし、医師や助産師が教えてくれるので安心してください。

無痛分娩ができる病院を探そう

無痛分娩は全ての病院で対応しているわけではなく、医療設備が整っていて麻酔ができる医師がいる病院でしか行えません。日本産科麻酔学会によると、日本で硬膜外麻酔による無痛分娩を実施している病院はまだ多くありません。時期によっては無痛分娩を希望しても予約が取れないことがあるようです。

厚生労働省の公式HPで「無痛分娩施設リスト」が公開されています。病院探しの参考にしてくださいね。

無痛分娩の費用

通常の分娩費用に薬剤の料金などが加算

無痛分娩は、通常の出産と同様に健康保険が適用されません。費用は個人病院、総合病院、大学病院など医療機関や地域ごとに幅がありますが、通常の分娩費用と比較して約3万~15万円高いのが相場のようです。これは無痛分娩管理料のほか、分娩予定日前日の入院費、陣痛促進剤や麻酔薬の料金などが加算されるためです。

合計100万円を超える病院も

たとえば24時間体制で無痛分娩に対応している病院の場合、自然分娩費に加え無痛分娩費用が加算されるケースがあります。

無痛分娩専門の個人病院のなかには、豪華な食事やおしゃれな個室などサービスに力を入れている病院が多く、出産費用の合計が100万円を超える場合もあるので、事前に費用を調べておくと安心でしょう。

追加料金が必要な場合も

病院によっては計画分娩の予定日以外に緊急入院すると、追加料金がかかる可能性があります。麻酔のカテーテルの挿入や分娩の時間帯が休日や深夜だった場合も、料金が加算されることがあるので、事前にしっかりと確認しておくと良いでしょう。

無痛分娩でも保険が適用されるケースは?

医療行為が行われると適用

通常の無痛分娩では健康保険が適用されませんが、分娩時に医師が必要と判断して医療行為を行った場合、保険が適用されます。

無痛分娩時に想定される主な医療行為は、胎児の身体を引っ張り出す「鉗子分娩(かんしぶんべん)」と「吸引分娩」です。

無痛分娩は、麻酔薬の影響で妊婦さんがいきむ力が少し弱まり、子宮口全開大から出産までの時間が長引く傾向にあるといわれています。分娩が長引くと母子に影響が出る恐れがあるため、鉗子分娩や吸引分娩を行なう可能性が高まります。

帝王切開については、無痛分娩により緊急帝王切開になる確率が高まることはないとされていますが、お産がスムーズに進行しなければ、医師が必要と判断することは十分に考えられます。

緊急帝王切開になった場合も、手術費や治療費は健康保険が適用されます。ただし、入院期間が正常な分娩よりも長くなるうえ、入院中の食事代やベッド代は全額自己負担です。

民間の医療保険や高額療養費の対象になるケースも

民間の医療保険や生命保険の特約を契約していれば、吸引分娩や緊急帝王切開といった医療行為が給付金の対象となる場合があります。健康保険が適用されない緊急帝王切開の入院費用についても保障されることがありますので、契約内容をよく確認しておきましょう。

健康保険が適用される治療については、1ヶ月間に窓口で支払った医療費が所定の「自己負担限度額」を超えると、その超過分が「高額療養費」として払い戻されます。特に帝王切開は決して安い負担額ではないため、忘れずに申請してくださいね。

無痛分娩も通常の分娩と同様、「出産育児一時金」の給付の対象となります。出産育児一時金とは、健康保険や国民健康保険などの被保険者またはその被扶養者が出産したとき、赤ちゃんひとりにつき42万円(2020年現在)が支給される制度です。病産院が妊婦に代わって出産育児一時金の請求と受け取りを行う「直接支払制度」を利用すると、退院時の支払いはこの42万円を超えた分だけで済みます。

メリットとともに費用やリスクを考慮して

無痛分娩は、陣痛の痛みに対する恐怖心や不安が強い方がリラックスしてお産に臨めるようになるというメリットがあります。また、妊娠高血圧症候群の方は、自然分娩の場合、痛みを感じる影響で血圧が上昇する恐れや赤ちゃんへの酸素量や血流が減る可能性がありますが、無痛分娩ならばこうしたリスクを減らすことができます。高齢出産の方にとっても、産後の回復が早いことなどは有利でしょう。

無痛分娩はメリットが多い一方、デメリットもあります。かゆみや血圧低下など麻酔薬の一般的な副作用がでる可能性があります。重大な事故につながるリスクも決してゼロではありません。日本国内ではまだまだ普及しているとはいえず、通常分娩に比べて費用が高いのもデメリットでしょう。

無痛分娩のメリットとともに、安全面や費用面のデメリットについても医師からしっかりと説明を受け、納得できる選択ができると良いですね。

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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