小規模保育や事業所内保育とは?地域型保育事業の種類やメリット・デメリットを解説
待機児童問題が深刻になっているなかで、地域のニーズにきめ細かく対応する保育施設として、0~2歳児の保育を行う小規模保育や事業所内保育、家庭的保育といった地域型保育事業が注目されています。ここでは、地域型保育の違いや、小規模保育や事業所内保育を利用するメリット・デメリットを解説します。
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目次
地域型保育事業とは?
共働き家庭の増加とともに待機児童数の増加も大きな問題となり、その打開策として待機児童解消加速化プラン、子育て安心プラン、新子育て安心プランなどさまざまな対策が打ち出されてきました。こうした取り組みもあって、2017年から待機児童数は減少に転じています。
しかし、都市部では待機児童問題が解消されない自治体があったり、待機児童が解消された地域で再び増加に転ずるケースがあったりするなど、保育の受け皿整備が引き続き求められています。また、子どもが少なくなっている地域では幼稚園や保育園が統廃合され、地域の教育・保育施設がどんどん減っているという問題があり、地域の実情に即した子育て支援が不可欠です。
このような背景の中、重要性を増しているのが地域型保育事業です。地域型保育事業は、「家庭的保育事業(保育ママ)」「小規模保育事業」「事業所内保育事業」「居宅訪問型保育事業」の4つの類型を設け、多様な施設や事業の中からニーズに合わせた選択ができる仕組みです。保育所よりも少人数の定員で、原則として0歳から2歳までの子どもを受け入れています。
待機児童は3歳未満児が全体のほとんどを占め、そのうち1・2歳児の割合が特に大きくなっています。地域型保育事業の進展により、それぞれの地域の多様な保育ニーズへきめ細かく対応し、待機児童を解消することが期待されます。
地域型保育事業の4類型
家庭的保育事業(保育ママ)
家庭的保育事業は、家庭的保育者の自宅や専用スペースで子どもを預かるという制度で、「保育ママ」とも呼ばれます。定員は1~5名で、非常に家庭的な保育を受けることができます。
子ども・子育て支援新制度での家庭的保育事業は、認可保育園や認定こども園と同様の認可保育施設です。しかし、保育ママ自体は、以前から各自治体で運用されていました。自治体によっては、保育ママを子ども・子育て支援新制度のもとで運用せずに、独自の制度で運用している場合もあります。
小規模保育事業
小規模保育とは、定員が6~19人の少人数で、保育を行う小規模な認可施設のことで、「小規模認可保育所」と呼ばれることもあります。定員が少ないため、家庭的保育に近いアットホームな雰囲気のもと子どもの発達に応じた質の高い保育ができると期待できます。
3歳児以降は子どもの人数の多い集団の生活の中で育つことが発達段階として重要とされていることから、対象年齢は原則として0~2歳の3歳児未満児としています。
この対象年齢についてはニーズに応じて自治体が柔軟に判断できるよう2023年(令和5年)に見直しが図られ、近くに教育・保育施設がない場合やきょうだいが別々の施設に通園せざるを得ない場合、集団生活を行うことが困難である場合などは、3~5歳の子どもも受け入れが可能となりました(※1)。
小規模保育は、たとえばマンションの一室や空き家となった一戸建て住宅などを利用することも可能なため、認可保育園にくらべて新規園が作りやすく、小規模保育が増えることが待機児童問題の解消にもつながると考えられています。小規模保育には、A型、B型、C型の3種類があります。それぞれの小規模保育の基準の主な違いは下記の通りです。
保育所(参考) | A型 | B型 | C型 | |
---|---|---|---|---|
特徴 | ー | 保育所分園、ミニ保育所に近い | 家庭的保育に近い | A型とB型の中間型 |
定員 | 60名 | 6~19名 | 6~19名 | 6~10名 |
職員の資格 | 保育スタッフはすべて保育士の資格を持つ | 保育スタッフはすべて保育士の資格を持つ | 保育スタッフの半分は保育士の資格を持つ | 家庭的保育者 ※市町村長が行う研修を修了した保育士、保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村長が認める者 |
0~2歳児の配置基準 | 【0歳児】子 3人:職員1人 【1・2歳児】子6人:職員1人 | 保育所の配置基準+1人 | 保育所の配置基準+1人 | 【0~2歳児】子3人:職員1人(補助者をおく場合は、子5人:職員2人) |
3~5歳児の配置基準 | 【3歳児】子15人:職員1人 【4・5歳児】子25人:職員1人 | 【3歳児】子15人:職員1人 【4・5歳児】子ども25人:職員1人+1名 | 【3歳児】子15人:職員1人 【4・5歳児】子ども25人:職員1人+1名 | 【3~5歳児】子3人:職員1人(補助者をおく場合は、子5人:職員2人) |
事業所内保育事業
事業所内保育とは、もともと会社や病院などが従業員のために開設していた企業内保育所・院内保育所などをその他の家庭も利用できるようにした施設です。2015年より、基準を満たした事業所内保育施設を認可する仕組みになりました。
事業所内保育事業の大きな特徴のひとつが、「従業員枠」と 「地域枠」があることです。もともと会社や病院などの従業員の子どもを預かる施設のため、従業員枠の利用に関しては自治体が利用調整を行わず、園が利用者を選定することができます。ただし、従業員枠を利用する場合も、自治体で保育の必要性の認定を受ける必要があります。
従業員枠と地域枠の定員は、国の基準で決められています。たとえば15名定員の場合、従業員枠が11名、地域枠が4名程度とされています。しかし、どちらかの枠がいっぱいになっても、もう一方に空きがあれば、柔軟に受け入れることができます。
企業が主体となった保育事業には、2016年に創設された企業主導型保育事業があります。こちらは延長や夜間、土日の保育など、従業員の多様な働き方に柔軟に対応すること、また地域の待機児童問題を解消することを目的としてつくられたもので、子どもの年齢による区分もなく、認可外保育施設の扱いとなります。
居宅訪問型保育事業
居宅訪問型保育は、保護者の自宅に保育者が訪問し、1対1で保育を行うというものです。障害や疾病で集団生活が難しい場合や、保育所の閉鎖により保育を利用できなくなった場合、ひとり親家庭の保護者が夜間・深夜に勤務するために保育が必要な場合などに利用されます。
市町村が定める研修を受け、保育士や保育士と同等以上の知識や経験があると市町村長が認める者が保育にあたります。また、障害児を保育する場合には、専門的な支援を受けられる施設と連携する必要があります。
小規模保育・事業所内保育を利用できる条件は?
小規模保育や事業所内保育などの地域型保育事業の利用の申請をするためには、認可保育園と同じように、自治体により保育の必要性があると認められなければなりません。就労や病気・障害、介護や通学など、保護者が子どもの保育を行うことができない場合に、支給認定を受けることができます。
また、地域型保育事業は0~2歳児の保育の受け皿として設置されており、4月1日時点で3歳未満の乳幼児が保育の対象となり、保育の必要性がある0~2歳児の認定区分である「3号認定」を受けた子どもが利用することができます。
ただし、小規模保育事業に関しては3歳児以上の受け入れも可能としています。3歳児以上の受け入れは市町村による判断となるため、詳しくは住んでいる自治体で確認してみましょう。
小規模保育・事業所内保育の申し込み方法は?
小規模保育や事業所内保育といった地域型保育施設は認可施設のため、認可保育園と同じように住んでいる自治体に利用の申し込みをします。自治体によって、保育課や生活支援課などの窓口に直接申し込まなければならない場合もあれば、郵送による申し込みを受け付けている場合もあるでしょう。自治体によっては、第一希望の認可園で申し込みを受け付けるケースもあります。
ただし、事業所内保育事業の従業員枠を利用する場合には、住んでいる自治体で保育の必要性の認定(支給認定)を受けたうえで、事業所に直接申し込みをします。地域枠の利用については、自治体が利用調整を行います。
地域型保育や認可保育園を利用するための詳細の申し込みの方法は、自治体によって違います。利用を希望する保育施設のある自治体と住んでいる自治体が異なる場合には、特に注意が必要です。利用案内の書類をしっかり確認したうえで、申し込みを行うようにしてください。
小規模保育・事業所内保育の保育料は?
幼保無償化と0歳から2歳児の保育料
2019年より幼児教育・保育の無償化が進められており、幼稚園、保育所、認定こども園などに通う3歳から5歳までの子どもは利用料が無償化されています。地域型保育事業は認可の保育事業のため、認可保育園と同様に無償化の対象ですが、0歳から2歳までは利用料がかかります。
利用料は、保護者の世帯所得により0円~104,000円を上限とする国の水準をもとに自治体が決定します。自治体によっては、認可保育園よりも保育料が安く設定されているケースがあります。
事業所内保育に関しては、福利厚生や人材確保の一環として、従業員枠の子どもの保育料を自治他の定めた地域枠の子どもの保育料よりも安く設定できることになっています。また、保育ママの中には認可保育施設としてではなく、自治体の独自の運用を行っているケースがあります。その場合には、保育料は自治体によって異なるでしょう。
そのほかの負担軽減策
地域型保育を利用する0歳から2歳までの子どもは利用料がかかりますが、非課税世帯は無料です。また、複数のきょうだいが保育園に通う多子世帯には、保育所などを利用する最年長の子どもを第1子として、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は無料となる負担軽減策があります。
負担軽減策には、ひとり親世帯に向けた制度や自治体独自の制度を設けている場合があるため、詳しくは住んでいる自治体で確認してみましょう。
小規模保育後の3歳以降の預け先の確保は?
3歳になる年の年度末まで在園できるのが一般的
小規模保育や事業所内保育は原則として3歳未満児を対象としています。3歳になったら、別の保育施設に移る必要があります。それでは、3歳の誕生日が来たら年度途中であっても卒園しなければいけないかというと、必ずしもそうとは限りません。
最終的な判断は自治体にゆだねられていますが、年度途中で退所することは子どもや親にとっての不利益となるため、3歳になる年の年度末まで在園できることがほとんどです。詳しくは、住んでいる自治体で確認しておきましょう。
小規模保育園卒園後の進路
小規模保育事業については、保育内容の支援及び卒園後の受け皿の役割を担う連携施設の設定が求められています。卒園したら優先的に提携先に入園できるという制度ですが、地域によっては連携施設を設けていても3歳児からの定員の空きがない場合もあります。
自治体や園によっては、3歳以降の預け先がどうしても見つからない場合には、小規模保育や事業所内保育を継続できる場合もあります。ただし、施設の大きさや保育者の確保の問題から、施設によっては継続した受け入れが難しいこともあるため確認が必要です。
小規模保育などの卒園児の3歳以降の居場所が見つからないことは「3歳の壁」と呼ばれ、問題視されています。国の特区小規模保育事業創設や自治体独自の対策を行っている地域もありますが、3歳からの新たな子どもの預け先を確保するために、早い時期から情報を集めておくことが大切です。
小規模保育・事業所内保育のメリット
きめ細かな保育
0~2歳児と3歳以上の子どもでは日中の過ごし方も違います。小規模保育・事業所内保育といった地域型保育事業は、基本的に0~2歳児を対象とした保育のため、0~2歳児に特化した保育を行うことができます。
また、小規模保育は定員が6~19人と少なく、一般的な保育所よりも保育スタッフの手厚い人員配置が定められています。事業所内保育には定員の決まりはありませんが、一般的な保育園に比べて受け入れられる子どもの人数が少ないケースが多いでしょう。
そのため、一人ひとりの子どもに保育者の目が届きやすく、きめ細かな保育を期待することができます。子どもの個性を尊重した保育をしてもらえたり、子どもの興味にあわせた活動をしてもらえたりすることができるでしょう。
アットホームな環境
小規模保育や事業所内保育では、一般的な保育園よりも子どもの人数が少なく、家庭的な雰囲気のなかで保育を受けることができるでしょう。保育者の人数も少ないため、子どもと保育者の距離が近く、愛着形成もスムーズな場合が多いようです。一人ひとりの子どもが先生全員から見守られて過ごすことができます。特に0~1歳の赤ちゃんの時期には、少人数の家庭的な環境は落ち着きやすいでしょう。
また、小規模保育や事業所内保育では異年齢保育を取り入れている園が多く、0~2歳児が同じ部屋で過ごすことが多いでしょう。子どもたちが兄弟姉妹のように過ごすなかで、年上の子どもが年下の子どもをかわいがったり、年下の子どもが年上の子どもに憧れていろいろなことを真似したりするという場面も生まれるものです。
保育者と子ども、子ども同士の距離が近く、大きな家のようなアットホームな環境が、小規模保育の魅力のひとつです。
先生とのコミュニケーション
小規模保育や事業所内保育では、通っている子どもの人数が少ないため、先生と保護者のコミュニケーションを密にとることができるという利点もあります。日々の送り迎えで保育園に出入りする保護者の人数も少なく、先生サイドも保護者の顔と名前が一致しやすいようです。担当以外の先生からも、日々の子どもの様子を聞いたりすることができるでしょう。
小規模保育・事業所内保育のデメリット
園庭がない場合がある
一般的な認可保育園には園庭があります。しかし、小規模保育は、園庭のかわりに近隣に公園などがあれば開設できることになっており、園庭がない園が少なくありません。事業所内保育でも少人数の場合には、小規模保育と同様でしょう。
園庭がないことを心配する方もいるかもしれませんが、晴れた日には近所の公園などに散歩に連れて行ってくれることがほとんどです。特に0~2歳児は3歳以降の子どもに比べて活動量も少ないため、園庭がないことが子どもに悪影響をおよぼすと心配しすぎなくても良いでしょう。
兄弟姉妹と別の園になる可能性がある
小規模保育や事業所内保育は原則的に0~2歳児を対象とする施設のため、家庭に3歳以上の兄弟姉妹がいる場合には、別々の園に通わなければならないでしょう。毎日の送迎をスムーズに行うために、夫婦で協力するなどの工夫が必要です。
小規模保育や事業所内保育も選択肢にいれて
子どもを保育園に入れたいと考えるときに、小規模保育や事業所内保育では、園庭がないことなどに不安を覚える人もいるかもしれません。しかし、地域型保育の小規模保育や事業所内保育は、認可保育園と同じように国の認可基準を満たした保育施設です。また、子どもの成長の基礎となる0~2歳児の時期に、少人数できめ細かな保育を受けられるという利点もあります。
小規模保育や事業所内保育といった地域型保育事業は、待機児童解消のひとつの方法として今後も増えていくと考えられます。産休・育休明けに復職するママは、子どもの預け先の選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
小規模保育や事業所内保育に子どもが通うことになった場合には、3歳以降の子どもの預け先を確保するために、再度保活をする必要があるかもしれません。自治体の担当窓口に問い合わせてみて、3歳以降の預け先について相談して、早めの情報収集をすることができると安心かもしれませんね。
※この記事は2024年8月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。