【産婦人科医監修】産後の尿もれの対策、治療方法!いつまで続く?受診の目安は?
産後に多い「尿もれ」トラブル、くしゃみをしたときにドキッとすることも。妊娠中は大きくなった子宮に膀胱が圧迫されたり子宮を支える骨盤底筋がゆるんだりして頻尿や尿もれが起こることは少なくありません。産後も骨盤底筋のゆるみが回復するまでしばらく尿もれに悩むことも。尿もれ対策に効果的な骨盤底筋を鍛える体操などをご紹介します。
本ページはプロモーションが含まれています
この記事の監修
目次
産後に尿もれが起こる理由は「腹圧性尿失禁」
妊娠中や出産直後は尿もれが起こりやすいものです。膀胱は子宮の前にあるので、妊娠中は大きくなった子宮に膀胱が圧迫されます。そうなると、おしっこをためられる量が少なくなり、トイレが近くなります。くしゃみや咳などおなかに力が入ったときに尿もれすることはめずらしくありません。
産後も、くしゃみや咳、重いものを持ち上げようとしたときなど、腹圧がかかったときに尿もれすることがあります。これは子宮や膀胱をハンモックのように支えている骨盤底筋の筋力低下が原因と考えられます。
骨盤底筋は尿道や腟、肛門を締める大切な役割をしています。出産によって骨盤底筋や骨盤底を構成するじん帯が弱まったり傷ついたりすると、尿道を締める力が正しく働かなくなってしまいます。
また赤ちゃんが生まれるときに産道が引き伸ばされることによって、産道を引き締める括約筋(かつやくきん)がゆるんでしまうことも原因のようです。括約筋は骨盤底筋の一部分です。
このような、骨盤底筋のゆるみが原因でおなかに力が入ったとたんに尿がもれるのは「腹圧性尿失禁」といって、女性の尿もれで最も多くみられるタイプだそうです。ほとんどの場合は一時的なもので、産後4ヶ月くらいたつと骨盤底筋が受けたダメージは回復して尿もれもなくなっていくようです。
産後の尿もれが起こりやすい人
下記の条件などに当てはまる方は、妊娠および出産のときに骨盤底にかかる負担が大きかった可能性があるため、尿もれが起こりやすいといわれているようです。
・妊娠中に尿もれが頻繁におきた
・3500g以上の赤ちゃんを出産した
・分娩時に子宮口が開いてから赤ちゃんが生まれるまで5時間以上時間がかかった
・出産して1週間経っても子宮が下がっている
また「肥満」も骨盤底にかかる負担が常に大きくなり、骨盤底筋のゆるみを招く原因となり、尿もれが起こりやすいそうです。
産後の尿もれ対策
産後に起こる「尿もれ」にどのように対処したら良いか、いくつかアドバイスをお伝えしますね。
ガードル、コルセットはNG
妊娠によってもともとの大きさの10倍くらいになった子宮は産後2ヶ月ほどかけて少しずつ元のサイズに戻っていきます。この子宮のサイズがまだ戻らないうちに、体形を気にして、きついガードルやコルセットでおなか全体を締めてしまうと、その圧力が子宮や膀胱、骨盤底筋にかかってしまいます。
これでは、子宮や骨盤底筋の回復を遅れさせてしまいます。産後直後からのおなかを圧迫するようなガードルやコルセットの着用は控えましょう。
重いものを持たない
産後はなるべく体を休めて、体の回復に努めましょう。なかでも注意したい動作は「重いものを持たない」ことです。重いものを持つと骨盤底筋に負荷がかかってしまいます。
少なくとも産後2ヶ月ほどは避けましょう。このいわゆる「産褥期」とよばれる体の回復のための大切な時期に無理をしてしまうと、後にひびくといわれています。
ストレッチや体操で骨盤底筋を鍛える
産後すぐから始められる「産褥体操」は産後の体の回復を促します。産後すぐから1週間ほどは血液の循環を良くして、むくみを防止したり、母乳の分泌を促したりするものがメインです。
産褥体操の中には骨盤底筋を鍛えるものもあります。会陰の傷が治る1週間頃から少しずつ骨盤底筋を鍛える体操を行うと良いでしょう。産後3週間ほどを目安に、悪露などの状態をみながら少しハードに骨盤底筋を鍛えるエクササイズを取り入れて、出産でゆるんだ骨盤底筋の筋力トレーニングを始めるのがおすすめです。
また病院でも、「腹圧性尿失禁」の治療法の主たるものは骨盤底筋のトレーニングです。骨盤底筋を鍛えることは尿もれの予防法としても効果的です。正しいやり方で毎日継続して行うことが大切です。骨盤底筋トレーニングの詳しい方法については、動画とともに後述します。
骨盤矯正ベルトの着用
「骨盤矯正ベルト」の着用によって、お産でゆるんだ骨盤が支えられ、子宮や膀胱などが下がってきてしまうのを抑えることが期待できます。産後の骨盤を整えるのにも効果的です。
ただし、骨盤矯正ベルトの選び方と着用法にご注意ください。おなかを圧迫してしまうものは逆効果ですので、助産師さんやお医者さんと相談の上で、購入及び装着を行ってくださいね。
尿もれパッドを着用する
尿もれが気になるようでしたら、外出時などは尿もれパッドを使うと良いですよ。吸水性が良く、また消臭ポリマーが尿を瞬間吸収するので気になる臭いも閉じ込めてくれるので、心地良く、安心して過ごせます。ただし、面倒でも交換は頻繁に行って、衛生的に使いましょう。
骨盤底筋を鍛える体操
骨盤底筋を鍛えるおすすめの体操を動画とともにご紹介します。会陰の傷が癒えたころ、産後3週間ほどを目安に少しずつ行いましょう。毎日継続して行うことが大事です。
すべり台のポーズ
すべり台のポーズは大殿筋や骨盤底筋を引き締めます。
1、仰向けに寝て両ひざを曲げて腰幅に開きます。
2、両手は手のひらを下にして両脇におきます。
3、息を吐きながら腰を上げ、すべり台の姿勢をキープしながら息を吸います。
4、息を吐きながらゆっくり腰をおろします。
腰を上げるときは、床から骨盤、背骨をひとつずつ順番に離すイメージで行います。おろすときも背骨をひとつずつ徐々に床につけるイメージで行います。すべり台のように肩・腰・ひざが一直線にキープできるようになると良いです。
骨盤底筋を鍛えるピラティス
骨盤底筋及び、内もも、裏もも、背中のたるみにも効果的です。
1、スタートのポジションについて
仰向けになります。足はひざを立ててひざの内くるぶしをしっかりと閉じます。骨盤は左右と恥骨を結んだ三角形をマットと水平にします。背骨はまっすぐにします。肩と首はリラックスさせます。手のひらは伏せて体から45度離した位置に置きます。
2、動きについて
ひざが開かないように内ももを引き締めたまま、骨盤を上にぐっと上げます。このときに肩からひざまで一直線になるようにします。ひざが開かないようにします。おろします。
3、呼吸について
鼻から吸って準備し、吐きながら持ち上げます。
ひざをしっかりとくっつけて骨盤を持ち上げます。このとき、肛門をぎゅーっと引き締めるよう意識して行いましょう。ひざの内側にタオルを挟んでタオルを落とさないようにして行うと、よりももの内側を意識して行えます。
これを5回行います。
40歳を過ぎたら尿漏れに悩む女性が多い
尿もれは女性に多く、日本では40歳以上の女性の4割にあるといわれています。そのうち女性に最も多いのが「腹圧性尿失禁」と呼ばれるものです。くしゃみやせきをしたときにお腹に力が入って腹圧がかかったときに起こるタイプのものです。
そもそも女性に尿もれが多い理由は、ひとつには男性に比べると女性のほうが尿道が短いことがあげられます。もうひとつは、妊娠出産によって骨盤底筋がゆるむことがあげられます。
また加齢とともに筋肉や組織が徐々に弱まり、女性ホルモンの分泌の低下などによって骨盤底の組織の張りがなくなることも一因と考えられるようです。
妊娠出産を機にあるいは年齢とともに骨盤底筋が弱ってきてしまうことを理解しましょう。早めに骨盤底筋を鍛える体操を始めると将来の尿もれ予防につながります。
尿漏れの治療法と受診の目安
産後の尿もれは一時的なものが多いようですが、産後1ヶ月たっても症状が改善されないなど、気になるようでしたら女性泌尿器外来を扱っている泌尿器科、産婦人科を受診すると良いでしょう。
女性に多い「腹圧性尿失禁」の治療は、体操や薬物療法などの保存的治療と手術とに大きく分けられます。尿もれの程度が軽い場合は、保存的治療がすすめられます。その中心となるのが「骨盤底筋体操」です。
一般に、正しい方法で3ヶ月ほど毎日行うと尿もれが起こりにくくなるそうです。医師によっては正しく体操を行えているか、内診などによって筋肉の状態を確認するそうです。
また薬物の服用については授乳中の方は医師と相談する必要がありますね。受診の際には、医師に自分の症状と体の状態をきちんと伝えることが大事です。
なお、お腹に力を入れていない平常時にパンティライナーが濡れたり蒸れたりするのは、尿もれが起きているのではなく、おりものの分泌量が増えたためのこともあります。おりものの急激な変化は隠れた病気が潜んでいることもありますので、悪露が落ち着いた後も症状が続くようなら早めに産婦人科などを受診しましょう。
女性にとって身近な尿もれ、うまく付き合おう
尿もれは女性にとって身近なものです。骨盤底筋体操などを行って加齢に備えると良いですね。また、もし尿もれで困ったときには、恥ずかしがらずに早めに医療機関を受診してください。また、便利な尿もれパッドを上手に使って、お出かけなど日々の生活をこれまで通りに楽しみましょう。
※この記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。