【小児科医監修】プール熱(咽頭結膜熱)の症状は?子どもや赤ちゃんだけ?大人も感染する?流行時期や治療法、出席停止期間などを解説
プール熱(咽頭結膜熱)は、おもに夏場に流行する感染症ですが、感染するとどのような症状が現れるのでしょうか。もしも感染した場合、保育園や幼稚園は出席停止となってしまうのかも気になるところですよね。ここでは、プール熱(咽頭結膜熱)の症状や特徴、治療法や出席停止期間などについて小児科医が解説します。
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目次
プール熱(咽頭結膜熱)とは?症状は?
プール熱(咽頭結膜熱)の初期症状
プール熱(咽頭結膜熱)とは、アデノウイルスに感染することによって起こる感染症です。6月頃から症例が多く出始め、7~8月にピークを迎えます。
初期症状としては38~39℃の発熱がみられ、ときには40℃を超える高熱がでる場合もあります。その後、のどの痛みや結膜炎などの症状を引き起こすのが特徴です。
プール熱(咽頭結膜熱)の判断基準
発熱やのどの痛みなど通常の風邪の症状によく似ているので、プール熱と通常の風邪のどちらだろうかと迷ってしまうことがあるでしょう。通常の風邪とプール熱とでは、結膜炎など目に何らかの症状がでるかどうかという点で違いがでるようです。
目の炎症や充血、目やにや涙が過剰にでるようないわゆる「はやり目」と呼ばれる症状がでると、プール熱の可能性が高くなります。こうした結膜炎の症状が、プール熱の判断基準のひとつになるでしょう。
溶連菌やヘルパンギーナとの違い
プール熱と同じくのどの痛みを引き起こす感染症に、溶連菌感染症やヘルパンギーナなどがあげられます。どちらも子どもに多くみられる流行性の感染症で、高熱やのどの痛みといった症状をともなうという共通点があります。しかし、それぞれ原因となる細菌やウイルスが異なります。
プール熱と溶連菌感染症の違い
溶連菌感染症の多くはA群溶血性レンサ球菌という細菌に感染することが原因で、「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」とも呼ばれます。38~39℃の発熱、のどの痛み、だるさといった症状がプール熱とよく似ています。
子どもが溶連菌感染症を発症した場合、舌が赤くブツブツする「イチゴ舌」や身体に赤い発疹が出現する「猩紅熱(しょうこうねつ)」などがみられることもあります。この症状が、プール熱とは大きく異なる点です。
溶連菌の場合は心臓や腎臓に合併症を引き起こす可能性があるため、抗生剤などを処方してもらい、その後の経過も含めてしっかりと治すことが重要です。
プール熱とヘルパンギーナの違い
ヘルパンギーナは、プール熱と同じく夏に流行しやすい感染症です。主にエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスが原因の場合が多く、5月頃から発症数が増え始め、7月にピークを迎えます。
突然の高熱に続き、のどに強い痛みがでるのが特徴で、のどの奥に水疱ができる点がプール熱と異なります。発熱時には熱性けいれんを引き起こす場合があります。
ヘルパンギーナや溶連菌、プール熱などは、流行時期や症状が非常に似ています。しかし、それぞれ治療法や対処法は異なるので、自己判断せずに必ず医師の診断を仰ぐようにしましょう。
プール熱(咽頭結膜熱)の潜伏期間は?
プール熱(咽頭結膜熱)には、主な症状がでるまでのあいだに一定の潜伏期間があります。ウイルスに感染してから、平均5〜7日ほど潜伏期間を経て発症するケースが一般的です。潜伏期間中は、プール熱の症状が現れないため、感染していても気が付かないことが多いでしょう。
プール熱(咽頭結膜熱)の原因となるアデノウイルスとは?
プール熱(咽頭結膜熱)の原因となるアデノウイルスは、感染力が非常に強いウイルスです。アデノウイルスは50種類以上もの型があるため、免疫がつかず何度でも感染する可能性があります。感染する型によって、呼吸器感染症、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、出血性膀胱炎、胃腸炎などのさまざまな疾患を引き起こします。
プール熱(咽頭結膜熱)が流行る時期は?
プール熱(咽頭結膜熱)は、おもに夏の季節に流行する感染症です。6月頃から少しずつ感染者が増えていき、7~8月に流行のピークを迎えます。
プール熱は、夏のみならず冬であっても流行する可能性は十分にあります。2017年の12月にはここ10年の中でもとくに多くの患者が認められ、季節に関係なく流行する傾向にあるようです。
プール熱(咽頭結膜熱)の感染経路は?大人もうつる?
アデノウイルスの主な感染経路
プール熱(咽頭結膜熱)の原因となるアデノウイルスは、非常に感染力が強いことが特徴です。感染経路としては飛沫感染と接触感染が多いとされています。
くしゃみや咳などを介して感染するほか、ウイルスのついている手や指などが触れることによっても感染してしまいます。直接ウイルス感染者に触れなくとも、感染者が触れたドアノブや、使用したタオルなどを介してウイルスが感染しまうこともあります。
夏にはプールの水などを介して感染するケースが多いためプール熱と呼ばれています。ただし、一定濃度で塩素消毒がされるなど、しっかりと管理されているプールの水であれば、感染源となるアデノウイルスが死滅するため、安全性は高くなります。
大人も感染する
おもに子どもたちのあいだで流行するプール熱(咽頭結膜熱)ですが、大人であってもウイルスに感染することは珍しくありません。プール熱の症状は、大人と子どもで大きな違いはありません。大人が感染するケースとしては、プール熱にかかった子どもの看病が原因となることが多いようです。
妊娠中はとくに注意が必要
妊婦さんの場合は、免疫力が低下していることもあり、より感染しやすい状態にあるため注意が必要です。万が一、妊婦さんがプール熱に感染したとしても、アデノウイルス自体が胎児に直接的に影響を与えることはないとされています。
しかし、妊娠中に高熱をだすと、胎児への影響がでる可能性がまったくないとは言い切れません。高熱が何日も続く場合には、病院を受診してしかるべき処置を受けましょう。
プール熱(咽頭結膜熱)の治療方法は?
プール熱(咽頭結膜熱)の原因となるアデノウイルスには、特効薬がありません。そのため、もしもプール熱にかかってしまった場合には、それぞれの症状に対する対処療法を行います。
高熱が5日ほど続く場合もありますが、基本的には徐々に快方へと向かうため、脱水症状などに気を付けながら安静にするといった方法をとります。目の充血やかゆみ、目やにの症状が強い場合には、目薬などで治療をすることもあります。
プール熱(咽頭結膜熱)にかかったら何科を受診する?大人の場合は?
子どもの場合、目やにや充血といった目に関する症状がある場合、まずは眼科を受診し、発熱などの症状が現れた段階で小児科を受診するという形をとる方も少なくありません。もしも、目に関する症状と、のどの痛みや発熱などの症状が同時にでた際には、眼科にかからず小児科で診察してもらうと良いでしょう。
大人にプール熱の症状がみられる場合には、耳鼻咽喉科か内科にかかると良いでしょう。どちらであっても、プール熱か否かの診断は可能ですし、解熱剤やのどの炎症を抑える薬などを処方してもらえます。ただし、目の症状が強い場合は、眼科と内科の両方を受診する形でもよいでしょう。
プール熱(咽頭結膜熱)を予防するには?
プール熱(咽頭結膜熱)にかからないための予防法には、どのようなものがあるのでしょうか。
手洗い、うがい
プール熱を防ぐためには、こまめに手洗いやうがいをすることが大切です。ウイルスが体内に入ることを防ぐことができるでしょう。手洗いをする場合には、水洗いだけでなく石鹸でしっかり洗うことが大切です。
また、プール熱の原因となるアデノウイルスには消毒用エタノールでは消毒効果が弱く、次亜塩素酸ナトリウムの使用が推奨されています。流行時期にはこういったアイテムを手元に用意しておくと良いでしょう。
ウイルスに感染しそうな場所を避ける
人との接触が増えると、それだけ感染する可能性も高くなります。夏にはさまざまなイベントなどで外出する機会も多くなりがちですが、感染しそうな場所はできるだけ行かないようにすることも、プール熱の予防につながります。
スイミングやプールの後には消毒を
水質の管理がしっかりとされているプールなどでは、基本的にはアデノウイルスの感染は心配ありませんが、シャワーでしっかりとプールの水を流したり、石鹸を使って洗ったりといった対策をすると、より予防効果が期待できるでしょう。また、プールなどウイルス感染が心配な場所では、タオルの共用は絶対にしないことが大切です。
プール熱(咽頭結膜熱)と診断されたら
解熱後の入浴がベター
病院でプール熱(咽頭結膜熱)と診断された場合でも、熱が下がればお風呂に入っても問題はありません。ただし、プール熱の症状がでている期間や、症状が治まって以降2日ほどのあいだは、他者へ感染させてしまう可能性があります。タオルの使い回しや同じお風呂のお湯を利用することで、二次感染してしまう場合があるため、注意が必要です。
のどに優しい食事を
プール熱はのどの痛みなどの症状をともなうため、なかなか思うように食事がとれないことが多いでしょう。基本的には食べられるものであれば何でも構いませんが、のどに痛みがあるうちは薄味で柔らかい、うどんやおかゆといったメニューがおすすめです。高熱によって水分が不足している場合もあるので、食事に加えてこまめな水分補給も大切ですね。
プール熱(咽頭結膜熱)で保育園や幼稚園は登園できる?
プール熱(咽頭結膜熱)は、登園停止や登校停止、出席停止などの措置が必要とされる感染症です。学校保健安全法第19条の第二種にあたります。感染を広げないためにも、二次感染の可能性がある期間は保育園や幼稚園への登園はできません。
プール熱の場合には、のどの痛みや発熱などの主要症状がなくなり2日を経過するまでは登園ができません。園によっては目やにや目の充血など、結膜炎の症状が残っている場合、その期間は登園停止と定めているところもあります。
登園を再開するためには、医師による治癒証明や感染症罹患後の登園許可についての意見書(登園届)などを必要と定める園がほとんどです。あらかじめ園に確認し、医師に許可をもらってから登園するようにしましょう。
プール熱(咽頭結膜熱)にかからないよう日々予防を
プール熱(咽頭結膜熱)は、6月から8月の夏の季節に毎年流行する感染症です。非常に感染力が強い上に、潜伏期間が長いため、知らないうちにウイルス感染してしまうケースは少なくありません。周囲に感染者がでてからの対策では間に合わないこともあるため、日ごろから手洗いやうがい、消毒などを心がけて予防をすることが大切ですね。
※この記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。