妊婦は虫歯になりやすい?治療や痛み止めによる影響は?【歯科医監修】

妊娠中でも歯や歯茎が痛んだり、違和感を覚えたりすることはあるでしょう。ひどい歯の痛みの際には、妊婦も歯医者さんに行ってよいのか気になりますよね。虫歯も胎児に影響が出るのかをはじめ、歯医者さんで使われるX線や麻酔・痛め止めなどの薬の影響、予防法や応急処置などについて歯科医監修で解説します。

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この記事の監修

雨森 洋貴
歯科医
雨森 洋貴

目次

  1. 妊婦も感じる、ふとした瞬間の歯の痛み
  2. 親知らず、虫歯、歯周病、歯に悩む妊婦は少なくない
  3. 妊婦は虫歯になりやすい?
  4. 妊婦はいつからいつまで歯医者に行ける?
  5. 歯医者さんでのX線(レントゲン)や麻酔の影響は?
  6. 妊婦の歯痛には痛み止めや抗生物質はNG?
  7. 妊婦の虫歯は赤ちゃんにどのような影響を与える?
  8. 妊婦の虫歯予防!妊婦歯科健診も活用を
  9. 妊娠中、虫歯の応急処置は自分でできる?
  10. 妊婦歯科健診を活用し、放置しないようにしよう
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妊婦も感じる、ふとした瞬間の歯の痛み

突然の「歯の痛み・違和感」に困った経験はないでしょうか。何かを食べたり飲んだりしたとき、ふとした瞬間などに歯の痛みや違和感を覚えることは珍しいことではありません。妊娠中は、つわりで食べられない、食べつわりで食べ過ぎてしまう、味の好みが変わり甘いものなど特定のものばかりを食べてしまう、といった「食」に関わる部分にさまざまな変化が現れる人もいます。そのような状況下で歯の痛みを感じると、原因や影響が気になる妊婦は多いかもしれません。

神経にまで達したひどい虫歯がある、たくさんの虫歯がある、詰め物が取れた、歯が痛い、歯茎が腫れているといった自覚症状があるのであれば、妊娠を希望している段階から歯を治すのが理想的です。一方で、歯の痛みは突然やってくるものでもあります。妊娠中に歯に関する悩みを抱えてしまった場合には、放置せずに早い段階で相談しに行くことが大切でしょう。治療自体は妊娠の経過により相談が必要ですが、必要であれば今後の治療方針や応急処置、注意すべき点などを歯医者さんから聞くことができるでしょう。

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親知らず、虫歯、歯周病、歯に悩む妊婦は少なくない

「歯が痛い」といっても、痛む場所や痛み方などの感じ方は人それぞれです。奥歯や親知らず(親不知)・前歯が痛い人、歯の神経に染みるような痛みを感じる人、以前に治療した歯が再び痛みだした人、痛みはなくとも歯石や歯茎の腫れが気になる人もいるかもしれません。歯の悩みは早い段階から対処していくことが大切です。虫歯や歯周病などが深刻化すると、抜歯または神経を抜く必要がある場合や歯肉から膿が出る場合、抜歯や手術が必要になる場合まであります。

歯の痛みイコール虫歯と考える人が多いですが、虫歯以外でも心因性による歯の痛みや歯痛が感じられる頭痛であったというケースもあります。自己判断せずに、歯医者さんに痛みの原因や対処法などをきちんと相談して治療・緩和していくことが大切でしょう。

歯に関する悩みがある妊婦は少なくないといわれています。歯の痛みや違和感が妊娠によるものかどうかはわからないものの、ある調査では「虫歯が増えた」「治療した歯が痛い」「虫歯じゃないのに歯が痛い」といった回答をした妊婦が全体の3割いたようです。妊娠前の状態にもよりますが、妊娠中に口の中の環境、とりわけ歯について何らかの悩みを持つ人は一定数いるといえるでしょう。

妊婦は虫歯になりやすい?

「妊婦は虫歯になりやすい」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。妊娠中はホルモンバランスの変化や唾液の減少などで虫歯や歯周病になりやすいといわれています。ただし妊娠前の口腔環境、虫歯や歯周病の有無、歯磨き習慣といった部分も考慮しなければいけないため、「妊娠が虫歯の直接の原因となっている」と断言するのは難しいかもしれません。一方で、もともと妊娠前からあった虫歯が、妊娠後の口の中の環境の変化により進行する可能性はあるでしょう。

妊婦はいつからいつまで歯医者に行ける?

「妊婦は虫歯になりやすい」という話を聞く機会があると、歯が急に痛くなった場合には歯医者に行って良いのかが気になる人もいるかもしれません。虫歯はなかなか我慢できない場合もあり、すぐにでも歯を治してもらいたいケースもあるかもしれません。一般的には、安定期に入る妊娠16週以降の歯の治療は可能だといわれています。ただし妊娠の経過にもよるため、必ず歯医者に行く前に産婦人科の先生に相談しておきましょう。妊娠の経過によっては治療に使う麻酔・薬、その他注意すべき点などが変わる場合があります。

ただし虫歯を放置することは、妊婦にとってもストレスになるでしょう。本当に必要であれば、安定期以外でも治療を検討しましょう。ただし妊娠初期は胎児の各種器官が形成される重要な時期であり、妊娠後期はお腹が大きくなることによって仰向けになるのが難しくなります。緊急性がない場合には、産後の治療も検討しても良いかもしれません。妊娠後期にあたる8ヶ月・9ヶ月・臨月あたりに歯痛を感じると焦ってしまうかもしれませんが、医師とよく相談してみてくださいね。

歯医者さんでのX線(レントゲン)や麻酔の影響は?

歯の治療で行われる「X線(レントゲン)撮影」や「麻酔」による影響が気になる妊婦は多いでしょう。それぞれ極力、妊婦や胎児への影響が少ないように対応が行われるため、基本的には問題はありません。ただし、歯医者さんで治療を受ける際に必ず自分が妊婦であることを告げる必要があります。念のため参考までに母子手帳を持参しておくとスムーズに妊娠の経過を伝えることができるかもしれませんね。

X線(レントゲン)撮影

歯の状態を診断する際に用いられる「X線(レントゲン)撮影」では、放射線量によるママやお腹の胎児への影響が気になりますよね。歯のX線撮影で浴びる放射線量は、日本で1年間に自然に浴びる放射線量の150分の1です。妊婦であれば防護エプロンの着用でさらに被曝量の軽減が期待でき、歯の撮影であればお腹からも距離があります。ただし必要最低限に留めるべきではあるため、実施の際には医師とよく相談しましょう。

麻酔

歯を治す際に用いられる「麻酔」に関しても、さまざまな影響が気になる妊婦は多いでしょう。歯の治療で使用される麻酔は、治療部分のみに麻酔をかける局所麻酔となり、ママや赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。麻酔なしで治療を行う痛みを考えれば麻酔を使用するほうが良いかもしれません。

麻酔の代用として笑気ガスを用いての治療を希望する人もいますが、笑気ガスは妊娠初期には催奇形作用の懸念があり使用できません。中期以降であれば麻酔と併用するケースはあるでしょう。いずれもメリット・デメリットをよく医師と相談しましょう。

妊婦の歯痛には痛み止めや抗生物質はNG?

「妊娠中は薬の服用には注意をすべきだ」ということを耳にしたことがある妊婦は多いかもしれません。妊娠中には服用を控えたほうが良い薬、妊婦が使用するのであればよく検討が必要な薬があります。市販の正露丸やロキソニン、鎮痛薬として有名なカロナールと同じ成分を含んだ商品など、歯の痛みに対処するための痛み止めには馴染み深いものもあるでしょう。

妊婦の薬の服用は、胎児の器官形成への影響、胎盤を通じて胎児に薬がもたらされる影響が懸念されます。市販の薬や漢方薬などもふくめ、薬の服用は自分で判断せずに、必ず医師に判断を任せましょう。基本的には薬を使用しない方向で治療を考えるケースが多いかもしれませんが、ひどい痛みが続くことで母体への影響が考えられる場合には最低限の薬が処方されることもあります。薬の服用への疑問点や不安があれば、医師に確認しましょう。

出産後の歯痛に関しては、母乳への影響が気になりますよね。授乳中のママには、薬を服用している時期だけ搾乳やミルクに変えることなどを提案してくれる場合もあるようです。

妊婦の虫歯は赤ちゃんにどのような影響を与える?

妊婦が虫歯になることで、何か影響が出る可能性はあるのでしょうか。妊婦が虫歯になること考えられる影響は「胎児への影響」と「生まれてきた赤ちゃんの歯への影響」の2種類にわけられます。

まず「胎児への影響」では、妊娠中の歯周病は早産や低体重児のリスクを高めるといわれている点があります。ただしまだ不明な点も多く、詳細については研究が進められている状態ではあります。しかしながら早産や低体重は新生児死亡などを引き起こす可能性もあるため、軽視はできないでしょう。

また「生まれてきた赤ちゃんの歯への影響」ですが、虫歯のミュータンス菌は唾液を通して大人から子どもにうつることがわかっています。ミュータンス菌を絶対に子どもにうつさないというのは現実的ではありませんが、子どもが虫歯になる原因は環境にもよる点には注目しても良いでしょう。ママに虫歯があるのであれば、だらだらと食べ続けてしまったり食後の歯磨きを怠ったりする、虫歯になるような生活習慣があるのかもしれません。虫歯を治すことで生活習慣を見直してみるのも良いかもしれませんね。

妊婦の虫歯予防!妊婦歯科健診も活用を

妊婦歯科健診

妊娠中は抵抗力が下がることもあり、虫歯や歯周病が進行する可能性があるといわれています。歯や歯茎が痛いといった自覚症状が出る前から、本来であれば予防や対策をすることが大切でしょう。妊娠したら一度は歯科健診を受けると良いでしょう。自治体によっては無料で歯科健診が受けられる券を配布している場合もあります。産後は赤ちゃんのお世話で歯が痛くても歯医者さんに行く時間が取れない可能性も高いでしょう。産後のことも考えて、妊娠中に歯科健診や歯のクリーニングだけでも受けると良いかもしれませんね。

妊婦が気をつけるべき代表的なケース

特に妊娠中に気をつけるべき代表的なケースとしては3つあります。口腔環境の変化により歯周病が進行しやすい、つわりにより歯磨きが十分にできない、甘いものをたくさん食べたり食事の回数が多くなっていたりするといったことがあげられるでしょう。虫歯対策としてのフッ素入り歯磨き剤の使用、歯周病対策としてのデンタルフロスの併用などは気軽にできる対策といえるでしょう。

つわりで歯ブラシの使用が難しい場合には歯ブラシのヘッドが小さいものを使用する、一時的にフロスなどのデンタルケアグッズだけでも使用するという方法もあるでしょう。甘いものをたくさん食べたり食事の回数が増えたりすると、虫歯のリスクが高まります。こまめな歯磨きが理想ですが、難しいようであれば食後に水やお茶を少量でも飲みましょう。

妊娠中、虫歯の応急処置は自分でできる?

妊娠中に歯が痛いと感じた場合でも、妊娠の経過や妊娠週数によっては治療が行うことができない場合があります。緊急の場合には妊娠中や胎児への影響と現在の状況を鑑みて治療が行われますが、応急処置のみになる場合も少なくはないでしょう。

妊娠中は自分の判断のみで市販の薬に頼ることができないため、基本的には医師に対処方法を相談するのが安全です。妊娠中に使用しても問題ないとされる市販の薬であっても、事前に医師の許可を取っておくと安心でしょう。腫れた部分を冷やすといった薬に頼らない対処法は一時的です。神経にまで達している虫歯などには効果がない可能性もある点には注意が必要です。

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妊婦歯科健診を活用し、放置しないようにしよう

自治体によっては無料で受けることができる妊婦歯科健診は、通常の妊婦健診とは異なることから見過ごしている人も少なくないようです。虫歯のひどい痛みに悩むことになる前に、可能な限り歯医者さんに一度は行っておくと良いでしょう。歯のクリーニングだけでも良いかもしれませんね。

虫歯を放置する人も少なくありませんが、虫歯が重症化するほど歯を治すのに必要な時間も治療費も増加する可能性が高いかもしれません。神経まで虫歯に蝕まれると痛みも増し、深刻化したケースでは抜歯や歯茎を切開する手術の可能性まで出てきます。歯周病では早産などのリスクもあるため、可能な限り歯を治すことで赤ちゃんを守ってあげたいですね。

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