産後の痔が痛いママ必見!いぼ痔・切れ痔の対処法【産婦人科医監修】
産後の痔の主な症状は出血、痛み、腫れ、不快感などです。痛くない痔、激痛をともなう痔もあり、それぞれ原因と対処法が異なります。ここでは産後に見られるいぼ痔(痔核)と切れ痔(裂肛)を中心に、産後に痔になりやすい原因、よく起こる症状、痔の予防と対策をご紹介します。市販薬の種類や病院で行う治療についても解説します。
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目次
産後はいぼ痔や切れ痔になりやすい!どんな症状?
親しい間柄でもなかなか話題にしづらいことですが、実は多くのママが産後の痔の症状に悩まされています。主にみられるのは肛門周辺がこぶのように腫れるいぼ痔(痔核:じかく)と、肛門の皮膚が裂けて傷ができる切れ痔(裂肛:れっこう)です。
いぼ痔の症状
いぼ痔は肛門の内側と外側両方に発生します。肛門の内側にできるいぼ痔は内痔核、外側は外痔核といいます。
肛門の内側は感覚がなく、内痔核ができても症状は出血があるのみで、痛くないことが特徴です。出血は鮮やかな血の色をしており、ポタポタ落ちるほど出ることがあります。
一方の外痔核は、出血はありませんが強い痛みをともないます。
出産直後「会陰切開ってこんなにお尻のほうまで痛むのか…」と思っていたら、巨大ないぼ痔が出来ていることが産後すぐの検診で判明しました。
「これは痛かったでしょ~」と先生や看護師さんに口々に言われ、塗り薬を処方してもらい恐る恐る毎日塗っていました。産後2週間ほどで落ち着いてきましたが、円座クッションがなかなか手放せない産後でした。
切れ痔の症状
皮膚が裂けて傷ができる切れ痔は、排便や排便後にカミソリで切られたような激痛が走ります。便秘を解消し、血行を改善すれば自然と改善することがほとんどです。
しかし、便秘が続いたり、なんどもいきんだりすると感染を引き起こし、裂肛が悪化する症例もあります。
産後は会陰切開の傷が開くのではないかと便意を我慢することが多くなりました。そのせいか、便が硬くなり切れ痔になりました。排便の際の痛みがつらく、便意が恐怖でした。
そこで少しでも痛みをやわらげようと、乳首の傷に塗る馬油を排便の前後に肛門に塗るようにしたところ、排便がスムーズになり傷の治りも早くなった気がします。
産後のいぼ痔や切れ痔の原因
肛門を支える組織のゆるみ
肛門には、弾力性に富んだ「肛門クッション」と呼ばれる組織があります。排便時以外、肛門をぴったりと閉じる役割を担う大事な部位です。肛門クッションを構成するのは、粘膜や肛門管上皮、血管が網目状に張り巡らされている静脈叢(じょうみゃくそう)、粘膜の下にある筋肉です。
近年、いぼ痔の原因として有力だと考えられている説は、肛門クッションが伸びたり、肛門クッションを支える組織の線維が切れたりして肛門クッションが腫れて大きくなるというものです。
こうした肛門クッションのゆるみは、立ったり座ったりする動作、出産の際のいきみ、排便時のいきみなどで肛門に負担がかかることで起こります。産後は会陰切開の傷が気になり便秘となりやすいものです。硬くなった便を出そうとして排便時に力を入れすぎると、肛門クッションを傷める一因となります。
肛門をしめる筋肉の緊張
肛門は内括約筋(ないかつやくきん)と外括約筋(がいかつやくきん)という筋肉で閉じられています。このうち、外括約筋は自分の意志で動かすことができる筋肉です。便意を我慢したり、骨盤が前傾姿勢になったりすると緊張して引き締まります。
肛門の筋肉が緊張すると、血行不良となって切れ痔になりやすくなります。また、緊張した筋肉に肛門クッションがしめつけられてうっ血し、いぼ痔ができることもあります。
妊娠中は大きくなったお腹を支えるため、骨盤が前傾しやすくなります。さらに、産後は便意を我慢したり、赤ちゃんを抱っこしたりして肛門に負担をかけることが多くなります。こうした環境が、産後の痔の発症を招くと考えられます。
肛門付近の血行不良
切れ痔の人は、肛門付近を流れる血流が少ないことがわかっています。また、いぼ痔は肛門の静脈がうっ血し、静脈瘤(じょうみゃくりゅう)ができた状態だという説もあります。妊娠中は大きくなったお腹で下半身の血管が圧迫されるため血行不良が起こりやすく、妊娠中から産後にかけては痔になりやすいといわれています。
肛門周辺の不快感
いぼ痔や切れ痔はかゆみ、鋭い痛み、不快感をともなうことがあります。排便の際に、ウォッシュレットやティッシュで必要以上に刺激してしまったり、寝ているあいだに無意識にかいてしまったりすると、症状の悪化につながり慢性化を招く原因となります。
産後のいぼ痔や切れ痔の予防法
便秘の予防・改善を図る
産後は会陰切開の傷が気になり、排便を我慢してしまう傾向があります。便秘になると便が硬くなり、肛門を傷つけやすくなります。また、たまった便が血管を圧迫して血行不良を招くため、食生活や排便習慣を整えて、便秘にならないようにしましょう。
便が硬くてスムーズに排便できないときは、無理していきむのは禁物です。痔が悪化する可能性があるので、水分を多めにとる、便秘解消のマッサージをするなどして、スムーズな排便をうながすことが大切です。
姿勢に気を付ける
腰をそらせお腹を前に突き出す姿勢は、骨盤が前傾し肛門に負担がかかりやすくなります。お腹の上に赤ちゃんをのせるようにして抱っこしたり、調理のときにカウンターによりかかったりしていたら注意が必要です。下半身と腹筋を使って、真っすぐに身体を支えるように心がけたいですね。
座りっぱなしは避ける
座ったまま作業をする人の中には、痔の症状を訴える人が少なくありません。これは、座ったままの姿勢が、肛門クッションに負担をかけ、肛門付近の血行不良を招くためと考えられます。
授乳や車の移動などで長時間座りっぱなしのときは、軽い運動やストレッチで身体を動かしましょう。座るときはドーナツクッションを使うと肛門周辺に空間ができ、血流が滞るのを避けることができますよ。
冷えやストレスを予防して血行を改善
冷えやストレスがあると血流が滞り、血行不良におちいりやすくなります。筋肉の緊張も高まるため、産後は身体を温め、リラックスする時間を作りたいですね。お風呂につかる、マッサージをする、お腹周りを温めるなどして血行をうながしましょう。
バランスの良い食生活
規則正しい排便習慣を身に着けるには、朝ごはんをしっかりと食べて毎日同じ時間にトイレに行くことがポイントです。根菜、穀物、豆類に多く含まれる食物繊維は、便の量を増やしたり柔らかくしたりするため積極的に取り入れたい栄養素です。
また、水分不足も便秘の原因となります。一日に摂取したい水分量の目安は2.5Lです。食事でとれる水分は約1.3Lといわれているため、残りの1.2Lは意識して飲むようにしましょう。コップ1杯の水を7~8回に分けて飲むようにすると、一日に必要な水分をおぎなうことができます。
肛門周辺の清潔を保つ
肛門に便や血液、粘液が付着したままになっているとかゆみの原因となります。排便後は肛門付近の清潔を保つように心がけたいですね。トイレットペーパーでごしごしこするのは避け、ウォッシュレットで洗い流すか、ウェットティッシュでやさしくふき取るようにすると刺激がおさえられます。
必要以上に洗い流す必要はありません。過度な刺激が肛門に小さな傷を作り、かゆみや不快感をかえって増大させてしまいますよ。
重いものを勢いよく持ち上げない
重いものを勢いよく持ち上げたり、激しい運動をしたりすると肛門に圧がかかりいぼ痔が外に飛び出してしまうことがあります。子どもを抱っこするなど重いものを持ち上げるときは、膝を曲げて立ち上がるようにすると、肛門にかかる負担が軽減できます。
産後のいぼ痔や切れ痔で薬は使える?
痔の痛みがあると、なにをしていてもお尻が気になってしまいますね。痔の薬には内服薬と外用薬があり、市販薬も販売されています。外用薬は座薬、軟膏、注入軟膏タイプがあり、それぞれ痛み、腫れ、出血をやわらげる効果が期待できます。基本的に、軟膏タイプの薬は塗った場所だけに効果を発揮するため、授乳中でも赤ちゃんへの影響はないといわれています。
しかし、痔は症状の程度によって薬を使い分ける必要があります。症状がどのていど進行しているか正しく判断するためにも、症状が悪化したときは医師の診察を受けるか、薬剤師に相談するようにしましょう。
産後のいぼ痔や切れ痔が治らないときは病院へ!手術することも
いぼ痔は悪化すると、肛門の外に常に飛び出した状態となり、粘液が漏れ出て下着が汚れたり、皮膚が破れて強い痛みが出たりします。切れ痔が悪化すると、慢性化して肛門が腫れ、ポリープができたり肛門狭窄が起こったりします。
治療の多くは生活指導による保存療法や、薬物療法という形式がとられます。しかし、排便時の痛みや日常的な出血がひどく、生活に困難をきたす場合は手術をすることがあります。
ただし、いぼ痔も切れ痔も手術になるのは全体の1~2割程度です。「痔の治療は手術」というイメージがありますが、現在は麻酔がいらない外来療法が登場しています。痛みがつらいときは無理をせず、産婦人科や肛門科を受診してくださいね。
産後の痔対策は生活を整えることから
産後は赤ちゃんのお世話を優先して、自分のケアは後回しというママも多いことでしょう。しかし、痔の予防や改善には、便秘にならないこと、身体を冷やさないこと、肛門や腰に負担がかからない動作を心がけることなど毎日の生活習慣を整えることが大切です。
痛みが我慢できない、出血がひどいというようなときは、ひとりで抱え込まず早めに医師に相談するようにしましょう。つらい痔を繰り返さないためにも、早めに対処していきたいですね。