【メンタルリープ】赤ちゃんが寝ない悩みの糸口 計算方法や時期、期間はどのくらい?助産師監修
なにをしても赤ちゃんが泣き止まず、寝ないというときはありませんか。そんなときにメンタルリープを知っておくと、赤ちゃんのぐずりに悩むママやパパに解決の糸口がみつかるかもしれません。メンタルリープとはなにか、考え方や起こる時期、計算方法やその特徴をオランダの教育者がまとめた育児書をもとに助産師監修で解説します。
本ページはプロモーションが含まれています
この記事の監修
目次
赤ちゃんのメンタルリープとは?
オランダの教育者の研究から生まれた
メンタルリープは、オランダの教育者である F. プローイユとH.ヴァン・デ・リート夫妻の研究をもとに生まれた言葉です。
夫妻の研究によれば、0歳から1歳半までの赤ちゃんは決まった週齢を迎えると、ジャンプするかのように急激に成長するのだそうです。このとき、赤ちゃんの心身にはとても大きな変化が起こります。
赤ちゃんは自分自身に起こっている大きな変化に驚きとまどい不安定な状態になるため、何をしても泣きやまずぐずっている時期があるのだと分析しています。
名付け親は日本の訳者
プローイユの研究の成果は2015年に育児書「The Wonder Weeks(不思議な週齢ワンダーウィークス)」としてまとめられています。
日本での出版にあたり、共訳者である石川卓磨氏が決まった週齢で迎える知能の発達を「メンタルリープ」と名付け、広く知られるようになりました(※1)。
赤ちゃんのメンタルリープは決まった時期に起こる
プローイユの説では生後20ヶ月までのあいだに10回のメンタルリープがあるといわれています。赤ちゃんはお腹の中にいる10ヶ月のあいだに著しい発達を見せますが、生まれてからもぐんぐん成長しているのですね。
とはいえ、赤ちゃんの成長には個人差があります。これよりも回数が少なかったり、メンタルリープを迎える時期が遅く感じたりすることもあるかもしれません。
プローイユは赤ちゃんの成長は育つ環境や赤ちゃんの好みに左右されると説き、実際に成長が見られる時期が異なる可能性を示唆していますよ。
メンタルリープの簡単計算方法
週齢の基点は出産予定日
メンタルリープを迎える週齢は、出産予定日を基点にカウントします。なぜ出産予定日を基点にするのかというと、メンタルリープにおいて赤ちゃんの成長は妊娠期間から通じた変化ととらえられているからです(※2)。
出産予定日と出生日がずれている場合は、出生日からの週齢と出産予定日を基点にした週齢が異なります。そこでこのふたつを区別するために、メンタルリープでは出産予定日からの週齢を「ワンダーウィーク」と呼び、表記は「w週」を使用しています。
出産日のタイミングで計算方法が変わる
メンタルリープは出産予定日からの週齢(ワンダーウィーク)で5、8、12、19、26、37、46、55、64、75週までの10回となっています。この10回のワンダーウィークは本来の月齢のどの週数に該当するのでしょうか。出産予定日は40週として、その計算方法をみてみましょう。
40週から出生日までの在胎週数を引き、その数をワンダーウィークに加算すると、出生日を基点とした生後の週齢となります。
●計算方法:ワンダーウィーク+(40週-在胎週数)=出生日を基点とした週齢
たとえば出産予定日から2週間早く生まれたとしたら、ワンダーウィーク5週は生後7週に該当します。
予定日から超過した分の週数をワンダーウィークから引いて求めた数が、出生日を基点とした生後の週齢です。
●計算方法:ワンダーウィーク-(在胎週数-40週)=出生日を基点とした週齢
たとえば出産予定日から1週間遅れて生まれたとしたら、ワンダーウィーク5週は生後4週に該当します。
いつまで続く?メンタルリープの回数と時期別の特徴
1.5w週「五感のリープ」
1回目のメンタルリープは生後1ヶ月頃に迎えます。この時期の赤ちゃんは新生児のころよりも感覚が研ぎ澄まされ、においや音に関心を示すようになります。
30センチを超える距離でも焦点が合うようになり、視線に意思や表情を感じることがあるかもしれません。このころから笑顔を見せたり、涙を流したりすることも増えてきます。
2.8w週「パターンのリープ」
2回目のメンタルリープを迎えるのは、生後2ヶ月頃です。このころになると、赤ちゃんは周りの世界で起こる物事に規則性があるということを認識します。物の形や状態、基本的な仕組みを理解し始めるという意味で「様式(タイプ)のリープ」ともいいます。
その成長は、自分に手や足があることに気づいて見つめる仕草だったり、声が出ることを発見して「あー、うー」というような喃語を話したりといった具合であらわれることでしょう。
3.12w週「推移のリープ」
3回目のメンタルリープは生後3ヶ月頃の成長を指します。2回目のリープでは存在を認識する程度だったものが、物事の変化を理解できるまでに成長します。これが推移のリープです。
赤ちゃんは音の高低差や光の強弱、一方向への移動など、物事のシンプルな推移を感じ取れるようになります。首がすわりはじめ、頭を動かして動くものを追視したり、音が鳴るほうをみたりすることがあるかもしれません。
物を手で握る動作もできるようになってきます。ママに手を伸ばしたり、自分の足を口に入れたりするようになるのもこの時期からです。
4.19w週「出来事のリープ」
生後4ヶ月半頃になると、4回目のメンタルリープを迎えます。このころからメンタルリープのスピードは少しずつ緩やかになります。
この時期は推移を認識できる段階から一歩進み、物事を一連の流れで理解しひとつの出来事としてとらえられるようになります。手でつかんだものを動かしたり、リズム遊びを楽しんだりする様子が見られるかもしれません。
5.26w週「関係のリープ」
生後6ヶ月頃に迎える5回目のメンタルリープでは、物と物との関係性について理解するようになります。自分と外の世界は分離された存在で、そのあいだには物理的な距離があることを知るのです。このメンタルリープは23w週から26w週にかけて続きます。
ママとの距離にも敏感になり、ママの近くにいないと不安になり泣き始めます。「いないいないばあ」の遊びに大きく反応する赤ちゃんや、人見知りがひどくなる赤ちゃんもいることでしょう。
外の世界への興味が広がり、寝返りが上手になったり支えられてひとりで座れるようになったりといった成長が見られますよ。
6.37w週「分類のリープ」
6回目のメンタルリープを迎えるのは、生後8ヶ月頃の34w週から37w週にかけてです。物事への理解が深まった赤ちゃんは、形、色、感触、におい、味、音といった項目で、共通の特徴を持つものがあることに気づきます。これが分類のリープの入り口です。
赤ちゃんは物の類似点と相違点を判別できるようになり、食べ物や動物といった大きなくくりで物事を区別しはじめます。赤ちゃんがティッシュ遊びをしたり物を散らかしたりするのは、こうした区別を学習しているのです。
この時期は大きなカテゴリーの区別はつくものの、たとえば犬や猫といった分類ができるようになるにはまだ時間がかかります。それまでは積み木遊びや絵本の読み聞かせなどを通じて物の特徴に触れ、カテゴリーに仕分ける体験を繰り返していきたいですね。
7.46w週「順序のリープ」
生後11ヶ月頃に迎えるのは、7回目のメンタルリープです。このころになると過去のメンタルリープで学習した出来事や関係の概念を結びつけ、特定の順序で物を組み合わせられるようになります。
積み木が崩れないように安定した場所や形を選ぶ様子が見られたら、順序のリープに入ったといえるでしょう。スプーンを握りご飯をすくって口に入れるという動作も、目的と順序を結び付けられているサインです。
ただし、順番を理解しても赤ちゃんは毎回同じようにできるとは限りません。1回できたとしても次には忘れていることもあるのです。赤ちゃんのペースに合わせ、同じ動作を繰り返しながら少しずつ慣れていくことが大切です。
8.55w週「工程のリープ」
生後1歳1ヶ月ころに迎えるのが、8回目のメンタルリープです。1歳を過ぎた赤ちゃんは、意思がはっきりしてきますね。ハイハイやあんよで自分の世界を広げていることでしょう。
赤ちゃんはさまざまな世界に触れる中で、今まで自分が習得してきた方法とは別のやり方を探求し始めます。これが、工程のリープです。食べたいおやつをママのところに持ってきたり、自分なりの方法でおもちゃ遊びをしたりする様子が見られます。
椅子に座ってご飯を食べるという流れができていた食事も、床に落としたり椅子から立ち上がったりと、自分の工程を取り入れることが増えてくるかもしれません。自分の思い通りにならず、かんしゃくを起こすこともありますよ。
9.64w週「原則の世界への入口」
生後1歳3ヶ月頃になると、9回目のメンタルリープを迎えます。これまでのリープで学んできたことが開花し、順序のリープが進化する時期です。
順序を理解した赤ちゃんは、次にその工程を崩すことを覚えます。ママたちからすると、それは悪ふざけをしているように見えるかもしれません。
人との関係にも変化が見られ、一緒に作業ができるようになります。その反面、自分でやりたい、決めたいという欲求が強くなります。こうした関わりの中で駆け引きや交渉を覚え、人としての原則的なルールを学んでいくのです。
10.75w週「体系の世界への入り口」
10回目のメンタルリープを迎えるのは生後1歳6ヶ月近くです。9回目のリープで人としての原則にふれた赤ちゃんは、最後のリープで自分の原則、つまり価値観が通用しない状況があることに気づきます。そして周りの環境に合わせて態度を柔軟に変えるようになるのです。
このとき、赤ちゃんは自分の価値観と社会の原則を体系的にとらえ、善悪を判断する力が育ち始めていますよ。
赤ちゃんのメンタルリープの対処法は?
赤ちゃんとスキンシップをとる
メンタルリープを迎える赤ちゃんは、自分の身体の中に起こる変化に戸惑いや不安を感じています。そのため、早ければメンタルリープを迎える数週間前からぐずりが強くなることがあります。
このような時期は、スキンシップを多めにすると赤ちゃんの不安がやわらぐでしょう。抱っこはもちろん、週齢・月齢に応じたベビーマッサージやリズム遊びなどがおすすめです。
生活習慣を整える
メンタルリープを迎えると、それまでできていたことが一時的にできなくなり生活リズムが乱れることがあります。ご飯を食べなくなった、寝なくなった、ずっと泣いているなどがその例です。
こうした時期は成長の過程で必ず訪れるもので、赤ちゃんはこの過程を通して生きるために必要なルールを感じ取っています。
元に戻そうとしても戻るものではなく、赤ちゃんに合わせてその都度生活習慣を見直していく必要があります。食べなくなったら時間で片付ける、寝なくても夜は部屋の電気を消すなど、生活のリズムが乱れないように工夫してみましょう。
赤ちゃんの行動をサポートする
泣き続ける、かんしゃくを起こすなど赤ちゃんの困ったと思うような行動も、成長に差し掛かったサインなのかもしれません。危険や病気の可能性がなければ、無理に泣き止ませようとせずに赤ちゃんの行動を見守ることも大切です。
とはいえ、ぐずり期の赤ちゃんにずっと付き合うのは気が滅入りますね。ママやパパがひとりで抱え込まないように、自治体のサポートを利用するなどして息抜きする時間を作りましょう。
赤ちゃんのメンタルリープはひとつの目安に
赤ちゃんが泣き止まない、寝ないという悩みも、それが成長のサインなのだと思うと少しだけ心が軽くなるのではないでしょうか。このように、赤ちゃんの泣きや発達については各所で研究が行われ、ママやパパの悩みを解決する糸口を探っています。
たとえば厚生労働省が赤ちゃんの泣きへの対処と理解のために行っている啓発では、ロナルド G.バーの研究をもとに、 赤ちゃんには生後1~2ヶ月ころに泣きのピークがあるとしています(※3)。ほかにも黄昏泣きや睡眠退行など、ぐずり期についての見解がいくつも示されていますよ。
メンタルリープもこのような研究の中で生まれたひとつの目安です。ぐずり期は成長のプロセスだと前向きにとらえ、ママやパパはおおらかに接していきたいですね。それでも子育てにおいて心配は尽きません。もしも赤ちゃんの様子で気になることがあれば、医師や自治体に相談してみると良いでしょう。
※この記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。