HELLP(ヘルプ)症候群とは?産後にも注意が必要?診断基準や治療法も解説

お腹がかなり大きくなり、出産が間近に迫っている実感がわき始めた妊娠後期や、赤ちゃんに出会えた喜びでいっぱいの出産直後。こうしたタイミングに注意したい病気のひとつが「HELLP症候群」です。二人目以降の経産婦や妊娠高血圧症候群の人に発症しやすいといわれています。HELLP症候群の症状や診断基準、治療法をみていきましょう。

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この記事の監修

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産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. HELLP(ヘルプ)症候群とは?
  2. HELLP(ヘルプ)症候群の症状は?
  3. HELLP(ヘルプ)症候群の診断基準は?
  4. HELLP(ヘルプ)症候群の治療法は?
  5. HELLP(ヘルプ)症候群を発症したら産後はどうなる?
  6. HELLP症候群と間違いやすい病気は?
  7. HELLP(ヘルプ)症候群の兆候を見逃さないで
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HELLP(ヘルプ)症候群とは?

HELLP症候群の3つの特徴

HELLP症候群の「HELLP」とは、「溶血(Hemolysis)=血液中にある赤血球が破壊されること」、「肝酵素上昇(Elevated Liver enzyme)≒肝臓の機能が悪くなること」、「血小板減少(Low Platelet)」の頭文字を取ったものです。3つすべてを満たしていなくても、該当する部分があれば「partial HELLP症候群」といわれ、厳重に母体の状態を管理する必要が出てきます。

HELLP症候群の原因

詳しい原因はまだ解明されていませんが、肝動脈の痙攣(けいれん)性の収縮や血管の内皮細胞の障害が原因であるという説があります。妊娠高血圧症候群を併発することが多いため、両者の関連も指摘されています。

HELLP症候群になりやすい人

HELLP症候群は妊娠中~産後に発症する病気で、約7割が産前に、約3割が産後、特に分娩後48時間以内に発症しています。なかでももっとも発症しやすいのは妊娠27週~37週の妊娠後期の妊婦さんです。

分娩全体でみると約0.2~0.6%に発症し、二人目以降の経産婦や、双子や三つ子が生まれる「多胎妊娠」、高齢妊娠の人に多いといわれています。また約9割に妊娠高血圧症候群との合併がみられます。さらに、妊娠高血圧症候群の人が痙攣(けいれん)発作を起こす「子癇」になった人の約半数はHELLP症候群を発症するとされています。

HELLP(ヘルプ)症候群の症状は?

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HELLP症候群になると、突然の上腹部痛や胃痛に襲われると同時に、疲労感や倦怠感、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢といった症状を伴います。HELLP症候群でなくても経験しうる内科系の一般的な症状が多く、ただの風邪や体調不良だと勘違いして見逃してしまう恐れがあるため注意しましょう。また、子癇(しかん)の前兆となる頭痛や目のかすみ・チカチカといった症状や、黄だん、出血症状がみられることもあります。

これらの症状を放っておくと、病気が悪化して合併症を引き起こし、母体や胎児にとって危険な状態に陥ってしまうかもしれません。症状がなかなか和らがないとき、あるいはどんどん重くなるときはかかりつけの医師に必ず相談してください。早めに気づき、受診が遅れないようにしたいですね。

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HELLP(ヘルプ)症候群の診断基準は?

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HELLP症候群の疑いがある場合、どのような検査を経て診断されるのでしょうか。HELLP症候群は血液検査によって「溶血」、「肝機能」、「血小板減少」の3つの特徴を確認することで診断が確定します。血液検査で以下のような数値が出た場合にはHELLP症候群と診断される可能性が高いでしょう。

   【溶血】
       血清総ビリルビン値 > 1.2mg/dL
       血清LDH >600U/L
       病的な赤血球が確認される

   【肝機能】
       血清AST(GOT) > 70U/L
       血清LDH > 600U/L

   【血小板減少】
       血小板数 < 100,000/mm3

また上記の基準を完全に満たしていなくても、正常値と異なるものが1つ以上あれば「partial HELLP症候群」として本格的なHELLP症候群を発症しないように注意する必要があります。

HELLP(ヘルプ)症候群の治療法は?

HELLP症候群と診断された場合は、妊娠週数にかかわらず基本的には積極的に分娩をうながして妊娠を中断することになります(ターミネーション)。母体と胎児の両方の状態を考慮しますが、通常は母体の状態が優先されます。

胎児が未熟な場合には、ステロイドを投与してから48時間以降に分娩を行うケースもあります。その際には母体の臓器や胎児の状態をしっかりと管理しながら慎重に分娩のタイミングをはかることになるでしょう。

HELLP(ヘルプ)症候群を発症したら産後はどうなる?

HELLP症候群を発症した場合は妊娠を中断して分娩をうながすことになりますが、出産後はどのように過ごすことになるのでしょうか。

妊娠中に症状が出ていた場合、分娩後もしっかりと治療・管理を行う必要があります。出産したからといってすぐに母体が正常な状態に回復するとは限らず、また母子ともども合併症を発症する危険性があるためです。

HELLP症候群を原因とする母体の死亡率は約1%ですが、死産や生まれてから1週間以内の新生児の死亡率は7~20%にのぼります。産前や産後に母体と胎児にみられる主な合併症は以下のとおりです。

【母体にみられる合併症】
・子癇発作
・産科DIC(播種(はしゅ)性血管内凝固症候群)
・常位胎盤早期剥離
・胚水腫
・肺出血

【胎児にみられる合併症】
・胎児発育不全(FGR)
・胎児死亡
・新生児死亡
・新生児血小板減少症
・新生児呼吸窮迫症候群(RDS)

HELLP症候群と間違いやすい病気は?

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症状や血液検査の結果でHELLP症候群の可能性が高くみえる場合でも、実は他の病気が原因だったというケースもあります。HELLP症候群と似たような症状がみられる病気は多数あるため、判別しにくい場合にはより専門的な医療機関で検査を受けることになるでしょう。

たとえば上腹部痛は急性虫垂炎や急性胆のう炎、尿管結石などの兆候、溶血は薬剤の影響や貧血の兆候、肝酵素の上昇は急性妊娠脂肪肝やウイルス性肝炎の影響、血小板の減少は紫斑病や敗血症、産科DICによるものかもしれません。

他の病気であることがわかった場合には、必ずしも妊娠を中断することになるとは限りません。適切な治療を行いながら妊娠を継続するほうが良いと判断されることもあるでしょう。HELLPの症状が出てきたからといって絶対にそうと決めつけず、しっかりと検査を受けて医師の判断を耳に入れてくださいね。

HELLP(ヘルプ)症候群の兆候を見逃さないで

上腹部痛や疲労感、吐き気、嘔吐などは、病気でなくてもホルモンバランスの影響や子宮による胃の圧迫が原因で引き起こされることがある症状です。こうした症状に悩まされている妊娠後期の妊婦さんは少なくないのではないでしょうか。

たしかに妊娠期間特有の症状かもしれませんが、症状がなかなか良くならない場合や重くなる場合はHELLP症候群の可能性を考慮しましょう。妊娠高血圧症候群をわずらっている人は特に注意が必要です。

妊娠中は誰にでもある症状だからと放っておいたり、風邪と勘違いして病院に行くのを遅らせたりしていると、母体と胎児両方にとって危険な状態になってしまうかしれません。心当たりのある人は早めに病院で検査してくださいね。

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