【産婦人科医監修】乳腺炎の症状は?発熱やしこり・頭痛があるの?乳腺炎の原因と主な症状
母乳育児中のママを悩ませるトラブルのひとつが乳腺炎です。乳腺炎は授乳中の女性の3割近くにおこるともいわれています。乳腺炎になりたくないと恐れているママも多いことでしょう。ここでは乳腺炎の種類や原因、症状、対処法について、先輩ママの体験談をまじえて産婦人科医監修で解説します。
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この記事の監修
目次
乳腺炎とは?
乳腺炎とは、その名の通り乳腺が炎症を起こす病気です。しこりや乳房や周辺の腫れが主な症状ですが、悪化すると発熱や悪寒、頭痛などの風邪に似た症状に悩まされます。乳腺炎は母乳のなかの白血球数や細菌数などによって、うっ滞性乳腺炎と化膿性乳腺炎のふたつにわけられます。
うっ滞性乳腺炎
乳管のつまりや、母乳が過剰に分泌されてたまった状態のままになってしまうことによって起こるのが、うっ滞性乳腺炎です。産後10日から2週間くらいで発症するママが多いようですが、授乳期を通して常にリスクがあります。
断乳や卒乳の際にも、うっ滞性乳腺炎に苦しむママが多いようです。主な症状として触れると痛みが走るようなしこりができたり、おっぱい全体が赤く腫れあがってしまったりということがあげられます。
化膿性乳腺炎
化膿性乳腺炎は細菌感染によって起こる乳腺炎です。出産直後は何度も赤ちゃんにおっぱいを吸われることで、乳頭が腫れあがって傷付きやすい状態になっています。授乳が始まって時間がたっていても、乳首が引っ張られたり噛まれたりすることによって乳頭や乳輪の傷ができてしまうことがあります。
授乳や搾乳の前後に消毒をしなかったり、身体の抵抗力が弱っていたりして、傷口や腫れている部分などから菌が入ってしまうことが原因となり乳房のなかで化膿してしまうのが可能性乳腺炎です。
重症化すると膿ができた部分を切開したり針をさしたりして膿を出すような手術や処置が必要となる場合もあるようです。
乳腺炎の原因
授乳の姿勢・方法
どちらか片方の乳房でばかり授乳をしていたり、授乳中のママや赤ちゃんの姿勢がいつも同じだったりすると乳腺炎になってしまうことがあるようです。普段からさまざまな姿勢でおっぱいを飲んでもらうような練習をしておくと、おっぱいのいろいろな位置の乳管や乳頭の母乳の出口から母乳が出やすい状態になるようです。
授乳間隔・母乳の飲み残し
ママのお出かけなどによって授乳間隔があきすぎたり、母乳が作られ過ぎていて赤ちゃんが飲みきれなかったりする場合も、母乳がたまってしまい乳腺炎になりやすいでしょう。おっぱいが固くなりすぎているなと感じたら、搾乳をするようにしてくださいね。
乳房を圧迫する服装
授乳中のママのおっぱいは妊娠前よりサイズが大きくなっていることがほとんどです。サイズの合わないブラジャーを無理に使用することはやめましょう。押さえつけられると、おっぱいに力がかかり、乳腺炎の原因になります。また、抱っこ紐やおんぶ紐によっておっぱいを締め付けることが乳腺炎につながることもあるようです。
ストレスや疲労
ママのストレスや疲労と母乳の関連性は現在のところ明らかになっていません。しかしストレスや疲労がたまると、血管が収縮し血液をドロドロになる一因となってしまうことはよく知られています。母乳は血液から作られているため、ストレスや疲労によって詰まりやすい母乳ができてしまう可能性もあるのです。
またストレスや疲労は自律神経を乱してしまうため、母乳を作るのに必要なホルモンを乱したり、身体を冷やしたり、母乳の出を悪くして詰まりを起こしたりします。
赤ちゃんを産んだ女性の身体は自分で思うより疲れていることが多いものです。そのうえ赤ちゃんが生まれた途端生活のペースが変わったり、責任を感じたり、迷うことが増えたりして、ストレスにさらされやすい状態にあるといえます。うまく息抜きできる時間を見つけてリラックスしたり、赤ちゃんが寝るときは自分も寝たりして、なるべく無理をしないようにできると良いですね。
乳腺炎と食生活の関係は?
以前は、脂っこい食べ物や砂糖を多く含む食べ物を食べると乳腺が詰まりやすいといわれていたこともありましたが、最近の研究で母乳の質や量はママの食事内容の影響を受けないことがわかってきています(※1)。世界保健機関(WHO)の見解でも、乳腺炎の原因は母乳のうっ滞と感染であることが示されています。このことから、特定の食品が乳腺炎を引き起こす心配はないといえそうです。
ただし授乳中は妊娠前と比べて、必要とされるエネルギー量や栄養素の摂取量が増加します。また、食事が母乳の質に影響するという医学的な根拠はないものの、高脂肪・高カロリーの食品を食べると乳腺が詰まりやすいと感じるママは多いようです。
食事が乳腺炎に直接関係しなくても、授乳中はタンパク質や葉酸、ビタミンAなどをバランスよくとれる食生活を心がけると良いでしょう。
乳腺炎の症状
乳房のしこり
乳腺炎は乳管が詰まってしまうことによって起こるので、乳房にしこりができるのが一般的です。乳腺炎になりかけているときや、乳腺炎のときにできるしこりは、触ると動いたり、弾力性があったりします。複数のしこりができたときには、それぞれ硬さが違う場合もあるようです。ただし乳腺炎のしこりでも、つまりがひどいときは固くなることもあるようです。
乳房にしこりができると、乳がんのしこりではないかと心配するママもいるでしょう。しかし乳がんのしこりであった場合、石のような硬さになるといわれています。また、乳がんの場合は痛みや発熱は一般的にみられません。
乳がんのしこりではないと判断できても、痛みがひどい場合やしこりが固い場合には母乳外来や出産をした病院などを受診しましょう。乳腺炎のしこりを放っておくと腫瘍化しやすいともいわれています。
発熱・寒気
乳腺炎の症状はよくインフルエンザの症状に似ているといわれています。おっぱいが熱をもっているかな…と感じたあと、突然悪寒と高熱が出るというケースもあるようです。発熱や寒気、関節痛などが出たときは細菌に感染した化膿性乳腺炎の可能性もあります。
頭痛
乳腺炎では頭痛に悩まされることもあります。発熱と頭痛がセットで感じられる場合は、解熱すれば頭痛もなくなることがほとんどのようです。乳腺炎による頭痛が起こると、授乳が億劫になってしまい、乳腺炎の原因である乳管のつまりを一層悪化させることもあります。
痛み
初期の乳腺炎の痛みは乳房がチクチクするような感じ、鈍痛のようなぼわーっとした痛みを感じる人が多いようです。赤ちゃんを抱っこしたり、腕を上げたりしたときに鈍い痛みが走る、という人もいるようですね。乳腺炎が悪化するにつれて、ぎゅっと乳房をつかまれたような強い痛みやケガをしたときのようなジュクジュクした痛みにかわっていきます。
そのほかの症状
おっぱい全体やつまりの箇所が赤く腫れあがるというのも乳腺炎の代表的な症状です。ほかにも脇の下が痛くなったり、乳頭に白斑(見た目は白ニキビのようなもの)ができたりすることもあります。
乳腺炎になったらどう対処する?
乳腺炎の対処法で一番効果的なのは赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうことです。おっぱいが出やすくなるように、やさしく乳房のマッサージをしてから授乳をしましょう。赤ちゃんが飲みやすいように口をしっかり開かせてから乳房を吸わせると良いですよ。授乳中はしこりが痛まない程度に軽く押しながらおっぱいを上げるとつまりが改善してきます。
赤ちゃんがおっぱいを飲みきれなかったという場合は、搾乳をしましょう。搾乳をする前にも軽くマッサージをすると、母乳の詰まった箇所が柔らかくなり、外に出やすくなりますよ。
乳腺炎による頭痛や発熱、悪寒などがある場合や症状がなかなか改善されない場合は、医療機関を受診しましょう。もし母乳外来を実施している病院であれば心強いですね。抗生物質を処方されることもありますが、だいたいは母乳育児にさしつかえのない薬が処方されるでしょう。
乳腺炎の体験談
ままのて編集部に寄せられた、先輩ママの体験談を紹介します。
下の子どもを出産し退院して1週間ほど経ったころ、初めて乳腺炎になりました。胸がガチガチに固くなり、40℃を超える高熱が出て寒気がとにかくすごくて、全身がガタガタと音がなるほど大きく震えました。真冬だったのでストーブの前でふとんをかぶって暖かくしていました。それでも耐えがたい寒気が続き、丸めた身体を元に戻すことができないほど。胸がガチガチに張って岩のように固くなり、痛くて自分でも触ることが出来ませんでした。
実家で静養中だったのですが、赤ちゃんは眠っていて家族が出かけていたため、しばらくストーブの前で痛みと寒気にひたすら耐えました。初めてだったので、これって乳腺炎なの?と思いながらも、家族に連絡することも出来ませんでした。
家族が帰ってきてすぐ、産院に電話で相談しました。「赤ちゃんにおっぱいを飲んでもらうのが一番良いです。今はそれしか方法がないかも。」と言われ、赤ちゃんが起きるのを待ち、張りと痛みがひどいほうのおっぱいから、激痛に耐えながらひたすら飲んでもらうようにしました。その後も赤ちゃんが起きるたびに、なるべくたくさんおっぱいを飲んでもらいました。赤ちゃんが寝たら、胸のほてりを取るよう冷やしながら、できるだけ楽な姿勢で休息し…これを繰り返して、まる2日ほどで徐々に症状はおさまりました。
そもそも、このころは出産直後で体力が落ちていて体調が悪かったのです。産院からは、「ママの疲労がたまっていて、授乳のタイミングがうまくいかなかったことが原因かもしれませんね。」と言われました。私としても食事などで特に思い当たることはなく、体調は乳腺炎と密接に関係しているのだな、と思いました。
乳腺炎は放置せずに対策しよう
乳腺炎になると、胸の痛みやしこり、熱感に悩まされ、授乳を辛く感じることもあるでしょう。特にはじめての育児では赤ちゃんもママも授乳に慣れていないことが多く、授乳の体勢から授乳頻度、授乳量など授乳全般の不安が大きくなり、授乳が負担になることも珍しくありません。
母乳のうっ滞は頻回授乳で解消されることもありますが、感染性の乳腺炎では頭痛や発熱などの症状が重くなることもあるため、気になる症状があらわれたら早めに母乳外来で相談したり医師の診察を受けたりするようにしましょう。
乳腺炎の予防には、授乳間隔やマッサージ、バランスの良い食生活など生活を見直すことも大切です。疲れをためすぎないようにして、授乳の時間を楽しんでくださいね。
※この記事は2024年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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