【小児科医監修】サイレントベビーに医学的根拠はない!?赤ちゃんを泣かせっぱなしにする影響は?

「サイレントベビー」という言葉を知っていますか。泣いている赤ちゃんを放置するとサイレントベビーになるといわれることがあるようです。サイレントベビーとはそもそもどういった赤ちゃんを指すのでしょうか。ここではサイレントベビーの定義や医学的根拠、赤ちゃんが泣かない理由や赤ちゃんに対するママやパパの対応について解説します。

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この記事の監修

眞々田 容子
小児科医
眞々田 容子

目次

  1. サイレントベビーとは?
  2. サイレントベビーに医学的な根拠はあるの?
  3. 赤ちゃんがサイレントベビーになるケースとは?
  4. 赤ちゃんを泣かせっぱなしにするとサイレントベビーになるの?
  5. 赤ちゃんが泣かないとサイレントベビーなの?
  6. 泣かない赤ちゃんが障がいや病気の可能性は?
  7. 赤ちゃんがサイレントベビーかも、と心配になったら
  8. 理想の育児はそれぞれの個性によって異なる
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サイレントベビーとは?

サイレントベビーとは、小児科医である柳澤慧氏が著書「いま赤ちゃんが危ない ―サイレント・ベビーからの警告」(1990年出版)の中で提唱した、おとなしい赤ちゃんをさす言葉です。柳澤氏は著書の中で、昔に比べて表情が乏しく発語も少ない静かな赤ちゃんが増えていると指摘しています。

赤ちゃんは泣くことによって不快な気持ちやママやパパに対して甘えたい気持ちを表現しています。赤ちゃんは泣いても誰にも相手にされない状態が続くと、泣いたところで要求が満たされないと感じ、あきらめて泣かなくなってしまうと考えられています。サイレントベビーとは泣くことで自分の意思を伝えるのをあきらめてしまい、静かになった赤ちゃんのことをさします。

柳澤氏が著書を出版したのち、サイレントベビーという言葉がテレビや新聞などのメディアでも大きく取り上げられ話題になったことから、サイレントベビーという言葉が一般的に知られるようになりました。

サイレントベビーに医学的な根拠はあるの?

サイレントベビーという言葉は日本国内でのみ知られている和製英語です。呼び名のようなもので病名や医療用語ではなく、定義もあいまいです。

近年、日本でもジーナ式やフランス式といった欧米スタイルの育児方法を選択する家庭が増えています。ジーナ式は赤ちゃんをひとりで寝かせる育児方法で、フランス式は赤ちゃんが泣いてもすぐには抱き上げず観察して泣き止むのを待つ、といった特色のある育児方法です。しかし、これらの育児方法の発信元であるイギリスやフランスの赤ちゃんが誰の目から見ても静かな子に育つ、成長過程で著しく問題を抱えるといった報告は今のところないようです。

サイレントベビーについて医学的な根拠は特になく、小児科医や専門家の一部からは根拠や信ぴょう性について疑問視する声も上がっています。近年、比較的静かな赤ちゃん全般をサイレントベビーと定義する傾向がありますが、ママやパパの不安を煽ることに対して多くの小児科医や専門家が警鐘をならしています。

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赤ちゃんがサイレントベビーになるケースとは?

一般的にはサイレントベビーといわれる赤ちゃんには、虐待行為やネグレクト(育児放棄)と関係性があると指摘されています。保護者が、赤ちゃんが泣いても常に無関心であったり、赤ちゃんが泣くとその場を離れる、ひどい場合にはたたくなどの行為を繰り返したりしているようなケースです。こうした虐待を繰り返されると赤ちゃんは欲求を伝えるということをあきらめてしまうのではないかと考えられています。

虐待や望ましくない生育環境を経てサイレントベビーとなった赤ちゃんは、成長過程や発達に問題を抱えたり、将来、人間関係でトラブルを起こしたりするようになるといわれています。

赤ちゃんを泣かせっぱなしにするとサイレントベビーになるの?

子育てや家事を担うママたちの中には体力的にも精神的にもぎりぎりの状態という人も多いでしょう。産後すぐから仕事に復帰するママや年齢の近い上のきょうだいがいる家庭もあります。赤ちゃんの気持ちを汲む育児をしたいと望んでいても、赤ちゃんが泣いたらすぐに飛んでいって相手をすることがむずかしい場合もあります。

そんな中、思っていたよりおとなしい赤ちゃんだからといって、我が子はサイレントベビーなのではないか、愛情不足なのではないか、と過度に心配したり、自分を責めたりすることは良いこととはいえません。赤ちゃんを泣かせっぱなしにする影響が必ずしもあるわけではなく、すぐにサイレントベビーになるわけではありません。

赤ちゃんとママは出会ってまもないため、赤ちゃんが泣き続ける理由がわからなかったり、自分の子は泣きすぎかもと心配したりしてしまうこともあるかもしれませんね。しかし、どれだけあやしてもおむつ替えや授乳をしても、どうしても赤ちゃんが泣き止んでくれないときもあります。赤ちゃんが泣き疲れて眠るまで、泣かせっぱなしにしておくのも仕方がないときもあります。ときおり、保護者が声をかけたり顔を見せたりしながら、赤ちゃんの様子を見守りましょう。

赤ちゃんの泣き声に怒ってしまったり、周囲の人などが赤ちゃんの泣き方や対応について意見を押し付けたりする状況のママやパパもいるでしょう。赤ちゃんに泣かれるということはママやパパに不安やストレスを与えやすいものです。赤ちゃんがサイレントベビーになるかもとの心配が、さらなるママやパパの負担にならないようにしましょう。

赤ちゃんが泣かないとサイレントベビーなの?

サイレントベビーの特徴として泣かない、あまり笑わないということが知られているでしょう。一般的に赤ちゃんが泣く主な原因として下記があげられます。

・お腹が空いたとき
・おむつが汚れたとき
・眠いのにうまく寝つけないとき
・かまってほしいとき

生後2~3ヶ月くらいから多くの赤ちゃんには新生児期より表情や感情を表すことが増え、泣くことや寝ること以外にも笑ったり、周囲のものに反応を示したりするようになります。そんななか、生理的欲求すら満たされていない状況でも泣かない赤ちゃんだと確かに保護者は心配になるかもしれません。しかし泣かない=サイレントベビーとないうけではなく、泣かないのは赤ちゃんの個性や環境によるものがほとんどです。

赤ちゃんにも個性がある

赤ちゃんが生まれつき比較的おとなしい性格や細かいことを気にしない性格である、ということも考えられます。また、2人目の子どもであったり、きょうだいが大勢いたりする場合は近くに人の気配を感じて安心しているということもあるかもしれません。

ママやパパがこの子はそういうタイプなのだと受け止めて、赤ちゃんを見守るのも良いでしょう。赤ちゃんはまだ言葉で返事をしないかもしれませんが、ママやパパのほうから「どうしたの」「おしえてね」というように優しく話しかけてみるのも良いでしょう。赤ちゃんから笑顔や「うー」というような喃語(なんご)が返ってくる場合には、サイレントベビーの心配は無用かもしれません。

赤ちゃんが泣かないのは満足している証の場合も

近年、小児科医のあいだで周囲から愛情や適切な注目を浴びて大切に育てられた子どもは、泣く以外の方法で保護者とのコミュニケーションをとれると早い時期から気づくという意見があります。個人差はありますが激しく泣きだす前から自分の要求を満たしてもらったり、不快に感じる要素を取りのぞかれていたりする赤ちゃんはよほどの危険のあるとき以外は泣かなくなるとの見解もあります。

ママやパパ、子育て家庭の周囲の人はもともと泣かないタイプの赤ちゃんもいることや、なかには自分の環境に満足、安心していることで泣いて欲求を知らせない赤ちゃんもいると知っておくと良いかもしれません。

泣かない赤ちゃんが障がいや病気の可能性は?

赤ちゃんが比較的静かなタイプだと障がいや病気を心配するママやパパもいるでしょう。一般的に自閉症や発達障害の赤ちゃんには下記のような特徴があるといわれています。

・感情表現があまりない
・周囲に興味がないように見える
・目が合わない

しかし、障がいや病気があっても赤ちゃんにはそれぞれ個性があります。あまり泣かずいつも笑顔の赤ちゃんだったが、のちに自閉症だったと判明したり、いつでも周囲に興味がある素振りだった赤ちゃんが多動症などの発達障害だったりすることもあるようです。同様に障がいや病気の可能性がまったくない子どもであっても個性があり、反応はそれぞれです。

障がいや病気などの心配があっても、赤ちゃんがある程度成長するまで専門家でも判断がつかない場合があります。ひとまず、ひとりで悩まずかかりつけの小児科医や健診のときなどに相談をしましょう。

赤ちゃんがサイレントベビーかも、と心配になったら

赤ちゃんがサイレントベビーかもしれないと心配するママやパパは、赤ちゃんの様子をよく観察し将来を案じているママやパパともいえるでしょう。しかし赤ちゃんのお世話をきめ細やかにできるママやパパというのはストレスをためるタイプや自分を責めてしまうタイプかもしれません。

ママやパパがストレスフルな状況だと赤ちゃんにも伝わるともいわれています。まずはママやパパ自身がリラックスできる状況になるようママやパパの周囲の人、パートナーや家族がサポートしてあげられると良いでしょう。

赤ちゃんに話しかける量を増やす

ママやパパ、赤ちゃんのお世話をする人は、意識的に赤ちゃんに話しかける量を増やすと良いでしょう。返事は返ってこなくとも日常的に「あれはなにかな」「今日はあったかいね」など赤ちゃんに話しかけるのも楽しいものです。

赤ちゃんが泣いたときには声をかけてあげる

赤ちゃんが泣いているときにすぐに抱き上げたり、身体的な不満を取り除いてあげられなかったりすることもあるものです。そんなときには、「赤ちゃんを泣かせっぱなしにしてもすぐに影響があるわけではない」「泣いている赤ちゃんを放置してもサイレントベビーになるわけではない」と自信を持ちましょう。「少し待ってね」「すぐ行くからね」など、赤ちゃんに届くように優しく声をかけてあげるのが良いでしょう。

おむつや授乳などに問題がなく、あやしても赤ちゃんが泣き止まないという場合には、ひとまず赤ちゃんを安全な場所に置くのも良いでしょう。そのとき「大丈夫だよ」「泣いてもかわいいね」など、赤ちゃんが安心したり、愛情を感じたりしそうな言葉をかけてあげられると良いですね。気持ちを言葉にすることでママやパパ、お世話をする人の心にも余裕が生まれるかもしれません。

赤ちゃんの喃語に反応をしてあげる

あまり笑わないと思っていた赤ちゃんが笑ったり、「うー」「あー」といった喃語を返してきたりしたときは、ママやパパも笑顔や返事を返してあげましょう。自分の反応にママやパパが興味を持ってくれている、喜んでくれている、とわかると赤ちゃんも表情や喃語を出すこと良いことだと認識するようになるでしょう。

理想の育児はそれぞれの個性によって異なる

ママやパパによっては、赤ちゃんの泣き声が苦手だったり、赤ちゃんを泣かせっぱなしにすることに罪悪感を持つタイプだったりと、赤ちゃんが泣くことへの反応や感じ方はさまざまです。同じく赤ちゃんにも生まれ持った性格や環境によって、反応や感じ方にはばらつきがあります。一概に赤ちゃんが泣いたらすぐ対応するべき、泣かない赤ちゃんは生育環境に問題のあるサイレントベビーとは言い切れないものです。

赤ちゃんの性格や泣き方に個性はあっても、夫婦やパートナー同士、周囲の人がそれぞれの赤ちゃんにあう育児をしていけると良いですね。

※この記事は2024年8月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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