卵管造影検査とは?痛みや費用は?検査後は妊娠しやすくなるの?

卵管造影検査は、卵管の通りを調べるための検査です。子宮から造影剤を流し込み、レントゲンを撮って経過を見ます。卵管の詰まりや癒着だけではなく、子宮の病気を調べることもでき、卵管の通りが良くなるため、検査後は妊娠率が上がるといわれています。ここでは、費用や検査時間、検査によってわかる症状などを解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 卵管造影検査とは
  2. 卵管造影検査は痛い?出血はあるの?
  3. 卵管造影検査の費用は?時期や時間は?
  4. 卵管造影検査の結果から何がわかるの?
  5. 卵管造影検査後は妊娠しやすい?
  6. 卵管造影検査を受けられない人は?
  7. 卵管造影検査は不妊治療にも病気の発見にも役立つ
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卵管造影検査とは

卵管造影検査とは、子宮の状態を確認したり、卵子の通り道である「卵管」が正常に通っているかどうかを判断したりするための検査です。卵管造影検査は不妊症の原因を探る検査のひとつでもあり、妊娠の可能性がある場合には受けられません。不妊症の検査には、性交後の粘液を診るフーナーテストや超音波検査、血液検査などがありますが、特に女性側の子宮や卵管に問題があると思われる場合に実施されます。

検査の手順は、まず子宮の入り口から風船の付いたチューブを入れ、画像診断のための「造影剤」を流し込みます。造影剤が子宮や卵管、骨盤へと拡散する様子をレントゲンで撮影し、経過を見ながら卵管の詰まりや子宮内の癒着などを診断することができます。「超音波下子宮卵管造影検査」というエコーのみで診断する検査もあります。

卵管造影検査は痛い?出血はあるの?

痛みを感じる人もいる 

卵管造影検査そのものには、痛みはないといわれています。異常がなければ、ほとんど何も感じずに終わる人もいるようです。ただし、痛みを感じる瞬間もあります。1つ目は子宮の中で風船をふくらませているときです。空気を入れることで子宮が圧迫され、人によっては痛みを感じます。

2つ目は、造影剤を子宮に入れたときです。うずくような痛みや不快感を覚えることがあり、卵管に異常があればさらに痛くなる可能性があります。たとえば、卵管が狭くなっていたり閉じてしまっていたりするときは、痛みがひどくなるかもしれません。卵管を押し広げるようにして造影剤が通るので、痛みを感じるのです。

あまりに痛むときは「卵管に詰まりや異常がある」とみなされ、検査が中止となることもあるようです。卵管造影検査は麻酔を使用せずに行われることが多いようですが、希望すれば鎮痛剤を処方してくれるので、事前に相談してみましょう。

検査器具で子宮や腟が傷つくことも

卵管造影検査を行った後、ピンクや茶色のおりものが出たという人もいます。この場合、検査に使った器具がどこか傷つけてしまった可能性が考えられます。

卵管造影検査では子宮にカテーテルを入れる必要があり、子宮が動かないように入り口を鉗子(かんし)で挟むこともあるため、子宮の入り口が傷つくこともあります。また、挿入したカテーテルの先端で、子宮内膜を少しだけ傷つけてしまうこともあるようです。

基本的にこういった傷は深くはなく、出血も2、3日で止まることが多いようです。もしあまりに出血が多かったり何日も続いたりするなら、他の原因も考えられるので、病院に相談してみましょう。

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卵管造影検査の費用は?時期や時間は?

卵管造影検査の費用

卵管造影検査は保険が適用されます。ただし、検査に関わる費用が全てまかなわれるわけではなく、検査判断料やカテーテル代、造影剤料などは実費となるため、病院によって費用は異なります。

使う造影剤の種類などによって幅があり、5,000円から15,000円ほどが一般的なようです。子宮の大きさによっては多くの造影剤が必要なこともあり、さらに費用がかかるケースがあります。検査後は造影剤などが流れ出るため、ナプキンが必須になります。事前に何枚か用意しておきましょう。

これらの費用は不妊治療の一環となるため、医療費控除を受けることができます。領収書などは保管し、申告時に忘れないようにしましょう。また、住んでいる地方自治体によっては、不妊治療の検査に補助を出していることもあるので、そちらも忘れずにチェックしてくださいね。

卵管造影検査の時期

卵管造影検査は、基本的に生理中は推奨されていません。血液を逆流させてしまったり、子宮腔内の血管に造影剤が入ってしまったりする可能性が否めないからです。また、レントゲンを使うため、妊娠の可能性があるときも行えません。

つまり、卵管造影検査にもっとも向いているのは、生理が終わって出血が止まった後から、妊娠の可能性がない排卵までのあいだとなります。具体的には、生理開始10日以内で出血が終わったときが卵管造影検査の時期といえるでしょう。

卵管造影検査に係る時間

検査の過程としては、まず子宮内にカテーテルを挿入して造影剤を注入し、直後にレントゲンを撮影します。さらに動きを見るため、何時間か後にも撮影する場合があります。これは、使っている造影剤が「水性」か「油性」か、で大きく変わってくるようです。

水性のほうが早く吸収されて排泄されますが、その分詳細なデータを取ることが難しくなります。油性ではじっくり造影剤の動きが見られるので、癒着などの推測に向きますが、体内に数ヶ月以上残留します。水性を使ったときは15分~60分後、油性を使ったときは24時間後に後撮影します。

水性を使った場合は長くても一時間ほどの検査ですみますが、油性を使ったときは翌日も病院に行く必要があります。事前に医師とよく相談しておきましょう。

卵管造影検査の結果から何がわかるの?

卵管閉塞・卵管狭窄(きょうさく)

卵管閉塞・卵管狭窄とは、その名の通り、卵子の通り道である卵管が狭くなっていたり、完全に閉じてしまっていたりする症状です。卵管は子宮の左右にひとつずつ存在しています。片側が詰まっているだけなら妊娠の可能性はありますが、両側が詰まっていると治療の必要性が高くなってきます。

クラミジアの感染など卵管内の炎症が主な原因とされており、不妊原因の多くを占めています。治療法としては、卵管の詰まりを取る「卵管鏡下手術」や、「腹腔鏡手術」などがあります。

卵管周囲癒着

卵管の周囲が癒着してしまう症状を卵管周囲癒着と言い、進行すると、排卵された卵子をキャッチする働きを持つ「卵管采(らんかんさい)」がうまく動けず、卵子を子宮に取り込めなくなってしまいます。卵子が子宮に辿り着けないため、不妊の原因となります。卵管造影検査だけでは卵管周囲癒着の詳細を見ることはできないので、お腹から器具を入れる腹腔鏡検査も必要です。

卵管周囲癒着は、子宮内膜症や子宮筋腫、骨盤腹膜炎、過去の開腹手術などが原因とも考えられています。腹腔鏡検査で癒着を剥離するか、剥離が不可能であれば体外受精などが不妊治療の方針となるでしょう。

卵管炎

卵管炎は、卵管が炎症を起こしている状態です。実は、卵管は非常に炎症を起こしやすい器官といわれています。卵管が炎症を起こすと、周囲と癒着して狭くなり、不妊症の原因となってしまいます。原因となるのは、クラミジアや淋菌などの細菌による感染症が多くを占めます。

これらの菌は腟から上のほうに感染していき、子宮や卵管にまで炎症が広がります。進行すると骨盤腹膜炎を引き起こしてしまう可能性もあるので、抗生物質などで早めに治療を行うことが重要です。

卵管留水腫

卵管の中に液体が貯留した状態を卵管留水腫と呼びます。卵管が性感染症や子宮内膜症によって炎症を起こすと、卵管采と呼ばれる部分が癒着を起こします。そのため卵管内に膿などが排出されず、卵管が腫れて腫瘍のようにふくれ上がった状態になってしまうのです。

卵管留水腫は卵子を卵巣から吸い上げることができない「ピックアップ障害」などを引き起こし、不妊につながります。卵管に詰まった膿を取り出すなどの治療法がありますが、悪化している場合は、卵管を摘出する可能性もあります。

子宮奇形

正常の子宮とは違う形になっている場合、「子宮奇形」と診断されることもあります。たとえば、子宮がふたつに分かれていたり、大きさが半分くらいだったり、子宮口がふたつあったりするものなどです。ほとんどの場合は無症状ですが、不妊症や月経異常の原因となります。

卵子造影検査で子宮の形に異常がみられた場合はMRI検査を行い、どのような奇形かを判断します。治療法は手術のみですが、すべての奇形が不妊症につながるわけではありません。そのまま経過観察となることもあります。

子宮筋腫

「子宮筋腫」は、子宮の筋肉から発生する良性の腫瘍を指します。腫瘍なので、そのまま放置すると次第に大きくなっていく可能性があります。筋腫が原因と考えられる症状がある人では、妊娠しにくいことや流産しやすいことが考えられます。筋腫がまだ小さくてほかに症状がないのであれば、妊娠・出産は可能です。

腫瘍が大きく、手術を考える場合にはMRI検査で詳細を調べます。薬や手術で治療できますが、妊娠を希望するときは子宮全摘術以外の方法を選択することが一般的です。

子宮内膜ポリープ

「子宮内膜ポリープ」とは、子宮内膜にできる良性の腫瘍です。不正出血の原因となることもありますが、無症状の人も多いようです。不妊患者の多くが、子宮内膜ポリープを持っているともいわれています。

子宮内膜ポリープの詳細は、ソノヒステログラム、MRI、子宮鏡といった検査を行うのが一般的です。子宮鏡検査などで診断がついて不妊の原因とみなされた場合は、手術が検討されます。

子宮内癒着

人工妊娠中絶や流産などの手術を行ったとき、子宮内膜の一部が傷ついてしまうことがあります。手術による傷によって子宮の内壁同士が癒着してしまうことがあり、これをアッシャーマン症候群と呼びます。

子宮内癒着によって着床障害が起こると不妊の原因となりますが、癒着が軽度の場合に自覚症状はありません。子宮内癒着が認められたときは、より詳細を調べるため、子宮鏡検査を行います。

卵管造影検査後は妊娠しやすい?

一般的に、卵管造影検査の後は妊娠しやすくなるといわれています。両側の卵管を造影剤で押し流すため、卵管の通りが良くなり、同時に働きも良くなります。卵子が通りやすくなるだけではなく、その後の治療方針も決めやすくなるため、不妊治療においてはとても重要な検査といえるでしょう。

油性造影剤と水性造影剤では、油性造影剤のほうが妊娠する可能性が高くなるとの報告もあります。また、特に子宮卵管造影検査後の3ヶ月間は、妊娠率が高いといわれています。痛みなどのデメリットはありますが、メリットも大きいといえますね。

卵管造影検査を受けられない人は?

ヨードアレルギーの人

造影剤の原料にはヨードが使われています。そのため、ヨードアレルギーがある人は、卵管造影検査を受けることができません。

まれに、自分がヨードアレルギーかどうかわからないという人もいます。海藻類を食べて気分が悪くなることがあったり、ヨードチンキでかぶれたことがあったりする場合は、アレルギーの可能性が考えられるので注意しましょう。

起こりうる副作用としては、かゆみや発疹、嘔吐などです。軽い症状の場合は治療を必要としませんが、重篤な場合はアナフィラキシーショックに陥ることもあります。人によっては検査の数日後に遅れて症状があらわれるケースも見られます。何か異常があった場合はすぐに病院に相談しましょう。

クラミジアを発症している人 

クラミジアや淋菌に感染している場合、卵管造影検査を行うと、上方向に感染部位を広げ炎症を起こす可能性があります。これは不妊症の原因ともなるため、絶対に防がなくてはなりません。卵管造影検査を受けるためには、まずクラミジアの事前検査が必要不可欠となります。不妊治療では、最初の基本検査で調べることが多いようです。

クラミジアを発症している場合は、完治してから検査を行います。また、現在治っていても過去にかかっていたことがある場合は卵管の癒着の可能性があるため、検査しないこともあるようです。

子宮や卵管に急性の炎症が見られる場合や、出血しているとき、生理中、妊娠中も検査を受けることができません。しっかりと万全の状態で検査に臨みたいものですね。

卵管造影検査は不妊治療にも病気の発見にも役立つ

卵管造影検査は、レントゲン撮影を用いて卵管の状態や子宮の病気を調べるためのものです。卵管の通りを調べるための検査です。ヨードアレルギーやクラミジアに感染している人などは検査できませんが、妊娠率が上がるともいわれているため、不妊治療に臨むなら一度は検討してみてはいかがでしょうか。

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