【産婦人科医監修】妊婦の風疹の症状は?赤ちゃんへの影響や風疹検査について
妊娠中に風疹にかかると、胎児にさまざまな悪影響がでるケースがあるといわれています。風疹は幼児の患者が多いイメージですが、近年では成人男性の感染者が大きな割合を占めているというデータが出ています。ここでは、妊婦さんが風疹にかかった場合の症状や、赤ちゃんへの影響、風疹の検査や予防策について産婦人科医監修で解説します。
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目次
風疹とは?妊婦の風疹の症状
風疹は、風疹ウイルスに感染することで発症する感染症です。風疹ウイルスに感染後、14~21日の潜伏期ののち発熱とともに全身に淡い発疹が現れます。通常3日程度で消失し、麻疹(はしか)のように発疹のあとが長く残ることはありません。一般に「三日ばしか」とも呼ばれています。
症状 | 詳細 |
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発疹 | 米粒からエンドウ豆ほどの大きさの淡いピンク色をした発疹が、顔や耳の後ろにあらわれる。発疹は1~2日で全身に広がり、3日程度で自然に消えるが、発疹が消えるころにかゆみが出る。 |
発熱 | 38℃前後の急な発熱が出る。高熱が続くことは少なく、微熱程度で終わることも多くある。 |
リンパ節の腫れ | 耳の後ろや首のリンパ節が小指の頭ぐらいに腫れ、押すと軽く痛む。軽い咳、のどの赤みや痛みが起こる。 |
関節痛 | 一過性の関節痛は成人した大人のみ見られる。頭痛や腰痛をともなうことがある。 |
妊婦に限らず大人が風疹にかかると、高熱が出たり発疹が長引いたりするなど重症化することがあるので、注意が必要です。
風疹の流行とかかりやすい年齢!感染経路は?
その年によって流行時期が異なる
風疹はその年によって流行時期が異なります。かつては日本で5年ごとの周期で風疹の大流行がありましたが、1994年以降は大流行がみられませんでした。しかし、2018年・2019年の年間の報告数は、例年の報告数を大きく上回ったため、「風しんに関する特定感染症予防指針」を改正し、風疹の排除を目指しています。
2023年第44週(10月30日~11月5日)の風疹報告数は 0 人、第1~44週の風疹累積患者報告数は11人です。2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降は、風疹よりもコロナウイルス感染のほうが注意されています。風疹の患者数は例年に比べて少なくなっており、新型コロナウイルス感染症拡大防止の影響を受けているとも取れます。
成人男性の感染が多い
国立感染症研究所 感染症疫学センターによると、報告患者の88%が成人で、そのうち、男性が女性の 3.2 倍多いといった過去データもあります。男性患者の年齢で多いのは41歳で、特に40代の男性に多く見られるというデータもあります。
感染者の全体を見ても、予防接種歴がないまたは不明とされる方が83%を占めています。
風疹の感染経路
風疹ウイルスの感染経路で特に多いのは飛沫感染です。感染している人の咳やくしゃみなどによって放出された「飛沫(細かい水滴)」に含まれるウイルスを鼻や口から吸い込むことでうつることが多いでしょう。
妊婦が風疹に気をつけたい週数と赤ちゃんへの影響は?
特に妊娠20週前後までは注意が必要
妊婦さんが風疹にかかった場合、母体が重篤な症状になるわけではありません。妊娠20週前後までにかかると、胎盤を通してお腹の赤ちゃんが風疹ウイルスに感染して胎児が先天性風疹症候群になるケースがあります。
特に妊娠週数が低いほど胎児に影響をおよぼす可能性があるとされ、発症リスクは娠1 ヶ月で50%以上、2ヶ月で35%、3ヶ月で18%、4ヶ月で8%程度とされています(※1)
胎児に先天性心疾患、難聴、白内障などの症状が見られるケースがあり、赤ちゃんの健康に影響をおよぼす可能性があるといわれています。
先天性風疹症候群(CRS)の症状
先天性風疹症候群(CRS)は白内障、先天性心疾患、難聴が三大症状といわれています。あわせて、精神や身体の発達の遅れなどの障害を持つ可能性もあるでしょう。
感染の時期によって症状は異なり、特に妊娠12週までに感染すると赤ちゃんへの影響が起こりやすいと認められています。
妊娠初期に行う風疹検査(風疹抗体価検査)とは?
風疹抗体価検査とは、風疹ウイルスの抗体があるかどうかとその抗体価を調べる血液検査です。産婦人科で妊娠初期に全員が行う検査のひとつで、血液検査(HI法、EIA法)で風疹ウイルスの抗体の有無と抗体価を調べます。
抗体価・HI法 | 妊娠を希望する女性など予防する必要がある方 |
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8倍未満 | 免疫を保有していないため、風しん含有ワクチンの接種を推奨。 |
8倍・16倍 | 風しんの感染予防には不十分。確実な予防のため、風しん含有ワクチンの接種を推奨。 |
32倍以上 | 風しんの感染予防に十分な免疫を保有し、ワクチンの接種は基本的に必要ない。 |
検査結果は、HI法抗体価であらわした場合8倍未満は免疫がないとされ、妊娠を希望する方は基本的にワクチンの接種を推奨されます。8倍・16倍は免疫があっても不十分とされ、ワクチン接種するか感染を防ぐよう努める必要があるでしょう。
抗体価が32倍以上ある場合は十分な免疫があるとされ、基本的にワクチンの接種は必要ありません。
風疹の予防接種はいつ?妊娠中に打てる?
妊娠中は予防接種が受けられない
風疹ワクチンは、基本的に妊娠中に予防接種を受けることができません。妊娠を希望する方は、妊娠前に風疹の予防接種を受けるよう心がけましょう。
家族に予防接種を受けてもらう
妊娠前に接種できなかったり妊娠中に風疹の免疫が少ないことが判明したりした場合は、できる限り予防に努めるようにしてください。同居の家族に風疹の予防接種を打ってもらうことも大切です。
特に男性で風疹にかかったことがない方や風疹ワクチンを受けていない方、いずれも不明な方は、予防接種を検討すると良いでしょう。
予防接種以外の風疹の予防策
人混みを避ける
風疹は飛沫感染によりうつりやすいとされています。妊娠中、特に妊娠初期には、できるだけ感染の可能性が高い人ごみを避けるようにしましょう。
外出時はマスクをつける
妊娠中はできるだけマスクを着用し、外部からウイルスを持ち込まないようにしましょう。外出時はマスクをして感染予防に努めると安心です。
手洗いうがいを徹底する
ウイルスに感染しないためにも、手洗いうがいは必須です。日ごろから徹底することで、風疹以外のウイルスの感染も予防することができますよ。パパなど同居の家族にも、帰宅後は手洗いうがいをしてもらうようにしましょう。
風疹患者のいる場所を避ける
風疹にかかっている可能性のある人との接触は避けましょう。風疹にかかっても無症状の場合もあります。二人目以降の妊婦さんは上の子の保育園や幼稚園などで風疹が出た場合、送り迎えなどの際に感染しないよう気を付けたり周囲の協力を得たりするようにしましょう。
夫に予防接種を受けてもらう
パパや同居の家族が、職場などからウイルスを持ち帰るケースもあります。その年の流行状況により家族に風疹抗体価検査を受けてもらい、必要に応じて予防接種も受けてもらうようにしましょう。
妊娠中の風疹に関する体験談
妊娠中の風疹検査では8倍未満の結果でした。この検査を受けるまでは風疹が赤ちゃんに影響することもきちんと理解しておらず、妊娠をして検査をしてから改めて風疹の怖さを知りました。
妊娠中も仕事を続けていたため電車や職場でのマスク着用は徹底していました。夫にも検査と予防接種を受けてもらい、帰宅後の手洗いやうがいアルコールジェルでの消毒も協力してもらいました。
神経質になるようなことではないかもしれませんが、万が一のことを考えて自分でできることはできるだけやりました。結果、赤ちゃんも元気に産まれてくれたので良かったですが、ふたりめも希望しているので産後落ち着いてから予防接種を受けました。住んでいる区では条件を満たせば無料で接種することが可能なので助かりました。
妊娠中の風疹の正しい知識を身につけておこう
風疹の予防として、妊娠前に予防接種を受けるなどして対策をすることが大切です。妊娠してから風疹の免疫がないと判明した場合は、周りの協力を得てできるだけウイルスに感染しないよう努めましょう。
もし妊娠中に風疹になってしまったら、早めの医師への相談が必要です。正しい知識を身につけて、早急にかかりつけの産婦人科に相談するようにしましょう。
※この記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。