【産婦人科医監修】帝王切開のリスクとは?赤ちゃんに影響はある?二人目以降の癒着胎盤など
医学の進歩により出産の危険性は低くなっているものの、さまざまなリスクが存在することは現在も変わりません。双子や逆子などで帝王切開を控えている妊婦であれば、手術の麻酔などによって赤ちゃんやママにリスクがあるのか気になる人は多いでしょう。切開方法や早産、二人目以降の癒着胎盤などのリスクについて解説します。
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目次
比較的安全とはいえ、帝王切開手術にはリスクがある
妊娠・出産の集大成ともいえるお産の方法には、腟から産道を通って赤ちゃんが生まれる「自然分娩(経腟分娩・普通分娩)」と手術によってお腹から赤ちゃんを取り出す「帝王切開」があり、ともにそれぞれリスクがあります。
帝王切開は比較的安全な手術といわれていますが、それでもお腹を切開するため自然分娩よりもリスクが高いという意見の人もいるようです。手術の傷や傷跡、手術に用いる麻酔の影響、母子の身体にかかる負担が気になったり、帝王切開手術に対する漠然とした不安からリスクに敏感になったりする人もいるでしょう。
帝王切開では手術前に担当の医師や医療スタッフなどから手術の概要や流れ、副作用などのリスクについての説明があります。説明をよく聞き、帝王切開手術への理解を深めることで各種リスクに対しての不安が少しは軽減されるかもしれません。
前置胎盤など原因によってリスク内容は変わる
帝王切開手術が決定する経緯や理由はさまざまです。一般的には双子や逆子、子宮筋腫・前置胎盤・低置胎盤・妊娠高血圧症候群などの場合にはあらかじめ日時を決めて手術を行う「予定帝王切開」という方法を検討することになります。また、お産が進まない・お産が止まったといった場合には「緊急帝王切開」という方法が検討され、実施されることが多いようです。
胎盤が子宮口をふさいでしまう「前置胎盤」が原因で帝王切開になることがありますが、前置胎盤のうち約5%から10%の人が「癒着胎盤」になるといわれています。癒着胎盤では胎盤の組織の一部が剥がれにくくなるため大量出血を招き、母子に危険が迫る可能性があります。
このように同じ帝王切開手術でも原因によってリスクは異なり、他にも妊婦の既往歴や他の手術を同時に行うかなどでリスク内容は変わってくるでしょう。
逆子・双子以上の妊娠・高齢出産でのリスク
逆子、双子以上の妊娠の場合には条件を満たせば自然分娩も可能ですが、一般的には帝王切開になるケースが多いかもしれません。逆子・双子以上の妊娠、また高齢出産においても帝王切開になるケースが多いのは理由があります。
双子以上の妊娠の場合には、ひとりを妊娠している場合に比べて悪阻(つわり)・早産・妊娠糖尿病・妊娠高血圧症などの合併症が起こりやすいといわれています。高齢出産は妊娠高血圧症などの合併症になるケースが多く、分娩時の出血によるリスクが高いといわれています。多胎妊娠や高齢出産では、こうしたリスクを避けるために帝王切開が選択される場合があります。
また、骨盤位とも呼ばれる逆子は、分娩時の骨折・神経損傷、臍帯脱出や分娩遅延による新生児仮死や死産のリスクを避けるために帝王切開を実施することが多いようです。ただし逆子は自然に治る場合もあり、外回転術という方法で逆子を矯正する方法を試す人もいます。
早産のリスク
早産とは?
妊娠37週から41週までの出産を「正期産」と呼ぶのに対し、妊娠22週から妊娠36週での出産を「早産」と呼びます。日本での出産全体の約6%が早産だといわれています。早産を経験している、子宮頸管の手術を受けたことがある、子宮の入り口(子宮頸管長)が短いといったケースでは早産の可能性があり、妊娠の経過をよく見守る必要があります。
早産になる原因はほかにも、多胎妊娠や胎児機能不全などがあります。喫煙やアルコールなどの生活習慣や流産を経験している人は早産になりやすいという意見もあるようです。
こうした早産になるリスクと、帝王切開が選択されるケースとでは重なる部分があります。早産だからといって必ずしも帝王切開が選択されるわけではありませんが、早産のリスクがある妊婦は、結果として帝王切開が行われる傾向が高いといえるでしょう。
早産による赤ちゃんへのリスク
早産で生まれた赤ちゃんは成長途中で外の世界に出てくることになるため、身体の一部器官が十分に発達できておらず、合併症を引き起こすリスクを持っています。特に妊娠週数が早ければ早いほどリスクは高まり、赤ちゃんの命に関わることもあります。まだ小さい赤ちゃんが経腟分娩に耐えられないと総合的に判断された場合、赤ちゃんの負担を考えて帝王切開が選択されます。
切迫早産の可能性がある場合に妊婦が入院するのは赤ちゃんを守るために必要なことでもあります。早産になった赤ちゃんは低体重などの発育状況や経過によって、必要であればNICU(新生児集中治療管理室)やGCU(新生児治療回復室)で入院管理が行われます。
大きな病院での出産であれば、産後に赤ちゃんだけ小児科に移ることもあります。小さな病院では高度な技術での対応ができる総合病院や大学病院へ転院になるケースもあるようです。いずれの場合でも早産の子どもに対する産後のケア技術は進歩しており、しっかりと大切な赤ちゃんを看てくれる環境があることを理解すれば少しは不安が軽減されるかもしれませんね。
二人目以降の帝王切開のリスクは?癒着胎盤とは?
一般的に帝王切開で出産したことがある人は、次の出産のときも帝王切開での出産になることが多いようです。これは、帝王切開には次の出産で癒着胎盤になるリスクがあるためです。
癒着胎盤とは、子宮壁に胎盤がくっついている状態をさします。胎盤の一部が子宮の筋肉に入り込んでいるため、胎盤がはがれるときに大量の出血が起こる可能性があります。
帝王切開の場合、癒着胎盤のリスクは2人目、3人目と出産回数を重ねるごとに高くなります。ある調査では帝王切開1回で15%、2回で23%、3回で35%というデータが得られているようです。特に、過去の妊娠・出産で前置胎盤と帝王切開の既往があると、癒着胎盤のリスクが上がるため2人目は帝王切開となる可能性が高いでしょう。
ただし帝王切開は必ず癒着胎盤を起こすわけではなく、2人目、3人目も無事に帝王切開で出産している人もいます。また、過去に帝王切開で出産しても、次の妊娠で自然分娩で出産が可能な場合もあります。リスクもふまえ、医師や家族と相談してみると良いでしょう。
帝王切開手術での縦横切開、麻酔などのリスク
麻酔
帝王切開手術で用いられる麻酔は「全身麻酔」と「腰椎麻酔(下半身麻酔)」があり、腰椎麻酔ではさらに2種類あり「硬膜外麻酔」と「脊髄くも膜下麻酔」があります。
一般的には母子への影響が比較的少ないといわれる腰椎麻酔が用いられ、緊急時には全身麻酔が用いられることが多いようです。麻酔の種類によってそれぞれ副作用があり、足のしびれや頭痛・腹痛、赤ちゃんが眠そうにしているといったことがありますが、麻酔の効果がなくなれば次第に緩和されていきます。
切開方法
帝王切開ではお腹を切開しますが、切開方法には2種類あります。縦切開(縦に切る方法)と横切開(横に切る方法)です。基本的には横切開が現在は主流といわれていますが、緊急時には縦切開が行われることもあるようです。
切開自体のリスクというよりは切開後の傷に対してのリスクを心配する声が多いかもしれません。傷跡が目立つように残るか、きれいに治るかは、術後のケアや体質によって決まります。術後のケアに関しては、傷跡の経過にあわせて最低でも3ヶ月から1年ほどかけてケアを継続することで目立たない傷跡になるといわれています。
出血・輸血
手術ではお腹の赤ちゃんのために血液が集中している子宮を切るため、出血しやすくなっています。手術中に大量出血などで輸血が必要になった場合などに備えて、帝王切開手術が予定されている場合には手術前に血液検査を行います。
めずらしい血液型の場合にはあらかじめ「自己血輸血」という方法で自分の血液を輸血用に保存され、万が一の場合に備えます。帝王切開手術後は血栓症も心配されますが、昨今では弾性ストッキングと呼ばれる市販の着圧ストッキングのようなものを履いて予防する病院も多いようです。
妊娠中の体重増加はどんなリスクを引き起こす?
妊娠中は羊水や胎児の体重もあり、妊婦の体重は増加します。食べつわりで食欲が増す人もおり、急激な体重の増加によって妊娠糖尿病や妊娠高血圧症などのリスクが増え、産後の肥満や帝王切開、大量出血を引き起こすこともあります。妊娠中の一定の体重増加は赤ちゃんへの栄養供給の意味で必要ですが、やせすぎも肥満も良くありません。
妊娠中はバランスの良い食事を心がけ、やせすぎない・増えすぎないようにコントロールすることが大切です。妊婦にはバランスの良い基本的な食事を前提として、さらに鉄分などの栄養素がお腹の赤ちゃんのために必要になります。外食を控える、肉・魚・野菜などさまざまな食品を摂取するようにする、ジュースではなく水で水分を補う、間食をしないのではなく間食の内容に気をつけるなどの細かなことで、体重増加は防げるかもしれません。
陣痛促進剤、羊水検査など出産にまつわるさまざまなリスク
妊娠中の具体的な薬や施術のリスクを心配する声もあります。たとえば陣痛促進剤や羊水検査、無痛分娩、妊娠中絶などがあるでしょう。陣痛促進剤は常位胎盤早期剥離や出血性脳血管障害といった重い副作用の影響が懸念されていますが平成22年の厚生労働省の検討会では因果関係は証明できないとされています。ただし投与の際に経過を観察しなければいけないことは変わりません。
羊水検査などの出生前検査のニーズは昨今高まってきているといっても良いかもしれません。生まれる前に赤ちゃんの染色体などの遺伝的なリスクや臓器の異常など形態的なリスクを調べる出生前検査がありますが、検査でわかることとわからないことがある点や検査を受ける意味、検査結果が出たあとの対応方法などを検討する必要があります。
他にも無痛分娩などさまざまな出産にまつわる選択肢が現在はあります。それぞれリスクがある場合には医師から説明される機会があるため、医師の説明をよく聞き、疑問があれば質問し、理解を深めた上で臨むことが大切かもしれません。
自分のケースのリスクを理解することが大切
受精から出産にいたるまで、妊娠は奇跡の連続のうえに成り立っています。母体の影響・新生児への影響を考えると、帝王切開か自然分娩かを問わず、妊娠・出産自体に一定の確率でリスクは存在しているといえるのかもしれません。
しかし、妊娠・出産は個人差が大きく、すべてのリスクを把握し影響を理解することは難しいものです。そのため、一般的なケースを理解するよりも、自分の場合はどうなのかを理解することが大切です。必要以上に心配しすぎず、自分の年齢や家族関係、経済状況や既往の有無などをふくめて、わからないことは医師や専門スタッフに相談してみましょう。