帝王切開手術前日の入院から当日の手術の流れ・術後の痛み|産婦人科医監修

産婦人科医監修|双子や逆子、前置胎盤、お産がなかなか進まない場合などに「帝王切開手術」が行われることがあります。帝王切開手術前日からの入院や検査、当日の麻酔や切開・縫合といった手術の流れ、翌日以降の痛みや傷跡ケアについて実体験を交えながら解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 緊急で実施されることも!知っておきたい「帝王切開」
  2. 双子や逆子、帝王切開になるのはどんなとき?
  3. 帝王切開での前日入院、何をする?当日入院の場合は?
  4. 帝王切開手術前に行われる検査
  5. 帝王切開手術、当日の手術準備・麻酔の流れ
  6. 帝王切開手術、当日の切開から縫合の流れ、術後の過ごし方
  7. 帝王切開で用いられる麻酔の種類や違い、影響は?
  8. 帝王切開後には頭痛や足のしびれ、傷の痛みがある?
  9. 「帝王切開」は母子の安全を守るための手段
  10. あわせて読みたい

緊急で実施されることも!知っておきたい「帝王切開」

出産方法は大きくわけて「自然分娩(普通分娩・経腟分娩)と「帝王切開」の2種類あります。自然分娩は、自然の流れに任せて、産道を通って腟から赤ちゃんが産まれることを指します。帝王切開は、手術によってお腹を開き赤ちゃんを取り出すことを指します。妊娠すると多くの人が自然分娩での出産をイメージするかもしれませんが、双子以上の妊娠や逆子などが原因で自然分娩は難しいと判断された場合には帝王切開手術が実施されます。

帝王切開にはあらかじめ日時を決めて実施する「予定帝王切開」と、状況によってその場で判断され実施される「緊急帝王切開」があります。予定帝王切開であれば事前に余裕を持ったスケジュールでいつごろ・どんなことを行うのかといった説明を受けますが、緊急帝王切開の場合は状況次第で判断されるもののため、あまりにも突然のことでショックを受けてしまう人もいるようです。自然分娩予定の妊婦も帝王切開の流れについて少しでも理解しておけば、突然の事態にわずかながらでも余裕をもって臨めるかもしれませんね。

双子や逆子、帝王切開になるのはどんなとき?

帝王切開は、自然分娩が難しいと判断された場合に実施されるケースが多いようです。具体的には前置胎盤、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離、双子以上の妊娠、逆子、帝王切開で出産したことがある人の二人目以降の出産、お産が進まない・止まったなどの原因によって帝王切開は判断されます。ただし、双子や逆子、帝王切開で出産がある人に関しては、状況・病院によっては自然分娩での出産が可能な場合もあるようです。

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帝王切開での前日入院、何をする?当日入院の場合は?

帝王切開手術を予定している場合には、手術前日より入院になることがあります。手術前日には行動の制限はないケースが多いようですが、病院によっては絶飲食などの食事制限が始まる場合もあるそうです。

前日には手術の手順や手術に用いる麻酔についての説明、除毛や下剤の内服、赤ちゃんの心拍のチェックなどわりと忙しいスケジュールが組まれているでしょう。一方で、病院によっては手術後からの入院や、緊急帝王切開での当日入院や自然分娩中での実施といった場合もあるようですね。

帝王切開手術前に行われる検査

帝王切開の場合いつでも手術が行えるように事前に検査を行います。検査の内容としては血算・血液生化学といった血液による各種検査や血圧・心電図の確認、必要であれば胸部X線撮影や輸血に備えたクロスマッチ用採血が実施されます。

手術前日に検査が行われることもありますが、双子以上の妊娠などの場合には、緊急帝王切開に備えて余裕を持ったスケジュールで検査が実施されることが一般的なようです。

帝王切開手術、当日の手術準備・麻酔の流れ

立ち会いの可否は病院によって異なりますが、立ち会いできるケースは多くはないかもしれません。夫やパートナー・家族は、手術中は別室で待つことになるでしょう。帝王切開手術自体は一般的に1時間程度で終わることが多いですが、処置内容によって時間は前後します。

手術室に移動、手術の準備

あらかじめ日時が定められた予定帝王切開の場合には、歩いて手術室に向かいます。感染予防のための点滴や切開術後は安静にしなければならないため尿道口にチューブをいれる尿道カテーテルが準備されます。

麻酔

手術の準備ができたら麻酔を導入します。帝王切開で用いられる麻酔には「腰椎麻酔(下半身麻酔)」と「全身麻酔」があり、緊急事態でなければ腰椎麻酔が行われることが多いようです。麻酔の種類により異なりますが、背中や腰に注射をするものや、点滴やマスクによって肺に吸い込む形で麻酔の導入を行います。

筆者の場合は腰椎麻酔といわれる下半身の感覚がなくなる麻酔をしました。自分のおへそを見るように、頭をいれてクルッとまるまった姿勢をとって麻酔をしてもらいました。感覚としては、5分くらいで完全に効いてきたように思います。

帝王切開手術、当日の切開から縫合の流れ、術後の過ごし方

切開

麻酔の導入が完了したら、お腹を切開します。切開は縦に切る方法と横に切る方法があり、現在では横に切る方法が主流です。緊急の場合などには縦に切る場合もあります。縦切開・横切開ともにそれぞれ約12~14センチ程度の傷になります。縦切開の場合には手術操作が容易であり、横切開の場合には下着に傷が沿う形になり皮膚割線に一致しているため傷跡が目立ちにくいといわれています。麻酔の効きや切開に問題がなければ、赤ちゃんをお腹から取り出します。

筆者は横切りだったのですが、麻酔のおかげで「なんとなく触れられているような感覚」はあったものの痛みはゼロでした。お腹を切り始めてから5分程度で赤ちゃんが産まれました。お腹の中がぐにょぐにょと触られているような感じがあり、「もうつかみましたよ」と先生が言った直後には産声が聞こえてきました。

縫合

無事に赤ちゃんを取り出したら最後に傷の縫合を行います。切開したお腹の傷の縫合は手術用の糸や医療用ステープラー(ホチキス)、テープ、接着剤などで行われます。縫合方法は切り方やアレルギーの有無などによって決まります。

筆者は金属アレルギーのため、溶ける糸での縫合でした。胎盤を取り出す作業に入るころには、鼻から息を吸って全身麻酔をかけられたので、気が付いたら入院室にいた、という感じでした。

術後の過ごし方

赤ちゃん誕生後にはカンガルーケアと呼ばれる生まれたばかりの赤ちゃんとママが触れあうことができる機会、夫やパートナー・家族と赤ちゃんが面会できる機会を帝王切開でも設けている病院もあるようです。多くの場合では手術当日はそのままベッドで1日安静になります。感染症予防、水分補給のために点滴を続け、水分の摂取はOKになることもありますが、術後当日は絶食が続くケースが多いようです。シャワーは傷の経過次第で、術後3・4日程度経過してから浴びることができます。

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帝王切開で用いられる麻酔の種類や違い、影響は?

帝王切開で用いられる麻酔の種類は大きく分けて腰椎麻酔(下半身麻酔)と全身麻酔の2種類あります。どちらを用いるかは状況によって異なります。一般的には帝王切開では腰椎麻酔が用いられることが多く、全身麻酔は緊急時などに用いられることが多いようです。麻酔の種類によって麻酔の導入方法も異なります。

全身麻酔

全身麻酔は点滴やマスクで肺に直接吸い込む形などで行います。すぐに麻酔の効果が現れて意識がなくなるため、ママはマスクをつけて呼吸の補助を行います。全身麻酔は、麻酔が胎盤を通じて赤ちゃんにも効果をもたらすため、生まれたばかりの赤ちゃんが眠そうにしていたり呼吸が弱くなっていたりすることもあります。

腰椎麻酔(下半身麻酔)

腰椎麻酔は背中や腰の脊髄あたりに注射をして麻酔薬を注入します。麻酔の効果が現れるのは比較的短いといわれていますが、一部の神経のみに影響を与える麻酔のため手術中も意識はあります。腰椎麻酔は全身麻酔に比べて麻酔による母子への影響が少ないといわれているため、一般的には帝王切開では腰椎麻酔が用いられています。

帝王切開後には頭痛や足のしびれ、傷の痛みがある?

帝王切開後には頭痛・吐き気・足のしびれ・腹痛といった症状が現れる場合があります。頭痛や足のしびれといったものは、手術前にも説明されているはずですが帝王切開に用いる麻酔の副作用の可能性があります。麻酔の副作用の場合には麻酔の効果が切れるとともに症状は緩和するでしょう。

副作用とは別に術後の傷跡の痛み・かゆみといったものもあるかもしれません。術後の傷の痛みに関しては必要に応じて痛み止めが処方されるため、気になるようであれば医師に相談しましょう。傷口自体は術後3日程度で傷がふさがりますが、炎症自体は皮膚の下で続いています。傷口が塞がったように見える後も、退院後を含めて引き続き傷跡のケアが必要です。傷跡のケア次第で目立たない傷跡になるかどうかが変わるため、ケロイドなどにならないよう適切なケアを心がけましょう。

事前に帝王切開手術が予定されている場合には、退院後に使用したい傷跡ケアグッズなどの相談をしておくのも良いかもしれません。

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「帝王切開」は母子の安全を守るための手段

帝王切開は比較的安全な手術のうちのひとつともいわれており、医療の発展からトラブルも昔と比べると少なくなってきてはいるようです。ただし手術であることには変わりないため、手術による傷への不安などを抱える人もいるでしょう。緊急帝王切開の場合には、突然母親になるということへの焦り・戸惑いといったものもあるかもしれません。緊急帝王切開も予定帝王切開も、赤ちゃんとママの安全を守るための手段です。なかには自然分娩との違いを配慮なくいう人もいるかもしれませんが、 出産方法ではなく、長い妊娠期間を経て無事に赤ちゃんが生まれることこそが重要でしょう。

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