【産婦人科医監修】帝王切開後の二人目妊娠はいつから?経腟分娩、帝王切開のリスクとは
一度帝王切開で出産された方は、次の妊娠のタイミングや出産方法など気になりますよね。帝王切開で出産すると次の出産でも帝王切開になる場合が多いようです。ここでは、経腟分娩と帝王切開のリスクの違いや二人目の妊娠について解説します。
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目次
帝王切開とは
帝王切開には二種類ある
帝王切開は母子のどちらかになんらかの問題があると診断された際に選択できる出産方法で、「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」のふたつにわけられます。
予定帝王切開は事前に検査などで自然分娩(経腟分娩)に適さないと判明した段階で、帝王切開を選択すること。一方、緊急帝王切開は自然分娩を予定していたもののなんらか理由で赤ちゃんやママに危険が伴うと判断された際に急きょ選択されるものです。
帝王切開となる理由
1.予定帝王切開の場合
逆子や双子(あるいは三つ子以上)、胎盤が子宮の出口をふさいでいる前置胎盤、 ママが以前に帝王切開やそれ以外の子宮の手術(たとえば子宮筋腫を取る手術など)を受けたことがある、などがあげられます。しかし帝王切開を選択せずに経腟分娩での出産を選択することも場合によっては可能です。
2.緊急帝王切開の場合
妊娠中や分娩進行中に赤ちゃんの元気がなくなってきたときなどに選択されます。また、予定帝王切開であったとしても陣痛が早くきてしまった場合などには緊急帝王切開となります。
5人に1人が帝王切開で出産
帝王切開は、今では出産全体の約2割の人が該当するといわれており、5人に1人は帝王切開の出産となっています。医療技術の進歩により、母子ともに安全に出産を終えられるメリットがあります。
出産は、実際に生まれてくるまでに何が起こるかわからないため誰でも帝王切開となる可能性があります。そのため、帝王切開について詳しく知っておくと万が一の場合にも安心ですね。
帝王切開後、二人目の妊娠・出産
1年は妊娠を控える
帝王切開の場合はお腹と子宮を切開して傷ができ、子宮の壁が薄くなっているので妊娠・出産時に子宮破裂を起こすリスクが高まります。次の妊娠に耐えられるようになるまで子宮が回復するのを待つために、お医者さんからは「最低1年は次の妊娠を控えるように」といわれることが多いようです。
切迫早産に注意する
子宮の壁が薄くなっているので、張りがあることで子宮が耐えられなくなることがあります。しかも上の子の子育てをしながらの妊娠だとなかなか安静にできないためお腹が張りやすいと感じることも多くあります。
張りを感じたらなるべく横になるようにし、それでも張りが続くときは病院を受診しましょう。また、帝王切開後の切迫早産は通常より早めに入院措置を取る場合も多いといわれています。
次も帝王切開をすすめられることが多い
一般的に、ひとりめが帝王切開だった場合はリスクを考慮し、次も帝王切開での出産をすすめられることが多いようです。しかし「ひとりめが帝王切開だと次回も必ず帝王切開になる」というわけではありません。次の分娩方法については前回の帝王切開の経緯や術後の経過を元に決められます。
自然分娩ができる場合もある
一人目の出産が帝王切開で二人目の出産では経腟分娩(TOLAC)を希望する場合、医師に相談すれば可能なケースもありますが、どこの病院でもできるわけではないため万が一のときのリスクに対応できる病院で出産することになります。
これはママがTOLACの安全性に関する基準を満たしており、本人の希望がある場合に対応してもらえるようです。
帝王切開後の経腟分娩(TOLAC)
経腟分娩ができる条件
帝王切開術のあとの経腟分娩(TOLAC)の成功率は、60〜80%だといわれています。TOLACを試すことができる条件の例として、以下があげられます。
1.妊娠41週を過ぎていないこと。
2.胎児に異常がなく単胎(双子や三つ子でない)であること。
3.前回の帝王切開が子宮の下部での横切開であること。
4.前回帝王切開が行われた理由(適応)が今回はないこと。
5.前回の帝王切開後の経過が順調だったこと。
経腟分娩ができないケース
TOLACに適さない例として以下があげられます。
1.前回の帝王切開が母体の原因(合併症など)で行われた場合。
2.骨盤が狭くてお産ができず帝王切開した場合。
3.子宮口などが硬くてお産ができず帝王切開した場合。
4.高齢出産で帝王切開をした場合。
5.妊娠高血圧症行群(妊娠中毒症)で帝王切開をした場合。
6.子宮筋腫や子宮の異常で帝王切開をした場合。
7.帝王切開術後からの期間が短い場合。
8.2回以上帝王切開をしている場合。
9.帝王切開術後に子宮などに感染し、発熱したことがある場合。
など。
経腟分娩のメリット
自然分娩のメリットとしては産後の回復が早いことがあげられます。個人差はありますが、産院を退院するころには随分と体力が戻っている方が多くいます。
また、自然分娩は基本的に麻酔を使わずに陣痛に耐え抜いて出産をします。さまざまな出産方法の中で赤ちゃんを産んだという実感が一番強いと思う方が多いようです。
経腟分娩のリスク
一番心配なのが子宮破裂。これは分娩経過中に急に発症することがあり、特に症状が現れないためすぐに気づかないことがあります。子宮破裂となったら開腹手術となり、母体の子宮出血の止血困難などのために子宮摘出を余儀なくされる場合もあります。
また、出血多量になった場合、母体は重症となり最悪の場合死亡するケースもあります。胎児も臍帯(さいたい)が圧迫を受けるなどにより低酸素状態に陥り、こちらも命の危険にさらされることがあります。
二人目も帝王切開するときのリスク
前置胎盤・癒着胎盤
無傷子宮での前置胎盤の場合、胎盤が子宮に癒着を起こし大量出血などのリスクとなる癒着胎盤のリスクは1~5%です。しかし、既往帝王切開回数が1回・2回・3回・4回以上だと癒着胎盤のリスクは14%・23%・35%・50%と回数が増えるごとに増加します。
前置胎盤における癒着胎盤の最も恐ろしいところは正確な術前診断が困難なことにあります。嵌入胎盤の一部や穿通胎盤はMRIなどで術前に診断されることもあります。しかし、帝王切開になるほとんどの妊婦はMRI検査を受けずに出産となるため、大部分の癒着胎盤・嵌入胎盤は、帝王切開をし、胎盤を剥がしてみて初めてわかることがほとんどとなります。
術中のアナフィラキシーショック
前回の帝王切開時や妊娠中の内診では問題のなかったラテックス手袋によるアナフィラキシーショックが帝王切開中に発症することがあります。児娩出後に子宮が急激に収縮を始めると、ラテックス粒子が大量に子宮から血中に流入しアナフィラキシー反応が誘発されると考えられています。
また、医療従事者・ゴム製造業者・二分脊椎や泌尿生殖器奇形を有する患者、手術歴の多い患者、そしては反復帝王切開の妊産婦は手術がラテックスに対するアレルギーのきっかけとなることが多いためハイリスクだとされています。とくに反復帝王切開の方に発症することが多く、310人に1人起こるといわれています。
回数が増えるとリスクも高くなる
帝王切開は開腹することになるため癒着などのリスクはありますが、帝王切開が可能な回数はとくには決まってはいないようです。その理由は人によって症例が異なるため一律には決めにくいからです。帝王切開を4回してもとくに癒着などの問題が起きない人もいます。
しかし、回数が増えるごとにリスクが高まるのは事実のため注意は必要です。
二人目の帝王切開後は後陣痛が強い?
手術で開腹するので痛みはあります。後陣痛という子宮の収縮にともなう痛みに加え、手術のときの傷の痛みがあるので普通の自然分娩よりは痛みが強いそうです。そのため痛み止めの薬が処方されることが多くあります。
不安なことは事前に解消しておくことが大切
帝王切開後の二人目の妊娠や出産にはわからないことが多いですよね。妊娠時期や注意すべきこと、お産の方法や手術の流れなど、気になることがあれば医師や助産師に確認してみましょう。帝王切開は二人目以降のほうがひとりめよりリスクも高くなります。そのためわからないことは不安な気持ちは夫や家族と共有し、心配ごとを解消しておくことがとても大切です。
※この記事は2024年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。