【産婦人科医監修】妊婦はシートベルト免除?関連する法律や急ブレーキでの影響は?
妊娠中も車を運転する・乗車する機会がある妊婦は珍しくありません。妊婦は法律でシートベルトの着用が免除されるという話を聞いたことがあるでしょうか。妊婦とシートベルト着用に関する法律の詳細や正しいシートベルト着用方法、急ブレーキなどで腹部に圧力がかかった際の対処法などを紹介します。
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目次
妊婦は車の運転をしてもOK?
妊娠後も住環境や仕事など関係で車の運転をしなければならない妊婦は少なくないでしょう。しかしながら自動車運転が妊婦の心・身体におよぼす影響についての研究例は現状あまりないようです。妊娠中の自動車運転では「自動車事故」「シートベルトによるお腹への圧迫」「運転中の体調の急変」といったものが心配な方もいるのではないでしょうか。
妊娠中の自動車の運転は、他の日常生活と同様に基本的には問題はないとされています。一方で、自動車だけではありませんが妊婦の移動に伴う事故、体調が急変した場合の対処法、妊娠による身体の変化で起こる諸症状が運転におよぼす影響といったものはあらかじめ理解を深めておく必要はあるでしょう。
お腹が大きくなるにつれてブレーキが踏みにくくなった、つわりや貧血による運転中への不安があるというような疑問点・不明点があれば、自動車運転の可否に関しても病院の受診時に医師に相談しておくと良いかもしれません。
妊婦はシートベルト免除?警察には捕まらないの?
妊娠中のシートベルトについては、道路交通法(道交法)施行令第26条の3の2「座席ベルト及び幼児用補助装置に係る義務の免除」に記載があり、妊婦のシートベルトが免除されるのは「負傷若しくは障害のため又は妊娠中であることにより座席ベルトを装着することが療養上又は健康保持上適当でない者が自動車を運転するとき」と定めています。(※)
道路交通法における妊娠中のシートベルト着用の定義はさまざまな見解が示されています、「妊婦はシートベルトの着用が免除される」と理解をしている人もいれば、「療養上または健康保持上、シートベルトの着用が適当でないと判断された妊婦のみシートベルトの着用が免除される」という認識の人もいます。
一方で現在は運転席・助手席のみならず、すべての席でシートベルトの着用が義務付けられていることもあり、原則、妊婦も特別な理由がない限りはシートベルトを着用すべきだという風潮が強いでしょう。
妊婦がシートベルトを着用しなかった場合、警察に道交法違反で捕まるのかといったことを気にする方もいるかもしれませんが、妊婦のシートベルト着用についてはそのときの状況から判断されます。残念ながら、なかには妊婦のシートベルト着用の定義を悪用し、妊婦だと嘘をつく人がいるようです。
妊娠による身体的な変化のためにシートベルト着用を見送る場合には、事前に産婦人科医に相談をし、了承を得る・指示を受けることで警察に問われた場合にもスムーズに対処できるようにしておきましょう。
妊娠中のシートベルトはお腹を圧迫する?
妊娠による身体・心の変化により、今までは普通だと感じていたものに違和感を覚えることがあります。車の運転についても、座席が狭く感じる・車の乗り降りを面倒に感じる・ブレーキやアクセルが踏みにくいなど人によってはさまざまな印象を受けることがあるようです。
シートベルトによるお腹の圧迫を感じる妊婦は約4割おり、そのうち約1割はシートベルトが身体にうまくフィットしていないように感じているという調査例があります。
警察庁に記載されている妊婦の正しいシートベルトの付け方を説明した図解では、シートベルトが妊婦のお腹を圧迫しないような着用法が示されています。シートベルトによるお腹の圧迫を感じている、シートベルトが身体にうまくフィットしていないと感じている妊婦は、妊娠中のシートベルトの着用方法が正しくない可能性があるのかもしれません。
出産直前にタクシーで病院に向かう人も少なくないため、妊娠中の正しいシートベルトの着用方法を理解しておくことは重要ではないでしょうか。
妊婦の正しいシートベルトの着用方法
腰ベルト・肩ベルトともに着用する、肩ベルトは首にかからないようにする
腰ベルト・肩ベルトともに着用し、肩ベルトは首にかからないようにすることは、一般的な正しいシートベルトの着用方法と共通しています。
乗用車の後部座席中央にあるような腰のみを固定するタイプのベルトもありますが、妊婦は肩・腰ともに固定することが望ましいといえるでしょう。また、肩ベルトが首にかかっていると、妊娠中でなくても急ブレーキ時に首がしめられる可能性があるため注意が必要です。
肩ベルトは胸のあいだを通し、お腹の側面に通す
ここで注目すべきは、胸のあいだにベルトを沿わせることがポイントである点です。人によっては胸のあいだではなく胸の上部もしくは下部に通しているケースがあります。
胸の大きな女性は胸のあいだにベルトを通すことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、安全上の理由から正しいベルトの通し方を優先しましょう。妊婦特有の着用方法のポイントといっても良いかもしれません。
腰ベルトはお腹のふくらみを避けて腰骨のできるだけ低い位置を通す
妊婦特有の着用ポイントといってもいいかもしれません。腰ベルトを妊婦の大きなお腹のふくらみにあわせて固定すると、圧迫を感じます。腰骨の低い位置で留めれば安全上も問題はないようですので、無理に腰ベルトでお腹をしめつけるような固定の方法はしないようにしましょう。
急ブレーキの際にお腹が圧迫された!妊婦の事故とシートベルト
妊娠中の外傷の頻度はさほど高くはありませんが、外傷の大半は交通事故によるものであるという調査例があります。「交通事故で死亡する妊婦のほとんどはシートベルトを装着していなかった」こと、シートベルト装着者に比べて「シートベルトを非装着者は事故で胎児が死亡する確率が約4倍になる」こと、「妊娠中の正しいシートベルト着用をしていない場合に子宮破裂などが発生する場合がある」ことなども明らかになっています。
日本産婦人科学会なども妊娠中のシートベルト着用により事故時の母体・胎児への障害が軽減される旨の見解を示しています。車の前方席に座る場合、シートベルトを着用していないと大きくなったお腹をハンドルやダッシュボードにぶつける可能性があります。妊婦のお腹が事故などで大きな力・衝撃などを受けないためにも、シートベルト着用は推奨すべきだといえるでしょう。
一方で、シートベルト着用により、急ブレーキなどの際にお腹を圧迫してしまうのではないかという不安を抱える人もいます。妊娠中にシートベルトを着用していないために引き起こされる結果の重大性を考えれば、正しいシートベルト着用法を実践することで妊娠中の急ブレーキに対する不安を解消できるかもしれません。
万が一、妊娠中に急ブレーキなどでお腹の圧迫を感じて苦しいと思ったのであれば、万が一のことを考えて医師に連絡し、必要であれば受診をしましょう。
お腹の圧迫を緩和できる?ストッパーなどの対策グッズ
妊娠中のシートベルト着用によるお腹の圧迫を気にする妊婦は少なくありません。基本的には警察庁のホームページなどに掲載されている「妊娠中の正しいシートベルト着用方法」を参考に着用することで、この問題は解決できるかもしれません。
しかし、正しい着用方法を用いても圧迫が気になる場合には市販の対策グッズを活用するという方法があります。シートベルトの締め付けや圧迫を軽減する「ストッパー」や妊婦の着用に特化した「マタニティシートベルト」などさまざまなグッズを検討してみても良いかもしれません。
ただし、シートベルトは事故の際に身体を守る大切な役目があることを忘れてはいけません。市販品を利用する場合には対象商品の安全基準や取扱説明書の確認は必ず行うようにしましょう。
妊娠中のシートベルト着用に不安があれば医師に相談を
道交法の妊娠中の記載については意見が割れることもありますが、日本以外の主要国では妊婦のシートベルト着用を義務付けている国が多いようです。日本産婦人科学会の見解からも妊娠中のシートベルトの必要性がわかるかもしれません。基本的には、妊娠中の正しいシートベルト着用方法でシートベルトを装着することを心がけてみてはいかがでしょうか。
なお、双子を妊娠している場合や病気がある場合などに、無理にシートベルトを装着する必要はありません。シートベルト装着が難しいと感じる場合には医師に相談し、適切な指示を受けるようにしましょう。
※この記事は2024年1月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。