流産とは?原因・種類・手術の方法は?予防できる?
妊娠すると、喜びの反面、「もしも流産したら」という不安も生まれます。残念ながら、流産は誰にでも起こりうるものです。流産の原因の他、種類ごとの症状の違い、手術の方法や手術後の過ごし方について知っておきましょう。流産に確実な予防法はありませんが、生活習慣に気を配ることで、流産のリスクを下げられる可能性はありますよ。
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目次
流産とは
流産とは、エコー検査でお腹の赤ちゃんを包む「胎嚢(たいのう)」を確認後、妊娠22週に満たずに妊娠が中断してしまうことです。何らかの原因で赤ちゃんが育たなくなり、妊娠が継続できなくなります。
流産には、自然に妊娠が終わる「自然流産」と、人工的に流産を起こす「人工流産」があります。人工流産はいわゆる「人工妊娠中絶」のことで、「流産」といえば自然流産を指すのが一般的です。
流産の種類
早期流産や後期流産など(発症時期による分類)
産婦人科のエコー検査で胎嚢が確認できてから妊娠12週未満に起こる流産を「早期流産」と言います。胎嚢が確認できる時期は人によって異なりますが、妊娠5週から6週くらいという人が多いようです。
一方、妊娠12週以降22週未満、つまり妊娠初期の後半から妊娠中期の途中までに起こる流産は「後期流産」です。妊娠中期(妊娠16週~27週)に入ると、胎盤が完成し、一般的に安定期といわれていますが、流産のリスクがゼロになるわけではありません。後期流産は「死産」として扱われ、役所に死亡届を提出する必要があります。
なお、医学的には流産に分類されませんが、妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、エコー検査で胎嚢が確認できる前に流産することを「化学流産(生化学妊娠)」と言います。近年、早期妊娠検査薬が販売されるようになり、早い段階で妊娠に気付くようになったことで、化学流産が判明するケースが増えているのです。ただし、妊娠検査薬を使わなければ、妊娠して化学流産にいたったことに気付かないまま、次の生理を迎えてもおかしくありません。
進行流産や稽留流産など(子宮内容の状態による分類)
流産は、胎児や胎盤といった子宮内容物の状態によって「進行流産」と「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」に分けられます。
進行流産とは、子宮内容物が外に流れ出てきている状態です。流産の進行の程度により、子宮内容物が完全に排出された「完全流産」と、子宮内容物の一部が子宮内に残ったままになっている「不全流産」に分類されます。
完全流産はエコー検査で胎児が見えず、胎嚢も消失していると認められる場合、不全流産は胎児が見えない、または心拍が確認できない場合に診断されます。
稽留流産とは、胎児が子宮内で死亡し、子宮内容物が子宮外に排出されずにとどまっている状態です。エコー検査で子宮内に胎嚢が確認できるものの、胎児の姿が確認できない「枯死卵(こしらん)」であれば、稽留流産と診断されます。
稽留流産では、痛みや出血などの自覚症状がないのが特徴です。しかし、子宮内容物が自然に排出され始めて進行流産になることがあり、その場合、症状もあらわれます。
一方、流産にはいたっていないものの、流産の危険性が高い状態を「切迫流産」と言います。妊娠初期には有効な治療法はないものの、妊娠を継続できる可能性もあります。
流産の原因と確率
流産の確率は高齢になると上がる
流産は全妊娠の約15%の確率で発生するとされ、決して珍しいものではありません。母体の年齢が高くなると、発生率はさらに高くなり、40歳以上では25%にも達するといわれています。
早期流産のほとんどは胎児側に原因がある
流産の約80%は妊娠12週未満に起こる早期流産です。エコー検査で心拍確認ができる前に流産にいたることが多く、昔から「心拍確認ができれば安心」などといわれてきました。しかし、経腟エコーによる心拍確認後の流産率は、全流産のうち16~36%とされており、油断はできません。
早期流産は受精卵の染色体異常が原因で引き起こされることがほとんどで、残念ながら、事前に防ぐことはできません。胎児側の問題で、もともと流産することが決まっていたと言えるため、もしも早期流産が起こっても自分を責め過ぎないようにしてくださいね。
なお、受精卵の染色体異常率は、母体の年齢が30~36歳では19%、37~41歳では46%とされ、高齢女性ではリスクが高まります。
早期流産の原因としては、双子などふたり以上の胎児を同時に妊娠する「多胎妊娠(たたいにんしん)」も考えられます。多胎妊娠では、子宮が過度に増大することで子宮収縮が起こりやすく、流産につながるリスクが高いのです。
安定期も流産のリスクがある
流産のうち後期流産が占める割合は約20%です。流産は妊娠初期に起こるイメージが強いかもしれませんが、安定期と呼ばれる妊娠中期にも流産のリスクは少なからずあります。早期流産のほとんどが胎児側に原因がある一方、後期流産では母体側に原因があるケースが増えます。
後期流産の原因として、赤ちゃんを包む膜が細菌感染を起こす「絨毛膜羊膜炎」があげられます。また、子宮の筋肉に腫瘍ができる「子宮筋腫」や、子宮の形に先天異常がある「子宮奇形」、子宮頸管が弱くなって子宮口が開いてしまう「子宮頸管無力症」も後期流産の原因です。
過度のストレスが後期流産のリスクを高めるという説もあります。強いストレスが長期間続くと、自律神経が乱れて血流が低下しやすく、胎児への栄養や酸素の供給が阻害される可能性があるといわれています。
流産を繰り返す場合は原因を調べる
流産を一度経験すると、また流産してしまうのではないかと心配する方もいるでしょう。流産を2回繰り返すことを「反復流産」、3回以上繰り返すことを「習慣流産」と言います。反復流産が起こる頻度は4.2%、習慣流産の頻度は0.88%とされ、確率は低いもののゼロではありません。
流産を繰り返してしまうのは、流産の処置の影響があるともいわれています。しかし、現状では医学的に明らかになっていません。一方で、反復流産や習慣流産は、染色体異常や子宮奇形など、何らかの原因がもともとあることも考えられます。そのため、「不育症」という概念で反復流産や習慣流産をとらえ、男性、女性ともに検査をして原因を探ることが必要になってきます。
不育症に関する治療を何も行わなかった場合、流産を2回経験した後に、次の妊娠で再び流産する確率は23%です。さらに、流産を3回経験した後の流産率は32%にもなるといわれています。
流産の兆候・症状は出血や腹痛?
進行流産では、子宮内膜が剥がれることで、生理に似た茶褐色や鮮血の出血が起こるのが特徴です。通常の生理よりも出血量が多く、血の塊やゼリー状の白い塊が混ざることがあります。
出血と同時に、陣痛のような下腹部痛やお腹の張り、腰痛の症状もあらわれます。特に妊娠初期には、正常妊娠でも出血や腹痛がみられることがありますが、痛みが10分間隔など周期的にあらわれる、しばらく休んでも症状が治まらないような場合は要注意です。
流産に至っていない切迫流産の場合は、進行流産に比べて出血量が少なく、痛みも軽いといわれています。気になる症状があらわれたら、自己判断せず、産婦人科で赤ちゃんの状態を調べてもらいましょう。
出血や腹痛の他に、つわりが突然なくなる、基礎体温が下がるといった兆候があらわれる場合もあります。
ただし、子宮内容物が子宮内にとどまっている稽留流産の場合、出血や腹痛などの自覚症状がないため、流産していることに気付かないことがあります。正常妊娠のときのホルモンバランスを維持し続けるため、つわりがなくならず、基礎体温も高温のままというケースもあるようです。
一方、進行流産が進み、子宮内容物がすべて自然に出た完全流産では、出血や腹痛といった症状が軽減または消失します。
流産は手術が必要?
流産が起こると、流産の種類や妊娠週数によって、子宮内容物を除去する手術を行う、自然に排出されるのを待機するといった処置を選択します。
子宮内容除去術
稽留流産や不全流産の場合、子宮内容物をそのままにしておくと大量出血などのリスクがあるため、「子宮内容除去術」という手術を行うことが多いようです。子宮内容除去術の方法としては、ハサミ状の器具で子宮内容物を出す「掻爬(そうは)法」と、吸引器を子宮内に挿入し子宮内容物を体外に排出する「吸引法」があります。
手術は静脈麻酔で眠った状態で行うのが一般的です。手術自体は30分程度で終わるため、日帰りで行えるケースもありますが、初産などで子宮頸管が開いていない場合、前日に入院して子宮頸管を拡げる処置を行うことがあります。
待機療法
早期流産の場合、子宮内容物が自然に排出されるのを待つ「待機療法」を選択できる場合があります。手術に比べて金銭的な負担が少なくて済む反面、いつ自然排出されるかわからないことから、急に大量出血するなどして日常生活に支障をきたす恐れがあります。また、長期間待っても排出されなければ、結局手術を行わなければならなくなります。
待機療法では、排出された胎嚢をタッパーなどの容器に入れて、病院に持参するよう指示されることがあります。病理検査を行い、絨毛細胞が異常増殖してしまう「胞状奇胎(ほうじょうきたい)」や子宮外妊娠ではなかったか確認するためです。胎嚢の見た目は、ゼリー状の塊で、赤黒い色か白い色をしています。
陣痛促進
妊娠12週以降に起こる後期流産では、子宮内容除去術を行うには胎児が成長し過ぎており、母体への負担が大きくなります。そのため、子宮収縮剤で子宮を収縮させ、通常の出産と同様に子宮口を開き、胎児と胎盤を排出します。
強制的に産道を開き、陣痛を起こすため、処置中はもちろん、処置後もしばらくは強い痛みや出血がみられる場合があります。処置が長引く恐れがあるため、麻酔は基本的に使いませんが、希望すれば麻酔してもらえることもあるようです。
陣痛誘発による処置は数日間の入院が必要です。妊娠週数が進んでいるほど、子宮が元の状態に戻るのに時間がかかるといわれています。
治療なし
子宮内容物がすべて排出された完全流産では、自然に子宮収縮が起こり、子宮が妊娠前の状態に回復します。したがって、特に治療をする必要はなく、経過観察となります。
流産手術後の過ごし方は?
流産後の過ごし方
流産の処置を行った後は、基本的に数日間は自宅で安静に過ごします。自宅安静後、すぐに仕事や家事、子育てを再開しなければならない方も多いかもしれませんが、心身に大きな負担がかかる流産を経験した後ですから、くれぐれも無理をしないでくださいね。
人によっては、子宮復古の過程で腹痛があらわれる場合があります。基本的には徐々に治まるものですが、ひどい痛みが長く続いたり、発熱を伴ったりするようであれば、医師に相談するようにしましょう。
流産の報告
もしも、会社や親、友人など周囲にすでに妊娠を報告していた場合、いつ・どのように流産を打ち明けるか悩むかもしれません。
夫やパートナーには、治療の方針なども話し合わなければならないため、流産が判明したらすぐに報告したほうが良いでしょう。話を切り出すのはつらいかもしれませんが、ふたりで授かった命ですから、お互いに支え合い、ともに悲しみを乗り越えていきましょう。
流産をきっかけに、離婚を考える夫婦もいるようですが、流産の多くは受精した段階で流産することが決まっており、防ぐことができないものです。自分や相手のせいではないことは忘れないようにしつつ、お互いの価値観を大切にできると良いですね。
夫やパートナー以外の人には、自分の心や体調が落ち着くのを待ち、しばらく時間が経ってから伝えても良いかもしれません。まずは自分の心身を第一に考えて、自分にとって負担のない時期や方法を選んでくださいね。妊娠していたことを知らない人には、無理に報告する必要はありませんよ。
流産後の生理と妊活
流産後に生理が再開する時期は、流産してから3~6週間後が目安です。妊娠前の状態に身体が戻るのに時間がかかるため、流産直後は生理周期が乱れがちですが、2ヶ月以上経過しても生理が再開しなければ、産婦人科に相談してください。
妊活については、流産後、少なくとも1~2回は生理を見送ってから再開するよう医師に指導されることが多いようです。生理再開直後は、子宮の状態が妊娠に向けて完全に整っていない場合があるからです。
流産を経験後、無事に妊娠・出産した方はたくさんいますが、妊娠する可能性が少しでも高くなるよう、普段からホルモンバランスを整える生活を心がけましょう。睡眠を十分にとる、栄養バランスの良い食生活を送る、冷え症を改善する、ストレスをためないようにするといったことが大切です。
流産後の水子供養とは?
外の世界に出られなかった赤ちゃんを供養したいという人は多いでしょう。流産や人工妊娠中絶などによって亡くなった胎児を供養することを「水子供養(みずこくよう)」と言います。
水子供養は必ずしなければならないことではありませんが、自分たちを選んでくれた赤ちゃんに、真心を込めて愛する想いや感謝の気持ちを伝えられる機会かもしれません。また、水子供養をすることで、赤ちゃんを失った自分たちの悲しみが少なからず癒えるということもあるでしょう。
水子供養はお寺か神社で行いますが、できるところは限られているため、近場で水子供養をしているお寺や神社があるか確認すると良いでしょう。流産したことを誰にも知られないよう、匿名で水子供養ができる施設もあるようです。
供養の費用は、位牌を作って自宅で手を合わせたいなど、どのような形で供養するかによって異なり、数千円から数万円の開きがあります。
流産は予防できる?
流産の原因の多くは胎児の染色体異常といわれています。また、原因が特定できないことも少なくありません。したがって、流産を確実に予防することは難しいのです。しかし、以下の点に気を配ることで、流産のリスクを下げられる可能性があります。
ストレスをためない
最先端の研究では、ストレスが妊娠に影響をおよぼす可能性があることが判明しています。過度のストレスが長期間続くことによって、母体の血行不良などを引き起こし、それが赤ちゃんにも影響を与えると考えられます。
妊娠初期はホルモンバランスが急激に変わり、体調が不安定になりやすいため、精神的なストレスも強くなりがちです。職場では心身への負担が少ない仕事に替えてもらうなどして、周りに協力してもらいながら、できる限りストレスがかからない生活を心がけましょう。
無理な運動は避ける
妊娠初期は、強い衝撃で人や物に接触する恐れがあるスポーツや、走ったり跳ねたりしてお腹が上下に激しく動くスポーツ、転倒するリスクがある自転車などは避けたほうが良いでしょう。激しい運動が刺激となり、出血したり、胎盤が剥がれたりしてしまい、流産につながる恐れがあるからです。
ただし、ウォーキングなどの軽い運動を適度に行うことは、便秘の予防や気分転換になり、心身ともに良い影響を与えてくれますよ。
性行為のときはコンドームを装着する
後期流産の原因のひとつとして考えられる絨毛膜羊膜炎は、細菌性腟症になって、細菌感染と炎症が赤ちゃんを包む絨毛膜と羊膜にまで波及することで起こります。腟の細菌感染を防ぐため、妊娠中に性行為をするときはコンドームを装着しましょう。
身体が冷えないようにする
身体が冷えると、子宮の筋肉が収縮し、子宮内膜の血流が悪化することで、赤ちゃんへ栄養や酸素が正常に供給されなくなる恐れがあります。
根菜類やしょうがなど、身体を温める作用がある食べ物を積極的に摂る、腹巻をしたり靴下を重ね履きしたりして身体を冷やさない格好をするなどして、冷え性を改善しましょう。
ゆっくりと時間をかけて乗り越えよう
流産してしまうことは、とてもつらい経験です。「流産は確実に防ぐことができない」と頭ではわかっていても、後悔や悲しみで心が苦しくなってしまいます。しばらくは「立ち直れない」と思う方もいるでしょうが、心が癒えるのに時間がかかるのは当然ですから、焦らず、ゆっくりと流産を乗り越えましょう。
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