子宮外妊娠の手術の方法は?治療費用はどれくらい?手術後に妊娠できる?
子宮外妊娠と診断された場合、手術が必要なのか、治療にかかる費用はどれくらいなのか、また妊娠できるのか、とても不安になりますよね。手術をするイメージが強い子宮外妊娠ですが、早期発見により卵管を残した治療が可能になります。ここでは、子宮外妊娠の具体的な治療法や費用、手術後の過ごし方を解説します。
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目次
子宮外妊娠とは?
子宮外妊娠は、正式には「異所性妊娠」と言います。受精卵は本来子宮内膜に着床しますが、何らかの原因で子宮内膜以外の場所に着床してしまう状態です。約98%の割合で卵管に着床しますが、まれに卵巣や子宮頸管に発生することもあります。
子宮外妊娠では受精卵が正常に発育できないため、妊娠を継続することができません。特に卵管に着床したまま放置すると、受精卵の成長に耐えられず、卵管破裂などを引き起こす危険性があります。
子宮外妊娠の症状は?
子宮外妊娠の症状は妊娠6週頃までは出ないことが多いようです。しかし、妊娠週数が進み、受精卵が発達するのに伴い、下腹部痛や不正出血の症状がみられるようになります。ただし、生理や正常妊娠のときの症状と似ているため、自分では子宮外妊娠かどうか判断しづらいかもしれません。
たとえば卵管に着床してしまった場合、受精卵の発達に伴い卵管がその大きさに耐えられなくなり、不正出血や下腹部の痛みも増してきます。さらに妊娠7〜8週頃になると、受精卵が大きくなりすぎて卵管破裂を起こす危険性もあります。卵管破裂によって腹腔内に大出血が起こると、血液がお腹にたまって出血性ショックにいたることがあり、最悪の場合、命に危険がおよびます。
子宮外妊娠の治療法は?
子宮外妊娠の場合、真っ先に手術を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、手術をしなくてもよい可能性もあります。治療方針は、全身の状態や着床部位のほか、将来的に妊娠を希望するかどうかで変わってきます。手術以外の治療法は、基本的に卵管が破裂していない場合に行われます。
待機療法
正常な妊娠の場合でも、染色体異常などで約10%の確率で自然に流産してしまう可能性があるのですが、これは子宮外妊娠にも当てはまります。待機療法は、それを待つ治療法です。卵管に着床している場合は流産を待ち、腹腔内に着床している場合は組織に吸収されるのを待ちます。これは、卵管切除の必要がなく、母体に負担の少ない治療法といえるでしょう。ただし、この治療法はhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモンの数値や着床部分の血腫の大きさ、全身の状態などについての条件を満たさなければ行えません。
待機療法の場合、自然治癒が確認できるまでは、超音波検査やhCG値測定を繰り返して経過を観察します。子宮外妊娠の約18%は自然に治癒するといわれていますが、病状が進行し、手術が必要になる可能性もあります。
薬物療法
緊急度が低い場合に用います。卵管を残す治療法で、MTX(メトトレキサート)という抗がん剤を使用し、赤ちゃんを包む「胎嚢(たいのう)」の成長を止める方法です。全身投与の場合と、腹腔鏡下に直接投与する場合があります。ただし、hCGホルモンの数値や母体の状態によっては使用できない可能性もあります。副作用としては、吐き気や全身倦怠感、白血球減少などがありますが、全員に起こり得るとは限りません。
子宮外妊娠の手術療法は?
子宮外妊娠の手術は、子宮外妊娠の週数が進んでいる、卵管が破裂しているなど緊急を要する場合に行われます。局所麻酔か全身麻酔かに関してはその状況によりさまざまですので、医師の判断に任せましょう。また、手術中は麻酔が効いているので痛みはありませんが、麻酔が切れると痛みが発生します。
卵管圧出術
胎嚢を卵管から絞り出すように排出させる方法です。この場合、卵管は切除されずに残ります。主に腹腔鏡を使用する手術です。
卵管線状切開術
卵管線状切開術は、卵管破裂を起こしておらず、受精卵が卵管に着床したままの場合に行います。卵管を切開して、卵管内の胎嚢と血腫を水圧や吸引によって除去する方法で、主に卵管膨大部に適応します。この手術では腹腔鏡を使用するのが一般的です。卵管を残すことはできますが、手術後に卵管が癒着したり、次回の妊娠でも子宮外妊娠になってしまったりするリスクがあります。
卵管切除術
卵管ごと手術で切除する方法です。この方法は根治手術ともいい、次回の妊娠をあまり希望していない、あるいは卵管破裂を起こしている場合に用いられることの多い治療法です。この場合、片方の卵管は失われますが、もう片方の卵管は残すことができるため、必ずしも次回妊娠しないということはありません。腹腔鏡と開腹手術の2つの方法がありますが、出血が多い場合などは開腹手術になる場合が多い傾向にあります。出血多量によって出血性ショックをきたしている場合、まずは輸血や酸素投与(抗ショック療法)が行われます。
子宮外妊娠の手術の入院期間
一概にはいえませんが、腹腔鏡下手術の場合は最低3〜4日はみておいた方が良いでしょう。開腹手術の場合は入院期間がもっと長くなり、最低10日はみておきましょう。子宮外妊娠の手術は基本的に日帰りでは行えません。日帰りでの手術は、流産で亡くなった胎児や胎盤を掻き出す「掻爬(そうは)法」を行う場合のみ可能です。
子宮外妊娠の手術費用は?
子宮外妊娠の手術は健康保険が適用されるため、負担は3割で済みます。手術費用は一般的に約13万円〜20万円とされており、高額療養費制度の対象となります。高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額がひと月で上限を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
開腹手術と腹腔鏡下手術では、開腹手術の方が安くすむといわれています。しかし、そこに入院費などが追加されるため、入院期間が長い開腹手術と入院期間が短い腹腔鏡下手術では、最終的にかかる費用はあまり変わらないでしょう。また、個人病院よりも総合病院の方が費用は高くなるともいわれています。
子宮外妊娠の手術後の過ごし方は?
術後経過にもよりますが、横になってばかりいるよりも歩いた方が回復が早く、癒着や血栓症を防ぐためにも重要なので、手術の翌日から歩くよういわれることもあるようです。手術後2週間は下腹部痛と傷口の痛みが残るといわれています。また、卵管線状切開術では、まれに後遺症として卵管内に妊娠組織の一部が残ってしまう異所性妊娠存続症を起こすこともあります。この場合、投薬治療や再手術が行われます。
腹腔鏡の場合はお腹の傷が小さいため回復も早く、その分退院も早くなりますが、開腹手術の場合はお腹の傷も腹腔鏡に比べ大きく、一般的に回復まで4週間ほどかかります。また、退院後も自宅療養をすすめられます。
職場復帰は、術後4週間経ってからが目安になります。生理も早い人では術後4週間後くらいに再開するとされています。焦らず、身体が徐々に元に戻っていくのを待ちましょう。
子宮外妊娠の手術後に妊娠できる?
もし卵管を片方切除しても、もう片方が残っていれば自然妊娠は可能です。また、セックスや妊活の開始時期ですが、術後の経過により人それぞれですので、医師の指示に従うようにしましょう。ただし、子宮外妊娠の10%〜15%は繰り返しやすいという報告がありますので、注意が必要です。
子宮外妊娠の治療は早期発見が大事
子宮外妊娠でも、早期発見であれば、薬物療法など卵管切除以外の治療が可能で職場復帰も早くなります。もし妊娠検査薬で陽性反応が出た後に下腹部痛や不正出血があれば、すぐに産科を受診するようにしましょう。